田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

舞台 イシノマキにいた時間

2012-12-08 13:25:01 | ステージ & エンターテイメント
 幸運なんてどこに転んでいるのか分からない。昨夕観劇した「イシノマキにいた時間」はそれほど期待していたわけではなかったが、私が今年見たり、体験したりした中で最高のパフォーマンスに出合った思いである。それほど私の魂を揺さぶられ、感動したのだった。 

          

 とにかく脚本がいい。構成がいい。キャストがいい。
 舞台はまずサプライズゲストの登場から始まる。彼らの舞台を観て感動したという音楽家・吉俣良さん(NHK大河ドラマ「篤姫」「江〜姫たちの戦国〜」の音楽を担当)が彼らの舞台に音楽を付けた方が良いと積極的に協力してくれて札幌の舞台にも駆けつけてくれたという。舞台はまず吉俣さんのキーボードでの演奏から始まった。感動の伏線である。

 舞台は石巻の復興支援ボランティアのスタッフ事務所という設定である。そこに集う3人のボランティアの様子が描かれ、知らず知らずのうちに「ボランティアって何?」ということを観客に問いかけるような内容である。
 まず、脚本を担当したのが主演も兼ねる福島カツシゲさん(ヒロキの役)である。彼がお笑いユニットの出身ということもあるのだろうか、いたるところに笑いが配されているのだ。ヒロキの何気ない仕草、何気ないセリフに何度笑わされたことか。とうとう私は声に出して笑ってしまう場面もあった。
 そうした日常の中でヒロキの同僚であるヤス(石倉良信さん)とボランティアの考え方について衝突してしまう。その際も、ヤスはけっこうシリアスに迫るのだが、ヒロキはそれほど深刻には捉えていないようなひょうひょうとした感じが舞台におかしな緊張感を生まなかったのが良かった。
 もう一人、ヒトシ(田口智也さん)という巨漢の特異なキャラクターが登場するが、彼の存在も舞台に絶妙の癒し感を与えていた。彼は二人に絡む場面もあるが、狂言回しといった役柄となって構成に深みを与えていたように思う。

          
     ※ 写真は向かって左から福島カツシゲさん、石倉良信さん、田口智也さん、吉俣良さんの順です。

 震災の復興支援ボランティアという過酷で、深刻な現場を明るいタッチで描きながらも「復興支援って何?」、「ボランティアって何?」という根源的な問を見ている者に考えさせる内容となっていた。
 私は舞台の進行に笑いながらも、何時の間には瞼にうっすら涙が浮かんでいるのに気付いた。シリアスな話題なのに笑いを忘れない舞台に素直に感動した。
 舞台の最後は再び吉俣良さんが登場して、彼の作曲による「添歩み(そゆみ)」というしっとりとした曲がイシノマキのボランティアの笑顔の写真をバックに演奏された。

 私はたまたま見た道新の「イベントカレンダー」でこの舞台のことを知った。この舞台がまだ行ったことのない「キューブガーデン」(中央区北2東3)で行われるということで「キューブガーデンってどんなところなのかな?」という興味もあって出かけたのだが、思わぬ僥倖に出会えた夜(12月7日)だった。

 キューブガーデンはビルの2階にある小さなライブスペースだった。2階席もあるようだったが椅子席ではせいぜい100席ちょっとではないだろうか? 昨夜は満員状態だった。(ウェブ上で調べたところ収容人員350人とあったが、それはスタンディングの場合だろう)

          
     ※ ストーリーが終わってから福島カツシゲさんはなぜか兄弟舟を歌い始めた。サービス精神旺盛な人である。

 札幌公演は残念ながら6日、7日の両日の公演で終了である。この後は12月25~30日まで東京・下北沢のGeki地下Libertyで6日間連続公演が予定されているそうである。
 東京の方、あるいは近くの方必見である。料金が1,000円と良心的なのもいい!