ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本経済新聞紙の「苦闘11年 マネー敗戦 エルピーダ」を拝読した話の続きです

2014年01月21日 | 日記
 2014年1月19日に発行された日本経済新聞紙朝刊の中面に掲載された「シリーズ検証 半導体興亡史」の第三回目の「苦闘11年 マネー敗戦 エルピーダ坂本社長の奔走」を拝読した話の続きです。

 第三回目は、2002年11月に、NEC(日本電気)と日立製作所、三菱電機の半導体のDRAM事業を合体させて再出発したエルピーダメモリ(東京都中央区)の栄枯盛衰の話でした。

 エルピーダメモリは1999年2月に、NECと日立製作所のDRAM事業を切り出して「NEC日立メモリ」として出発し、さらにその後に三菱電機のDRAM事業を加えた、日本のDRAM事業の専業企業です。

 DRAM(Dynamic random-access memory)は、情報の記憶をコンデンサーに電荷を蓄えることによるオン・オフによって「0」か「1」として行われ、電荷は時間と共に減少することから、一定時間毎に記憶保持のための再書き込み(リフレッシュ)を行う必要がある半導体記憶素子です。集積度が高く、価格も安いなどの特徴を持つために、コンピューターのメインメモリーはほとんどがDRAMになっています。

 1990年代初めまでは、DRAM事業で大成功を収めた日本の電機メーカーは、DRAMの集積度を高めるための微細化技術が進んだ結果、進化したDRAMを生産する新工場を建てる投資額が400億から500億円レベルから1000億円超レベルまでに跳ね上がり、事業投資費用をどう確保しながら、いつ設備更新するのかが重要な経営判断になりました。半導体事業では、経営手腕に優れた経営者であることがかなり重要な必要条件になりました。リスクを取りながら、しっかり事業収益をあげるという綱渡りができる手腕が必要になります。大手電機企業の役職の階段を、単純に昇った方々には、たぶんできないことです。

 1990年代後半からの日本のバブル経済崩壊などへの対応策に追われた大手電機メーカーは、半導体事業部を切り離して、DRAM事業ではエルピーダメモリを、システムLSI事業ではルネサスエレクトニクス(東京都千代田区)を創業させるなどの手法によって、それぞれ対応しました。エルピーダメモリとルネサスエレクトニクスは両社ともに、NEC、日立製作所、三菱電機の当該事業部を合併させ、独立させた専業企業です(富士通やパナソニックなどは、自社の半導体事業の再建では独自の道を選びました)。

 2002年2月に、低迷するエルピーダメモリの社長に三顧の礼で迎えられた坂本幸雄さんは、社長に就任すると、米国インテル(Intel)傘下のインテルキャピタルに事業投資を依頼し、1億ドルの出資を引き出すなどの事業投資資金の確保に追われます。



 2008年9月のリーマンショック後に、DRAM製品の市場価格が急落した際には、台湾・日本のDRAM連合による事業強化のシナリオを描き、台湾政府からの公的資金注入を提案します。国際的なDRAM事業の整備シナリオを描き、国際的に事業投資資金を呼び込む手腕は、国際的な経営者だった坂本さんの真骨頂です。

 記事によると、米国の調査会社のICインサイツの分析によると、半導体製造企業の2013年の設備投資見通しでは、米国インテル社と韓国サムソン電子がそれぞれ130億米ドルと120億米ドルだったことは、昨日お伝えしました。第三位の台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が同90億米ドルです。

 エルピーダメモリを傘下に収めた米国マイクロンテクノロジーは同22億米ドルです。1米ドルを100円と換算すると、マイクロンテクノロジーは2013年1年間に2200億円と、エリピーダメモリと比べて、あまり変わらない程度です。エリピーダメモリは、2006年度から2011年度まで毎年2000億円から5000万円弱の売上高を持っていました。厳しいのは、最終損益額が0円を上下している結果です。最悪時の2009年度は1500億円超の赤字でした。これでは企業は持ちません。
 
 最新技術を反映させる設備投資を続けるには、毎年、相当額の設備投資額が不可欠です。しかし、エルピーダメモリが2012年2月に会社更生法の適用を申請する直前の1年間で「DRAM価格が1/3に下落し、歴史的な円高も続いた」と坂本さんは状況変化の変化の厳しさを語ります。この結果として、同社は2011年10~12月期まで5四半期連続で営業赤字となり、事業資金が底を突いた会社更生法の適用に踏み切ります。「従業員をリストラせず、日本にDRAMの開発と生産現場を残すためには、マイクロンテクノロジーから資金援助を受け、その傘下に入るしかなかった」と説明します。

 半導体事業を展開する企業が、市場変化などに機敏に対応するために、事業資金を臨機応変に投入し、事業収益を上げるという綱渡りが可能なのかどうか実はよく分かりません。

 あの米国インテル社も収益を落としています。半導体事業は、パソコンやスマートフォンなどに不可欠な半導体素子を供給する重要なものです。日本の大手電機メーカーがどうして半導体事業を凋落させたのかという原因を、経営学などによって学術的に分析し解明していただきたいものです。