[10月1日11時00分 天候:晴 東京都中央区銀座 南原清士個展会場]
南原清士「ただいまァ」
受付係「お父さん、お帰りなさい」
南原清士「今日も静かだナ……」
南原は会場内のガラ空きを見て、嘆息した。
受付係「でも、今日はお客さん、来てるよ」
南原「なに?本当か!?」
受付係「うん。この絵が欲しいんだって」
受付係を務める、南原の長女は『仮面の少女』を指さした。
南原「これか。お客さんというのは?」
受付係「東京中央学園の人達だよ」
南原「東京中央学園!ついに“トイレの花子さん”について、分かってくれる人達が現れたか!で、そのお客さんはどこに?」
受付係「あそこの応接室」
南原「よし!ちょっと行ってこよう!」
南原は応接室に勇んで向かった。
南原「失礼します!」
入った瞬間、そこにいたのは、自分よりも年下の中年男が1人と、東京中央学園の制服を着た少女が2人であった。
愛原「あ、お邪魔しております」
南原「ようこそ、いらっしゃいました!南原清士と申します!何でも、『仮面の少女』の購入を御希望とか……」
愛原「はい。このコが欲しがりましてね。ややもすれば、こいつも“トイレの花子さん”みたいなものですし」
リサ「ちょっと、先生!」
南原「はっはっは!これは面白い冗談を……」
愛原「今日伺ったのは絵の鑑賞だけでなく、南原先生が東京中央学園の卒業生ということで、それに関してのお話をお願いしたいと思いました」
南原「東京中央学園の?どういったお話でしょうか?」
愛原「先生はセーラー服を着た女子高生達が、物の怪に襲われる作品を主に描かれていますね?」
南原「はい。それはもう……」
愛原「あのセーラー服、東京中央学園の旧制服に酷似しています。先生が現役生だった頃、まだ旧制服が使用されていた頃だったのですね?」
南原「そういうことです。それが何か?」
愛原「作品に描かれている化け物は、その殆どが新聞で特集された“学校の七不思議”の内容を一致します。先生も現役時代は、そういう怪奇現象に遭われたということですね?」
南原「そうです。分かって頂けますか?当時の学園は、よほど何かを隠蔽したかったのか、新聞部が七不思議特集をやっても、知らんぷりでした。そこで僕が……当時、美術部員だった僕が、あのもようを絵に描いて訴えようとしたのです。それも、最初は無視されましたがね。……今から、40年ほど前の話です」
つまり、1980年代ということである。
その時代においても、既に東京中央学園上野高校は怪奇現象の宝庫となっていた。
愛原「エロ描写を入れたのは?」
南原「事実をありのままに描く必要があったのと、その方がより注目されるからです」
リサ「セクハラ攻撃は本当にあったんだね!」
リサはニヤッと笑って言った。
南原「いつもいつも、あったわけじゃないがね。……ふむ」
南原は、マジマジとリサの顔を見つめた。
リサ「な、なに……?」
南原「ちょっとマスクを取ってみてくれるかい?」
リサ「え?」
愛原「リサ、いいから」
リサ「はあ……」
リサはマスクを外した。
南原「ふーむ……。愛らしい顔立ちの中に、どこか嗜虐的な空気を漂わせる『何か』を孕んでいる……」
リサ「……!」
南原「キミ、良かったら今度、絵のモデルになってくれないか?」
リサ「ええっ、また!?」
南原「また?」
リサ「ついこないだまで、サクラヤの絵のモデルをやってたの」
リサは桜谷を指さした。
南原「そうだったのかい。それで、彼女をモデルにしてみて、どうだったかね?」
桜谷「は、はい。それはもう……」
桜谷はプロの画家の前に緊張しながら、しどろもどろになりながらも感想を述べた。
南原「そうかい!キミ、今度のコンクールに出展するのかい!それは楽しみだね。モデルの選定に関しては、期待が持てるよ」
桜谷「あ、ありがとうございます!」
リサ「わたし、そんなに禍々しい?」
愛原「何を今さら……」
南原「キミ、自分でも分かってるのかい?」
桜谷「だからこそ、『魔王様の肖像画』が成り立つんですよ?」
リサ「ガーン!」😨
愛原「アトリエはここですか?」
南原「いやいや、ここは単なる個展会場です。私のアトリエは、自宅と兼用です」
愛原「そうでしたか。因みに、リサをモデルにして、どんな作品のアイディアが?」
南原「僕は今まで、怪奇に襲われる少女達の絵を描いてきましたが、『それを裏から操る黒幕』というのを描いてみたいと思っていたんですよ。おどろおどろしい怪奇の裏にいたのは、もっと不気味な存在……ではなく、実はこんな愛らしくも禍々しい、まるで鬼のような存在。そんな感じですね」
リサ「おじさん、もしかして、わたしの正体、全部知ってる?」
南原「お、おじさん!?」
桜谷「リサ様、おじさんじゃないですよ」
リサ「センセー」
愛原「さすがは、インスピレーションを大事にする職業ですな。肝心のリサが動揺してますよ?」
リサ「し、してない!」
南原「こりゃ、失礼。モデルさんを動揺させてしまうとは、僕もまだまだですな。申し訳ない。お詫びと、モデルを引き受けてくれた御礼に、何か作品を1つ進呈したいのですが、何が宜しいですか?」
リサはまだ『引き受ける』とは言っていないのだが、こうすることで、外堀を埋める作戦のようだ。
愛原「リサは『仮面の少女』が欲しいようですが……」
リサ「それとプラス!」
すると、リサが乗り出してきた。
リサ「プラス、欲しい物がある!」
南原「な、何かね?」
リサは学園の美術準備室にある、南原の作品について言った。
南原「ああ!あの絵!?」
リサ「美術の先生が、欲しかったら南原先生に言ってと言ってた。だから、あの絵が欲しい!」
南原「あの絵は学園に寄贈したものだったんだけどね。だから、所有権は向こうにあるはずなんだが……。それにしても、展示されてなかったって?」
桜谷「残念ながら……」
リサ「セクハラ攻撃の部分が教育に悪いんだって」
南原「何てことだ……!あれは全て、本当にあったことだというのに……」
南原は頭を抱えた。
南原「またもや、学園は隠蔽するつもりなのか……!」
愛原「隠蔽工作は必ずバレます。というか、もう殆ど白日の下に晒されてはいるのですが」
南原「え?」
愛原「どうしても先生の作品が欲しいリサの為に、真相をお話ししましょう」
愛原は特異菌の話をした。
特異菌の内容については、既に公表されているので、この辺りは隠す必要が無い。
これまで学園で起きていた怪奇現象は、その殆どが特異菌による幻覚症状であったことを説明した。
愛原「……これはBSAAや政府から委託を受けているNPO法人デイライトの調査の結果です。嘘偽りはありません」
南原「愛原さんも、政府のことを鵜呑みにするタイプのようですな。もう少し、遠くから俯瞰する目をお持ちになった方が良い」
愛原「えっ!?」
さすがは芸術家。
芸術家によくある政治嫌いである。
南原「とにかく、そういう見方もあるということは分かりました。……あの絵はキミに譲ろう。僕がそう言ったと、学園に言えばいいよ。もちろん、タダでいい。あんな美術準備室で日の目を見ないよりは、キミみたいに気に入ってくれた人に貰われた方がいい」
リサ「ありがとうございます。……そうと決まったら、早く行こう!あの絵も早く包んで!」
愛原「持って帰る気か!?」
リサ「もちろん!」
愛原「あれは展示品でもある。個展が行われている間は、展示するものなんだよ」
リサ「また、誰かに買われたらどうするの!?」
南原「それも大丈夫だよ。こういう、『売約済』の札を貼っておくからね」
南原は笑いながら言った。
リサ「売約済み!あの絵にも貼らないと!」
愛原「学園にあるのは売り物じゃないんだから、それは必要無いよ」
愛原は苦笑した。
南原清士「ただいまァ」
受付係「お父さん、お帰りなさい」
南原清士「今日も静かだナ……」
南原は会場内のガラ空きを見て、嘆息した。
受付係「でも、今日はお客さん、来てるよ」
南原「なに?本当か!?」
受付係「うん。この絵が欲しいんだって」
受付係を務める、南原の長女は『仮面の少女』を指さした。
南原「これか。お客さんというのは?」
受付係「東京中央学園の人達だよ」
南原「東京中央学園!ついに“トイレの花子さん”について、分かってくれる人達が現れたか!で、そのお客さんはどこに?」
受付係「あそこの応接室」
南原「よし!ちょっと行ってこよう!」
南原は応接室に勇んで向かった。
南原「失礼します!」
入った瞬間、そこにいたのは、自分よりも年下の中年男が1人と、東京中央学園の制服を着た少女が2人であった。
愛原「あ、お邪魔しております」
南原「ようこそ、いらっしゃいました!南原清士と申します!何でも、『仮面の少女』の購入を御希望とか……」
愛原「はい。このコが欲しがりましてね。ややもすれば、こいつも“トイレの花子さん”みたいなものですし」
リサ「ちょっと、先生!」
南原「はっはっは!これは面白い冗談を……」
愛原「今日伺ったのは絵の鑑賞だけでなく、南原先生が東京中央学園の卒業生ということで、それに関してのお話をお願いしたいと思いました」
南原「東京中央学園の?どういったお話でしょうか?」
愛原「先生はセーラー服を着た女子高生達が、物の怪に襲われる作品を主に描かれていますね?」
南原「はい。それはもう……」
愛原「あのセーラー服、東京中央学園の旧制服に酷似しています。先生が現役生だった頃、まだ旧制服が使用されていた頃だったのですね?」
南原「そういうことです。それが何か?」
愛原「作品に描かれている化け物は、その殆どが新聞で特集された“学校の七不思議”の内容を一致します。先生も現役時代は、そういう怪奇現象に遭われたということですね?」
南原「そうです。分かって頂けますか?当時の学園は、よほど何かを隠蔽したかったのか、新聞部が七不思議特集をやっても、知らんぷりでした。そこで僕が……当時、美術部員だった僕が、あのもようを絵に描いて訴えようとしたのです。それも、最初は無視されましたがね。……今から、40年ほど前の話です」
つまり、1980年代ということである。
その時代においても、既に東京中央学園上野高校は怪奇現象の宝庫となっていた。
愛原「エロ描写を入れたのは?」
南原「事実をありのままに描く必要があったのと、その方がより注目されるからです」
リサ「セクハラ攻撃は本当にあったんだね!」
リサはニヤッと笑って言った。
南原「いつもいつも、あったわけじゃないがね。……ふむ」
南原は、マジマジとリサの顔を見つめた。
リサ「な、なに……?」
南原「ちょっとマスクを取ってみてくれるかい?」
リサ「え?」
愛原「リサ、いいから」
リサ「はあ……」
リサはマスクを外した。
南原「ふーむ……。愛らしい顔立ちの中に、どこか嗜虐的な空気を漂わせる『何か』を孕んでいる……」
リサ「……!」
南原「キミ、良かったら今度、絵のモデルになってくれないか?」
リサ「ええっ、また!?」
南原「また?」
リサ「ついこないだまで、サクラヤの絵のモデルをやってたの」
リサは桜谷を指さした。
南原「そうだったのかい。それで、彼女をモデルにしてみて、どうだったかね?」
桜谷「は、はい。それはもう……」
桜谷はプロの画家の前に緊張しながら、しどろもどろになりながらも感想を述べた。
南原「そうかい!キミ、今度のコンクールに出展するのかい!それは楽しみだね。モデルの選定に関しては、期待が持てるよ」
桜谷「あ、ありがとうございます!」
リサ「わたし、そんなに禍々しい?」
愛原「何を今さら……」
南原「キミ、自分でも分かってるのかい?」
桜谷「だからこそ、『魔王様の肖像画』が成り立つんですよ?」
リサ「ガーン!」😨
愛原「アトリエはここですか?」
南原「いやいや、ここは単なる個展会場です。私のアトリエは、自宅と兼用です」
愛原「そうでしたか。因みに、リサをモデルにして、どんな作品のアイディアが?」
南原「僕は今まで、怪奇に襲われる少女達の絵を描いてきましたが、『それを裏から操る黒幕』というのを描いてみたいと思っていたんですよ。おどろおどろしい怪奇の裏にいたのは、もっと不気味な存在……ではなく、実はこんな愛らしくも禍々しい、まるで鬼のような存在。そんな感じですね」
リサ「おじさん、もしかして、わたしの正体、全部知ってる?」
南原「お、おじさん!?」
桜谷「リサ様、おじさんじゃないですよ」
リサ「センセー」
愛原「さすがは、インスピレーションを大事にする職業ですな。肝心のリサが動揺してますよ?」
リサ「し、してない!」
南原「こりゃ、失礼。モデルさんを動揺させてしまうとは、僕もまだまだですな。申し訳ない。お詫びと、モデルを引き受けてくれた御礼に、何か作品を1つ進呈したいのですが、何が宜しいですか?」
リサはまだ『引き受ける』とは言っていないのだが、こうすることで、外堀を埋める作戦のようだ。
愛原「リサは『仮面の少女』が欲しいようですが……」
リサ「それとプラス!」
すると、リサが乗り出してきた。
リサ「プラス、欲しい物がある!」
南原「な、何かね?」
リサは学園の美術準備室にある、南原の作品について言った。
南原「ああ!あの絵!?」
リサ「美術の先生が、欲しかったら南原先生に言ってと言ってた。だから、あの絵が欲しい!」
南原「あの絵は学園に寄贈したものだったんだけどね。だから、所有権は向こうにあるはずなんだが……。それにしても、展示されてなかったって?」
桜谷「残念ながら……」
リサ「セクハラ攻撃の部分が教育に悪いんだって」
南原「何てことだ……!あれは全て、本当にあったことだというのに……」
南原は頭を抱えた。
南原「またもや、学園は隠蔽するつもりなのか……!」
愛原「隠蔽工作は必ずバレます。というか、もう殆ど白日の下に晒されてはいるのですが」
南原「え?」
愛原「どうしても先生の作品が欲しいリサの為に、真相をお話ししましょう」
愛原は特異菌の話をした。
特異菌の内容については、既に公表されているので、この辺りは隠す必要が無い。
これまで学園で起きていた怪奇現象は、その殆どが特異菌による幻覚症状であったことを説明した。
愛原「……これはBSAAや政府から委託を受けているNPO法人デイライトの調査の結果です。嘘偽りはありません」
南原「愛原さんも、政府のことを鵜呑みにするタイプのようですな。もう少し、遠くから俯瞰する目をお持ちになった方が良い」
愛原「えっ!?」
さすがは芸術家。
芸術家によくある政治嫌いである。
南原「とにかく、そういう見方もあるということは分かりました。……あの絵はキミに譲ろう。僕がそう言ったと、学園に言えばいいよ。もちろん、タダでいい。あんな美術準備室で日の目を見ないよりは、キミみたいに気に入ってくれた人に貰われた方がいい」
リサ「ありがとうございます。……そうと決まったら、早く行こう!あの絵も早く包んで!」
愛原「持って帰る気か!?」
リサ「もちろん!」
愛原「あれは展示品でもある。個展が行われている間は、展示するものなんだよ」
リサ「また、誰かに買われたらどうするの!?」
南原「それも大丈夫だよ。こういう、『売約済』の札を貼っておくからね」
南原は笑いながら言った。
リサ「売約済み!あの絵にも貼らないと!」
愛原「学園にあるのは売り物じゃないんだから、それは必要無いよ」
愛原は苦笑した。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます