報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「大石寺 御登山せずに 先に下山」

2022-08-26 20:31:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月18日14:40.天候:晴 静岡県富士宮市上条 大石寺・第2バスターミナル→富士急静岡バス大石寺線車内]

 

 大石寺の第2バスターミナルでバスを待っていると、新富士駅行きの特急バスがやってきた。
 この便は、平日の御開扉であっても運転される便である。
 今日は臨時ダイヤで、この前にも運転されたようである。
 その理由を、勇太は今知った。

 勇太:「あ、そうか。今日は中等部か高等部の講習会があったんだ。それでか」

 多くは前の便に乗って行ったようだが、この便でも、マリアのような制服姿の中高生達が乗り込んでいる。

 勇太:「なーるほどねぇ……。ローブさえ脱げば、マリアのその恰好も違和感は無いわけだ」
 マリア:「どうせ乗り込んだら脱ぐよ」
 勇太:「はは……」

 通常の路線バスは中扉から乗って、前扉から降りる整理券方式である。
 しかし、この路線においては、前扉から乗り、運賃前払い方式である。
 尚、下山便においては富士駅と新富士駅では運賃が違う為、どっちで降りるかを先に運転手に申告する。

 勇太:「大人2人。新富士駅までお願いします」
 運転手:「大人2人ですね。どうぞ」

 ICカードが使える為、勇太は手持ちのSuicaを使用した。

 マリア:「いいの?ありがとう」
 勇太:「いやいや……」

 バスはワンステップバス。
 それに乗り込んで、中扉から後ろの2人席に腰かけた。
 西富士道路という高速道路並みの高規格道路を時速80キロで走行する為か、座席にシートベルトが付いている。

〔「14時40分発、富士駅経由、新富士駅行き、発車致します」〕

 バスは折り戸の前扉を閉めて発車した。
 高校生などは1人や2人で登山しているようだが、中学生はさすがに親と一緒のようである。
 マリアがローブを脱ぐと、その下に着ている制服ファッションが違和感無い。

 マリア:「勇太、それよりホテルは取れたの?」
 勇太:「うん、何とかね。新富士駅前の東横イン。そこのカード持ってて良かったよ」
 マリア:「そうか。大浴場は……無いよね」
 勇太:「あ、大浴場付きのホテルの方が良かった!?」
 マリア:「あ、いや、いいんだ!エレーナのホテルの風呂より広ければいい!」
 勇太:「東横インってどうだったかな……」

 多摩:「うーん……。安いチェーンホテルだからなぁ……」
 雲羽:「あっしのアパートの風呂より広かったです……」
 多摩:「マジ!?」

[同日15:50.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

 国道139号線のバイパスである西富士道路に入ると、運転手からシートベルト着用の放送が流れた。
 この為、なるべくこの路線のバスは座席定員の多いワンロマ車(外観や内装は一般の路線バスだが、2人席が多く、シートベルトが設置されているバスのこと)が充当されるのだが、その台数が少なかった頃は高速バスと同じ仕様の車種が充当されることもあった(トイレはあったが、使用できなかったもよう)。
 また、どうしてもシートベルト付き車両が充当できない場合は時速60キロ以下で走行するか、旧国道を走行することもある。
 尚、例えシートベルト付きの車両が充当できても、西富士道路を含むバイパス道路がメチャ混みであることが予想される場合、あえて旧国道を走行することもある(作者、実走済み)。
 今回のバイパス道路は、そんなに空いてはいなかったが、かといって大渋滞ってほどでもなかった。
 ただ、富士市内はある程度混雑しており、それで新富士駅到着が若干遅れた感はある。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、新富士駅前です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 終点で、運賃は前払いしているということもあり、2つのドアが開いた。
 近くのドアから、降りて良いということだ。
 バスは大石寺行きのバス停に停車した。
 そこから皆、一斉に降りる。
 もちろんここで降りたからには、ほぼ全ての客が新幹線に乗り換えるのである。

 勇太:「あっ……!」

 その時、勇太は制服姿の高校生の中に、自分の母校の者がいたことに気づいた。
 その高校生は男子であったが、制服がマリアのものとよく似ている。
 上は白いワイシャツ(女子はブラウス)、下は緑色のスラックス(女子はスカート)だった。
 マリアのは本物の制服ではないが、一応モチーフをそれにしていることもあり、よく似ている。

 マリア:「ん?」
 勇太:「あのコ、僕の母校のコだよ」
 マリア:「ほお?」
 勇太:「いやあ、東京中央学園に法華講員がいるなんて嬉しいなぁ……」

 勇太、マリアをチラッと見る。

 マリア:「私のは違うし、私は入らないから!」
 勇太:「それは残念」

 駅の中に入る。

 マリア:「帰りはどうするの?」
 勇太:「御開扉が終わった後、そのまま日帰りできるかなぁ……?」

 勇太は首を傾げた。

 マリア:「できるの?」
 勇太:「分からない。できたら、そうする?」
 マリア:「うん。モタモタしないで帰った方がいいと思う。日帰りできないなら、しょうがないけど」
 勇太:「分かったよ」
 マリア:「ねぇ、勇太。トイレ行ってきていい?」
 勇太:「いいよ。あそこのアスティの中のトイレを使うといい。チェックインは16時からだから、少し時間があるんだよね」
 マリア:「分かった。それじゃ、師匠のカードを渡しておくから」
 勇太:「うん」

 勇太はJR全線きっぷ売り場(JR東日本でいう、みどりの窓口)に行き、マリアは駅に直結しているアスティ新富士に向かった。
 そこは小さなショッピングモールのような所である。
 トイレもあるが、2階にある。
 奥にあるエレベーターで上がると良い(別に入口の前にある階段でも良いが、エレベーターだと降りてすぐ近くにある為)。

 勇太:「えーと……」

 勇太はまず記帳台の上にある時刻表で、実際に日帰りできるかどうか確認してみた。
 すると……。

 勇太:「あー、大糸線の終電には乗れるんだねぇ……。それじゃあ、そうしようか」

 JR東日本で言う指定席券売機と似たようなものが、ここにも設置されている。
 これなら窓口に並ばず、長距離キップが買えるというわけだ。

 勇太:(まだ時間あるな。そこのアスティで、コーヒーでもしばいてからホテルに行くか)

 勇太は特急では指定席を買い、あとは富士宮駅から白馬駅までの乗車券を2人分購入し、イリーナのプラチナカードを突っ込んだ。

 勇太:(ま、交通費と宿泊費は先生のカードでいいだろうけど、飲食代は自分達でないとダメだろうな……)

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