私たちシニアにとっては、加齢と共に認知機能が低下して日常生活や社会生活に支障をきたす「認知症」になることを誰もが恐れている。もし肉親や身近な人が「認知症」に陥ったらどのように理解したらよいのか?「認知症」の権威者からお話を聴いた。
6月30日(日)午後、北海道立道民活動センター(かでる2・7)において「北海道認知症の人と家族の会」主催の講演会が開催され参加した。
講師は「公益社団法人 認知症と家族の会」副代表理事で、川崎幸クリニック院長の杉山孝博氏が務められ、「『認知症』と『認知症の人』をよく知ろう ~認知症の9大法則と1原則~」と題してお話された。
杉山氏はこの分野では全国的に有名な方で、全国各地を巡って講演されている方のようで、分かりやすく、ユーモアを交えながらやさしく教えていただいた。
※ 講演される杉山孝博氏です。
杉山氏はまず、「認知症」とは、記憶力・認識力・判断力・推理力などの知的機能が低下して、社会生活や日常生活になんらかの支障をきたす状態になったことを言う、と規定された。しかし、「認知症」とはいっても人それぞれで様々な能力を持ち、喜怒哀楽の感情を持ち、周囲の人との交流を求めている人であって、認知症と判断されたら「全て終わりではない」ことを周囲は理解すべきだという。したがって、家族や周囲の人たちは認知症の世界を正しく理解することによって、適切な対応をすることが望まれるとした。
そう話されたうえで「認知症をよく理解するための9大法則と1原則」を紹介していただいた。その9+1とは…、
第1法則 記憶障害に関する法則
記憶はごく最近の記憶から失われていくという。そして記憶障 害には、三つの特徴があるという。①記銘力低下の特徴、②全
体記憶の障害の特徴、③記憶の逆行性喪失の特徴、の三つであ る。
第2法則 症状の出現強度に関する法則
より身近な人に対して認知症の症状がより強く出る。一番近くで
お世話している(心から頼りにしている人)に対して、よりわがま
まになる。
第3法則 自己有利の法則
自分にとって不利なことは認めない。
第4法則 まだら症状の法則
正常な部分と認知症として理解すべき部分とが混在している。
第5法則 感情残像の法則
言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れるが、感情は残像
のように残る。
第6法則 こだわりの法則
こだわりが強くなり、他人の意見を受け入れなくなる。説得しよ
うとしたり、否定することは逆効果。
第7法則 作用・反作用の法則
強く対応すると、強い反応が返ってくることが多い。上手に対
応することが大切。
第8法則 認知症状の了解可能性に関する法則
認知症の症状は、ほとんどすべて、認知症の人の立場に立って
考えれば、説明がつく。
第9法則 衰弱の進行に関する法則
認知症の方は、認知症になっていない人より約3倍のスピード
で老化する。
以上のような「認知症」の症状の特徴を理解した上で、介護する側としての原則として杉山氏が挙げたのは「認知症の人の形成している世界を理解し、大切にしながら、その世界と現実のギャップを感じさせないように接する」ことが大切と話され、講演を終えた。
前述したように、もし自分の家族に認知症的症状が現れたら戸惑い、落ち着いて対処できる自信はない。こうしたお話を繰り返し聞いたり、体験者のお話を伺ったりして、「もしも」に備えることの大切さを学んだ。また、私自身がそうした症状に罹る可能性も否定できない。私の妻ともこの問題を話し合い共有したいと思っている。