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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

プーチン大統領と日ロ関係 後編

2012-04-02 23:07:41 | 講演・講義・フォーラム等
 小寺欧州局長の講演が日ロ関係の総論とすれば、三氏によるパネルディスカッションはそれぞれの立場から各論的な分析、解説がなされた。 

 パネルディスカッションに登壇したパネリストは、中国社会科学院ロシア外交研究室主任の鄭羽氏、北海道大学スラブ研究センター教授の田畑伸一郎氏、公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)上席研究員の高田喜博氏の三氏が登壇し、コーディネーターは北海道新聞編集委員の本田良一氏が務めた。

          

 各氏の主な分析・解説を紹介することにします。
 鄭羽氏は「ロシアと中国」の関係について語った。
 中ロ関係は以前の「政熱経冷」の関係から、全面的に良好な関係を築くことができている。①中ロが米国と良好な関係にない今、両国間に安全外交協力関係が形成されている。②中ロ経済においても中国がロシアの一番の取引先となっている。③中国はロシア極東地域との間にパイプラインを敷設し、ロシアから大量のエネルギーを輸入している。
 中国人のロシア極東地域への進出についてロシアは「矛盾の心理」にあるのではないか。中国人に乗っ取られるのではないかという恐れと、今や極東地域において中国人が不可欠な存在になっているという矛盾した状況にあるといえる。

 田畑氏は、シンポジウムのテーマである「北東アジアにおける日ロ関係の展望」について語った。
 ロシア経済は一時の高成長期を経た後、一時低迷したが現在は回復期にある。高成長期を支えたのはロシアの石油・ガスといった資源産業であった。今後プーチンは資源だけに頼らない製造業の発展を目指すだろう。
 一方でロシアは北東アジア諸国の発展を視野に入れながら、極東地域に眠る石油・天然ガスの開発を進めるなど、今後北東アジアとの結び付きを強めてきている。
 そうした背景の中、日ロの経済関係も2000年代に入り非常に活発になってきている。
 今後もその動きは活発になっていくだろう。

 高田氏は、ロシア(極東)と北海道との経済的な交流について分析・解説した。
 北東アジアという大きな流れの中で極東ロシアの変化は急激である。極東ロシアが近い北海道経済にとってはチャンス到来といえる。 ただし、北海道は中小企業が主であるので、市場としては必ずしも大きくないが北海道から最も近いサハリン(樺太)を注視すべきである。
 サハリンを足掛かりにして、極東ロシア、そして西へという展望を持つべきである。
 その際、先行する他府県や韓国、中国の企業との競争に伍するためには行政をはじめとしたオール北海道体制で臨まなければならない。

 そしてコーディネーターの本田氏は改めて三氏に北方領土問題については問うた。
 この問題については三氏とも現実的な考えを示した。
 つまり、領土問題について相手を屈服させるような解決策はない、という考え方だ。膠着した現状の解決を求めるのではあれば引き分け論も成り立つと…。そして新しい二国間の関係を築くべきだと…。
 鄭氏も当初は「他国のこと。関心がない」などと述べたが、後からは「50対50」という考え方もあるとした。
 大約、各氏は以上のようなことを語った。

 シンポジウムを終えて、外交の難しさを痛感した。
 つまり、政治的問題と経済問題との兼ね合いである。
 現在、韓国や中国の企業は極東開発に積極的に進出していると言われるが、日本は若干及び腰の姿勢があるという。それは日本政府が「日本の法的な立場を崩さない」(小寺局長談)という基本姿勢があり、韓国や中国とは立場が違うという姿勢を見せる。両国間の重い課題(領土問題)の解決無しには経済的発展も多くは望めないということになる。

 小寺局長は「外交問題は国民のコンセンサスを色濃く反映するものである」と語った。
 果たして北方領土問題についての国民のコンセンサスはいかなるものなのだろうか?
 そのコンセンサスを得るために政府・外務省は真剣に取り組んでいるのだろうか? そこのところが私には見えてこないのだが…。