[7月22日18時00分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家1階ダイニング]

食卓の各人の席に、大きなステーキ肉の載った皿が置かれる。
ステーキソースはテーブルの上に置かれ、各人がセルフサービスでソースを掛けるのが愛原家流。
但し、公一伯父さんだけは、塩胡椒だけでソースを掛けることはない。
尚、公一伯父さんが持って来たのはヒレ肉である。
愛原公一「今より若かった頃、アメリカに行った時は、よくステーキを食べたもんぢゃ。アメリカは、あんまり美味い料理が無くてな。しかし、ステーキならそんなに当たり外れが無い」
しかも伯父さんは、アメリカでは必ずレアかミディアムレアで注文していたという。
その理由は、この赤身肉。
ウェルダンで焼いてしまうと硬くなってしまうので、日本人の顎で食べると、顎が疲れてしまうのだそうだ。
伯父さんが自分用に持って来た霜降り肉なら軟らかいので、そんなことは無いだろうが。
但し、欧米人からすれば脂が多くて違和感があるのだという。
公一「ところがレストラン側は、日本人をナメているのか、1度で素直にレアで焼いて来た試しが無い。ワシがウェイターに何度もしつこく『レアで頼む』と言ってもぢゃ」
そこで公一伯父さんは、料理が運ばれてくるとすぐにナイフで肉を真っ二つにする。
すると、だいたいはレアどころか、ウェルダンで焼いてくるのだそうだ。
その場合、伯父さんは注文した時のウェイターを呼びつけ、『ワシはレアで頼むと言ったはずだが?』と、クレームを入れる。
ウェイターも、日本人からしつこく注文されていたので、スットボケるわけにもいかず、素直に謝るしかない。
ウェイターは、『私は厨房にちゃんとレアで焼くように言いました』と言いつつ、すぐにその肉を下げ、改めて新しいステーキ肉を運んで来る。
伯父さんはそのウェイターを待たせ、改めてナイフで肉を真っ二つに切るのだ。
公一「その時のウェイターの固唾を飲んだ表情といったら、今では笑えるよ。で、そこでちゃんとレアで焼いて来てくれたなら、『おっ、これぢゃ!ワシはこれを食べたかったのぢゃ!』と、大げさに喜んでやる。すると、ウェイターもホッとするわけぢゃ。そして、ワシはそのウェイターに2ドルほどのチップを握らせるというわけぢゃ」
学「さすがだねぇ……」
公一「ま、さすがにアムトラックではそんなことできなかったがな」
学「アムトラックか。斉藤さんはシベリア鉄道に乗ったし、伯父さんはアムトラックか……」
公一「学は対抗してユーロスターにでも乗ってみるかね?それとも、中国のCHRか?」
学「中国はカンベンしてよ」
公一「はっはっは!」
学「俺はどっちかって言うと、アムトラックみたいな夜行列車で旅がしてみたい。さすがに斉藤さんの7泊8日シベリア鉄道はやり過ぎだと思うけど」
公一「ワシもロシア号に乗る度胸は無いのォ……。何せ国際列車というわけでもないから、車掌も駅員もロシア語しか話せん」
学「今や日本じゃ、夜行バスがせいぜいか」
公一「そうぢゃ。アメリカでは、グレイハウンドにも乗ったぞ」
学「グレイハウンド」
公一「デトロイトのバスターミナルに行くとな、1つだけ行き先の抜けた窓口がある。あれは何だとスタッフに聞くとな、『あれは本来、ラクーンシティ行きのキップを売っていた窓口の跡だ』なんて言われたぞ」
学「ラクーンシティ行きなんてあったんだ!」
公一「ラクーンシティには、アンブレラ専用鉄道しか通っておらず、アムトラックの列車なんて1本も無かったからな。町を出入りする公共交通機関は、グレイハウンドの長距離バスしか無かったのぢゃよ」

(1998年9月下旬に撮影された、ラクーンシティを通常通りに出発した最後のニューヨーク行きグレイハウンドバス。この日の夜に掛けて、大規模なバイオハザード事件が発生している)
学「今でもまだラクーンシティの跡には行けないの?」
公一「うむ。放射能汚染が広範囲に及んでいるからな。ただ、立ち入り禁止の手前まで行けるツアーはある」
学「えっ!?」
公一「バイオテロの恐ろしさを後世に伝えようという試みぢゃな。“青いアンブレラ”が主催しておる。日本と違って、アメリカでは“青いアンブレラ”は合法組織ぢゃて。日本でも、霧生市の惨状を後世に伝える何かができれば良いのぢゃが……」
学「テラセイブなら非合法組織ってわけでもなさそうだから、ワンチャンありそうだね」
公一「テラセイブか……。今の状態では、どこまでできるか分からんな」
[同日20時00分 天候:晴 愛原家1階リビング]
リサには先に風呂に入ってもらい、私と公一伯父さんはリビングに移動した。
そこで私は、重要は話を聞いた。
公一「学はリサ・トレヴァーの事は聞いておるじゃろう?」
学「オリジナルの?デイライトさんからの資料とかで一応ね」
公一「すると、彼女の最期も知ってるな?」
学「あれでしょ?アルバート・ウェスカーとの戦いに敗れて、洋館の自爆装置に巻き込まれて死んだんでしょ?」
公一「公式にはな」
学「え?」
公一「証拠となるべき遺体が回収されておらん。あの数ヶ月後にはラクーンシティそのものが消し飛んだので、今はもう何も無い」
学「それじゃ……」
公一「ワシらの調査では、誰かがリサ・トレヴァーの肉片を回収したという噂が浮上してな」
学「ええっ!?」
公一「まだ噂レベルぢゃ。いくら日本のアンブレラが独自に研究を進めたとはいえ、強力なサンプルが無ければ、あんな化け物は再現できんよ」
学「まあ、それもそうか……」
Gウィルスに関しては、白井伝三郎が独自のツテを使って入手したとされている。
そこに『鬼の血』を混ぜて、オリジナルの物を作ろうとしたらしい。
不老不死となる薬を作ろうとしたのだろうが、Gウィルスも、上手く制御できればそれに越したことはない。
但し、それは至難の業であり、それをどうにかする為に『鬼の血』を使おうとしたのではないかというのが、有識者の見解である。
学「白井……斉藤早苗は?」
公一「今のところ、おとなしくしておる。ぢゃが、油断はできん。お前が早く、『転生の儀』から抜け出す方法を見つけるのぢゃ」
学「その為に明日、白井に『鬼の血』を提供したとされる人……鬼の所に行くわけさ」
公一「気をつけて行けよ。もしかすると、スペインやルーマニアの片田舎のような状態になってるかもしれんぞ?」
学「まさか、日本で……」
公一「そのまさかが起きたのが、霧生市ぢゃろう?」
学「い、いや、そりゃそうだけど……」
何だか、恐ろしい話をされてしまった。
善場係長からも銃の所持を許可されてしまったし、リサはリサで金棒を持って来ているくらいだし……。

食卓の各人の席に、大きなステーキ肉の載った皿が置かれる。
ステーキソースはテーブルの上に置かれ、各人がセルフサービスでソースを掛けるのが愛原家流。
但し、公一伯父さんだけは、塩胡椒だけでソースを掛けることはない。
尚、公一伯父さんが持って来たのはヒレ肉である。
愛原公一「今より若かった頃、アメリカに行った時は、よくステーキを食べたもんぢゃ。アメリカは、あんまり美味い料理が無くてな。しかし、ステーキならそんなに当たり外れが無い」
しかも伯父さんは、アメリカでは必ずレアかミディアムレアで注文していたという。
その理由は、この赤身肉。
ウェルダンで焼いてしまうと硬くなってしまうので、日本人の顎で食べると、顎が疲れてしまうのだそうだ。
伯父さんが自分用に持って来た霜降り肉なら軟らかいので、そんなことは無いだろうが。
但し、欧米人からすれば脂が多くて違和感があるのだという。
公一「ところがレストラン側は、日本人をナメているのか、1度で素直にレアで焼いて来た試しが無い。ワシがウェイターに何度もしつこく『レアで頼む』と言ってもぢゃ」
そこで公一伯父さんは、料理が運ばれてくるとすぐにナイフで肉を真っ二つにする。
すると、だいたいはレアどころか、ウェルダンで焼いてくるのだそうだ。
その場合、伯父さんは注文した時のウェイターを呼びつけ、『ワシはレアで頼むと言ったはずだが?』と、クレームを入れる。
ウェイターも、日本人からしつこく注文されていたので、スットボケるわけにもいかず、素直に謝るしかない。
ウェイターは、『私は厨房にちゃんとレアで焼くように言いました』と言いつつ、すぐにその肉を下げ、改めて新しいステーキ肉を運んで来る。
伯父さんはそのウェイターを待たせ、改めてナイフで肉を真っ二つに切るのだ。
公一「その時のウェイターの固唾を飲んだ表情といったら、今では笑えるよ。で、そこでちゃんとレアで焼いて来てくれたなら、『おっ、これぢゃ!ワシはこれを食べたかったのぢゃ!』と、大げさに喜んでやる。すると、ウェイターもホッとするわけぢゃ。そして、ワシはそのウェイターに2ドルほどのチップを握らせるというわけぢゃ」
学「さすがだねぇ……」
公一「ま、さすがにアムトラックではそんなことできなかったがな」
学「アムトラックか。斉藤さんはシベリア鉄道に乗ったし、伯父さんはアムトラックか……」
公一「学は対抗してユーロスターにでも乗ってみるかね?それとも、中国のCHRか?」
学「中国はカンベンしてよ」
公一「はっはっは!」
学「俺はどっちかって言うと、アムトラックみたいな夜行列車で旅がしてみたい。さすがに斉藤さんの7泊8日シベリア鉄道はやり過ぎだと思うけど」
公一「ワシもロシア号に乗る度胸は無いのォ……。何せ国際列車というわけでもないから、車掌も駅員もロシア語しか話せん」
学「今や日本じゃ、夜行バスがせいぜいか」
公一「そうぢゃ。アメリカでは、グレイハウンドにも乗ったぞ」
学「グレイハウンド」
公一「デトロイトのバスターミナルに行くとな、1つだけ行き先の抜けた窓口がある。あれは何だとスタッフに聞くとな、『あれは本来、ラクーンシティ行きのキップを売っていた窓口の跡だ』なんて言われたぞ」
学「ラクーンシティ行きなんてあったんだ!」
公一「ラクーンシティには、アンブレラ専用鉄道しか通っておらず、アムトラックの列車なんて1本も無かったからな。町を出入りする公共交通機関は、グレイハウンドの長距離バスしか無かったのぢゃよ」

(1998年9月下旬に撮影された、ラクーンシティを通常通りに出発した最後のニューヨーク行きグレイハウンドバス。この日の夜に掛けて、大規模なバイオハザード事件が発生している)
学「今でもまだラクーンシティの跡には行けないの?」
公一「うむ。放射能汚染が広範囲に及んでいるからな。ただ、立ち入り禁止の手前まで行けるツアーはある」
学「えっ!?」
公一「バイオテロの恐ろしさを後世に伝えようという試みぢゃな。“青いアンブレラ”が主催しておる。日本と違って、アメリカでは“青いアンブレラ”は合法組織ぢゃて。日本でも、霧生市の惨状を後世に伝える何かができれば良いのぢゃが……」
学「テラセイブなら非合法組織ってわけでもなさそうだから、ワンチャンありそうだね」
公一「テラセイブか……。今の状態では、どこまでできるか分からんな」
[同日20時00分 天候:晴 愛原家1階リビング]
リサには先に風呂に入ってもらい、私と公一伯父さんはリビングに移動した。
そこで私は、重要は話を聞いた。
公一「学はリサ・トレヴァーの事は聞いておるじゃろう?」
学「オリジナルの?デイライトさんからの資料とかで一応ね」
公一「すると、彼女の最期も知ってるな?」
学「あれでしょ?アルバート・ウェスカーとの戦いに敗れて、洋館の自爆装置に巻き込まれて死んだんでしょ?」
公一「公式にはな」
学「え?」
公一「証拠となるべき遺体が回収されておらん。あの数ヶ月後にはラクーンシティそのものが消し飛んだので、今はもう何も無い」
学「それじゃ……」
公一「ワシらの調査では、誰かがリサ・トレヴァーの肉片を回収したという噂が浮上してな」
学「ええっ!?」
公一「まだ噂レベルぢゃ。いくら日本のアンブレラが独自に研究を進めたとはいえ、強力なサンプルが無ければ、あんな化け物は再現できんよ」
学「まあ、それもそうか……」
Gウィルスに関しては、白井伝三郎が独自のツテを使って入手したとされている。
そこに『鬼の血』を混ぜて、オリジナルの物を作ろうとしたらしい。
不老不死となる薬を作ろうとしたのだろうが、Gウィルスも、上手く制御できればそれに越したことはない。
但し、それは至難の業であり、それをどうにかする為に『鬼の血』を使おうとしたのではないかというのが、有識者の見解である。
学「白井……斉藤早苗は?」
公一「今のところ、おとなしくしておる。ぢゃが、油断はできん。お前が早く、『転生の儀』から抜け出す方法を見つけるのぢゃ」
学「その為に明日、白井に『鬼の血』を提供したとされる人……鬼の所に行くわけさ」
公一「気をつけて行けよ。もしかすると、スペインやルーマニアの片田舎のような状態になってるかもしれんぞ?」
学「まさか、日本で……」
公一「そのまさかが起きたのが、霧生市ぢゃろう?」
学「い、いや、そりゃそうだけど……」
何だか、恐ろしい話をされてしまった。
善場係長からも銃の所持を許可されてしまったし、リサはリサで金棒を持って来ているくらいだし……。