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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼里村2日目の夜」

2025-04-21 20:31:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日18時00分 天候:晴 秋田県北秋田郡鬼里村 太平山家・分家(民宿『太平屋』)201号室]

 温泉である大浴場から出た私は、夕食の時間まで部屋にいた。
 善場係長からの返信メールを確認する為だ。
 メールは他にもあって、うちの事務所からだった。
 即ち、送信元はパールということになる。

 パール「出張お疲れさまです。予定表では明日、秋田県鬼里村を発つとのことですが、帰京はいつ頃になる予定でしょうか?明日は鬼里村を発った後、再び仙台の御実家に寄るとのことですが」

 とのことだ。
 確かに、帰京日を決めていなかった。
 というのは、この鬼里村でどんなトラブルに巻き込まれるか不明だったので、あえて予定は決めていなかったのである。
 当然、往路は新幹線の指定席を取ったが、復路についてはまだ予約すらしていない。
 だが、恐らくもうトラブルに巻き込まれることはあるまい。
 ここの鬼達は、1度負けると再戦の申し込みはしない潔さがあるらしい。
 もっとも、再戦できない理由があるのだろう。
 本家から再戦禁止の通達が出ているというのももちろんあるが、わざわざ通達を出さないと再戦の申し込みをしてくる鬼達がいると見て間違いない。
 中には、本家通達を破ってやってくる血気盛んな鬼がいてもいいはずだ。
 しかし、それがいない理由。
 それは、この村の中で最も強い『夜叉姫』を倒したからだろう。
 自分より強い者を倒した者に戦いを挑むほどバカでもあるまい。

 愛原「今週中には帰京する予定だよ。そちらの様子はどうだ?」

 パールに返信している間に、善場係長から返信メールが来る。

 善場「お疲れ様です。報告書、確認させて頂きました。それでは、“青いアンブレラに拉致された白井伝三郎(斉藤玲子)を確保した方が良さそうですね。“青いアンブレラ”がどのようなつもりで彼(彼女)を拉致したのかは不明ですが、管理の不行き届きで死亡させてしまったら、所長の安全が保障されなくなります」
 愛原「どうなさるおつもりですか?」

 返信すると、今度はパールから返信が来る。

 パール「特に、異常はありません。ただ、折り入って1つ相談したいことがございます。とても大事な話ですので、電話やメールではお話しできません。所長が帰京されたら相談させて頂く存じます」

 とのことだった。
 相談事って何だろう?
 メイドの仕事に集中したいのだろうか?
 いや、それもテラセイブのことか?

 愛原「帰京を急いだ方が良いか?相談事とはテラセイブの事か?」

 パールに返信すると、また善場係長から返信が来る。

 善場「BSAAに捜査させて、彼(彼女)を奪還します。もちろん手荒な真似をすると死亡する恐れがありますので、それは絶対に避けさせます。所長にも協力して頂ける所があれば、是非ともお願い致します」

 この返信を見て、私はヘタなことはしない方がいいのではないかと思った。
 要は善場係長は、“青いアンブレラ”の事を全く信用していない。
 いや、日本では非合法組織なのだから敵視するのは当然だし、高野君の事を個人的に嫌っている部分も見受けられるので、尚更だろう。

 愛原「かしこまりました。私共に協力できることがありましたら、是非させて頂きます」

 と、返信した。
 すると、またパールからだ。

 パール「先生の御予定で結構です。確かに、テラセイブの事です」
 愛原「分かった。今週中には帰るし、帰る時には連絡する」

 と、返信する。
 すると、また善場係長から。

 善場「宜しくお願い致します。今後も引き続き御報告をお願い致します。また、“青いアンブレラ”の情報が入りましたら、すぐに御連絡をお願い致します」
 パール「かしこまりました。宜しくお願い致します」

 パールからも返信があった。
 パールもそろそろテラセイブのメンバーとして、本格的に活動したいのだろうか。
 そうなると、事務所を退所しなければならなくなるが、その話なのかもしれない。
 その時、部屋の内線電話が鳴った。
 黒電話である為、ジリジリベルが鳴り響く。

 愛原「はい、もしもし?」

 電話に出ると、相手は紗季だった。

 紗季「愛原先生。御夕食の準備ができました」

 との事だった。
 時計を見ると、18時を回っている。
 もうそんな時間か。

 愛原「ああ、分かりました。すぐ行きます」

 私は電話を切って、1階に下りた。

[同日18時15分 天候:晴 同民宿1階・大広間]

 

 リサ「先生、おそーい!」
 愛原「ああ、悪かった。ちょっと、仕事が立て込んだもんでね」
 紗季「白井先生の事で、まさかこんな大事件になるなんて……」
 愛原「奴はこの村にとっては救世主だったのかもしれませんが、『転化組』を造り出した諸悪の根源でもありますからね」
 紗季「本当に……」

 紗季は持って来た瓶ビールの栓を抜いた。
 他にもリサや美樹の為に、ジュースやウーロン茶の栓を抜く。

 リサ「チキンステーキがある!」
 紗季「これは村の養鶏場で分けてもらった鶏肉です」

 比内地鶏とのこと。
 尚、比内鶏と比内地鶏は違うので注意。
 前者は本当に天然記念物に指定されており、市場には一切出回らない。
 対して後者は前者を品種改良したものであり、これは出回っている。
 この村の養鶏場で育てているのも、比内地鶏であって、比内鶏ではない。

 愛原「この分だと、明日には出発できそうだ。最後の夕食、ゆっくり楽しもうじゃないか」
 美樹「本家が、愛原先生達さ手ェ出すなって通達出してくれたおかげで、ケンカ売って来る兄ちゃん達もいねくで良がっだですよ」
 愛原「全くだ」
 美樹「本家も大家族なもんでェ、雪姉がやられだら、兄ちゃん達や姉ちゃん達が仇討ちに来るはずですっけ」
 愛原「マジか」
 リサ「でも、ユキより弱いんでしょ?それならラクショーだよ!」

 リサや私の勝因は、その前に雪姫が“鬼ころし”ではなく、“鬼ふうじ”を飲んでしまって弱体化してしまったというのもあるのだが。
 とにかく、これはもう天長会がラスボスになりそうってことでOKなのだろうか?
 報告書を善場係長は読んでくれたそうだが、それでどう判断されるか次第だ。
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“私立探偵 愛原学” 「鬼里村2日目」 5

2025-04-21 12:31:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日15時00分 天候:曇 秋田県北秋田郡鬼里村 太平山家・本家]

 私の話を聞いた村議会議長の上野喜太郎氏は、しばらく考え込んだ。

 上野「……1つだけ、心当たりがあります」
 愛原「あるんですか!?」
 上野「白井先生は、熱心な天長会の信者だったということですね?」
 愛原「はい」
 上野「その話は、栃木で聞いたことがあります。我々は、あのホテルに泊まったことがありますからな」
 愛原「あっ!」

 太平山家の面々が、ホテル天長園に団体旅行に行った写真を私は思い出した。
 あの中には、まだ幼い太平山美樹もいた。
 そして、まだ髪が黒い喜太郎氏も写っていた。
 太平山家としては単なる温泉慰安旅行の他、他の地域に棲む鬼達との交流が目的であったようだ。
 というか、天長会がそのようにしているということだ。
 以前は酒呑童子や茨木童子で有名な、京都の大江山の鬼の一族が泊まりに来たこともあったらしい。

 上野「弟は栃木の大学で、医者になる為の勉強をしました」
 愛原「自治医大辺りですかね?」
 上野「確か、そういう名前だったと思います。全寮制ということでしたので」
 愛原「自治医大だ。宇都宮市にあって、那須塩原からも近いですね」

 白井は別の大学で医師免許を取っているので、大学時代の面識は無いか。
 ただ、天長会での繫がりはあったかもしれない。

 上野「そういったことから、天長会では何か知っているかもしれません。もし良かったら、私から先方に問い合わせてみましょうか?」
 愛原「宜しくお願いします」
 上野「いいでしょう。愛原さんの仰る事が本当なら、恐ろしい事です。この村を救って頂いた事は素直に感謝するべきですが、恐ろしい事の土台にされたのであれば、それは度し難い事ですからな」
 愛原「仰る通りです」
 上野「この村には、明日まで滞在でしたな?」
 愛原「はい。明日、昼過ぎの列車で、まずは仙台まで戻る予定です」
 上野「では、今日中に何とかしましょう」
 愛原「ありがとうございます」

[同日15時30分 天候:曇 同村内 太平山家・本家→太平山家・分家(民宿『太平屋』)]

 本家を後にした私達は、豊氏が迎えに来たデマンドタクシーで分家に戻る。
 今は分家の入口の門は開放されていた。
 本家の方から村の鬼達に、私達を襲わないようにという通達が出たとのこと。

 太平山紗季「お帰りなさい。いかがでした?」
 愛原「色々と話ができて良かったですよ」
 紗季「それは良かったですね。お部屋でゆっくりされますか?」
 愛原「そのつもりですよ。分かった事をクライアントに報告しませんと」
 紗季「大変ですねぇ……」
 美樹「母ちゃん、夕食の買い出しはどうすっぺし?」
 紗季「それは行って来て」
 美樹「へーへー」

 私は民宿の中に入ると、宿泊している201号室に向かった。
 さきほど雪姫や議長から聞いた話を報告書にまとめて善場係長に報告しないと。

 リサ「先生」

 その時、リサが部屋のドアをノックして入って来た。

 愛原「どうした?」
 リサ「わたし、これからミキと一緒に出掛けて来る」
 愛原「ミキと?美樹はこれから夕飯の買い出しじゃ?」
 リサ「それについて行く。どうせここにいても、やることは無いし。先生と、ヤることはあるけどね?」

 リサはショートパンツを少しズラして、ショーツの腰の部分をチラッと見せた。
 カルバンクラインを穿いているようで、その文字が見えた。

 愛原「……うん。気をつけて行ってきて」
 リサ「はーい」

 リサは部屋から出て行った。
 私はノートPCを立ち上げて、善場係長に対する報告書を作成する。
 そして、送信する頃には小一時間ほど経っていた。
 予定通りなら、明日にはこの村を出る事になるだろう。
 それより、“青いアンブレラ”はどこに行ったのだろう?
 高野君達ならヘリから降下して、太平山家の本家を襲撃してもおかしくないのだが。
 そういえば、今日はヘリコプターの音が聞こえない。
 村の上空にいるというわけでも無さそうだ。
 それにしても今、白井が体を使用している斉藤早苗は一体どこに行ったのだろう?
 “青いアンブレラ”が監禁しているのだろうが……。
 彼女の肉体が死ぬようなことがあったら、今度は私の体が乗っ取られることになるのだが……。

[同日17時00分 天候:雷雨 同村内 同民宿]

 善場係長への報告を終えた私は、夕食の前に一っ風呂浴びて来ようと、浴衣に着替えた。
 そうしているうち、外から雷鳴が聞こえてきた。
 どうやら、またゲリラ豪雨が降るらしい。
 或いは夕立か。
 で、大粒の雨が降って来る。
 山の天気は変わりやすい。
 それなら、今度は海へ行ってみたいものだ。
 海か……。
 警察、ヤクザ、アンブレラからの逃走劇を繰り広げていた上野医師や斉藤玲子も、一時期は福島県の海岸に潜んでいたらしいな。
 夏だし、海はいいかもしれない。
 私がそんな事を考えながら、1階に下りると、ずぶ濡れになったリサと美樹が飛び込んで来た。

 愛原「おいおい、大丈夫か!?」
 リサ「いやー!油断したっちゃ!」
 美樹「傘、こっちに置いでだもんでェ……」

 2人は買い物の後、外で体を動かしていたはずだ。
 また、1on1でもやっていたのか。
 あるいはバレーか。
 リサも美樹も、着ていたTシャツが透けて、ブラが微かに見えてしまっている。

 リサ「先生、どこ見てんのォ……?って!ミキのは見ちゃダメ!ミキも見せんな!」
 美樹「おぉう……!ヤッベ!」

 リサのはグレーのカルバンクラインだと分かっているが、美樹のは黒いブラだというのが分かったくらい。
 それがスポプラなのか、普通のブラなのかまでは分からなかった。

 愛原「そんなに見えてないから大丈夫だよ」
 リサ「『そんなに見えていない』と分かるくらい見てるんじゃない!」
 愛原「あ、そうか」
 リサ「『あ、そうか』じゃなーい!」
 紗季「2人とも、なに玄関先で騒いでんの。早いとこ着替えて来なさい」
 リサ「はーい。……先生、これからお風呂?」
 愛原「そうだけど……」
 リサ「わたしも入る!」
 紗季「洗濯した浴衣、部屋に置いてありますから」
 リサ「はーい!」
 紗季「美樹は自分の着てね」
 美樹「分がってるっで」
 愛原「俺は先に入るよ」
 紗季「どうぞごゆっくり」

 私は大浴場に向かい、リサら鬼娘達は2階へと上がって行った。
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