報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「戦勝祝い」

2020-07-01 15:07:27 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日19:00.アルカディアシティ1番街 魔王城新館1Fコンベンションホール 視点:稲生勇太]

『ドラゴン一匹で航空隊全機撃墜!!』『ミッドガード空軍、一個編隊全滅へ!』『守られた制空権』

 アルカディアタイムスの夕刊の一面記事トップに、稲生達の活躍が報じられた。
 それを祝いしてか、それまでダンテ一門を敵視していたのが嘘のような掌返しで、稲生達は祝勝会に呼ばれていた。
 だが、主催したのは騎士団本部であり、そこにルーシー女王や安倍春明首相の姿は無かった。

 横田:「先般の決起大会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。我らが崇高なる女王、ルーシー・ブラッドプール一世陛下にあらせられましては……」

 何故か横田理事が挨拶しているw
 だが、いつもの変態ぶりは大人しくなっており、普通に政権与党の総務理事として挨拶していた。
 自分では政府高官の地位にあると思っているらしい。

 横田:「……以上を持ちまして、私、魔界共和党総務理事、横田高明の挨拶と致します」
 稲生:「案外、普通だ」

 尚、戦勝会は立食パーティー形式である。
 横田の挨拶と騎士団長の挨拶が終わると、早速パーティーが始まった。

 アリス:「お待たせ。久しぶりにドレスに着替えたら、思いの外、着付けに時間が掛かってしまった」

 騎士は貴族の出。
 アリスもまた実家は子爵の地位にある家柄である。
 元々は男爵であったが、父親が名誉の戦死を遂げたので、その栄誉を称えられて子爵に上げられた。
 そしてその地位は、家督を継いだ彼女の兄が受けている。

 稲生:「わぁ……」

 稲生がその煌びやかな姿に嘆息してしまった。
 一瞬、それにイラッときたマリアだったが、それよりもアリスの姿に目が行ってしまった。

 エレーナ:「さすがは貴族の御嬢様だぜ。私ら下級民とは比べ物にならないぜ」

 エレーナはワイングラスの中身を空けながら言った。

 ジル隊長:「アリス。明日からお前の身元は、私が預かることになった。私の隊で働いてもらう」

 ジルもまたイブニングドレス姿だった。
 20代後半くらいであり、その姿は凛としたという表現がとても似合った。

 アリス:「よろしくお願いします」
 ジル:「ドラゴンに乗れたみたいだし、将来はドラゴンナイツ(竜騎士隊員)かな?」
 アリス:「これはお戯れを……」
 イリーナ:「竜騎士隊は安倍総理率いる『魔王討伐隊』に潰されたらしいけど、また復活するのかしら?」
 アリス:「今度は魔族の軍団としての竜騎士隊ではなく、私達人間の竜騎士隊だ」
 稲生:「ますますファンタジーだなぁ……」
 エレーナ:「稲生氏。そろそろアリスから目を離さないと、後で大変なことになるぜ?」

 稲生はこちらを睨み付けている姉弟子の姿に気づいた。

 稲生:「あ、はい……」

[同日20:00.魔王城新館男子トイレ 視点:稲生勇太]

 稲生はトイレに行く為にコンベンションホールを出た。
 そして薄暗い廊下をトイレに向かう。
 トイレの入口扉は堅く閉ざされており、その横にガーゴイルの石像が鎮座している。
 魔王城の共用トイレは、だいたい皆こんな感じ。
 これもトラップの1つになっていて、ガーゴイルを無視してドアを開けようとすると、それに襲われる。
 どうすればいいのかというと、大抵のガーゴイルが口を開けて台座に座っているので、その口の中に小銭を入れてやると良い。
 もちろん無難なのはアルカディア王国の硬貨であるが、日本やアメリカの硬貨でもいいらしい。
 そこは女王がアメリカ人、首相が日本人だからだろう。
 要は有料トイレなのである。
 稲生は小銭入れの中から、試しに日本の100円硬貨を入れてみた。

 ガーゴイル:「ウガ……。(おおっ!先進国の硬貨!毎度あり!)」

 ガーゴイルの目が光り、口を閉じて硬貨を飲み込む。
 するとガーゴイルはトイレのドアの取っ手に手を掛け、ドアを開けた。

 稲生:「よし」

 稲生はトイレの中に入った。
 因みに誰かが、韓国のウォンやジンバブエドルをガーゴイルの口に入れたら、吐き出して襲って来たらしい。
 また、中国の元を入れたら目を回して倒れてしまったとか。

 稲生:「トイレの中はきれいなんだよなぁ……」

 魔王城のトイレとは思えないほど、きれいで明るいトイレである。
 そこで用を足していると、またドアが開けられる音がした。

 稲生:「ん?」
 安倍:「やあ、稲生君。いらっしゃい」
 稲生:「安倍総理!」

 アルカディア王国首相の安倍春明だった。
 ソーシャルディスタンスなんぞ何のその、稲生の隣の便器に立つ。
 昔のトイレは隣との間隔が狭いものだったが、今のトイレはそうでもない。

 稲生:「安倍総理、今日はありがとうございます」
 安倍:「いやいや、こちらこそ、ミッドガード軍を撃滅してくれてありがとう」
 稲生:「僕はイリーナ先生の召喚獣に便乗しただけですよ」
 安倍:「ははは、そうかい?」
 稲生:「総理も一杯いかがですか?」
 安倍:「いや、私は結構だ」

 2人とも便器から離れて洗面所に向かう。
 どこにセンサーがあるのやら、ちゃんと自動で水が流れる(ビルによっては便器の下にセンサーが仕掛けられている場合もある。メンテナンスしにくくないか?)。

 安倍:「あくまでも、今回は敵機来襲の防衛に成功しただけに過ぎない。本来は、この程度のことで戦勝会など、開いてはいかんのだよ」
 稲生:「さすがは元勇者です」
 安倍:「奴らの新型兵器で7番街が1つまるまる潰された。あそこだけで、何百人もの市民が生活していたというのに……!」
 稲生:「避難できなかったんですか?」
 安倍:「できないな。何しろ、見た目はただのゲリラ豪雨なのだから」
 稲生:「ゲリラ豪雨で、『空が落ちてくる』?」
 安倍:「向こうの大統領が宣言していたよ。『アルカディア王国の降伏無くば、無辜の市民達が黒い空に押し潰されることになるだろう』と……!」
 稲生:「何だか怖いですね……」
 安倍:「市民達もパニックになってしまってね。それを鎮めるだけでも大変なのだ」

 稲生と安倍がそんな深刻な話をしている頃、女子トイレに入ろうとしていたエレーナは……。

 ガーゴイル:「ペッ!」(←口の中に入れられたウクライナの硬貨、5コピーカをエレーナに向かって吐き出す)
 エレーナ:「いてっ!」(←ガーゴイルから吐き出された5コピーカがエレーナの顔に直撃)
 ガーゴイル:「フン」
 エレーナ:「何だよ?!本物のコピーカだぜ!?」
 ガーゴイル:「ヨーロッパの貧乏国家の硬貨なんてイラネッチケーなんつってw」
 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……
 ガーゴイル:「分かった分かった!ならば、米ドルで手を打とう!」
 エレーナ:「金額盛ってんじゃねぇぜ、コラ!」

 硬貨なのだから米国だとセントになるはずだが、さり気無くドル紙幣を要求するガーゴイルにエレーナの魔法が炸裂した。

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あとがき (雲羽百三)
2020-07-01 16:20:33
 雲羽百三:「この作品書いた時点での為替レート、1円が0.25フリヴニャ!?ウクライナの紙幣、紙屑同然じゃん!?交換すればするほど、こっちが赤字って……!」
 エレーナ:「うるせーな!だから私は日本にいるんだよ!」
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