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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「実家で過ごす」

2025-04-03 20:59:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日18時00分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家1階ダイニング]

 

 食卓の各人の席に、大きなステーキ肉の載った皿が置かれる。
 ステーキソースはテーブルの上に置かれ、各人がセルフサービスでソースを掛けるのが愛原家流。
 但し、公一伯父さんだけは、塩胡椒だけでソースを掛けることはない。
 尚、公一伯父さんが持って来たのはヒレ肉である。

 愛原公一「今より若かった頃、アメリカに行った時は、よくステーキを食べたもんぢゃ。アメリカは、あんまり美味い料理が無くてな。しかし、ステーキならそんなに当たり外れが無い」

 しかも伯父さんは、アメリカでは必ずレアかミディアムレアで注文していたという。
 その理由は、この赤身肉。
 ウェルダンで焼いてしまうと硬くなってしまうので、日本人の顎で食べると、顎が疲れてしまうのだそうだ。
 伯父さんが自分用に持って来た霜降り肉なら軟らかいので、そんなことは無いだろうが。
 但し、欧米人からすれば脂が多くて違和感があるのだという。

 公一「ところがレストラン側は、日本人をナメているのか、1度で素直にレアで焼いて来た試しが無い。ワシがウェイターに何度もしつこく『レアで頼む』と言ってもぢゃ」

 そこで公一伯父さんは、料理が運ばれてくるとすぐにナイフで肉を真っ二つにする。
 すると、だいたいはレアどころか、ウェルダンで焼いてくるのだそうだ。
 その場合、伯父さんは注文した時のウェイターを呼びつけ、『ワシはレアで頼むと言ったはずだが?』と、クレームを入れる。
 ウェイターも、日本人からしつこく注文されていたので、スットボケるわけにもいかず、素直に謝るしかない。
 ウェイターは、『私は厨房にちゃんとレアで焼くように言いました』と言いつつ、すぐにその肉を下げ、改めて新しいステーキ肉を運んで来る。
 伯父さんはそのウェイターを待たせ、改めてナイフで肉を真っ二つに切るのだ。

 公一「その時のウェイターの固唾を飲んだ表情といったら、今では笑えるよ。で、そこでちゃんとレアで焼いて来てくれたなら、『おっ、これぢゃ!ワシはこれを食べたかったのぢゃ!』と、大げさに喜んでやる。すると、ウェイターもホッとするわけぢゃ。そして、ワシはそのウェイターに2ドルほどのチップを握らせるというわけぢゃ」
 学「さすがだねぇ……」
 公一「ま、さすがにアムトラックではそんなことできなかったがな」
 学「アムトラックか。斉藤さんはシベリア鉄道に乗ったし、伯父さんはアムトラックか……」
 公一「学は対抗してユーロスターにでも乗ってみるかね?それとも、中国のCHRか?」
 学「中国はカンベンしてよ」
 公一「はっはっは!」
 学「俺はどっちかって言うと、アムトラックみたいな夜行列車で旅がしてみたい。さすがに斉藤さんの7泊8日シベリア鉄道はやり過ぎだと思うけど」
 公一「ワシもロシア号に乗る度胸は無いのォ……。何せ国際列車というわけでもないから、車掌も駅員もロシア語しか話せん」
 学「今や日本じゃ、夜行バスがせいぜいか」
 公一「そうぢゃ。アメリカでは、グレイハウンドにも乗ったぞ」
 学「グレイハウンド」
 公一「デトロイトのバスターミナルに行くとな、1つだけ行き先の抜けた窓口がある。あれは何だとスタッフに聞くとな、『あれは本来、ラクーンシティ行きのキップを売っていた窓口の跡だ』なんて言われたぞ」
 学「ラクーンシティ行きなんてあったんだ!」
 公一「ラクーンシティには、アンブレラ専用鉄道しか通っておらず、アムトラックの列車なんて1本も無かったからな。町を出入りする公共交通機関は、グレイハウンドの長距離バスしか無かったのぢゃよ」

 
(1998年9月下旬に撮影された、ラクーンシティを通常通りに出発した最後のニューヨーク行きグレイハウンドバス。この日の夜に掛けて、大規模なバイオハザード事件が発生している)

 学「今でもまだラクーンシティの跡には行けないの?」
 公一「うむ。放射能汚染が広範囲に及んでいるからな。ただ、立ち入り禁止の手前まで行けるツアーはある」
 学「えっ!?」
 公一「バイオテロの恐ろしさを後世に伝えようという試みぢゃな。“青いアンブレラ”が主催しておる。日本と違って、アメリカでは“青いアンブレラ”は合法組織ぢゃて。日本でも、霧生市の惨状を後世に伝える何かができれば良いのぢゃが……」
 学「テラセイブなら非合法組織ってわけでもなさそうだから、ワンチャンありそうだね」
 公一「テラセイブか……。今の状態では、どこまでできるか分からんな」

[同日20時00分 天候:晴 愛原家1階リビング]

 リサには先に風呂に入ってもらい、私と公一伯父さんはリビングに移動した。
 そこで私は、重要は話を聞いた。

 公一「学はリサ・トレヴァーの事は聞いておるじゃろう?」
 学「オリジナルの?デイライトさんからの資料とかで一応ね」
 公一「すると、彼女の最期も知ってるな?」
 学「あれでしょ?アルバート・ウェスカーとの戦いに敗れて、洋館の自爆装置に巻き込まれて死んだんでしょ?」
 公一「公式にはな」
 学「え?」
 公一「証拠となるべき遺体が回収されておらん。あの数ヶ月後にはラクーンシティそのものが消し飛んだので、今はもう何も無い」
 学「それじゃ……」
 公一「ワシらの調査では、誰かがリサ・トレヴァーの肉片を回収したという噂が浮上してな」
 学「ええっ!?」
 公一「まだ噂レベルぢゃ。いくら日本のアンブレラが独自に研究を進めたとはいえ、強力なサンプルが無ければ、あんな化け物は再現できんよ」
 学「まあ、それもそうか……」

 Gウィルスに関しては、白井伝三郎が独自のツテを使って入手したとされている。
 そこに『鬼の血』を混ぜて、オリジナルの物を作ろうとしたらしい。
 不老不死となる薬を作ろうとしたのだろうが、Gウィルスも、上手く制御できればそれに越したことはない。
 但し、それは至難の業であり、それをどうにかする為に『鬼の血』を使おうとしたのではないかというのが、有識者の見解である。

 学「白井……斉藤早苗は?」
 公一「今のところ、おとなしくしておる。ぢゃが、油断はできん。お前が早く、『転生の儀』から抜け出す方法を見つけるのぢゃ」
 学「その為に明日、白井に『鬼の血』を提供したとされる人……鬼の所に行くわけさ」
 公一「気をつけて行けよ。もしかすると、スペインやルーマニアの片田舎のような状態になってるかもしれんぞ?」
 学「まさか、日本で……」
 公一「そのまさかが起きたのが、霧生市ぢゃろう?」
 学「い、いや、そりゃそうだけど……」

 何だか、恐ろしい話をされてしまった。
 善場係長からも銃の所持を許可されてしまったし、リサはリサで金棒を持って来ているくらいだし……。
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“私立探偵 愛原学” 「富谷からの仙台」 2

2025-04-03 15:49:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日14時30分 天候:晴 宮城県仙台市若林区大和町 ヤマト運輸仙台大和町営業所]

 コストコでの買い物と食事、それと給油を終えた後、私の運転で仙台に向かった。
 父親はコストコ内で酒の試飲をしてしまったからだ。
 試飲の量は微々たるものであったが、それをハシゴしてしまい、今はリアシートで寝ている。

 愛原母「試飲程度で寝込むほど飲むんじゃないの!!」

 と、ブチギレていたシーンは、作者によるとカットするという。
 国道4号線は週末の行楽日和ということもあってか、多少混雑していた。
 特に富谷はコストコあり、イオンありで、混雑の要素があるからだ。
 確かに、これなら鉄道の1本でも欲しいところかもしれないな。
 そしてようやく仙台市に入り、若林区内に入って、国道から市道へと移る。
 その沿道にヤマト運輸の営業所があるので、そこに立ち寄った。

 愛原学「じゃあ、俺だけ降りるから乗って待ってて」
 愛原母「しっかりクライアントさんに営業するのよ!」
 学「へーへー」

 私の事務所の最大顧客、デイライトさんに酒を送るのは、営業活動の一環だと母は思っているらしい。
 本当は成分分析に回すだけなのだが。
 来客用駐車場に車を止めると、リサも降りて来た。
 しょうがないのでハッチを開け、クーラーボックスの中に入れている酒を何本か運ぶのを手伝ってもらう。
 買ったのはデイライトさんに送る用や秋田への手土産だけでなく、家用もある。
 家用はそのまま持って帰れば良いだけの話なので、ここで車から降ろすようなことはしない。
 降ろしたのは、もう1つ。
 うちの事務所に送る用だ。
 これは元々予定外だったもので、うちの父がコストコで試飲しまくったものだから、1本くらい買っとかなきゃいけないという雰囲気になってしまったのだ。
 日本酒や焼酎だけでは飽きるだろうからと、ウィスキーを買っておいた。
 パールのヤツ、まだ高橋がいた時に、ウィスキーで晩酌していたのを見たことがあったからだ。

 スタッフ「こちらをクール宅急便でのご利用ですね?」
 学「はい、お願いします」

 もちろん酒瓶なので、『ワレモノ注意』で。
 送る先が2つなので、伝票は2枚書かないといけない。
 その間、梱包はリサがやってくれる。
 ヤマト運輸には酒瓶用の梱包材を取り扱っているので、それを購入して詰める。

 スタッフ「それでは、東京方面がお2つですね」
 学「はい」

 日本酒3本はデイライト宛て。
 ウィスキーボトル1本は、うちの事務所宛てだ。
 何か、私がいない間、パールのヤツ、テラセイブのメンバーを呼んで酒盛りしたりしているらしいな。
 まあ、それ自体は悪い事ではないんだが……。
 私は梱包資材と宅急便の運賃を支払った。

 学「それでは、宜しくお願いします」
 スタッフ「はい、お荷物、確かにお預かりします」

 私とリサは営業所の建物を後にした。

 学「何だい、父さんはまだ起きないのかい?」

 車に戻ると、また父は寝ていた。

 母「これはアレねぇ……。リサちゃんに起こしてもらわないといけないかもねぇ……」
 リサ「お任せください!」

 リサは指先からパチッと火花を散らした。
 さて、父さんは起きるのだろうか?
 私は車を発進させた。

 案の定、実家の駐車場で、団塊世代のジジィの絶叫が響き渡ったことは、言うまでもない。

[同日15時30分 天候:晴 仙台市若林区某所 愛原家]

 父にはしばらく、2階の夫婦の寝室で寝ていてもらうことにした。
 コストコで買い物した荷物は、私やリサで降ろし、家の中に入れる。

 母「ステーキ、楽しみにしててね」
 リサ「わたしも手伝います!」
 学「こいつの場合、殆ど焼かずに食べようとするから気をつけてよ?」
 リサ「血の滴るステーキ!」
 母「リサちゃん、愛原家の家訓に、『肉はミディアム以上で食べるように』っていうしきたりがあるのよ?」
 リサ「えーっ!」
 学「ウソばっかw」
 愛原公一「ウソではない」

 と、そこへ突然現れた公一伯父さん!

 学「公一伯父さん!?」
 母「お義兄さん!?」
 公一「ワシの祖父は生焼けの肉を食ってしまったことで、生死の境を彷徨ったのぢゃ。それ以来、愛原家の家訓に、『肉はよく焼いて食べるように』という文言が追加されたのぢゃ」
 学「それだと、ウェルダンとかになってしまうんじゃ?」
 公一「制定されてからしばらくの間はな。ぢゃが、ワシの代になってから、少し緩和して、『ミディアム以上で』に変えといたぞ。やはり肉の旨味は肉汁ぢゃて、それを殺す焼き方は如何なものかと思ってな。なぁに、ミディアムでも食あたりの心配は無い」
 リサ「もう少し緩和して、『レアでも可』にならない?」

 リサは伯父さんの手を取って、少し甘えた声で言った。

 公一「ワシの目の黒いうちは、そうはさせんよ。まあ、学の代になったら、その時は学に任すわい」
 リサ「せーんせ
 学「だから俺はまだ相続してないって」
 母「お義兄さん、夕食は?言ってくれたら、用意しましたのに……」
 公一「心配いらん。自分のメシくらい、自分で用意するわい」

 公一伯父さんは、背負っていたリュックから食材を取り出した。

 公一「ワシの分は、これで頼む」
 学「仙台牛の霜降り肉……」
 母「コストコで売っている肉より高い肉、どこで手に入れるんです?」
 公一「色々な人脈ぢゃ。何なら、知り合いの畜産農家に頼んで、もっと融通してもらうぞ?」
 母「それは助かりますけど、何か凄いですね……」

 本当に公一伯父さんは逃亡者なのだろうか。
 それとも、“青いアンブレラ”の資金が潤沢なんだろうか。
 私はリビングに移動すると、スマホで連絡を取った。
 1つはデイライトさんへのメール。
 成分分析用の酒を送った旨。
 もう1つは、パールへのLINE。
 コストコで珍しいウィスキーを手に入れたから、それを送るというもの。
 LINEの方がすぐに返信があって、パールからお礼のメッセージが届いた。

 公一「どれ、学や。定時連絡も終わったところで、夕飯まで少し話をしようか」
 学「分かった。アイスコーヒーでも淹れてくるよ」
 公一「おっ、これはスマンな」
コメント
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