報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔女達の舞踏会、前日譚」 2

2019-10-27 12:21:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月26日10:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 イリーナ:「それで、ダンテ先生のお迎えの用意は進んでいるのかしら?」
 稲生:「はい。既に会場は押さえました」
 イリーナ:「御苦労様」
 稲生:「しかし、気になる点が1つあります」
 イリーナ:「なに?」
 稲生:「11月下旬にローマ法王が来日することです。『法王来日前に魔女狩り』が行われる可能性も……」
 イリーナ:「公式には法王以下、魔女狩りは本来否定されているものなんだけど、それは『普通の人間を気に入らないからといって魔女狩りと称して私刑に処すことは禁止』という意味だからね。アタシら本物は別」
 稲生:「で、では……?」
 イリーナ:「勇太君達のところの宗派の人達は、教皇の来日を歓迎するのかしら?」
 稲生:「そりゃしないでしょう。謗法のトップなんですから」
 イリーナ:「それなら心配無さそうね」
 稲生:「少し前までは“慧妙”のアポ無し折伏隊が、他の宗教団体に突撃して行って色々とトラブル……もとい、折伏をしてたくらいで……。確か、その中にキリスト教会も入っていたかと」
 イリーナ:「上出来上出来」
 稲生:「あの、都合良くうちのお寺の人達は先生方の警備はしてくれませんよ?」
 イリーナ:「なーんだ」
 マリア:(横着しやがって、この……)
 稲生:「ローマ法王は広島や長崎に行くようですので、僕達は北の方に行こうかと」
 イリーナ:「それはいいアイディアね」
 稲生:「ルーシーには新幹線以外の電車も体験してもらいます」
 マリア:「ほお?……でも、アナスタシア組が文句言って来そうですね」
 イリーナ:「ナスっちも先生ベッタリのコだから、先生のいらっしゃる前では黙っているはずよ」
 稲生:「なるほど。しかし、凄いですね。『ダンテ先生を囲む会』に全員が参加するわけではないでしょうに、それでも電車1両分は貸切ですよ」
 イリーナ:「そういうものよ。ちゃんとファーストクラスを貸し切ってくれた?」
 稲生:「ええ。といってもグリーン車ですが」
 マリア:「十分でしょう」
 稲生:「それにしてもさすが大師匠様ですね。予算が結構あります」
 イリーナ:「磁力よ。ダンテ先生ほどの御方になれば、お金なんて土石流の如く押し寄せて来るのよ」
 マリア:「どんな例えですか。それにしても勇太のプランを見せてもらいましたが、今回も大師匠様は商業便で来られるんですね。大師匠様ほどの御方なら、世界中どこでもルゥ・ラで一っ飛びのはずですが?」
 イリーナ:「ダンテ先生の教えの1つに、『魔法とは必要不可欠の時に使うものである』というのがあるの」
 マリア:「今回はそのうちに入らないんですか?」
 イリーナ:「多分、マイルが溜まってるんじゃない?ファーストクラス、タダ同然で予約できたとか仰ってたから」
 稲生:「大魔王と御同輩の方なのに、急に人間臭いことを仰いますね」
 マリア:「ローマ法王もファーストクラスか?」
 稲生:「いや、専用機か何かで来るんじゃないんですかね?その辺は僕も分かりませんが……。もしも仮に日如上人猊下様が遠方に出られる際、飛行機をご利用になるとなった場合、ファーストクラスになると思いますよ。日蓮正宗に専用機なんてありませんから」

 専用車は存在します。
 セレブな御信徒さん、ロールスロイスの御供養早よ!

 マリア:「大師匠様に専用機は無いんですね」
 イリーナ:「だから必要無いって。専用機を使うってなるくらいなら、ルゥ・ラ使うから」
 マリア:「あ、なるほど」
 イリーナ:「商業便を使うのは溜まったマイルを解放するのと、そこまで急ぎじゃないからでしょう」

 と、その時、イリーナの水晶球が光った。

 イリーナ:「あ、着信あったわ。ダンテ先生から」
 稲生:「大師匠様からのお言葉が!?」
 イリーナ:「えーと……。『冥界カントリークラブなう』ですって」
 稲生:「水晶球でTwitter!?」

 水晶球には闇に包まれたゴルフコースを大魔王バァルと回るダンテが映っていた。
 キャディは背中にコウモリの翼が生えた魔族か何かであろう。

 イリーナ:「年に2回はバァルの爺さんと一緒にお茶飲みに行くからね。おかげでこの世界は悪魔に攻め込まれず、平和なのよ」
 稲生:「その割には台風が直撃して大変なことになりましたが?」
 イリーナ:「ちょっと待って……。あー、『制御盤壊れました。修理中です』って、バァルの爺さんが困ってるわ」
 稲生:「大魔王はFacebook!?」
 マリア:「『しばらく天災関係は無制御状態なんで、皆さん頑張ってください』って、何て無責任な爺さんだ」
 イリーナ:「ホントよねぇ。本来ならゴルフなんてやってる場合じゃないのに……」
 稲生:「あ、あの、接待先にゴルフ場とか入れた方が良かったですか?僕、ゴルフのことはさっぱり知らないもんで……」
 イリーナ:「別にいいわよ。これだって、バァルの爺さんとの接待ゴルフみたいなものだから」
 マリア:「大魔王の趣味がゴルフなんて、ブッ飛んでますね」
 イリーナ:「ホントよねぇ。どこで興味を持ったのやら……」

[同日12:00.天候:晴 マリアの屋敷西側1F・大食堂]

 イリーナ:「もう一度、街まで行くの?」
 稲生:「はい。『ダンテ先生を囲む会』のプランは概ね出来上がりましたが、今度は僕達の移動手段を確保しないと行けませんので」
 イリーナ:「なるほどね。分かったわ。私のカードを貸してあげるから、それも勇太君に任せるわ」
 稲生:「はい」

 因みに稲生の外出申請を許可したイリーナであったが、住み込みの見習弟子が外出するには脱走防止の為の目付け役を最低1人付けなくてはならないという掟がある。
 見習弟子の仕事の1つに師匠のお使いがあるが、これとて稲生にはマリアの使役人形が1つ付くくらいだ。
 今回はどうするのかというと……。
 マリアがうずうずして、チラッチラッとイリーナを見る。

 イリーナ:「それではダニエラを連れて行きなさい。護衛としても十分だから」( ̄▽ ̄)
 マリア:Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
 イリーナ:「……というのは冗談で、マリア、一緒について行ってあげなさい」
 マリア:「Yes,sir!」(^_^)/
 稲生:「行きはバスがあるからいいんですが、帰りはもうバスが無いので……」
 マリア:「大丈夫!私が迎えを用意しよう!」
 稲生:「た、助かります」

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