[5月15日04:00.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・三門前]
ミカエラ:「あーの空の彼方へー♪飛んで行ける日を夢見て♪あーの空の彼方のー♪月へー♪」
クラリス:「月へー♪」
稲生達が三門前に駆け付けると、マリアの使役する人形達の歌声が聞こえて来た。
ミカエラ:「月の見える夜はー♪連れ立ち空を見上げー♪」
富士山をバックに輝く満月に向かってミカエラとクラリスが人形形態で歌っている。
マリアは杖を支えに立っているのがやっとだった。
稲生:「マリアさん!」
マリア:「勇太……これを……」
マリアの手にはずぶ濡れのペンダントが握られていた。
ベルフェゴール:「潤井川の川底に落ちていたよ。いやあ、この“怠惰の悪魔”も数年分は働いた気分だ」
マリアと契約している悪魔、ベルフェゴールは得意げに語っていた。
ベルフェゴール:「ホトケの後押しがあったから良かったものの、他の悪魔の妨害が大変だったよ。後で対価は追徴させて頂こう」
稲生:「御苦労様。それについての話はまた後日。今は契約書が無い」
ベルフェゴール:「了解。だが、なるべく早くして欲しいね」
稲生とベルフェゴールの会話を……。
藤谷:「おい、稲生君は誰と話をしているんだ?」
鈴木:「見えない何か、でしょうね」
ただの人間である藤谷と鈴木には、悪魔の姿は見えない。
ベルフェゴール:「妨害してきた下級悪魔は取りあえず全部、川に沈めておいたから。その分も対価も頂こう」
稲生:「……一応、請求書だけ作って持って来て。話はそれからだ」
ベルフェゴール:「了解」
藤谷:「取りあえず、車回してくる。鈴木君はここで待っててくれ」
鈴木:「分かりました」
[同日04:45.天候:晴 静岡県沼津市 愛鷹(あしたか)パーキングエリア]
藤谷のサービスで始発の“こだま”が出発する三島駅まで乗せてもらえることになった稲生達。
しかしさすがに到着が早過ぎるので、東名高速の富士インターから沼津インターの間にある愛鷹パーキングエリアで時間調整することにした。
マリアはフラフラの状態で、車に乗り込むとすぐに昏睡した。
稲生に寄り掛かって眠る姿は、それほどまでに稲生のことが信頼できる相手ということの表れか。
藤谷:「よし。取りあえずここで時間調整だ」
鈴木:「ちょうどトイレ行きたかったので助かります」
藤谷のベンツは左ハンドルなので、助手席に座る鈴木は進行方向右側に座ることになる。
鈴木が時々乗り回す実家のベンツVクラスは右ハンドルなので、同じベンツでも感覚が違うという。
かつてはケンショーレンジャーの輸送に(半強制的に)使われた。
藤谷:「ここから三島駅までは15分くらいだ。だからだいたい1時間くらいの調整だな」
稲生:「三島市なのに最寄りのインターは沼津なんですね」
藤谷:「そういうことだな。マリアさんは?」
稲生:「まだ寝ています。三島駅まで起きなかったらどうしよう……」
藤谷:「起こすしかないな。本当だったら東京まで乗せてあげたいところなんだが、今夜も工事があるからな……。さすがに昼間は俺も寝ておきたい」
稲生:「いえ、いいんですよ。三島駅まで乗せてもらえるだけでもありがたいです」
稲生は手持ちのスマホでイリーナに連絡した。
見た目はただのペンダントなのだが、確かに何かの魔力が付与されているようには感じた。
しかし、これが解呪の魔法具だったとは……。
イリーナはとにかくルーシーが入院している病院まで、それを持って来るように指示した。
こうしている間にも、ルーシーの容態は刻々と悪くなっているのだという。
何しろ強力な悪魔の呪いだ。
“魔の者”がイリーナに自慢したように、そもそも病気ではないのだから、病院に行った所で治るわけがない。
藤谷:「俺は一服してくるよ。小さいパーキングでも喫煙所くらいはあるからな」
稲生:「はい」
鈴木はトイレへ、藤谷は喫煙所へ向かった。
車内には藤谷が掛けているジャズが流れている。
質実剛健な藤谷の聴く音楽はジャズであるらしい。
以前、正証寺の愛唱歌を作ろうとした時、好きなジャズに歌詞をつけたものにしたら、ものの見事に総スカンを食らっていた。
マリア:「う……」
稲生:「マリアさん?大丈夫ですか?」
マリア:「疲れた……」
稲生:「あれだけ大量のMPを消費しましたからね。どうか、無理はしないで……」
マリア:「ここどこ……?」
稲生:「東名高速道路の愛鷹パーキングエリアという所です。今、大石寺から藤谷班長の車で三島駅に向かっている最中です。時間調整の為、ここで休憩してるんですよ」
マリア:「そう……」
マリアは車窓を見た。
まだ外は薄暗い。
マリア:「師匠には連絡した……?」
稲生:「僕からしておきました。例のペンダントを持って来るようにとのことです」
マリア:「ルーシーが危ない。急がないと、呪い殺される……」
稲生:「ええ。だから班長が車で三島駅まで送ってくれるんです。そこから始発の新幹線に乗れば、また1時間足らずで東京へ帰れますよ」
マリア:「師匠は何か言ってた?」
稲生:「いえ、何も。ただ、急いでくれというだけで」
マリア:「そう……。それなら……勇太のルートで大丈夫……だと思う……」
稲生:「まだ時間がありますから、ゆっくり休んでてください」
マリア:「うん……。トイレ行きたい……」
稲生:「あ、ハイハイ」
稲生は先に降りた。
稲生:「車高の高い車だから気をつけて……」
いつどこでまた“魔の者”が狙っているか分からない。
ペンダントは肌身離さず持っておく必要がある。
とにかく、イリーナと合流するまでは油断がならない。
ミカエラ:「あーの空の彼方へー♪飛んで行ける日を夢見て♪あーの空の彼方のー♪月へー♪」
クラリス:「月へー♪」
稲生達が三門前に駆け付けると、マリアの使役する人形達の歌声が聞こえて来た。
ミカエラ:「月の見える夜はー♪連れ立ち空を見上げー♪」
富士山をバックに輝く満月に向かってミカエラとクラリスが人形形態で歌っている。
マリアは杖を支えに立っているのがやっとだった。
稲生:「マリアさん!」
マリア:「勇太……これを……」
マリアの手にはずぶ濡れのペンダントが握られていた。
ベルフェゴール:「潤井川の川底に落ちていたよ。いやあ、この“怠惰の悪魔”も数年分は働いた気分だ」
マリアと契約している悪魔、ベルフェゴールは得意げに語っていた。
ベルフェゴール:「ホトケの後押しがあったから良かったものの、他の悪魔の妨害が大変だったよ。後で対価は追徴させて頂こう」
稲生:「御苦労様。それについての話はまた後日。今は契約書が無い」
ベルフェゴール:「了解。だが、なるべく早くして欲しいね」
稲生とベルフェゴールの会話を……。
藤谷:「おい、稲生君は誰と話をしているんだ?」
鈴木:「見えない何か、でしょうね」
ただの人間である藤谷と鈴木には、悪魔の姿は見えない。
ベルフェゴール:「妨害してきた下級悪魔は取りあえず全部、川に沈めておいたから。その分も対価も頂こう」
稲生:「……一応、請求書だけ作って持って来て。話はそれからだ」
ベルフェゴール:「了解」
藤谷:「取りあえず、車回してくる。鈴木君はここで待っててくれ」
鈴木:「分かりました」
[同日04:45.天候:晴 静岡県沼津市 愛鷹(あしたか)パーキングエリア]
藤谷のサービスで始発の“こだま”が出発する三島駅まで乗せてもらえることになった稲生達。
しかしさすがに到着が早過ぎるので、東名高速の富士インターから沼津インターの間にある愛鷹パーキングエリアで時間調整することにした。
マリアはフラフラの状態で、車に乗り込むとすぐに昏睡した。
稲生に寄り掛かって眠る姿は、それほどまでに稲生のことが信頼できる相手ということの表れか。
藤谷:「よし。取りあえずここで時間調整だ」
鈴木:「ちょうどトイレ行きたかったので助かります」
藤谷のベンツは左ハンドルなので、助手席に座る鈴木は進行方向右側に座ることになる。
鈴木が時々乗り回す実家のベンツVクラスは右ハンドルなので、同じベンツでも感覚が違うという。
かつてはケンショーレンジャーの輸送に(半強制的に)使われた。
藤谷:「ここから三島駅までは15分くらいだ。だからだいたい1時間くらいの調整だな」
稲生:「三島市なのに最寄りのインターは沼津なんですね」
藤谷:「そういうことだな。マリアさんは?」
稲生:「まだ寝ています。三島駅まで起きなかったらどうしよう……」
藤谷:「起こすしかないな。本当だったら東京まで乗せてあげたいところなんだが、今夜も工事があるからな……。さすがに昼間は俺も寝ておきたい」
稲生:「いえ、いいんですよ。三島駅まで乗せてもらえるだけでもありがたいです」
稲生は手持ちのスマホでイリーナに連絡した。
見た目はただのペンダントなのだが、確かに何かの魔力が付与されているようには感じた。
しかし、これが解呪の魔法具だったとは……。
イリーナはとにかくルーシーが入院している病院まで、それを持って来るように指示した。
こうしている間にも、ルーシーの容態は刻々と悪くなっているのだという。
何しろ強力な悪魔の呪いだ。
“魔の者”がイリーナに自慢したように、そもそも病気ではないのだから、病院に行った所で治るわけがない。
藤谷:「俺は一服してくるよ。小さいパーキングでも喫煙所くらいはあるからな」
稲生:「はい」
鈴木はトイレへ、藤谷は喫煙所へ向かった。
車内には藤谷が掛けているジャズが流れている。
質実剛健な藤谷の聴く音楽はジャズであるらしい。
以前、正証寺の愛唱歌を作ろうとした時、好きなジャズに歌詞をつけたものにしたら、ものの見事に総スカンを食らっていた。
マリア:「う……」
稲生:「マリアさん?大丈夫ですか?」
マリア:「疲れた……」
稲生:「あれだけ大量のMPを消費しましたからね。どうか、無理はしないで……」
マリア:「ここどこ……?」
稲生:「東名高速道路の愛鷹パーキングエリアという所です。今、大石寺から藤谷班長の車で三島駅に向かっている最中です。時間調整の為、ここで休憩してるんですよ」
マリア:「そう……」
マリアは車窓を見た。
まだ外は薄暗い。
マリア:「師匠には連絡した……?」
稲生:「僕からしておきました。例のペンダントを持って来るようにとのことです」
マリア:「ルーシーが危ない。急がないと、呪い殺される……」
稲生:「ええ。だから班長が車で三島駅まで送ってくれるんです。そこから始発の新幹線に乗れば、また1時間足らずで東京へ帰れますよ」
マリア:「師匠は何か言ってた?」
稲生:「いえ、何も。ただ、急いでくれというだけで」
マリア:「そう……。それなら……勇太のルートで大丈夫……だと思う……」
稲生:「まだ時間がありますから、ゆっくり休んでてください」
マリア:「うん……。トイレ行きたい……」
稲生:「あ、ハイハイ」
稲生は先に降りた。
稲生:「車高の高い車だから気をつけて……」
いつどこでまた“魔の者”が狙っているか分からない。
ペンダントは肌身離さず持っておく必要がある。
とにかく、イリーナと合流するまでは油断がならない。
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