[5月15日00:50.天候:雷雨 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺三門前]
確かに三島駅の時点では曇だった。
そして隣の沼津駅に移動した時、雨が降り出して来てしまった。
それにしても、だ。
稲生:「何これ?」
大石寺へ向かう国道を走るタクシーを雷雨が襲っていた。
鈴木:「た、確かに天気予報、雨マークは付いていたんですが……雷注意報なんて出てなかったですよ?」
タクシーのフロントガラスを大きな雨粒が叩き、ワイパーが規則正しく動いてそれを拭き取っている。
マリア:「おおかた、“魔の者”の妨害だろう。よっぽどあのペンダントを見つけられては困ると見える」
今の“魔の者”はどういうわけだか、直接日本に乗り込むことはできない。
従って、気象などを遠隔操作するしかないか、或いは眷属を使う他は無いのだという。
しかし、気象を遠隔操作できるほどの力を持ちながら、直接日本に乗り込むことはできないとはこれ如何に?
稲生:「“魔の者”の正体は諸天善神の一種なんだろうか……?」
稲生が呟くと、『それ以上言うな!!』とばかりに、国道沿いの樹木に雷が落ちた。
その樹木は煙を上げながら倒木した。
実際に火が出たのか、それが道路を塞いだのかは分からない。
とにかく、この森林地帯を抜けなければ危険だということは分かっていたので、止まるわけにはいかなかった。
稲生:「大石寺だ!」
車窓の向こうにプレハブの建物に包まれた三門が見えた。
鈴木:「すいません、あの三門前で止めてください」
運転手:「あのプレハブの建物の前ですか?分かりました」
稲生は魔道士のローブを着込んだ。
これがレインコート代わりである。
マリアは既に着込んでいる。
稲生:「鈴木君。キミは危険だから、第2ターミナルの待合室の中にいた方がいい」
鈴木:「あ、はい。そうさせてもらいます。料金は俺が払っておきますんで」
稲生:「ありがとう」
タクシーが三門前に止まり、激しい雷雨の中、稲生とマリアはそこで降りた。
2人を降ろすとタクシーが走り出し、それは第2ターミナルへと向かった。
それを確認すると……。
稲生:「どうやって探すんです!?警察でも見つけられなかったヤツですよ?」
マリア:「魔法で探すしかない!」
マリアはローブの中から折り畳んだ紙を出した。
それはすぐに雨で濡れてしまう。
マリア:「風で飛ばされないようにしっかり押さえてて!」
稲生:「その辺の石を探してきます!」
そう。何故か雷だけでなく、風も吹いて来た。
明らかに“魔の者”の遠隔操作である。
確変を遠隔操作するのは違法だと知っていながら、天候までも操作するこの“魔の者”の行動は異常である。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我と契約し悪魔、ベルフェゴールに命ずる。汝の持てる力を使い、ロザリー・ローレンスの遺品たるペンダントを探し出せ。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……」
[同日02:00.天候:雷雨 大石寺第2ターミナル]
鈴木:「いくら何でも雷雨がこんなに長く続くなんて異常だ!やはり先輩達の言うように悪魔は実在するようです!」
第2ターミナルに1台の車がやってきた。
それは黒塗りのベンツGクラス。
藤谷春人の車だった。
ここに到着してから鈴木が状況を藤谷に説明していたのだ。
藤谷:「そりゃそうだ。俺だって北海道で巻き込まれたんだからよ!一応、親父にヘリの出動頼んでおいたぜ!」
鈴木:「ヘリ!?」
藤谷:「あの悪魔と北海道で戦った時、最後にはヘリで脱出したもんだ。親父が幸い、操縦免許持ってたからな」
鈴木:「そ、そんなに!?」
藤谷:「で?今、稲生君とマリアさんはどうしてる?」
鈴木:「あそこで時々、緑色に光るのが見えるんです。多分あれが魔法ですよね?1時間以上やって、ずっとあれなんです」
藤谷:「成果は出てないってことか。それより、あれだ。せっかく来たんだから行くぞ」
鈴木:「どこに!?」
[同日02:30.天候:雷雨 大石寺・客殿]
大石寺の堂宇の1つである客殿。
ここでは毎日欠かさず午前2時半から勤行が行われる。
形態は各末寺で行われる朝の勤行と基本同じであるが、行われる時間帯から丑寅勤行と呼ばれる。
総本山で行われるだけに、ここでは御当代法主上人が導師を務める。
信徒の参加も、もちろん可能。
入口で靴を脱ぐ前に、所属支部だの居住地だの指名だのを記帳する必要があるが。
最初、稲生は藤谷と鈴木に誘われた時、拒否した。
いくら丑寅勤行の功徳が大きいとはいえ、マリアを1人にしては行けないという理由だった。
しかし、藤谷からある言葉を聞いた時、賭けに出ようと思ったのだった。
藤谷:「丑寅勤行とは仏様が悟りを開くと謂われる丑寅の時刻に、猊下様が一切衆生を成仏へと導く為に行われる勤行のことだ。その勤行に参加するということは、猊下様の御衣にすがる思いで一緒に成仏させて頂くという意義があるんだ。こんなありがたい勤行での御祈念までも、あの悪魔が妨害できるはずがない!」
という藤谷の主張に同調した。
雨音や雷鳴が客殿の中にまで聞こえて来る。
藤谷:「分かるか?あの大悪魔が地団太踏んでやがるぜ。ざまぁみろってんだ」
稲生:「はい!」
鈴木:「外で悔しそうに喚いているのが分かりますよ」
藤谷:「よし。皆で御祈念するぞ。マリアさんの探し物が見つかりますようにってな」
稲生:「はい!」
鈴木:「はい!」
[同日03:50.天候:晴 大石寺・客殿]
鈴木:「今日は少し唱題が長かったですね」
藤谷:「フム。猊下様も何か思う所があったのだろう」
稲生:「あれ!?晴れてる!?」
丑寅勤行が終わって客殿の外に出ると、あれだけの雷雨が嘘みたいにピタッと雨が止んでいた。
それどころか空を見上げると、雲が殆ど無くなり、富士山の方には満月が見えていた。
藤谷:「満月ってあれか?西洋じゃ、魔力が高まるって話か?」
稲生:「そうですね。威吹も鬼族のキノも、妖力を持て余してテンションあげあげでした。逆に新月の時は【お察しください】」
鈴木:「それよりマリアさんを心配しましょうよ。一体、どうなったのか?」
稲生:「それもそうだ!」
3人は急ぎ足で三門へと向かった。
確かに三島駅の時点では曇だった。
そして隣の沼津駅に移動した時、雨が降り出して来てしまった。
それにしても、だ。
稲生:「何これ?」
大石寺へ向かう国道を走るタクシーを雷雨が襲っていた。
鈴木:「た、確かに天気予報、雨マークは付いていたんですが……雷注意報なんて出てなかったですよ?」
タクシーのフロントガラスを大きな雨粒が叩き、ワイパーが規則正しく動いてそれを拭き取っている。
マリア:「おおかた、“魔の者”の妨害だろう。よっぽどあのペンダントを見つけられては困ると見える」
今の“魔の者”はどういうわけだか、直接日本に乗り込むことはできない。
従って、気象などを遠隔操作するしかないか、或いは眷属を使う他は無いのだという。
しかし、気象を遠隔操作できるほどの力を持ちながら、直接日本に乗り込むことはできないとはこれ如何に?
稲生:「“魔の者”の正体は諸天善神の一種なんだろうか……?」
稲生が呟くと、『それ以上言うな!!』とばかりに、国道沿いの樹木に雷が落ちた。
その樹木は煙を上げながら倒木した。
実際に火が出たのか、それが道路を塞いだのかは分からない。
とにかく、この森林地帯を抜けなければ危険だということは分かっていたので、止まるわけにはいかなかった。
稲生:「大石寺だ!」
車窓の向こうにプレハブの建物に包まれた三門が見えた。
鈴木:「すいません、あの三門前で止めてください」
運転手:「あのプレハブの建物の前ですか?分かりました」
稲生は魔道士のローブを着込んだ。
これがレインコート代わりである。
マリアは既に着込んでいる。
稲生:「鈴木君。キミは危険だから、第2ターミナルの待合室の中にいた方がいい」
鈴木:「あ、はい。そうさせてもらいます。料金は俺が払っておきますんで」
稲生:「ありがとう」
タクシーが三門前に止まり、激しい雷雨の中、稲生とマリアはそこで降りた。
2人を降ろすとタクシーが走り出し、それは第2ターミナルへと向かった。
それを確認すると……。
稲生:「どうやって探すんです!?警察でも見つけられなかったヤツですよ?」
マリア:「魔法で探すしかない!」
マリアはローブの中から折り畳んだ紙を出した。
それはすぐに雨で濡れてしまう。
マリア:「風で飛ばされないようにしっかり押さえてて!」
稲生:「その辺の石を探してきます!」
そう。何故か雷だけでなく、風も吹いて来た。
明らかに“魔の者”の遠隔操作である。
確変を遠隔操作するのは違法だと知っていながら、天候までも操作するこの“魔の者”の行動は異常である。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我と契約し悪魔、ベルフェゴールに命ずる。汝の持てる力を使い、ロザリー・ローレンスの遺品たるペンダントを探し出せ。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……」
[同日02:00.天候:雷雨 大石寺第2ターミナル]
鈴木:「いくら何でも雷雨がこんなに長く続くなんて異常だ!やはり先輩達の言うように悪魔は実在するようです!」
第2ターミナルに1台の車がやってきた。
それは黒塗りのベンツGクラス。
藤谷春人の車だった。
ここに到着してから鈴木が状況を藤谷に説明していたのだ。
藤谷:「そりゃそうだ。俺だって北海道で巻き込まれたんだからよ!一応、親父にヘリの出動頼んでおいたぜ!」
鈴木:「ヘリ!?」
藤谷:「あの悪魔と北海道で戦った時、最後にはヘリで脱出したもんだ。親父が幸い、操縦免許持ってたからな」
鈴木:「そ、そんなに!?」
藤谷:「で?今、稲生君とマリアさんはどうしてる?」
鈴木:「あそこで時々、緑色に光るのが見えるんです。多分あれが魔法ですよね?1時間以上やって、ずっとあれなんです」
藤谷:「成果は出てないってことか。それより、あれだ。せっかく来たんだから行くぞ」
鈴木:「どこに!?」
[同日02:30.天候:雷雨 大石寺・客殿]
大石寺の堂宇の1つである客殿。
ここでは毎日欠かさず午前2時半から勤行が行われる。
形態は各末寺で行われる朝の勤行と基本同じであるが、行われる時間帯から丑寅勤行と呼ばれる。
総本山で行われるだけに、ここでは御当代法主上人が導師を務める。
信徒の参加も、もちろん可能。
入口で靴を脱ぐ前に、所属支部だの居住地だの指名だのを記帳する必要があるが。
最初、稲生は藤谷と鈴木に誘われた時、拒否した。
いくら丑寅勤行の功徳が大きいとはいえ、マリアを1人にしては行けないという理由だった。
しかし、藤谷からある言葉を聞いた時、賭けに出ようと思ったのだった。
藤谷:「丑寅勤行とは仏様が悟りを開くと謂われる丑寅の時刻に、猊下様が一切衆生を成仏へと導く為に行われる勤行のことだ。その勤行に参加するということは、猊下様の御衣にすがる思いで一緒に成仏させて頂くという意義があるんだ。こんなありがたい勤行での御祈念までも、あの悪魔が妨害できるはずがない!」
という藤谷の主張に同調した。
雨音や雷鳴が客殿の中にまで聞こえて来る。
藤谷:「分かるか?あの大悪魔が地団太踏んでやがるぜ。ざまぁみろってんだ」
稲生:「はい!」
鈴木:「外で悔しそうに喚いているのが分かりますよ」
藤谷:「よし。皆で御祈念するぞ。マリアさんの探し物が見つかりますようにってな」
稲生:「はい!」
鈴木:「はい!」
[同日03:50.天候:晴 大石寺・客殿]
鈴木:「今日は少し唱題が長かったですね」
藤谷:「フム。猊下様も何か思う所があったのだろう」
稲生:「あれ!?晴れてる!?」
丑寅勤行が終わって客殿の外に出ると、あれだけの雷雨が嘘みたいにピタッと雨が止んでいた。
それどころか空を見上げると、雲が殆ど無くなり、富士山の方には満月が見えていた。
藤谷:「満月ってあれか?西洋じゃ、魔力が高まるって話か?」
稲生:「そうですね。威吹も鬼族のキノも、妖力を持て余してテンションあげあげでした。逆に新月の時は【お察しください】」
鈴木:「それよりマリアさんを心配しましょうよ。一体、どうなったのか?」
稲生:「それもそうだ!」
3人は急ぎ足で三門へと向かった。
どこの支部の御信徒さんだか分かりませんが、ご協力ありがとうございます。
え?いや、山内でそういう話を聞いたものでね。
特にソースは無いんですがね。