報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「二日酔い」

2017-09-27 10:14:00 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日10:00.天候:曇 東京都江東区森下 都道50号線(新大橋通り)沿いのコンビニ]

 店員:「ありがとうございましたー」

 バスのチケットを手にコンビニから出る稲生。

 稲生:「最近は便利になったもんだ」

 稲生はそこでイリーナに電話を掛けた。

 イリーナ:「あー、ユウタ君?ゴメンねー!ちょっと魔界でトラブルに巻き込まれちゃってー」
 稲生:「何かあったんですか?」
 イリーナ:「リシーちゃんが横田理事を『洞窟に埋めた』って言うからぁ、さすがにそのままにしとくわけにも行かないでしょ?捜索隊に参加してるわけよ」
 稲生:「リシーちゃんって、先生のファミリアのドラゴンでしたっけ?」
 イリーナ:「そうそう。リリィのデス・ヴァシィ・ルゥ・ラで飛ばされた先がリシーちゃんの背中の上で、そこから落ちて尻尾踏んづけちゃったみたいなの」
 稲生:「あららー……。だったら、何とかリシーツァを宥めて洞窟から掘り出すというのは?」
 イリーナ:「その洞窟の地下水脈に沈めたって言うんだけど、その水脈がまた流れが速くってねぇ……」

 はっきり言って、フツーに死んでいるレベルである。

 イリーナ:「まあとにかく、リシーちゃんの御主人様の私が知らんぷりできないから、取りあえず死体が見つかるまでいなきゃいけないことになったの」
 稲生:「そうなんですか」
 イリーナ:「だからまあ、私を待つことは無いから。先に帰ってていいよ」
 稲生:「分かりました」
 イリーナ:「そっちはどうなの?」
 稲生:「マリアさんが二日酔いでダウンしてます」
 イリーナ:「またか……。ほんとにあのコはぁ〜……!」
 稲生:「明日、マリアさんと出歩いて来ますよ」
 イリーナ:「うん、分かった。私が渡したカードあるでしょ?それ使っていいから」
 稲生:「はい」
 イリーナ:「ああ、どこに出歩いてもいいけど、日本国内から出ちゃダメよ」
 稲生:「はい、それはもう……」
 イリーナ:「サハリン(樺太)に行って『元々は日本の領土だ!』とかはダメよ」
 稲生:「分かってますよ」
 イリーナ:「北方四島に行って、『ここも日本の領土だ!』とかもダメよ。あそこはダンテ一門の……おっとっと!」
 稲生:「えっ、何ですか?……竹島や尖閣諸島に行って、『日本の領土だ!』というのは?」
 イリーナ:「1人で東アジア魔道団とケンカする度胸があったら、やっていいよ」
 稲生:「日本海に船を出して、『東海(トンヘ)じゃねぇ!日本海だ!』というのは?」
 イリーナ:「それならOK!」
 稲生:「……そんな遠くまで行きませんよ」
 イリーナ:「うん。アタシの予知でも、あなた達が関東地方から出ないことは分かってるから」
 稲生:「その通りです」
 イリーナ:「とにかく、なるべく早く帰るけど、別に私を待つ必要は無いから」
 稲生:「分かりました。それでは失礼します」

 稲生は電話を切った。

[同日11:00.天候:曇 同地区 ワンスターホテル]

 エレーナ:「どうした、稲生氏?まだマリアンナならダウンしてるよ」
 稲生:「どうせ今日1日は無理だろう」
 エレーナ:「私も夜勤明けだし、そろそろ寝かせてもらうよ」
 稲生:「ねぇ、エレーナ」
 エレーナ:「なに?」
 稲生:「北方四島って、ダンテ一門が何か関わっているのかい?」
 エレーナ:「まあ、この門流は魔道師のコミュニティで1番デカい所だからね。色々と政治力はあったりするわけさ。でもよく知ってるね?」
 稲生:「う、うん。ちょっとね……」
 エレーナ:「うちの門内のロシア人達が何か企んでるみたいだけどねぇ……」
 稲生:「エレーナは知らないのかい?」
 エレーナ:「私はウクライナだって。ウクライナ人と日本人には警戒して教えてくれないよ」
 稲生:「そうか……。イギリス人のポーリン先生も?」
 エレーナ:「先生は知ってるみたいだけど、やっぱり私には教えてくれないんだ」
 稲生:「元弟子のキャサリンさんなら知ってるかな?」
 エレーナ:「知ってるとは思うけど、あまりベラベラ喋れることじゃないみたいだからね。ところで、あなた達の先生はまだ戻って来ないの?」
 稲生:「先生の使い魔が横田理事を滅したみたいで、その後始末に追われてるみたい」
 エレーナ:「雌ドラゴンにまでセクハラをしてるようじゃ、変態度極まれりって感じだね」
 稲生:「人間に変身していたのかなぁ……?ほら、ドラゴンって魔法も使うって話でしょ?」
 エレーナ:「そうだね。あ、なるほど。たまたま人間に変化していた時に、横田理事にセクハラされたか。それなら納得」
 稲生:「ま、そのことは先生に任せておこう」
 エレーナ:「その方がいいよ。じゃ、私はこれで。稲生氏の部屋はまだ使うと思って、タオル交換だけにしてあるよ」
 稲生:「ああ。ありがとう」

 エレーナは先に地下1階へ行くエレベーターに乗り込んだ。
 その後で、1階に戻ってきたエレベーターに乗り込む。
 今、地下1階のボタンを押してもランプは点灯しない。
 ボタンの横には『関係者専用 STAFF ONLY』という表示がされている。

 ピンポーン♪
〔5階でございます〕

 エレベーターを降りた稲生。
 自分の部屋に向かう前に、隣のマリアの部屋に行ってみることにした。
 一応、ドアノブには『起こさないでください』の札が掛かっている。

 稲生:「マリアさん、ちょっといいですかー?」

 部屋をノックする。
 意外にもすぐマリアが出て来た。

 マリア:「なに……?」

 具合が悪そうに、しかしまだ酒が残っているのか、その匂いを漂わせながら出て来た。
 ホテル備え付けのワンピース型寝間着を着ている。

 稲生:「明日、例の合宿所に行ってみようと思います。これ、そのバスのキップ」
 マリア:「ああ……」
 稲生:「あとこれ、二日酔いの薬。まあ、コンビニで買ったヤツだから気休めかもしれませんけど……」
 マリア:「ありがとう……」
 稲生:「それじゃ、ゆっくり休んでください。さすがに明日は大丈夫ですよね?」
 マリア:「うん、多分……」
 稲生:「僕は隣の部屋にいますから」

 稲生はマリアの部屋をあとにすると、自分の部屋に戻った。

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