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猫の偶然

2015-04-14 | フリー Poem
黒猫が居ついたのは 偶然だった
偶然という言葉は しばらく
呪文のように 私の心に住みついていた
偶然は 神様の化身かもしれなかったし
池に放たれた 金魚の自由かもしれなかった

黒猫は 待っていた
私の足音 走りすぎる車の音
雨の音 遠雷 舞い降りる寸前の
高い空の鳥の羽ばたき 虹のかかる音さえ 

猫の耳は 宇宙につながっていて

黒猫の真似をして 目をとじてアンテナを張る
金色の陽に光る蜘蛛の巣みたいな
アンテナを
するとどうだろう
黒猫の気まぐれのような偶然が
宝物をひらいて見せてくれる

君たちがいったい何に出会っていたのか
カップの中の半分のコーヒーも
途中で止まった洗濯機も
遅れ気味な電車も
混み合う店先に並んで待ちながら
私たちが手にしているのは
君たちの愛する
自由の気配であると気がついた

猫たちは自由の掟を持っていて
私たちの不自由さを笑っている
本当の不自由さは
何も気づかないでいることだよ、と
教えられる
黒猫の日暮れ時は まだまだ続き
膝のうえに乗りながら
次なる自由の気配を教えてあげると言う
気配は偶然の使いであって
偶然は神様の使い
そして神様は

黒猫は偶然の気配に抱かれると
ぐっすり寝息を立てる
横で人間も休むといい



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