近年の各国政府が発表する声明は、何が真実で、何が虚偽であるのか、判然としないような例が氾濫している。これは各国政府が意図的な声明を発することでの効果を狙っているところがあるという。外交における広報の役割について学んだ。
※ 講義をする小浜祥子准教授です。
昨日はラーメンレポ、一昨日はサッカー関連、そして本日は外交問題、と拙ブログの話題はあちらこちらへと激しく飛び回ることおびただしく、私自身が苦笑している。
しかし、拙ブログはあくまで私が体験したことをレポするというコンセプトであるから、それも仕方のないことと私自身は割り切っている。混乱させてしまうこともあるかと思われるが、お付き合いいただければ幸いです。
さて、8月10日(木)夜、北大法学研究科公開講座「社会の分断をいかに乗り越えるか?」の第3講が開講された。この日のテーマは「国際社会の分断と外交広報」と題して、法学研究科の小浜祥子准教授が講師を務めた。
講師の小浜氏は言う。近ごろの外交広報は次のような特徴があるという。①政府による積極的な広報戦略、②新しい方法による国外発信、③政府間の「広報合戦」
このことは、世界各国の政府の広報に同じような傾向が見られるということだが、日本政府の場合について振り返ってみると…、
①については、政府が積極的に「クールジャパン」を押し出していること。東京オリンピックを控え「おもてなし」キャンペーンを展開していることなどを指しているようだ。
②については、報道機関を通じて公式声明を出すという伝統的な方法ばかりでなく、SNSなどを使って発信し始めたことを指す。安倍首相も積極的にTwitterやFacebookで発信しているようだ。
③については、特に東アジアの各国同士が広報を通じて相手国の避難や自国の正当性を頻繁に繰り返している。
こうして言われてみると、確かに中国や韓国政府の日本批判、あるいは米朝の政府同士のやりとり、あるいは我が国政府の菅官房長官の声明など、思い当たる節がいくつもある。
こうした声明の中で、小浜氏は各国が互いに発するネガティブなメッセージに着目したという。
ネガティブメッセージとは、相手を一方的に非難する声明のことであるが、これが氾濫すると、国際社会の分断をさらに深める可能性があり、国のイメージを傷つけることにもなりかねず、ひいては人々が政治に嫌気をさし、政治に無関心になる可能性があると心配する。
なぜ、各国政府がネガティブメッセージを多用するのか?この疑問に対して、小浜氏らは外交広報の効果を調べるある実験をしたという。
実験の方法は、多くの被験者に対する聞き取りによる調査であるが、その詳細は説明が難しいので省略する。
実験の結果から分かったことは次の2点だったという。
1.ネガティブなメッセージには強い効果が認められた。
2.ポジティブなメッセージには文脈依存性がみられる。
・相手国の発するメッセージ
・人々がもともと抱いているイメージ
つまり、ネガティブなメッセージには自国に支持を集め、相手国への支持を下げる効果があるということなのだ。
一方、ポジティブなメッセージの効果は文脈に依存するということが認められたそうだ。
こうした効果を各国政府は認識しているからこそ、ネガティブなメッセージが氾濫する状況を生んでいるようだ。
こうした現況の中、小浜准教授は講義を次のようにまとめた。
1.「なぜ国々は非難合戦を行うのか?」という問いに対しては、
一方的に非難されることの代償が大きいため、非難されたら、非難し返すということで非難合戦の様相を呈しているという。
2.「非難合戦は東アジアにおける分断を深めるか?」という問いに対しては、
非難することで得られる支持は、非難されることで失う指示によってほぼ打ち消される、ことから憂慮されるような事態に今のところは向かわないのではないかということだ。
3.「クールジャパン戦略に意味はあるのか?」という問いに対しては、
平時の外交広報によって自国に好意的な環境を作っておくことで、紛争時における情報発信がより効果的になるのではないか、と小浜氏は解説した。
※ 記者会見をする菅官房長官です。(web上から拝借)
日本政府の広報官である官房長官の発言は、政府の公式声明であるから何時の時代も慎重であり、発言の裏の意図も感じられた。しかし、現菅官房長官の発言には時折りそれ以上の違和感を感ずることもあったが、その裏には外交広報のおかれている役割がこれまで以上に重要性を増していることがそうした発言に繋がっているということなのかもしれない…。
※ 講義をする小浜祥子准教授です。
昨日はラーメンレポ、一昨日はサッカー関連、そして本日は外交問題、と拙ブログの話題はあちらこちらへと激しく飛び回ることおびただしく、私自身が苦笑している。
しかし、拙ブログはあくまで私が体験したことをレポするというコンセプトであるから、それも仕方のないことと私自身は割り切っている。混乱させてしまうこともあるかと思われるが、お付き合いいただければ幸いです。
さて、8月10日(木)夜、北大法学研究科公開講座「社会の分断をいかに乗り越えるか?」の第3講が開講された。この日のテーマは「国際社会の分断と外交広報」と題して、法学研究科の小浜祥子准教授が講師を務めた。
講師の小浜氏は言う。近ごろの外交広報は次のような特徴があるという。①政府による積極的な広報戦略、②新しい方法による国外発信、③政府間の「広報合戦」
このことは、世界各国の政府の広報に同じような傾向が見られるということだが、日本政府の場合について振り返ってみると…、
①については、政府が積極的に「クールジャパン」を押し出していること。東京オリンピックを控え「おもてなし」キャンペーンを展開していることなどを指しているようだ。
②については、報道機関を通じて公式声明を出すという伝統的な方法ばかりでなく、SNSなどを使って発信し始めたことを指す。安倍首相も積極的にTwitterやFacebookで発信しているようだ。
③については、特に東アジアの各国同士が広報を通じて相手国の避難や自国の正当性を頻繁に繰り返している。
こうして言われてみると、確かに中国や韓国政府の日本批判、あるいは米朝の政府同士のやりとり、あるいは我が国政府の菅官房長官の声明など、思い当たる節がいくつもある。
こうした声明の中で、小浜氏は各国が互いに発するネガティブなメッセージに着目したという。
ネガティブメッセージとは、相手を一方的に非難する声明のことであるが、これが氾濫すると、国際社会の分断をさらに深める可能性があり、国のイメージを傷つけることにもなりかねず、ひいては人々が政治に嫌気をさし、政治に無関心になる可能性があると心配する。
なぜ、各国政府がネガティブメッセージを多用するのか?この疑問に対して、小浜氏らは外交広報の効果を調べるある実験をしたという。
実験の方法は、多くの被験者に対する聞き取りによる調査であるが、その詳細は説明が難しいので省略する。
実験の結果から分かったことは次の2点だったという。
1.ネガティブなメッセージには強い効果が認められた。
2.ポジティブなメッセージには文脈依存性がみられる。
・相手国の発するメッセージ
・人々がもともと抱いているイメージ
つまり、ネガティブなメッセージには自国に支持を集め、相手国への支持を下げる効果があるということなのだ。
一方、ポジティブなメッセージの効果は文脈に依存するということが認められたそうだ。
こうした効果を各国政府は認識しているからこそ、ネガティブなメッセージが氾濫する状況を生んでいるようだ。
こうした現況の中、小浜准教授は講義を次のようにまとめた。
1.「なぜ国々は非難合戦を行うのか?」という問いに対しては、
一方的に非難されることの代償が大きいため、非難されたら、非難し返すということで非難合戦の様相を呈しているという。
2.「非難合戦は東アジアにおける分断を深めるか?」という問いに対しては、
非難することで得られる支持は、非難されることで失う指示によってほぼ打ち消される、ことから憂慮されるような事態に今のところは向かわないのではないかということだ。
3.「クールジャパン戦略に意味はあるのか?」という問いに対しては、
平時の外交広報によって自国に好意的な環境を作っておくことで、紛争時における情報発信がより効果的になるのではないか、と小浜氏は解説した。
※ 記者会見をする菅官房長官です。(web上から拝借)
日本政府の広報官である官房長官の発言は、政府の公式声明であるから何時の時代も慎重であり、発言の裏の意図も感じられた。しかし、現菅官房長官の発言には時折りそれ以上の違和感を感ずることもあったが、その裏には外交広報のおかれている役割がこれまで以上に重要性を増していることがそうした発言に繋がっているということなのかもしれない…。