経済アナリストの森永卓郎氏は言う。「近未来に世界で非連続的な大転換が起こるだろう」と…。「これは面白い話が聴けるぞ」と期待を持って聴き入ろうとしたのだが、その後の展開はいささか期待外れと言わざるを得ないものだった…。
本日午後、北海道信用金庫主催の「経済講演会」が札幌プリンスホテル国際館パミールで開催されたが、知人から入場券を融通していただき参加することができた。講演のテーマは「激動の日本経済、これからどうなる?」と題して経済アナリストで、獨協大学教授でもある森永卓郎氏が講師だった。
森永氏は冒頭、「世界は2年後に非連続的な大転換が起こる」と断言した。それは1970年代に情報化社会が到来し、社会が一変したのと同じような大転換だとした。その主たる理由として森永氏は “行き過ぎたグローバル資本主義” が限界を迎えつつあるとした。
その “行き過ぎたグローバル資本主義”…、言葉を変えると新自由主義経済下の世界は、おびただしい格差社会を現出したという。具体的に言えば、世界の低所得者層38億人の資産(所得)と世界の富豪26人の資産(所得)が同等だという。日本においても資産100億以上の富豪が東京都港区に集まっていて、彼らはさらなる資産形成を狙って「お金中毒」になっているそうだ。さらにショッキングだったことは、日本人の実質収入が35年前より減少しているという森永氏の言だった。(数字については聞き書きしたものである)
こうしたいわば歪んだ世界経済がどのように転換するのか、私は期待を持って森永氏の次の言を待った。森永氏はアメリカ経済がすでにその兆候を見せ始めているという。世界経済を席巻したGAFAMもすでに陰りを見せ、アメリカの株価は下がり続けているとした。
そうした中で、ビジネス界でDX(デジタル・トランスフォーメーション)旋風が吹き荒れ、さらにはGX(グリーン・トランスフォーメーション)への関心も急速に高まっているという。(DX、GXについて詳しくは調べていただきたい)さらに森永氏は “クリエイティブ” がこれからキーワードになってくるとも指摘した。
すなわち、ここ数年で人工知能やロボットは人間にとって代わり、製品を作り出すことには価値が無くなり、製品を創り出すときには “クリエイティブ” さが要求されてくるようになると指摘した。
ここまでの森永氏の展開は、今後に期待を持たせてくれる説得力のある話だった。ところが…。
ここから話は急展開する。森永氏としてはGXの世界が到来するということを説明する具体例として話されたのだろうか?森永自身が家庭菜園をしている話へと移っていった。 ここからはおよそ経済学者の話ではなく、隣のおじさん的な話に変質してしまった。
いつ結論的な話に移るのかと期待しながら待っていたのだが、話は最後まで土づくりは楽しいとか、余った野菜は隣近所に分けているとかという話に終始した。結論的な話として「地域で経済を回す」ことが大切である的な話で講演を終えた。
なんだか羊頭狗肉的な講演の内容に、聴いていた私はなんだかスッキリしない思いで会場を後にしたのだった…。