本年度のアカデミー賞の作品賞をはじめ五つの賞を獲得した「アーティスト」を観た。白黒&サイレント映画という1927年のハリウッドを舞台にしたものだったが、せつなくて、温かくて…。白黒だから、サイレントだから…、映画の違う魅力を観た思いだった。
この歳になって恥ずかしい話だが、自分の評価に自信を持てないことが多い。だから他者の評価を気にする。映画を観ようとする場合などそのことが顕著である。
映画「アーティスト」が本年度のアカデミー賞で作品賞、監督賞、衣装デザイン賞、作曲賞と五つもの賞を獲得したということで「ぜひ観なくちゃ!」と思ったのだ。
※ この映画の主演、ジョージ役のジャン・デュジャルダンです。
何時の時代にも新しいものに遭遇したとき、これまでのものに固執する者と、新しいものに果敢に挑む者がいる。
サイレント時代にスターとして君臨していた主人公ジョージ(ジャン・デュジャルダン)はトーキーの時代が来てもサイレント映画に固執する。しかし、その決断は彼の凋落を意味した。
一方、新人女優のペピー(ベレニス・ベジョ)はジョージの何気ないアドバイスをきっかけにトーキー映画のスターへと駆け上がっていく。
※ トーキー時代のスターへと駆け上がったペビー役のベレニス・ベジョです。(真ん中)
時代の波に乗り遅れたジョージは収入も途絶え荒んだ生活を送っている。一方、ペビーは彼女にアドバイスをしてくれたジョージの親切が忘れられない。そこにドラマがあり、ジョージはペビーの助けを得て再起する…。
※ 再起を果たし二人で共演しているシーンです。
まったくのサイレント。時おり字幕が挿入されるが、大半はスクリーンを追いかけながらストーリーを理解するしかないのだが…。
これが意外とその表情、その仕草からストーリーを把握することは難しくなかった。(もっとも、ストーリーが難解でなかったということもあるが…)ただ、何度か口元を大きく写し出し、重要なセリフを言う場面があったのだが、母国語の人たちには読唇術で読み取れたのだろうが、私には無理だった。
撮影技術も映像技術もどんどんと進化する時代にあって、白黒&サイレント映画とは時代を逆手に取ったという意味でアカデミー賞委員会も高く評価したのだろう。もちろん映画として完成度が高いことは言うまでもないことだが…。
また一つ、素晴らしい作品に巡り合えた想いだった…。