報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「ハチ公物語」

2021-04-28 15:57:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月4日15:30~16:30.天候:晴 秋田県大館市 大館市立総合病院→日産レンタカー大館店]

 病院の検査が終わった。
 検査の結果が出るまで、またしばらく待たされた。
 最終的な結果まで待っていると、東京に帰れなくなるので、簡易的な結果だけ聞いた。
 あくまでも簡易的なものであるが、私達には感染の疑いは無いという。
 恐らくあのBOWが放っていたウィルスも旧来のタイプであり、私達には既に抗体ができていたのだろうということだった。
 確かに2005年のTアビスや2013年のCウィルス程度なら、既に私達もワクチンを打っている。
 あと……リサから感染させられたGウィルスが強力のようだ。
 新型コロナウィルスですら跳ね返せるくらいの。
 但し、強過ぎて化け物と化しても知らん。
 病院を出る前、善場主任に今後のことを聞いた。
 取りあえず私達は、帰京に専念して欲しいということだった。
 詳しい話は後日ということだ。
 因みに善場主任は更なる調査の為、市内に残るらしい。
 何かあると出動しないといけないから、善場主任も大変だ。
 休み返上だものな。
 車で病院を出る。
 あとは帰る前にこの車を返しに行かなくてはならない。
 大館能代空港まで返しに行くのは大変なので、乗捨てサービスを利用する。
 だが、まずその前にガソリンを満タンにして返さないといけない。

 高橋:「先生、ポイントカード使っていいですか?」
 愛原:「いいよ。こういう時、使うものだな」
 高橋:「はい」

 高橋はしっかり店員にポイントカードを渡している。
 こういう所はしっかりしているな。
 ガソリンを満タンにした後、レンタカーショップに向かう。

 リサ:「何かジメっとしてる……」

 車の状態を店員に見てもらっている間、外に出ていたリサが空を見上げてボソッと言った。

 愛原:「夜は天気が下り坂らしいな。もっとも、東京は降らないみたいだが」

 東北にいる間は雨に当たるだろうか。
 それまでには駅にいたいものだ。

 愛原:「ここから大館駅までは遠いですか?」
 店員:「そうですね……。車で10分ちょっとくらいです」

 すると、駅まで送ってくれるという。
 願ってもない話だ。
 元々、駅からの送迎サービスはやっているらしい。
 レンタカーのうちの1台、バネット・ワゴンに乗り込む。
 横っ腹にレンタカーショップの名前と連絡先がデカデカと書かれているので、送迎用かもしれない。
 ナンバーのひらがなはレンタカーの『わ』になっていたが。
 因みにこれ、タクシーでも使われるタイプである。
 後ろに荷物が多く載せられるので、インバウンド向けに導入したタクシー会社も多々存在する。
 また、私達が東京でレンタカーを借りる際の車でもある。
 料金も安いし、調査に使うので、あまり目立たない商用バン的な車種の方が都合が良いのだ。
 リアシートに3人並んで乗車する。
 いつもは運転席にいる高橋が、今日は助手席の後ろにいるのが何だか……。

 店員:「では出発します」
 愛原:「よろしくお願いします」

 車が走り出す。
 まずは国道7号線に出て市街地を走行する。
 因みに市役所や市立病院のある本当の中心街は、駅から少し距離がある。
 こちらも鉄道忌避伝説でもあったのかと思うくらいだ。
 レンタカーショップも比較的そんな中心部に近い場所にある為に、駅から離れているのである。
 このまま国道7号線だけを行くと遠回りになるので、途中で左折する。
 それは秋田自動車道の側道的な役割を果たす道であった。
 これで直接駅まで行けるわけではなく、また途中で左折する必要があるが、だいぶアクセスは楽である。

[同日16:45.天候:曇 同市内 JR大館駅]

 店員:「駅の真ん前でよろしいですか?」
 愛原:「あ、はい。そこでお願いします」

 車を駅前に止めてもらう。

 店員:「ご利用ありがとうございました」
 愛原:「お世話さまでした」

 さすがに駅前に、これと同じ車種のタクシーが客待ちしているということはなかった。
 首都圏では廃れつつあるプリウスのタクシーが、ワンテンポ、ツーテンポ遅れてまだ地方には配備されている。
 実はプリウスのタクシーは、タクシー会社にとってはそんなに使い勝手の良い車種ではなかったそうだ。
 私達は礼を言って、車から降りた。
 ますます空はどんよりと曇っている。

 愛原:「こりゃ列車が出発する前に、雨が降るかもな」

 私も空を見上げながら駅の中に入った。

 愛原:「まずは帰りのキップだ」

 駅の改札口は自動化されているが、Suicaなどはエリア外で対応していない。
 指定席券売機が1台あったので、私はそれで帰りのキップを購入した。
 “みどりの窓口”でも購入できるし、駅員に言えば指名買いもできるだろうが、それならこの券売機でもできる。
 空いているかどうか少し不安だったが、接続先の東北新幹線の席は空いていた。
 日曜日夜の上り、尚且つコロナ禍とあっては空いているらしい。
 そろそろツアー客も戻りつつあるようだが、長距離となるとなかなか……ということだろうか。
 それでも窓側席はそれなりに埋まっており、3人並んで乗れる座席を探すのが大変だったが……。

 愛原:「あ、1号車空いてた」

 BSAAとの取り決めでは、リサを列車に乗せる場合は先頭車または最後尾ということになっている。
 但し、列車の構造・編成や指定席の都合上、止むを得ない場合は除く。
 その際は申告しなければならない。
 この場合、善場主任に申告ということになるか。
 無事、1号車の座席が取れたのだから問題無し。

〔発券しています。しばらくお待ちください〕

 乗車券が1枚と、新幹線指定席特急券が1枚ってことになるか。
 乗り換え先は“はやぶさ”なので、自由席は無い。

〔キップとお釣りをお取りください。お取り忘れにご注意ください。ありがとうございました〕

 3人分の長距離キップなので、なかなかの値段になった。
 もちろん、交通費は後で精算するのだが……。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」
 高橋:「ありがとうございます」
 リサ:「新幹線、窓側がいい」
 愛原:「はいよ、A席」
 リサ:「ありがとう!」

 新幹線に乗る頃は夜なので、あまり車窓から夜景は望めないと思うが……。

 高橋:「先生、どうします?まだ発車まで少し時間ありますけど……」

 高橋は改札口の上の発車標を指さした。
 17時35分発の盛岡行きは3番線から出るようだが、確かにまだ30分以上も時間がある。

 リサ:「夕食は?」
 愛原:「そうだな……。立ち食いソバとかは無さそうだし、駅弁でもあるかな……。あっ、あとお土産も買わないと!」

 これが秋田駅とか新幹線の止まるような駅なら、少なからず土産物店なんかも併設されているだろうが、ここはどうだろう?
 発車標を見るに、特急列車が停車する駅ではあるようだが……。

 愛原:「すいません。この駅で駅弁とかお土産を売っている場所はありますか?」

 仕方ないので、私は有人改札口にいる駅員に尋ねた。
 “みどりの窓口”もあるだけあって、無人駅ではない。

 駅員:「あちらのNEWDAYSで売ってますよ」
 愛原:「ありがとうございます」

 そう、NEWDAYSもある。
 首都圏の店舗のように、そんなに夜遅くまで営業しているわけではないようだが、少なくとも今は営業している。

 愛原:「NEWDAYSだ。そこで完結できるぞ」
 高橋:「そういえば『お土産』って書いてありましたね」
 愛原:「それを早く言えよ」
 高橋:「サーセン」

 確かに首都圏でも、JR系のコンビニで土産を売っていることは何も珍しいことではない。
 JR東日本系のNEWDAYSはもちろん、JR東海系のベルマートでもそうである。

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