学校教育を考える

混迷する教育現場で,
日々奮闘していらっしゃる
真面目な先生方への
応援の意味を込めて書いています。

むかしの先生のむかしの話

2005-10-24 | 教育
私の祖父は,
戦前から戦後にかけて小学校で教えた。
最後は校長であったが,
私が物心ついたときには,
すでに退職していた。

その祖父の若いころの大昔の話。

あるとき,家の玄関のほうから,
「たのもう」と声がする。

出ていってみると,
そこには,白髪のちょんまげを結った老人が立っていた。
もとは武士であったのであろう。
どことなく気品が感じられる。

若き日の祖父はとっさに,
「そこは端近。まずはこれへ」
と古式ゆかしく招き入れた。

その老人は,
祖父の応対に大層気をよくした。

聞くと,その老人は家々をまわり,
頼まれた言葉を揮毫して
糊口を凌いでいるという。

早速,紙と筆を取り出して,
「さて何と書きましょう」とその老人は問うた。

若き日の祖父は,しばらく考えた末,
紙の真ん中を指差し,
「そこに点を打て」と言った。

それを聞くや否や,
老人は目を大きく見開き,
「参りました」と言った。

その老人のいわく,
これまでいろいろな言葉を書いてきたが,
紙の真ん中に,ただひとつの点を打つことができるほどには,
修練を積んでいないと言うのである。

祖父は,ただなんとなく
そう言っただけなのだが,
大層その老人に感心され,
何か別の言葉はないか,
ぜひ書いて差し上げたいと言う。

そこで,祖父は,
「それなら,○○○○は男でござると書け」と言った。
(○○○○は祖父の名前)

その老人,
呵呵大笑し,
「これもまた初めてじゃ」と言いつつ,
気分よく書をしたため,
「今日はよい日じゃ」と言って,
帰っていった。

ただそれだけの話である。


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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
面白かったので再び書込致します (HIRAKAWA)
2005-10-24 20:44:33
何もない白紙の真ん中に「、」を打つ。意図せずの言葉かもしれませんが、なかなかに鋭いです。

その鋭いお方のお孫である先生に質問です。

自らの生徒の就業する姿をイメージして学問を教える事はありますか?

この子はこういう仕事が向いてるだろうな、的な勝手なイメージでも良いのですが・・・

失礼致します。
返信する
Unknown (madographos)
2005-10-24 21:00:54
>HIRAKAWA様。コメントありがとうございます。生徒の就業する姿はイメージしませんね。
返信する
すごみがありますね (shooting_stars)
2005-10-24 23:54:31
「そに点を打て」というのもすごいですが、

「○○は男でござる」という言葉がすぐ出てくるところもすごいと思いました。





幼いとき、よく「かわいいね」って言われたが「僕は男だぞ」って内心いつも穏やかではなかった。



でも今では「僕は男でござる」と思うことが少なくなったなあ、なんでかなあ。あれだけ固執していたのに。男を主張しない態度のほうが生きやすいと心得ているからじゃないのか、とか考えてしまいました。また、男らしい生き方を要求された場合、言い訳しやすいというのもありますね(私)。それとどうして幼いときに、あれほど執着したのか、とはじめてそんなことに気を向ける

ことになって、個人的にとても興味深い記事でした。感謝。
返信する
Unknown (madographos)
2005-10-25 00:08:36
>shooting_stars様。コメントありがとうございます。古い昔の話ですから,今とは,人の生き様が違っていたのでしょう。なんとなく,心に残っていた話なので書いてみました。
返信する

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