経営学者であり法政大の教授である坂本光司氏か著わした「日本でいちばん大切にしたい会社」の一つに選出された日本理科学工業美唄工場の工場長が会社の理念、実状を語った。その理念の高さ、素晴らしい実状は傾聴に値する内容だった。
本日(9月13日)午後、かでる2・7(道立道民活動センター)において本年度6度目の「ほっかいどう学 かでる講座」が開催され参加した。
この日は「働く幸せ~人の役に立ってこそ幸せになれる」と題して、日本理科学工業の常務取締役であり、美唄工場長の西川一仁氏が講師を務めた。
※ 講座講師を務めた日本理科学工業美唄工場長の西川一氏です。
日本理科学工業とは、主として黒板に使用するチョークを生産する国内シェアトップの企業である。工場は川崎市と美唄市にあり、今回はその美唄工場長である西川氏がお話してくれたのである。
日本理科学工業が知的障がい者を積極的に雇用する会社であることは以前から聞いていた。
その実態は、美唄工場の場合、全社員34名中指導者6名を除き28名が知的障がい者だそうだ。その内訳は重度が8名、中度が20名だということだ。会社の主力は完全に知的障がい者であるということが言える。
※ 会社のHPより拝借したメディアに取り上げられたケースを紹介しています。
会社が知的障がい者を雇用し始めたのは二代目経営者(現会長)の大山泰弘氏だったそうだ。そのキッカケは地元の高等養護学校の教師からの強い要請と、試用期間に一緒に働いた社員たちの声だったという。
ここに日本理科学工業がなぜ「日本でいちばん大切にしたい会社」の一つに選ばれたのかをコンパクトにまとめたものがあるので転写する。
【選出理由】
1)障がい者雇用割合70%以上
2)離職率ゼロ
3)1960年から障がい者雇用に取り組む
4)自己資本比率72.1%
5)チョークのシェアーは国内ナンバーワン
6)ダストレスチョークの開発
50年以上にわたり、障がい者雇用に尽力をし、単に雇用するだけではなく、障がいがあっても働きやすい仕組みを構築し、働きがい・生きがいを提供している。
また事業としても、キットパスなどの新商品開発も進め、国内のチョークシェアの40%を占めるトップ企業となっている。
※ 会社は知的障がい者が働きやすいように様々な工夫を凝らします。写真はその一つ、赤色の容器には赤色の分銅を用意することで障がい者が分かり易く、間違いのないようにと工夫した用具の一例です。
おおよそ日本理科学工業の素晴らしさを理解していただけると思う。
講座の中で印象的な言葉があった。会長の大山氏が禅寺の導師から教わった話として、
「人間の究極の幸せとは、①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人から必要とされること の4つと言われました。働くことによって愛以外の3つの幸せは得られるのだ。私はその愛までも得られると思う」
と話されたという。
※ 知的障がい者の雇用を始めた大山泰弘会長です。
障がい者たちが「働く」ということ、それは「働く」ことで得られる幸せ、人の役に立つことは誰もが喜びで、それは人間の本能である。障がい者が活きやすい環境は、すべての人が活きやすい環境である、と西川氏は強調した。
障がい者に寄り添いながら会社を発展させていこうとする会社のリーダーたちの心情が読み取れるようである。
日本理科学工業が素晴らしいのは、そうした障がい者を雇用し続けながらも今日まで58年間会社が成長し続け、国内トップ企業の座を守っているという事実である。厳しい競争社会の中にあって今日まで成長し続けてきたことは、障がい者の方々がかけがえのない会社の戦力となっていることの何よりの証なのではないだろうか?
最後に西川氏は「ぜひ美唄工場の見学に来てほしい」と受講者に呼びかけた。機会があれば是非とも訪れてみたい会社である。