今のところ…、北海道の活火山は概ね落ち着いた状況にある、と道総研地質研究所の研究主任の高橋氏は解説する。だからといって安心できる状況でもないという。北海道の活火山について話を聞いた。
北海道総合研究機構(略称:道総研)が定期的に開催している「ランチタイムセミナー お昼の科学」が10月23日(水)お昼に道庁一階ロビーで行われた。
今回のテーマは「個性豊かな北海道の活火山 ~身近な火山の素顔~」と題して、地質研究所の高橋良研究主任がお話された。
日本に活火山が多いことは多くの人の知るところである。その原因は日本が四つの大きなプレートの上に乗っかっているということについては、今回の東日本大地震を学ぶ中で多くの人が認識したことでもある。研究者によるとこうした国は世界中を探しても他には例がないという。
ちなみに日本の活火山であるが、世界的に見て現在1,547の活火山があるそうだが、そのうちの7%、110の活火山がこの狭い日本にひしめいているという。そしてその中の31の活火山が北海道にあるそうだ。
20世紀以降に噴火(マグマ噴火)した北海道の活火山は、北海道駒ケ岳、有珠山、樽前山、十勝岳の四つである。その中で1929年に噴火した駒ケ岳が20世紀では道内最大規模の噴火で、噴煙は高度13,900mにまで達したという。最悪の被害者を出したのは、1926年に噴火した十勝岳で、積雪期(2月)の噴火だったこともあって噴火の熱で雪が融けだして、144名の死者・行方不明者を出したという。
これら四つの火山は17世紀にまで遡ってみても噴火を繰り返している活火山なので注視していく必要がある火山だという。
私の記憶に残る噴火といえば、1962年の十勝岳噴火である。当時私は北見地方に住む高校生だった。朝起きると空が暗くどんよりとしていた。私は通学生だったのだが、乗っている気動車が外気を取り込む方式のものだったため、列車内に火山灰がもうもうと立ち込め息をするのも苦しかったことを憶えている。十勝岳から北見まで直線距離にして約100㎞もあるのだが、そこまで噴煙が届いたという大規模な噴火だったのだ。
さらに今夏、私は十勝岳を含む十勝岳連峰を縦走した。その際、やはり1962年の噴火の際に噴火口となった「中央火口」を見ることができたが、大きくぽっかりと窪んだ噴火口を見て、そのエネルギーの凄まじさを実感した。
さて講義の方に戻るが、講義では火山がもたらす恵みについても触れられたが、温泉や景観、地熱などの恵みがあるが詳しくは割愛する。
現在の火山活動の状況について、21世紀に入って北海道の活火山は水蒸気噴火を3回ほど記録したが、マグマ噴火の例は今のところなく、概ね落ち着いている状況だという。しかし、油断はできないのが火山噴火の特徴でもある。
予防については、火山ごとに噴火のタイプや規模、噴火発生間隔などが異なるので、各火山の特徴を捉えた対策が必要であるということだった。
また、火山は大きな噴火の前には様々な予兆を示すことがあるので、観測体制を整備し、観察を注意深く行うことが的確な噴火予測に繋がるとした。
日本の場合は、諸外国と違い活火山が比較的人が住む近くに存在している場合が多いので、被害を最小限に止めるためにも関係機関の方々には噴火予測の精度を上げるためにご努力いただきたいと思った。