報恩坊の怪しい偽作家!

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“Gynoid Multitype Cindy” 「ガイノイドの仕事」

2016-03-19 20:51:53 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月11日13:30.天候:晴 DCJ山形工場 3号機のシンディ、敷島孝夫、平賀太一、1号機のシンディ、西山潔工場長]

 アリスの紹介で、サーバーを作っている工場の見学に来た敷島達。
 町中では用途変更されたバージョン達が、別の意味で暴走し、迷惑を掛けていることから、常に奴らにはマルチタイプが監視していると思わせるようにサーバーに細工できないかと考えたのである。
 そして、アリスの勤めるデイライト・コーポレーション・ジャパンが運営している山形工場において、それが可能かもしれないという話を聞き、やってきた次第。
 単なる見学者なのに、わざわざ工場長が出迎えるとは……。

 西山:「遠いところをわざわざお越しくださいました」
 敷島:「いえ、こちらこそ、却って気を使わせてしまって……」
 西山:「弊社の旧・埼玉研究所跡地に新しく建てる科学館に、敷島社長のロイドを提供してくださるということで、ありがとうございます」
 敷島:「い、いえ、とんでもない……」

 敷島の歯切れが悪いのは、ややもすればアルエットはDCJに正式に引き取られるところだったのを、敷島がゴネて果敢な交渉により、所有は敷島エージェンシーになった次第。
 それをDCJに随意契約で貸し出すという形に落ち着いた。

 西山:「平賀先生と言えば、若くしてロボット工学の権威に登り詰められたと伺っております」
 平賀:「いや、自分も大したことはないです。ただ単に好きなことに打ち込んでいたら、いつの間にかそう呼ばれるようになっただけです」
 敷島:「工場長、今回の御用件なんですが……」
 西山:「はい。伺っております。弊社が製造中の最新サーバーを、何やらカスタムしたいと……」
 敷島:「そうなんです。首都圏などに配備されたバージョン・シリーズ。こいつらが普通のサーバーからの指令に従わず、不良行為を続けています。廃棄処分にするのは簡単ですが、しかし『バカとロボットは使いよう』で、もう少し工夫をしてみたいわけですよ」
 エミリー:「敷島社長。『バカと・鋏は・使いよう』です」
 シンディ:「いや、社長分かってるから。そこはイジらずスルーしてあげて!」
 西山:「なるほど。しかし私共では、どのようにカスタマイズしたら良いかまでは……」
 敷島:「それなら自分に任せてください。ここは自分の出番だと思います」
 西山:「分かりました。では早速、ご案内致します」

 尚、総合受付の横にPepperがいたような気がするが、シンディらの前では完全に空気である。
 しかし手持ちのモニタには、『歓迎!シリーズMの皆様!』と、表示されていた。
 シリーズMとは何てことはない。
 マルチタイプのMを取ったシリーズ、つまりここにいる鋼鉄姉妹のことだ。
 ロボット達からは、そう呼ばれているらしい。
 なので、バージョン・シリーズは人間からの呼び名(鋼鉄姉妹達も人間に合わせてそう呼んでいる)であり、ロボット達からは『シリーズB』ということになる(バージョン・シリーズはVersionではなく、Barsionである)し、ボーカロイドは『シリーズV』となる。

[同日14:00.天候:晴 DCJ山形工場・技術開発室 上記メンバー]

 平賀:「うーむ……」
 敷島:「どうですか、先生?行けそうですか?」
 平賀:「何とかなると思います」
 敷島:「おおっ!」
 西山:「さすがですね」
 平賀:「問題はエミリーとシンディ、どちらをダミーとするかですけど……」
 シンディ:「姉さんの方がいいんじゃない?『鬼軍曹』だしw」
 エミリー:「シンディの・方が・『鬼軍曹』だ」
 敷島:「両方ダミーじゃダメですか?臨機応変でってことで……」
 平賀:「ちょっと、この容量では厳しいですね」
 西山:「も、申し訳ありません」
 敷島:「いやいや、工場長が謝ることはないです。まさかマルチタイプのダミーを搭載させて、バージョン・シリーズを一括制御しようだなんて思いもしなかったでしょうから」
 シンディ:「こんなこと言っちゃ何だけど、本来あいつらは群れで行動するからね。グループごとに制御しなきゃいけないわけよ。それを個体ごとに制御しようってのが甘い考えだったってわけね」
 エミリー:「シンディ、口が・過ぎるぞ」
 敷島:「いや、いいさ。実験的にそうしたまでで、その実験は失敗だったってわけだ。それで先生、いつになったら完成できそうですか?」
 平賀:「まずはこのサーバーを貸して頂いて、うちの研究室で実験を繰り返して……ですね」
 西山:「ライセンス契約などは……」
 敷島:「それなら心配無いです。アリスは『半分以上寄越せ』とか言ってますけど、それは無かったことにして、平賀先生の良心的な価格で大丈夫ですよ」

 つまり、既存のサーバーにマルチタイプのダミーを搭載したものを、再びDCJで売り出したいらしい。
 未だ世界各地で暴走を続けるバージョン・シリーズを、一気に止める働きがあるかもしれないのだ。

 西山:「それは助かります」
 敷島:「アリスのヤツ、ロボットやロイドを作る能力しか無く、サーバーまでは頭が回らないんですよ」
 西山:「なるほど」
 平賀:「それじゃ、ダミーのモデルはエミリーでいいですか?」
 敷島:「いいですよ」
 シンディ:「姉さんなら一喝で、奴らを止めることができるからね。これなら安心だわ」
 平賀:「それでは今後のことについて、もう少しお話をさせてください」
 西山:「すぐに応接室を御用意致しますので、少々お待ちください」

[同日14:30.同場所・エントランスロビー シンディ]

 シンディ:「何だかアタシも役立たずだねぇ……」
 Pepper:「シンディ様は・とてもキレイです」
 シンディ:「キレイなだけじゃ、役に立つとは限らないんだよ」
 エミリー:「シンディ、何をしてる?もう皆様・応接室に・入られたぞ?」
 シンディ:「はーい……」
 Pepper:「すみません。何を・言ってるのか・分かりません」
 エミリー:「後で・解説する
 Pepper:(;゜Д゜)

 エミリーの睨みにフリーズするPepperだった。

 エミリー:「もうすぐ・黙祷の・時間だ。私達も・一緒に・行うぞ」
 シンディ:「ああ、そうか。もうそんな時間だっけ」

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