田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画  ディア・ファミリー  №376

2024-07-03 20:07:34 | 映画観賞・感想
 余命10年と宣告された娘の命を救うため、医学には全く無知だった町工場を営む父親が人工心臓を、そしてバルーンカテーテルの開発に人生を捧げたという実話を映画化ものだが、父親とその家族の物語はまさに “敬愛” に値する尊い姿だった…。

     

 7月2日(月)午前、札幌シネマフロンティアで「ディア・ファミリー」を観た。英語表記すると「Dear Family」となるが、「Dear」とは、「親愛な」とか「敬愛な」と訳されるようだが、この映画を観終わってみると私は「敬愛できるような素晴らしい家族」と解したいと思った。
 映画は、ノンフィクション作家の清武英利の『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』が原作である。

     
   ※ 清武武利著「アトムの心臓『ディア・ファミリー』23年間の記録」の表紙です。

 町工場を営む筒井宣政(大泉洋)は、次女の佳美(福本莉子)が心臓病のため余命10年と宣告された。筒井は家族と共に「人工心臓をつくり、娘の命を救うという不可能」に挑むことを決意する。筒井夫婦は人工心臓開発のために知見を集めるべく、日本のトップクラスの研究者が集う研究会や大学病院を訪ね歩き、東海メディカルプロダクツを設立し、徐々に希望の光が見えてきたのだが、今現在も世界の医学が実現できていない人工心臓開発の壁はあまりにも厚かった。結局、人工心臓の開発は諦めざるを得なく、娘を救うことはできなかった。しかし筒井は人工心臓の開発を進める中で、バルーンカテーテルを医学界が望んでいることを知り、世の中の子どもの命を救うためにその開発に乗り出した。   
    
※ 映画の主たる出演陣です。

 その筒井の奮闘を、妻の陽子(菅野美穂子)はもちろん、3人の娘たちも筒井を懸命に支えた。そしてついに世界初のバルーンカテーテルを筒井は完成させたが、その間に次女の佳美は父を応援しながらこの世を去ったという。筒井が開発したバルーンカテーテルは、その後13万人の命を救ったという。
 ところで清武氏の著書の「23年間の記録」という意味だが、実は清武氏がこの筒井氏の偉業を知ったのは後輩記者が新聞記事にした2001年のことだったという。それから23年後にようやくノンフィクションとして上梓したことを意味しているそうだ。その間、清武氏は本務(新聞記者・編集人)の傍ら取材に取材を重ねたことで23年もの月日を要したという意味のようである。
 さて、映画の方であるが、主演の大泉洋の芸達者ぶりは映画全体をグッと引き締めていて、感動作として仕上がった立役者である。ただ、私の涙腺を緩めたのは、映画では父の筒井を陰に陽に応援し続けた奈美(川栄季奈)、佳美、寿美(新井美羽)の三姉妹だった。三人はけっして芸達者というわけではなかったが、滲み出るような優しさが画面を通して伝わってきた。

       
        ※ モデルとなった実在の筒井宣政氏です。

 映画の最後に筒井にインタビューするために登場したテレビリポーター役の山本結子(有村架純)は、実は「自分自身がバルーンカテーテルで命を救われたのだ」と告白する場面は観客を泣かせ続けた制作者がさらに一押しさせる効果的な構成だったように思われた。お勧めの映画である。