ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

万城目学さんの新作単行本「とっぴんぱらりの風太郎」を読み終えました

2014年01月12日 | 
 小説家の万城目学さんが書いた、新刊の単行本「とっぴんぱらりの風太郎」を読み終えました。この単行本は、文芸春秋が2013年9月23日に発行した最新作です。

 小説「とっぴんぱらりの風太郎」の主人公は“ニート忍者”の風太郎です。



 主人公の「風太郎」は“ふうたろう”と読むのではなく、“ぷうたろう”と読ませます。伊賀上野を治める藤堂藩が戦争孤児などを集めて、柘植屋敷という忍者養成所で育成した忍者の一人です。その相棒は、当時の“天川”(あまかわ)と呼ばれたマカオ(現・中国の特別行政区)育ちの“南蛮帰り”忍者の黒弓です。二人とも、腕前は中途半端な“ニート忍者”です。

 この小説の舞台は、1614年11月の大阪冬の陣の前の年です。1600年に関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康が、1603年に江戸に幕府をひらいた後の過渡期です。戦に敗れた豊臣家は、豊臣秀頼を主君とした65万石の大大名として大阪城で、ある程度の勢力を維持しています。徳川家康は、安定した政権をつくるために、1614年11月の大阪冬の陣と、1615年5月の大阪夏の陣を仕掛けて、豊臣家を滅ぼします。

 万城目学さんの芸風の呪術・魔法らしき話が横糸の話です。これに対して、戦国時代からの織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が主人公だった時代の戦では、主戦闘者の武士以外にも、戦禍に巻き込まれて家や田を焼かれて、殺された庶民も多数います。この小説の横糸は、戦争孤児などの被害者が主人公グループを占めていることです。

 Webサイトの「とっぴんぱらりの風太郎」特別サイトに掲載された登場人物たちです。



 結局、戦争は戦争孤児という悲劇をつくり出すというテーマが何回も出てきます。叙情的に、かなり読ませる部分です。

 現在の日本では、直接的には戦争孤児を産み出していません。しかし、海外の紛争地では、相変わらず戦争孤児を産み出し、それが悲劇を起こしています。

 一見ファンタジー風で、実は人の死と孤児という人間の悲劇の物語である点が、これまでの小説とは違う点です。そして、たぶん関西人である万城目学さんの関西好き、近畿好きがよく描かれています。

 総ページ746ページの長い小説ですが、半分を過ぎると、読むのが止められなくなります。ただし、初出の週刊文春で読み続けるのは、しんどかった気がします。単行本でないと、読み通せない感じがします。