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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 163 あゝ声なき友

2016-06-14 20:49:46 | 映画観賞・感想

 あの渥美清が原作の映画化を熱望し、自らプロダクションを起ち上げ制作した映画である。その内容は彼の持ち味であるコメディではなく、戦争の風化を静かに告発するシリアスな映画である。

               

 6月13日(月)は、「めだかの学校」の「映画の中の北海道~昭和編」の観賞会だった。
今回は、渥美清主演の「あゝ声なき友」が取り上げられた。
 映画は、有馬頼義著「遺書配達人」を読んだ渥美清が映画化を熱望し、自ら会社を起ち上げ、戦後27年経った1972年に公開されたものである。映画には、松竹・渥美清プロダクション提携作品とクレジットが記されている。

 映画のあらすじは、ウィキペディア出ていたものを拝借すると、
「終戦後、病気入院していたため、部隊で一人生き残った西山民次は、戦友12人の遺書を抱き日本へ帰国した。家族全員原爆で死亡し、身寄りの無くなった西山は、なんとか食い繋ぎながら、12通の遺書を配達するべく旅に出る。そして、行く先々で西山が見たものは、生々しい戦争の傷跡だった。戦争で狂わせられた各人各様の人生とさまざまな心模様を、社会派の巨匠今井正が描き出している。」
となっている。

          

 映画では主人公の西山(渥美清)が遺族に遺書を届ける様子が描かれるが、そこには遺された人たちのさまざまな戦後が描かれている。そこには戦争がもたらした悲劇、戦争によって狂わされた人生がさまざまに描かれている。
・精神が崩壊した奥さん
・A級戦犯として捕まっていた元大臣
・芸者
・死刑になった青年…

 12人全てを描いたわけではないが、一つ一つのエピソードが「もし戦争がなければ…」そうした悲劇は起こるはずがなかった。と静かに訴えている映画だった。
 映画は西山が訪ねる戦友の遺族に会い遺書を渡すという性質上、オムニバスの形式を取らざるを得なく、ストーリーとしての盛り上がりには欠けるが、最後に戦死したと思われていた戦友・百瀬(北村和夫)が現れる。彼は大西がやっていることを罵り、「忘れてしまえ、その方がずっと楽だ……遺書なんか焼いてしまえ!」と怒鳴りつけ、テーブルに突っ伏す。その百瀬こそが、戦争を忘れられずに苦しんでいる姿がそこにあったような気がしてならない。

               

 戦争というものが、一人ひとりの人生をどれほど無残にも破壊するものであるかを、改めて教えられた思いである。
 「戦争を知らない子どもたち」第一世代である私たちは幸いにもこれまで戦争を体験せずに生きてくることができた。
 きな臭い匂いも漂い始めたと云われる昨今だが、人間の叡智を集めて戦争という愚かな行為だけはなんとしても回避し、平和な時代が続いてほしいものである。