報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「雪中行軍」 3

2014-02-21 21:45:01 | 日記
[同日10:30.タクシー車内 ユタ、威吹、カンジ]

「凄い雪だねぇ……」
 大石寺周辺は深い雪に包まれていた。
「全然除雪されていない……」
 何しろここに来る途中、国道が通行止めになっていたくらいだ。
「この大石寺までが限界らしいですよ」
 と、運転手。
「白糸の滝とかは完全に行けなくなっているようです」
「身延線も富士〜西富士宮間だけの運転で、それ以北は終日運休だっていうからね」
「三門前でいいんですね?」
「はい」
 タクシーは三門前で止まった。
「ユタ、ボクが払っておくよ」
「ああ、悪い」
 ユタは先にタクシーを降りた。
 辛うじて、歩ける幅が除雪されているくらい……か?
「カンジ君、大丈夫?」
「なるほど。先生が辟易される理由が分かります」
「そうか。カンジ君は普段は人間の姿だから、逆に影響が無いのか」
「ええ。ですので、先生の方が心配です」
「一応、朝の勤行で御祈念はしてきたんだけどねぇ……」
 ユタは首を傾げた。
「前よりは少し慣れた……かも」
 それでも、あまり気分の良さそうではない顔で威吹もタクシーを降りた。
「それより、急がなきゃ。もう着山受付してる」
「じゃあユタ、僕達は適当にこの辺にいるから」
「ああ」
「雪女の気配が僅かにあるから気をつけて」
「境内に入って来るかい?」
「それは無いと思うけど……」

[同日10時45分 とある塔中坊 稲生ユウタ]

「おはようございます!すいません!遅くなりました!」
 シーン……。
「あ、あれ?もしかして、置いてかれた?でも、布教講演は11時20分からだよなぁ……???」
 とにかく、靴を脱いで上がる。
「失礼しまーす」
 休憩所に指定されている広間に入ると……。
「ふえ!?」
 前に支部登山に来た際は、座る場所を探さないといけないくらい賑わっていたが、
「あ、あの……他の皆さんは?」
「まだ到着していないよ。この雪でね……」
 と、他地区と思われる男性信徒が答えた。
「ええっ!?だって、10人くらいしかいませんよ!?」
「『ったく。皆、根性無ェよなぁ』って、どっかのバカ鬼が嘯いてたぞ?」
 背後から声を掛けられる。
「あっ、栗原さん!?」
「よっ。さすが妖狐の護衛付きだね」
 栗原江蓮だった。
 この大広間では恐らく1番、最年少だろう。
 着ている高校の制服だけ見ると、普通の女子高生にしか見えない。
「栗原さんはどうやって来たの?」
「鬼門の車」
「東名高速、通行止めだったでしょ?」
「魔境、通って来たから」
「抜け道みたいな感覚で通っていいものなのかい?」
 因みにここで言う魔境とは、魔界の入口辺りに存在している平原のことである。
 妖狐の里もこのエリアにある。
「稲生さんは一泊?」
「いや、日帰りだよ。……って、栗原さんは?」
「泊まり」
「マジで?」
「“江蓮”が泊まれってうるせーんだよ。拒否ると、アタマ痛くなるし……」
「魂の江蓮さんは成仏したんだよね?」
「意外と地獄界に逝ってるかもよ?」
「まさか……」
「でなきゃ、中3で死ぬわけねーよ」
「…………」
「おっと。辛気臭くなったかな。で?藤谷さんは?」
「あ、まだ見てないな。班長は夜通しかけて、こっちに来るって話だよ」
「また無謀なことを……」
「ちょっと電話してみよう」
 ユタはケータイを出すと、藤谷に電話してみた。
「あ、もしもし?おはようございます。稲生ですけど班長、今どこに……は!?……何ですか!?」
{「だから!妖怪同士の抗争に巻き込まれて、到着できそうにねぇ!」}
「今どこにいるんですか!?」
{「取りあえず国道469号上にいるけど、もしかしたら通行止め区間を突破しちまったらしい」}
「はい!?」
{「登山部長は到着してるはずだから、着山整理券は登山部長に渡してくれ」}
「あ、あの、もし良かったら、威吹達にヘルプを……あっ、切れた。な、何があったんだ?」
「なに?遭難した?」

[同日10時00 静岡県富士宮市内 国道469号線 藤谷春人&???]

「ったくもう!この車は雪上車じゃねーんだぜ!?」
 雪道を走る1台のベンツ。
 但し、いつものEクラスではない。SUV型のもので、ナンバーも所沢ナンバーである。
「埼玉の従兄から借りてきて正解だったけどよ……」
 一応、駆動輪にはチェーンを巻いている。
「日蓮大聖人の信徒を巻き込んだからには分かってんだろうなぁ!?おい!」
 藤谷は助手席に座る者を睨みつけた。
「お礼ならきちんとします。だから助けて!」
 助手席にいるのは白い着物を着た若い女性。但し、緑色の袴をはいていた。
 青みがかった髪はセミロングで、肌は外に広がる雪景色のように白い。
「本当にこの先にいるのか?あーっと……。アンタ、名前は?」
「雪奈です」
「ああ、そう。見た目雪女でいかにもって感じだな」
「ええ。雪女ですから」
「あー、そうかよ。通りでさっきから寒いと思ったぜ」
「雪女郎連合会東海支部富士地区の雪奈と申します。妖怪退治屋に友達をさらわれて……!」
「法華講連合会のパクりかよ。てか、この時代に妖怪退治屋なんているのか?」
「はい」
「どこの何てヤツだよ?」
「確か……ケンショーレンジャーと……」
「はあ!?……まだ生きてやがったのか、あの連中!よーし、こうなったら乗りかかったバスだ!破折してやろうじゃねーか!」
(乗りかかった舟……よね?いえ、それより……)
「あの、私、本当に雪女なんですよ?」
「見りゃ分かるっての。雪女がガングロ肌のビッチなわけねーだろ」
「怖くないんですか?」
「うるせー女だな。こちとら狐妖怪と鬼に知り合いがいるんだ。今更、雪女なんざ怖くねーぜ」
「……!」
「あ?何か車が見えてきた?」
「あれです!あの車です!」

[同日同時刻 先行の軽トラ ケンショーレンジャー]

 その軽トラを運転しているのはブルー。助手席にはホワイト。荷台にいるのはレッド、イエロー、グリーンであった。
「ああっ!?法華講の連中を折伏しに行こうと思ったら、いい女手に入って功徳だぜ!」
「ちょっと!あんな貧相な女のどこがいいの!何度も言わせないでちょうだい!ねぇっ!」
「グリーン。これがかの有名な雪女か。どれどれ、ワシがちと味見をば……」
「クフフフフ……。私の分析によりますと、人間換算年齢20歳前後、スリーサイズは上から……」
「ぇそれよりもですね、ぇ早いとこアジトに戻って、ぇゆっくり味わうのが、ぇベストでしょ?」
 シュルシュル……(雪女の白い袴の帯をグリーンがいやらしく解いている)
「こりゃ、グリーン!つまみ食いはイカンぞ!」
「私の分析によりますと、こういう着物を着ている女性に限りまして、パンティーは派手なのをはいていますね」
「ああっ!?グリーン!てめー!うらやましいじゃねぇか!もうちょっとで車止めるから、俺にもヤらせろ!1度、女の着物をビリビリに裂いてみたかったんだぜ!ああっ!?」
「ぇそれよりもですね、ぇベタな法則で、ぇ帯を『あ〜れ〜』とやるのが、ぇ定番でしょ?」
「黙らんか、レッド!袴をはいているというのに、そんな帯などあるわけないじゃろう!」
「ハァハァ……!」
 ↑グリーンが脱がした袴の匂いを嗅いでいる。
「ちょっと!後ろ気をつけてよ!ねぇっ!何か追ってくるわよ!」
「なにっ!?」

[同時刻 10時45分 軽トラ&ベンツGクラス]

「おう、コラ!待てやーっ!!」
 パッパーッとクラクションを鳴らす藤谷。
 しかし、軽トラは止まる気配が無い。
「東京第3布教区、正証寺支部法華講、藤谷春人をナメんなよ!」
「氷奈を返して!」
「ちっ!人質さえいなけりゃ、体当たりしてやるんだが……。てか、今気づいた。雪女なんだから、あの軽トラごと凍らせたらどうだ?」
「連合会の決まりで、今は無闇やたらに人間を襲えないの!」
「趣旨は立派だが、それどころじゃねぇだろ。仲間のピンチなんだから。……あ、そうだ」
 藤谷は更に思いついた。
直接襲っちゃダメなんだろ?ちょうど今、いい区間に来た」
 藤谷は雪奈に作戦を伝授した。
「……な?それなら、アンタも規則違反じゃねーだろ?」
「……分かったわ」
「よし、行くぞ!」
 藤谷はあえて、軽トラと車間距離を取った。

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