[3月4日 16:00.宮城県岩沼市仙台空港付近 敷島孝夫、アリス・フォレスト、マリオ、ルイージ]
(ここでは敷島による一人称です)
「ドクター!発見シマシタ!」
マリオの声がこだました。
「OK!すぐに回収して!」
「ラジャー!」
「マジかよ!?」
絶対無理だろう。私は最初から諦めていた。
ドクター・ウィリーが開発した無差別テロロボット、バージョン・シリーズ。
日本国内に潜伏していたウィリーが国外逃亡する際に廃棄していったバージョン2.0。
20機のうち、4機が何らかの理由で暴走し、仙台市内でテロ活動を行った。
私の家族もそれに巻き込まれ、両親と兄弟を亡くしている。
あと1週間で発生した東日本大震災でも、都内にいてほとんど被災しなかった私は悪運が強いのか。
マリオが発見し、ルイージが回収作業に当たる空港付近の荒地。時折、航空機の離発着の轟音が耳に響く。
暴走した4機は出動した自衛隊によって破壊されたとされている。
が、回収されたのはそのうち3機だけ。1機は行方不明になった。
アリスが手を尽くして、その行方不明になった1機の居場所を突き止めた。
しかし、ここは東日本大震災による大津波で大きな被害が出た場所だ。
人間ですら未だに行方不明者がいる中、震災前から行方不明になっていたロボットが見つかるのかと思っていた。
確かに、パーツ全てを回収することはできなかった。
ルイージが引き出したパーツは、アリスが期待したものではなかった。
「胴体と右手部分、あと、右足か……」
「頭部を探して!そこに人口知能とメモリーがあるはずだから!」
「イエス!」
「ラジャー!」
2人のロボット兄弟は周辺を捜索し、始めた。
しかし、これ……。ちょっと用途を変えるだけで、行方不明者捜索できるんじゃないか?
「津波でダメかもしれんよ?」
私はタブレットでマリオとルイージを監視しているアリスに言った。
「バージョン・シリーズは2.0の頃から、完全防水仕様だからね」
「しかし、津波の衝撃と……しかも、津波って海水だからね。いくら完全防水でも、無理なんじゃないかなぁ……」
私は首を傾げた。
もっとも、私はバージョン・シリーズの仕様を全ては知らない。知っているのは、ここにいる若き女性科学者のみ。
「そんなことないよ。絶対に見つけるからね」
自信満々にそう言っていたので、多分大丈夫なのだろう。
マリオとルイージは地中から、色々なものを発見した。
被災地ということもあって、瓦礫関係の物が多かった。
「パーツを発見シマシタ!」
「本当か!?」
茶色く錆び付いた先ほどの物とは違って、今度は少し白っぽい。
先ほどは見つけられなかった左手部分と左足、それに……肋骨かな?
「肋骨……???」
「ヘッドを探して!必ずあるはずだって!」
「イエッサー!」
「骨盤、発見シマシタ!」
「骨盤……???」
私は嫌な予感がした。
「頭部ヲ発見シマシタ」
「やっぱり……」
それは人間の頭蓋骨。行方不明者、1人発見である。
「すぐに警察に連絡しておく」
私はケータイを取り出した。
で、結局見つけられなかった。失意のうちに、私達は車に乗って仙台東部道路を走行した。
この高速道路も、築堤の上にある構造のおかげで堰の役目を果たし、大津波から避難した付近住民の命を救った道路でもある。
もっとも、築堤区間では避難民を津波から救った一方で、橋梁区間では走行中の車両を更なる大きな揺れが襲って、ケガ人を出している。
高速道路ではトンネルよりも、橋梁の方が地震には要注意ということか。
「もう少しだったのに……!」
助手席に座るアリスは、何度も舌打ちして悔しそうにしていた。結局、回収した個体のパーツも警察に押収された。
んでもって翌日には、嗅ぎ付けた地元のマスコミが取材に来たほどである。
行方不明者捜索に当たらせるのか、それとも原発関係の用途に使う予定があるのかとインタビューしてきたが、それに対してアリスは、
「今はまだ実験段階であり、そういったレベルには達していない。行方不明者の発見も、たまたま実験中での出来事だったことによるもの。しかし研究成果の積み重ねによっては、いずれそういった用途への変更も考えている」
と、答えた。
変更と答えたことに、私は少し苦笑した。
バージョン・シリーズが無差別テロ用として開発されたことを何よりも知っている当事者の1人だからこそ、自然に出た単語だろう。
真相究明は、まだ先になるのか。
(ここでは敷島による一人称です)
「ドクター!発見シマシタ!」
マリオの声がこだました。
「OK!すぐに回収して!」
「ラジャー!」
「マジかよ!?」
絶対無理だろう。私は最初から諦めていた。
ドクター・ウィリーが開発した無差別テロロボット、バージョン・シリーズ。
日本国内に潜伏していたウィリーが国外逃亡する際に廃棄していったバージョン2.0。
20機のうち、4機が何らかの理由で暴走し、仙台市内でテロ活動を行った。
私の家族もそれに巻き込まれ、両親と兄弟を亡くしている。
あと1週間で発生した東日本大震災でも、都内にいてほとんど被災しなかった私は悪運が強いのか。
マリオが発見し、ルイージが回収作業に当たる空港付近の荒地。時折、航空機の離発着の轟音が耳に響く。
暴走した4機は出動した自衛隊によって破壊されたとされている。
が、回収されたのはそのうち3機だけ。1機は行方不明になった。
アリスが手を尽くして、その行方不明になった1機の居場所を突き止めた。
しかし、ここは東日本大震災による大津波で大きな被害が出た場所だ。
人間ですら未だに行方不明者がいる中、震災前から行方不明になっていたロボットが見つかるのかと思っていた。
確かに、パーツ全てを回収することはできなかった。
ルイージが引き出したパーツは、アリスが期待したものではなかった。
「胴体と右手部分、あと、右足か……」
「頭部を探して!そこに人口知能とメモリーがあるはずだから!」
「イエス!」
「ラジャー!」
2人のロボット兄弟は周辺を捜索し、始めた。
しかし、これ……。ちょっと用途を変えるだけで、行方不明者捜索できるんじゃないか?
「津波でダメかもしれんよ?」
私はタブレットでマリオとルイージを監視しているアリスに言った。
「バージョン・シリーズは2.0の頃から、完全防水仕様だからね」
「しかし、津波の衝撃と……しかも、津波って海水だからね。いくら完全防水でも、無理なんじゃないかなぁ……」
私は首を傾げた。
もっとも、私はバージョン・シリーズの仕様を全ては知らない。知っているのは、ここにいる若き女性科学者のみ。
「そんなことないよ。絶対に見つけるからね」
自信満々にそう言っていたので、多分大丈夫なのだろう。
マリオとルイージは地中から、色々なものを発見した。
被災地ということもあって、瓦礫関係の物が多かった。
「パーツを発見シマシタ!」
「本当か!?」
茶色く錆び付いた先ほどの物とは違って、今度は少し白っぽい。
先ほどは見つけられなかった左手部分と左足、それに……肋骨かな?
「肋骨……???」
「ヘッドを探して!必ずあるはずだって!」
「イエッサー!」
「骨盤、発見シマシタ!」
「骨盤……???」
私は嫌な予感がした。
「頭部ヲ発見シマシタ」
「やっぱり……」
それは人間の頭蓋骨。行方不明者、1人発見である。
「すぐに警察に連絡しておく」
私はケータイを取り出した。
で、結局見つけられなかった。失意のうちに、私達は車に乗って仙台東部道路を走行した。
この高速道路も、築堤の上にある構造のおかげで堰の役目を果たし、大津波から避難した付近住民の命を救った道路でもある。
もっとも、築堤区間では避難民を津波から救った一方で、橋梁区間では走行中の車両を更なる大きな揺れが襲って、ケガ人を出している。
高速道路ではトンネルよりも、橋梁の方が地震には要注意ということか。
「もう少しだったのに……!」
助手席に座るアリスは、何度も舌打ちして悔しそうにしていた。結局、回収した個体のパーツも警察に押収された。
んでもって翌日には、嗅ぎ付けた地元のマスコミが取材に来たほどである。
行方不明者捜索に当たらせるのか、それとも原発関係の用途に使う予定があるのかとインタビューしてきたが、それに対してアリスは、
「今はまだ実験段階であり、そういったレベルには達していない。行方不明者の発見も、たまたま実験中での出来事だったことによるもの。しかし研究成果の積み重ねによっては、いずれそういった用途への変更も考えている」
と、答えた。
変更と答えたことに、私は少し苦笑した。
バージョン・シリーズが無差別テロ用として開発されたことを何よりも知っている当事者の1人だからこそ、自然に出た単語だろう。
真相究明は、まだ先になるのか。
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