報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

風の吹くままに

2013-08-26 21:53:11 | 日記
 ようやく大石寺参詣への目処が付きそうな感じである。思えば埼玉県から東京都内というのも、意外と面倒であることに気づくのが遅かった。皮肉にも、勧誡からまもなく3ヶ月経とうとしているが、その間1度も所属寺院にすら参詣はしていない。顕正会本部会館には、何度もニアミスしてるのは事実だ。だから、早いところ顕正会には宗門復帰をして頂きたいのだ。そうすれば、堂々と昔のように本部会館に参詣できる。
 もっとも、宗門復帰してチャンチャンというよりは、諸天の圧力により解散する確率の方が高いような気がするけどな。

 添書登山の手続きの方法は、基本的にどこの寺院も同じのようだ。ただ、それぞれのローカルルールは存在するみたいだね。無論その寺院の規模など、状況によってそういうのがあるのは当然だと思う。大したことじゃないと思うのだが、前のブログではこれを書いたくらいで目くじら立てるのがいた。いちいち疲れないか?詳細を書くつもりは無いよ。知りたきゃお寺へ来いって感じだ。
 そう、その方法を知るために末寺に行かなければならない。勧誡時に紹介者氏から少し教えてもらった気がするのだが、忘却の彼方である。どうもすいません。

 閑話休題。
 先日、多摩準急先生より電話を頂戴した。何でもここ最近、体調を崩し気味とのこと。アラフォーになる氏だが、食欲は若かりし頃と大して変わらぬ状態かつ仕事柄ほとんど運動しない為に体を壊しやすい状態にあるらしい。氏の信心の強さなど私以上なのだが、台湾仏教会を離れたと思ったら、今度は浄土真宗に傾倒されておられる。
「日蓮正宗がいいですよ」
 とお話しして、リーフレットなど資料を渡しているのだが、暖簾に腕押しだ。やはり、“あっつぁブログ”でのやり取りで、相当なイメージダウンになったらしい。
「あのブログはもう、休止状態ですから」
 とお話ししているのだが、全く取り合ってもらえない。
 あっつぁ氏の良からぬ噂を聞く機会もあり、その辺も含めてまたお話ししなければならないな。イメージが悪いままだと、私も後味が悪いからね。
 
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伏線回収機構 2

2013-08-26 00:20:18 | 日記
 “ボカロマスター”より、更に続き

[18:00.のぞみヶ丘8丁目 コーポ・アルカディア 敷島孝夫]

 結局、初音ミクの起動は遅くなるようで、私は先に帰らされた。
 私の新たな住まいとなる場所は、研究所から徒歩15分くらいの同じ町内にある2階建てアパートの1階だった。築浅な上に、家賃もそれまで住んでいた京浜東北線沿線と比べれば格段に安い。間取りはベタな独り暮らしの法則らしく、1Kだ。しかしエアコン、小型冷蔵庫、洗濯機付きでバスとトイレはセパレートというお得感バリバリである。あとは電動アシスト付きチャリでも買えば、研究所まで5分で着けそうだな。
 単身なので、荷物は大して無い。角部屋まで確保できて、明らかに作者より幸運に恵まれている私だが、部屋のドアの前に何か落ちていた。
「鍵?」
 それは鍵だった。しかし、部屋のドアの鍵ではない。それならちゃんと持ってるし、明らかに古めかしい。トランプのクラブの形をした頭に、先端はギザギザを付けただけの古い鍵だ。長さは10センチくらい。赤色に輝いて、それだけなら新品っぽいが、形が恐ろしく古い。何の鍵だか分からないし、もしかしたらご近所さんのものなのかもしれないので、預かっておこう。(寄宿舎形式の)社員寮や、そこそこ規模のあるマンションだったら管理人がいて届けることができるのになぁ……。

 その後はすっかり鍵のことなど、忘れてしまっていた。これが後に文字通り、大きな“鍵”になるなんて、全く予想だにできやしなかったんだ。当然だろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 それから2年後の東京都内某所……。
「それじゃ、最後の鍵は俺のアパートの部屋に!?」
「敷島さん!赤色の鍵は“暴食”です。無論、人間が暴食になるんじゃなくて……」
 平賀の言葉を赤月が続けた。
「あくまでウィリーが開発したコンピューターウィルスの一種で、感染したアンドロイドのバッテリーの持ちを著しく悪化させる……と、錯覚させて、常に充電や新しいオイルを貪り続ける。そうして、過度に負荷の掛かったバッテリーは……爆発しますね」
「でも、他の鍵よりはインパクト薄そうだな」
「敷島さん。急いで、戻りましょう。家探しなんてしたくないので、あくまでも住人である敷島さんの自主性を尊重します」
「そりゃどうも」
 赤月の真剣な言葉とは裏腹に、敷島は何故かだらけた様子で応えた。
「新幹線代は出してくださいね。それと、俺と平賀先生の縄を解いて下さい」
「ええ、もちろんです。だけど、敷島さんだけですよ。太一君には悪いけど、リヨンまで出頭してもらいますから」
「何でだよ!?俺は南里先生やウィリーと違って、ICPOから指名手配食らってないだろうが!!」
 平賀は赤月を睨みつけた。赤月の手にはハンドガン。そして、スーツ姿の屈強な男達。
「今月に入ってから、太一君も重要参考人になったの。あの2人が死んで、もう真相を知っているのは太一君くらいしかいないもんね」
「何だそりゃ!?」
「四の五の言ってると、手荒な真似をすることになっちゃう。太一君とは大学からの付き合いだし、敷島さんも悪い人じゃないから、なるべく丁寧に扱いたいから」
 赤月は努めて冷静に言った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 何と、赤月奈津子の正体はICPO(国際刑事警察機構)の職員だった!……というボツネタ。
 赤月だけウィリーの妨害やテロ活動の直撃を受けておらず、独自に製作・研究しているロボットもいないという微妙な立場なことからそういう案が出たが、結局廃案になったもの。
 代わりにOKネタでは、【自主規制致します】。
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北与野駅夏祭り

2013-08-24 18:11:29 | 日記
 実は今、北与野駅南側ロータリーで、盆踊りの夏祭りが行われている。出店もあるようだが、ガソリン式の発電機は見られなかった。ガスボンベは見たが。
 浴衣姿の女性達も多く見られる。うむうむ。まだまだ夏は続くねぇ……。
 夏と言えば怪談だが、埼京線を走行するという103系の幽霊電車の話はどうなったのだろう?せっかくなので、冥界鉄道公社の車両として“新人魔王の奮闘記”に登場させた。あいにくとOKネタなので、ここで公開ができないのが残念だ。
 何でまた幽霊電車が比較的新しい路線の埼京線で走行しているのか、物凄く不思議である。飯能や秩父の方に行けば、幽霊バスも運転されているというし(塗装の特徴からして国際興業バス?)、幽霊な乗り物多いぞ、埼玉県。
 え?東武野田線?いやぁ……。幽霊になってもおかしくない電車が、未だに現役で運転されている路線ですから。
 公共交通機関に乗る際、いつもと違う古めかしいものが来た場合は要注意だ。筆者は責任を負いかねる。尚、信じるか信じないかはあなた次第!
 因みに今、私が1番怖いのは締め切りである。
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伏線回収機構

2013-08-24 15:19:03 | 日記
 “ボーカロイド・マスター”より、前回の続き

[13:10.南里ロボット研究所 敷島孝夫]

 不思議な美しい容姿のガイノイド、エミリーに誘われ、ようやく目的地に辿り着いた。研究所は白い外壁が目に付く、2階建ての建物だった。第1印象は、クリニックって感じだ。前に風邪引いて、近所の内科クリニックに行った時、こういった感じの建物だったような……。
「こちらです。敷島さん」
「ああ」
 正面玄関に向かうエミリー。しかし、この研究所にアプローチする道は他にあるらしく、舗装された道が別にあった。
 中に入ると、ソファなどが置かれたロビーがあった。壁際には、誰が弾くのかアップライトピアノが置いてある。
「いらっしゃーい。南里ロボット研究所へ」
 奥からは白髪の老人がやってきた。敷島よりも身長が高く、歳の割には足腰もしっかりしている。それでも白髪のせいで、80歳過ぎには見える。
「ドクター南里。敷島さんを・お連れしました」
「うむ。ご苦労。東京から遠路はるばるご苦労さん。わしは南里志郎じゃ。これからキミは、ここで歴史の証人となるじゃろう。光栄なことじゃぞ」
「あ、あの……」
「ん?どうした?チンケな研究所で脱力したか?」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
 敷島はエミリーを指差した。
「おお。これがキミの歴史の第1歩になるのかな?わしの人生最高の傑作、エミリーじゃ。何でもできるぞ」
「はあ……」
 得意気に語る老人。やはり本物なのか。
「大日本電機東京本社から参りました敷島孝夫です。よろしくお願いします」
「おお、そんな堅苦しい挨拶はいらん。この研究所には、わしとエミリーとキミしかおらんでな」
「ええっ」
「ここでのキミの表の顔は、研究所の事務員じゃ。裏の顔は、“歌うアンドロイド”に対するテスト要員じゃな。何しろこの研究は、オーバーテクノロジーと化してしまった部分も多々ある。色々と面倒なこともあるので、まずはキミがその要員に相応しいかテストしたい。……ああ、良い良い。そんな難しいことをするわけではない。キミに何か特別な知識や技術を求めるものでもない。肩肘張らず、わしの指示通りに動いてくれれば良い。疑問点があれば、可能な限り回答しよう」
「それで……その、“歌うアンドロイド”初音ミクとはどこに?」
「ああ、ちょっと待っててくれ。本当はキミの到着時刻と同時に、ここに到着する予定だったのじゃが……。少し遅れているようでな」
「ドクター南里。国道4号線・仙台バイパスが・渋滞していました。その影響と・思われます」
「なに、そうだったのか。恐らくあいつのことじゃから、渋滞に巻き込まれるルートをあえて取ったに違いない」
「七海は・ソフトウェアに・問題があると・思われます」
「改善の余地が多々あるのじゃが……。おっ、そうじゃ。長旅で疲れておるじゃろう。初音ミクが到着するまで、休んでいなさい。エミリー、敷島君にお茶を入れてあげなさい」
「イエス。ドクター南里」

[13:30.南里ロボット研究所 敷島孝夫]

 エミリーが入れてくれた紅茶を飲んでいると、やっと日が差してきた。どうやら雨がやんだようだ。それと同時に、外に車が着いたのが分かった。
「どうやら着いたようじゃの」
「えっ?」
 南里所長とエミリーが外に出て行く。私も後から続いた。
「おーっ、遅かったじゃないか!」
「先生、すいません!北環状とバイパスで渋滞にハマりまして……」
 白いワンボックスから降りて来たのは、私より数㎝身長が低く、少しぽっちゃりした感じの男だった。私よりは年上だろう。丸い淵の眼鏡を掛けている。
「ったく!『最短ルート』って言っただろうが!渋滞の無い道路って意味だよ!」
「ごめんなさい……」
 男は助手席から降りて来た女性に怒鳴りつけた。何と、メイド服を着ていた。な、何なんだ?
「ああ、敷島君。紹介しよう。この男は、わしに師事している者で東北工科大学教授やっておる平賀太一君じゃ。隣は彼の作品で、メイドロボットの七海じゃ」
 すると、平賀教授は……って、この若さで教授!?どう見ても、30代前半ってところだが……。
「するとあなたが、大日本電機から来られた方ですか?」
「あ、はい。敷島孝夫と申します」
 私は思わず、営業先の感覚で名刺を出してしまった。
「これはどうも。自分、平賀太一と申します」
 平賀教授も名刺を出してくれた。肩書きには、確かに東北工科大学電子工学科教授なる文字が並んでいる。他には、日本アンドロイド研究開発財団会員とか……。こんな財団法人、初めて聞いたなぁ……。
「ここにいるのはメイドロボットの七海です」
「こりゃまた精巧な……」
「時折、文字変換ミスや予想変換ミスなどをやらかすので、まだまだ改良の余地があります」
「分かっておるのなら、早く改善せい」
「太一様。初音ミクは、中に入れてよろしいのですか?」
「おう。丁寧に運べよ」
 七海もまた力持ちであった。明らかに自分より大きな段ボール箱を、両手で運んでいる。普通、台車で運ばねー?
「あ、そうだ。先生。初音ミクなんですが、起動実験が間に合わなかったので、そのまま財団から連れて来た形です」
「なに?そんなに時間が無かったのかね?」
「そもそもあの時、初音ミクをどの研究所が引き受けるかで、相当もめたでしょう?あれのせいですよ」
 平賀が小声で言った。
「ちっ。こっちはそれどころではないと言うのに……」
 何だか、いきなり波乱万丈な予感。それより、
「所長。あの段ボールの中身、見ていいですか?」
 と、頼んでみた。
「平賀君」
 南里所長は平賀先生に振る。すると平賀教授は申し訳無さそうな顔をした。
「すいません、敷島さん。実はここに運ぶ為に、多少分解してきたんです。それを組み立て直してからでないと……」
「その状態でもいいですよ」
「……スプラッターな状態ですよ?」
「はあ?」
「一応、ボーカロイドもエミリーや七海と同じく、人間そっくりな形状をしています」
「そうなんですか」
「はっきり言って今、バラバラ殺人状態ですが……」
「……すいません。やっぱりやめておきます」
 私はホラーが苦手だ。
「そういうわけじゃから、せっかく来てくれて何じゃが、初音ミクを起動するまで待っていてほしい」
「分かりました」
「適当に昼食でも取って、待っててくれ」
「敷島さん。この坂を下って、右に行くと公園があります。その公園を越えた先にコンビニがありますから」
「ありがとうございます」
「それじゃ平賀君、早速始めるぞ」
「はい」
 2人の研究者達は、中に入って行った。私は昼食を買いに、コンビニへ……。
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作品の最初を読み返してみる。

2013-08-24 02:22:03 | 日記
 “ボーカロイド・マスター”より、『南里志郎とゆかいな仲間たち』編を一人称でやってみる実験

[10:00.東北新幹線“やまびこ”131号10号車 敷島孝夫]

 私を乗せた列車は順調に北に向かって走行している。ついに飛ばされてしまった。若い身空で地方の、それも関連会社どころか、業務提携先の名も無き小さな研究所に出向とは……。
 東京で見た桜は♪これが最後ねと♪……って、冗談じゃねー!!
『いいか?これは左遷じゃない。これとて、立派な会社の業務だと思って頑張ってくれ』
 と、古市課長は言ってたけども……。ノサップ岬支店に飛ばされた長谷蟹リーダーよりは、マシなのかもしれないけれど……。
『“歌うアンドロイド”開発プロジェクトに伴う注意事項について』
 そもそも課長が言うには、オーバーテクノロジーと化したある技術を、いかに世間に受け入れられるものにするかのプロジェクトとのことだ。私を指名したのは、出向先の研究所の責任者だということだが……。

[12:00.仙台市地下鉄南北線・泉中央駅 敷島孝夫]

 東北地方最大の都市、仙台市。この町を南北に貫く地下鉄に乗り換え、北の郊外へと向かう。東日本大震災の爪痕など、市街地はもちろんのこと、地下鉄沿線では見られない。
 資料によると、北の終点駅から更にバスに乗り換えるようだ。うへー、どこまで行かされるんだよーって感じだ。泉区といったら高台のニュータウンといったイメージしか無く、そんな所に研究所が?と思う。少なくとも、震災の津波被害は全く無かった所ではあるだろう。
 バカでかいキャリーバックを引きながらの移動はしんどい。新幹線から地下鉄に乗り換えるのも一苦労だ。で、泉中央駅も……。ホームは地下にあるくせに、改札は地上にありやがる。まあ、東京メトロにもこういう形態の駅はあったけれども……。エスカレーターが無かったら、本当にしんどい。
 確かこの駅で、研究所から迎えが来ているとのことだった。『研究所唯一のガイノイド(女性型アンドロイド)と合流し、研究所へ……』と、計画書には書いてある。が、
「えーと……」
 改札を出ると、同じような待ち人が何人もいる。その中に、薄いピンク色のボブカットに濃紺のワンピースを着た女性が無表情で立っていた。資料にあった特徴と、ほぼ一致している。
「すいません。南里ロボット研究所の方ですか?」
「イエス。大日本電機の・ミスター敷島ですね?」
 うわ、いかにもベタなロボットの喋り方だなぁ……。
「……敷島孝夫さん。認証しました」
「えーと、じゃあキミが“歌うアンドロイド”の初音ミク……?」
「ノー。違います。私は・ドクター南里の・忠実な・マルチタイプ・ガイノイド・エミリーです。これより・研究所へと・ご案内致します」
 そう言ってエミリーと名乗る女性型アンドロイドは、駅からバスプールへと向かったのだった。
「よ、よろしく」
 急いで後を付いて行く私。

[12:30.路線バス車内~研究所下 敷島孝夫]

 駅前からは色々な行き先のバスが出ている。エミリーはその中に止まっていた『のぞみヶ丘ニュータウン循環』という行き先表示のしてあるバスに乗り込んだ。昼間に駅からニュータウンに向かう人はそんなにおらず、車内は閑散としていて私達以外に7~8人ほどの乗客がいるだけであった。
 バスに乗る時、思わずSuicaを当てそうになったが(さっきの地下鉄でもやりかけた)、仙台市交通局その他のバス会社は非対応である。
「交通費は・支給されます」
 というエミリーは、バス共通カードを通していた。
 バスは駅前を出て郊外へ向かうと、ついにぐんぐん坂を登り始めた。周囲には公園とか、真新しい住宅や商店が見え始めている。エミリーの話では、昭和の高度経済成長から開発された地域と、平成バブルから開発された地域の2つに別れているという。
 研究所は前者の地域の外れに存在し、バスの折返し場もそこにあるとのこと。循環路線なのに折返しというのも不思議な話だが。
 と!突然、バスの窓を雨粒が叩きつけた。まだ肌寒いというのに、早くもゲリラ豪雨か?しまったな。傘を持ってきてないんだった。
 すると、エミリーはスリットの深いロングスカートの裾を捲り上げると、左太ももをパカッと開けて、
「折畳傘です。お使い下さい」
 と、私に渡した。……って今、どっから出した?見た目きれいなおみ足で、とても中に配線やら基板やらが詰っている感じはしないのだが……。

〔「ご乗車ありがとうございましたー。終点です」〕
 バスは砂利敷きの広い空き地に入ると、ポツンとあるバス停のポールの前で止まった。一応、それだけでなく、屋根も付いてベンチも置いてはいるのだが……。駅から、だいたい30~40分くらいは乗ったか。
「大人2人・お願いします」
「はい」
 ここで降りるのは私達だけのようだ。運賃を払おうとすると、エミリーがカードで2人分払ってしまった。雨足は意外と強い。私はエミリーから渡された傘を差したが、
「エミリー、キミは?」
「私は・結構です。防水加工が・施されて・います。こちらです」
 バス停のすぐ先には、更に上に登る階段があり、入口には『南里ロボット研究所 此の上↑』という看板もあった。
 このバス折返し場からも麓の景色はよく見え、さぞかし夜景はきれいだろうと思うのだが、肝心の目的地はもっと上かい!山奥のお寺もかくやだな……。
「お荷物・お持ちします」
「えっ?」
 エミリーは私のキャリーバックを持つと、片手でヒョイと持ち上げ、軽々と階段を登り始めた。さっきの傘といい、この力といい、やっぱり彼女は……。
 こりゃ本当に、とんでもない所に来たっぽいぞー!
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