[7月24日03時30分 天候:晴 秋田県北秋田郡鬼里村 太平山家・本家→太平山家・分家(民宿『太平屋』)]
地上に出た私達は、裏口に止められていたハイエースに乗り込んだ。
これは私達を手引きしてくれた太平山豊氏が運転手を務める乗合タクシーの車である。
すぐにエンジンを掛けて発車した。
だが!
鬼男I「うらぁぁぁっ!!」
鬼男J「待ちやがれーっ!!」
正門前で門番をしていた鬼の男達が、その任務を放棄してでも、私達を止めようとしてきた。
門番なだけに、手には金棒を持っている。
それを振りかざして、車に向かってきた。
愛原「しょうがないですよね!?」
私はサンルーフを開けて、そこから体を乗り出すと、鬼達に向かってハンドガンを放った。
だが、鬼の男達は金棒で銃弾を弾いてしまった。
愛原「あれ!?」
しょうがないので、ライフルを放つ。
だが、それも金棒で弾かれる。
愛原「あれれー?!」
豊「しまった!鬼之助と宗太でねーの!あいつら、青年団の中でも強力だべ!」
愛原「それなら、閃光手榴弾……無いし!」
リサ「わ、わたしが降りて電撃浴びせてくる!」
愛原「危険だ!捕まるぞ!」
リサ「うう……!せめてわたしも、ラムちゃんみたいに空飛べればいいのに……」
と、その時だった。
上空からサーチライトが照らされた。
同時にヘリコプターの音も。
愛原「あ、あれは……“青いアンブレラ”!?」
その乗降ドアを開けて、身を乗り出す者が1人。
明らかに高野君だった。
鬼男I「いでっ!」
高野君がボウガンを放ち、それが門番の1人に刺さる。
しかもその矢、一部が点滅して、ピッ♪ピッ♪と鳴ってる。
愛原「爆矢だ!」
ボンッ!
鬼男I「ぎゃっ!」
鬼男J「げっ!!」
高野君のモデルとなったエイダ・ウォンの得意武器の1つだ。
とにかく、これで道は開けた。
愛原「豊さん!早く車を!!」
豊「は、はい!」
豊氏は車を出した。
リサ「今ので死んだりはしてないよね?」
愛原「火薬は弱そうだったけど……」
豊「多分、あれでは死なねェと思います。かなり重傷だとは思いますが……」
本家から鬼達がわらわらと出て来て、車を追い掛けようとしているのだろうが、今度はヘリが機銃掃射してやがる。
全く!
ここは本当に日本なのか!?
愛原「物騒なヘリで来やがって……。っと、俺もか」
私は自分のハンドガン、ショットガン、ライフルを見て自嘲した。
リサ「これでマシンガンがあったら完璧だったね。それとも、ロケラン?」
愛原「そんなもの、許可出るわけ無いだろ!」
ライフルもショットガンも軍用の物だが、それ自体は狩猟用としても存在する。
表向きは、それの許可ということになっている。
リサ「どこまで逃げるの?」
豊「取りあえず、私の家まで逃げますっけ」
リサ「追って来ない?」
豊「門の前までは追って来るでしょう。ンですが、そっから先は入ェれません」
リサ「どうして?」
豊「そいな掟だからです」
リサ「まるで、鬼ごっこみたいだね」
豊「ン、そうかもしれねっス」
だからこそ、鬼達は必死で私達を捕まえようとする。
だが、私を除けば、逃げるのも鬼だ。
美樹「父ちゃん!早ぐ早ぐ!!」
ようやく民宿の前まで来た時、駐車場の入口に美樹が立っていて、手招きしていた。
豊「あいづ、家ん中さ入ェってろって言ったのに……」
しかし、豊氏はそれだけしか言わず、ハンドルを切って、車を駐車場の中に入れた。
すぐに美樹が引き戸式の門扉をガッシャーンと閉めた。
車は民宿の正面玄関の前に止まる。
豊「着きまスた!」
愛原「ありがとう。でも、本当に大丈夫なの?」
豊「太平山家の敷地内さ入ェっでいいのは、許された者だけですっけ。で、今は見での通り、門を閉めました。ごれは、『何人たりとも、敷地内への侵入ば禁ず』どいう意味になります」
それで本家に行った時も、門番達が仰々しく門扉を開けたのか。
それ自体が『いらっしゃいませ』の儀式だったか。
それは分家も同じ事らしい。
いつの間にか、ヘリコプターは去って行った。
高野君、どうしてここが分かったんだろう?
……あ、いや、私のスマホのGPSとか、リサのGPSで追えなくはないか。
私達に用があるというわけではないのか?
すると、私のスマホに着信があった。
見ると、相手はやはり高野君。
『御無事で何よりです』とのこと。
それだけで、どうしてここに来たのか、私達に用があるのかどうかまでは送って来なかった。
そうしているうちに、紗季が内側から玄関の扉を開けてくれた。
紗季「愛原先生、早く中へ!」
愛原「あ、ああ!」
私とリサは、中へ入った。
すぐに玄関の扉がピシャッと閉められる。
紗季「この中にいれば安心です。明るくなるまで、ここにいてください」
愛原「そうさせてください」
紗季「暑い中、大変だったでしょう。お風呂入れますよ?」
愛原「その前に、水ちょうだい」
リサ「確かに喉乾いた!先生の血が飲みたい!」
紗季「確かに、愛原先生からは格別美味しそうな血の匂いがします。娘の言う通り、『稀人』さんなのですね」
愛原「別に俺の血液型はO型で、珍しい血液型ではないんだけどなぁ……」
リサ「人間のO型の血は甘い!」
紗季「仰る通りですね」
愛原「いや、女将さんも吸血したことあるんかい!」
紗季「鬼ですから。……あ、今、ポカリスエットお持ちしますね」
愛原「あっ、その方がいいや!」
すると、外から鬼達の怒号が聞こえて来た。
愛原「うわっ、来たっ!」
リサ「ウウウ……!」
リサは赤い瞳をギラつかせ、大広間の窓から外を覗いた。
確かに門扉の外では、鬼の男達が喚き声を上げていたが、無理やり乗り越えて入って来ようとはしなかった。
豊氏と美樹が、そんな鬼の男達に、『帰れ!』とか、『解散だ!』とか言っている。
リサ「薙ぎ払いたくなる……!」
愛原「無益な戦いはダメだ!」
紗季「どうぞ。ポカリスエットです」
愛原「ありがとう!ほら、リサも飲め!」
リサ「ウウウ……!」
リサはポカリスエットを飲みはしたが、興奮が収まらない。
このままでは暴走してしまうかもしれない。
愛原「後で“鬼ころし”を飲め!」
紗季「その方が良さそうですね。ところで愛原さん、“鬼ころし”で思い出したんですけど……」
愛原「なに?」
紗季「お土産に頂戴したお酒。あれって、宮城の酒蔵の物ですよね?」
愛原「それが何か?」
紗季「いえ。あの酒蔵、他にも“鬼ころし”とか“鬼つよし”とか、ありませんでしたか?」
愛原「ありますね。それが何か?」
紗季「あの酒蔵の“鬼ころし”は興奮した鬼を鎮める効果があるとされているのですが、“鬼ふうじ”は鬼の力そのものを弱めます。それを知ってて、本家にお土産として渡したのですか?」
愛原「え?何言ってるの?私達が持って来たのは、“鬼ころし”だよ?」
紗季「いえ。ラベルには、“鬼ふうじ”と書いてありましたが?」
愛原「え!?」
リサ「箱には“鬼ころし”って書いてあったじゃん!」
紗季「中を確認したら、“鬼ふうじ”と書いてあったそうですよ?」
私とリサは顔を見合わせた。
愛原「入れ間違えたんだ、俺!!」
リサ「通りであの『お姫様』、弱いと思った!」
すると、今回の勝利は……結果オーライ???
愛原「女将さん、私らもしかして、生きてこの村から出られない?」
紗季「ど、どんな手段であったにせよ、『勝者は絶対』という掟がこの村にはありますので、その心配は無いかと」
愛原「……女将さん、ポカリスエットもう1杯もらえる?」
紗季「はいはい」
リサ「何か急に、興奮冷めてきた。“鬼ころし”要らないかも」
愛原「そ、それは良かった」
雪姫が“鬼ころし”と間違えて、持って来てしまった“鬼ふうじ”を飲んでくれて助かった。
地上に出た私達は、裏口に止められていたハイエースに乗り込んだ。
これは私達を手引きしてくれた太平山豊氏が運転手を務める乗合タクシーの車である。
すぐにエンジンを掛けて発車した。
だが!
鬼男I「うらぁぁぁっ!!」
鬼男J「待ちやがれーっ!!」
正門前で門番をしていた鬼の男達が、その任務を放棄してでも、私達を止めようとしてきた。
門番なだけに、手には金棒を持っている。
それを振りかざして、車に向かってきた。
愛原「しょうがないですよね!?」
私はサンルーフを開けて、そこから体を乗り出すと、鬼達に向かってハンドガンを放った。
だが、鬼の男達は金棒で銃弾を弾いてしまった。
愛原「あれ!?」
しょうがないので、ライフルを放つ。
だが、それも金棒で弾かれる。
愛原「あれれー?!」
豊「しまった!鬼之助と宗太でねーの!あいつら、青年団の中でも強力だべ!」
愛原「それなら、閃光手榴弾……無いし!」
リサ「わ、わたしが降りて電撃浴びせてくる!」
愛原「危険だ!捕まるぞ!」
リサ「うう……!せめてわたしも、ラムちゃんみたいに空飛べればいいのに……」
と、その時だった。
上空からサーチライトが照らされた。
同時にヘリコプターの音も。
愛原「あ、あれは……“青いアンブレラ”!?」
その乗降ドアを開けて、身を乗り出す者が1人。
明らかに高野君だった。
鬼男I「いでっ!」
高野君がボウガンを放ち、それが門番の1人に刺さる。
しかもその矢、一部が点滅して、ピッ♪ピッ♪と鳴ってる。
愛原「爆矢だ!」
ボンッ!
鬼男I「ぎゃっ!」
鬼男J「げっ!!」
高野君のモデルとなったエイダ・ウォンの得意武器の1つだ。
とにかく、これで道は開けた。
愛原「豊さん!早く車を!!」
豊「は、はい!」
豊氏は車を出した。
リサ「今ので死んだりはしてないよね?」
愛原「火薬は弱そうだったけど……」
豊「多分、あれでは死なねェと思います。かなり重傷だとは思いますが……」
本家から鬼達がわらわらと出て来て、車を追い掛けようとしているのだろうが、今度はヘリが機銃掃射してやがる。
全く!
ここは本当に日本なのか!?
愛原「物騒なヘリで来やがって……。っと、俺もか」
私は自分のハンドガン、ショットガン、ライフルを見て自嘲した。
リサ「これでマシンガンがあったら完璧だったね。それとも、ロケラン?」
愛原「そんなもの、許可出るわけ無いだろ!」
ライフルもショットガンも軍用の物だが、それ自体は狩猟用としても存在する。
表向きは、それの許可ということになっている。
リサ「どこまで逃げるの?」
豊「取りあえず、私の家まで逃げますっけ」
リサ「追って来ない?」
豊「門の前までは追って来るでしょう。ンですが、そっから先は入ェれません」
リサ「どうして?」
豊「そいな掟だからです」
リサ「まるで、鬼ごっこみたいだね」
豊「ン、そうかもしれねっス」
だからこそ、鬼達は必死で私達を捕まえようとする。
だが、私を除けば、逃げるのも鬼だ。
美樹「父ちゃん!早ぐ早ぐ!!」
ようやく民宿の前まで来た時、駐車場の入口に美樹が立っていて、手招きしていた。
豊「あいづ、家ん中さ入ェってろって言ったのに……」
しかし、豊氏はそれだけしか言わず、ハンドルを切って、車を駐車場の中に入れた。
すぐに美樹が引き戸式の門扉をガッシャーンと閉めた。
車は民宿の正面玄関の前に止まる。
豊「着きまスた!」
愛原「ありがとう。でも、本当に大丈夫なの?」
豊「太平山家の敷地内さ入ェっでいいのは、許された者だけですっけ。で、今は見での通り、門を閉めました。ごれは、『何人たりとも、敷地内への侵入ば禁ず』どいう意味になります」
それで本家に行った時も、門番達が仰々しく門扉を開けたのか。
それ自体が『いらっしゃいませ』の儀式だったか。
それは分家も同じ事らしい。
いつの間にか、ヘリコプターは去って行った。
高野君、どうしてここが分かったんだろう?
……あ、いや、私のスマホのGPSとか、リサのGPSで追えなくはないか。
私達に用があるというわけではないのか?
すると、私のスマホに着信があった。
見ると、相手はやはり高野君。
『御無事で何よりです』とのこと。
それだけで、どうしてここに来たのか、私達に用があるのかどうかまでは送って来なかった。
そうしているうちに、紗季が内側から玄関の扉を開けてくれた。
紗季「愛原先生、早く中へ!」
愛原「あ、ああ!」
私とリサは、中へ入った。
すぐに玄関の扉がピシャッと閉められる。
紗季「この中にいれば安心です。明るくなるまで、ここにいてください」
愛原「そうさせてください」
紗季「暑い中、大変だったでしょう。お風呂入れますよ?」
愛原「その前に、水ちょうだい」
リサ「確かに喉乾いた!先生の血が飲みたい!」
紗季「確かに、愛原先生からは格別美味しそうな血の匂いがします。娘の言う通り、『稀人』さんなのですね」
愛原「別に俺の血液型はO型で、珍しい血液型ではないんだけどなぁ……」
リサ「人間のO型の血は甘い!」
紗季「仰る通りですね」
愛原「いや、女将さんも吸血したことあるんかい!」
紗季「鬼ですから。……あ、今、ポカリスエットお持ちしますね」
愛原「あっ、その方がいいや!」
すると、外から鬼達の怒号が聞こえて来た。
愛原「うわっ、来たっ!」
リサ「ウウウ……!」
リサは赤い瞳をギラつかせ、大広間の窓から外を覗いた。
確かに門扉の外では、鬼の男達が喚き声を上げていたが、無理やり乗り越えて入って来ようとはしなかった。
豊氏と美樹が、そんな鬼の男達に、『帰れ!』とか、『解散だ!』とか言っている。
リサ「薙ぎ払いたくなる……!」
愛原「無益な戦いはダメだ!」
紗季「どうぞ。ポカリスエットです」
愛原「ありがとう!ほら、リサも飲め!」
リサ「ウウウ……!」
リサはポカリスエットを飲みはしたが、興奮が収まらない。
このままでは暴走してしまうかもしれない。
愛原「後で“鬼ころし”を飲め!」
紗季「その方が良さそうですね。ところで愛原さん、“鬼ころし”で思い出したんですけど……」
愛原「なに?」
紗季「お土産に頂戴したお酒。あれって、宮城の酒蔵の物ですよね?」
愛原「それが何か?」
紗季「いえ。あの酒蔵、他にも“鬼ころし”とか“鬼つよし”とか、ありませんでしたか?」
愛原「ありますね。それが何か?」
紗季「あの酒蔵の“鬼ころし”は興奮した鬼を鎮める効果があるとされているのですが、“鬼ふうじ”は鬼の力そのものを弱めます。それを知ってて、本家にお土産として渡したのですか?」
愛原「え?何言ってるの?私達が持って来たのは、“鬼ころし”だよ?」
紗季「いえ。ラベルには、“鬼ふうじ”と書いてありましたが?」
愛原「え!?」
リサ「箱には“鬼ころし”って書いてあったじゃん!」
紗季「中を確認したら、“鬼ふうじ”と書いてあったそうですよ?」
私とリサは顔を見合わせた。
愛原「入れ間違えたんだ、俺!!」
リサ「通りであの『お姫様』、弱いと思った!」
すると、今回の勝利は……結果オーライ???
愛原「女将さん、私らもしかして、生きてこの村から出られない?」
紗季「ど、どんな手段であったにせよ、『勝者は絶対』という掟がこの村にはありますので、その心配は無いかと」
愛原「……女将さん、ポカリスエットもう1杯もらえる?」
紗季「はいはい」
リサ「何か急に、興奮冷めてきた。“鬼ころし”要らないかも」
愛原「そ、それは良かった」
雪姫が“鬼ころし”と間違えて、持って来てしまった“鬼ふうじ”を飲んでくれて助かった。