[12月28日10:00.天候:雪 長野県白馬村 白馬八方バスターミナル]
村のバスターミナルの前に、1台の高級車が止まる。
その中から降りてきたのは、稲生とマリアとイリーナ。
トランクを開けてもらい、イリーナの操る幻魔獣が化けた寡黙な運転手が荷物を降ろした。
稲生:「吹雪じゃないけど、凄い雪だ。早く中に入りましょう」
スキーで有名な村なだけに、冬季の積雪は凄いものだ。
3人は急いでターミナルの中に入った。
稲生:「10時15分発、成田空港行きです。まだ少し時間がありますね」
イリーナ:「そうね。ゴメンね、付き合わせちゃって……」
稲生:「いえ……」
ダンテ一門の創始者であり、総師範でもあるダンテ・アリギエーリがアメリカから来日することが分かった。
その為、日本を拠点としているイリーナ組が出迎えることになったのである。
日本を拠点としている組はポーリン組もあるが、実際はエレーナが単身で修行しているだけであり、当の師匠たるポーリンは魔界王国アルカディアの宮廷魔導師を務めており、リリアンヌもまた魔王城で修行していることもあってか、実際の拠点は魔界ということになる。
また、アナスタシア組にあっては、あくまでも日本にも中継点を設けているというだけであり、実際の拠点はロシアである。
その為、名実共に拠点になっているイリーナ組に白羽の矢が立つのは当然だった。
稲生:「この時期は成田空港や羽田空港にもバスが出ているので助かりますよ」
稲生はバスの乗車券を見た。
10時15分に出発して、16時10分に成田空港第1ターミナルに到着することになっている。
そして今日は成田空港近辺のホテルに一泊し、翌日に稲生とマリアは大宮へ、イリーナとダンテは東京へと移動する。
稲生:「でも、いいんですか?僕達まで同じホテルに泊まった上、明日は別行動でいいって……」
イリーナ:「本来は私達、ダンテ先生の直弟子だけが集まる会合があるの。だから、あなた達は先に行っていいわ」
稲生:「分かりました」
そんなことを話しているうちに、成田空港行きのバスがやってきた。
稲生:「スーパーハイデッカーだな……」
通常の観光バスや高速バスよりも、客席の高さが更に一段高いタイプを言う。
高速バスにも使用されることはあるが、あまり無いパターンだろう。
眺望には優れているが、スピード感はその分落ちる。
大きな荷物はトランクに預け、車内に入ると……。
稲生:「3列シートだ……」
但し、夜行バスでお馴染みの独立3列シートではない。
進行方向右側に1人席が、左側に2人席が並んでいるタイプであった。
そして、どこにもトイレは見当たらない。
座席自体は広く、長距離向けである。
稲生:「おっ、Wi-Fi入る」
マリア:「良かったな」
マリアの人形、ミク人形とハク人形は荷棚という定位置はお約束。
イリーナは1人席に腰掛けると、すぐ寝入る体勢を取った。
尚、毛布付きである。
イリーナ:「雪なんて、日本に来なきゃ体験できないよ」
イリーナはバスに乗り込む僅かな隙についた雪を払い落した。
稲生:「御冗談でしょう?ロシアじゃ……」
イリーナ:「あの、クソ寒い所だから必ず雪が降るってわけじゃないからね?」
マリア:「ロシアでも雪が沢山降る所と、そうでない所があるんだ。師匠の場合は、降らない地域の生まれってこと」
稲生:「そうなんですか」
マリア:「因みにアナスタシア師は、雪が沢山降る地域出身」
稲生:「なるほど……」
バスは9割程の乗客を乗せて、10時15分に出発した。
尚、乗り込む際にチラッと座席表を見ると満席っぽかったから、途中の白馬駅前や白馬五竜バス停からも乗客が乗り込んでくるのだろう。
大型バスならではの大きなワイパーブレードが、規則正しく動いて雪をこそげ取っているのがフロントガラスを見れば分かる。
成田空港行きならではの外国人乗客もそれなりに多かったが、白人客はどうもイリーナとマリアだけのようだった。
あとは中韓からの旅行客辺りか。
それっぽい言語が、車内のあちこちから聞こえてくる。
マリア:「夕方ぐらいに着くみたいだけど、これはランチタイムとかあるの?アメリカのグレイハウンドみたいに」
稲生:「いや、無いっぽいですね。途中休憩地で買い込むしか無いみたいです」
マリア:「そうか……」
マリアはローブを脱いだ。
その下の緑色のブレザーが稲生の目に飛び込んでくる。
稲生:「因みにこの寒い中、アイスクリームは……」
ミク人形:「食べる!」
ハク人形:「食べる!」
既にアイスの棒を持って主張するマリアの手作り人形が2体。
尚、かつてはフランス人形のようなドレス、その次はメイド服を着ていたのだが、今は着物に変わっている。
すっかり気に入って、今では普段から着るようになってしまった。
但し、人間形態になった場合はその限りではなく、メイド服に戻っている。
稲生:「やっぱり……」
マリア:「最初の休憩地は?新宿行きと同じ所か?」
稲生:「いや……東部湯の丸パーキングエリア?という所みたいですね。その次が三芳……ん?埼玉県?あれ?もしかして、新宿行きと経路が違う?」
そう。
バスタ新宿行きは中央高速を通るのに対し、成田空港行きは上信越道と関越道を通るというルートである。
稲生:「ふーん……?どうしてだろ?」
マリア:「何かヤバいのか?」
稲生:「いえ、そんなことはないと……思いますけど。ま、僕は初めて通るルートですね」
マリア:「いや、私もだって。師匠は……」
イリーナ:「クカー……」
マリア:「論外……だな」
稲生:「は、はあ……」
バスは途中の白馬駅前、白馬五竜バス停で乗客を乗せると、ついに満席となった。
但し、圧迫感があまり無いのは、独立ではないとはいえ3列シートであり、シートピッチもそれなりに広く取られているからであろう。
トイレが無いのがやや不安だが、予言者の能力も持つイリーナが暢気に寝ているので、まあ大丈夫なのだろう。
村のバスターミナルの前に、1台の高級車が止まる。
その中から降りてきたのは、稲生とマリアとイリーナ。
トランクを開けてもらい、イリーナの操る幻魔獣が化けた寡黙な運転手が荷物を降ろした。
稲生:「吹雪じゃないけど、凄い雪だ。早く中に入りましょう」
スキーで有名な村なだけに、冬季の積雪は凄いものだ。
3人は急いでターミナルの中に入った。
稲生:「10時15分発、成田空港行きです。まだ少し時間がありますね」
イリーナ:「そうね。ゴメンね、付き合わせちゃって……」
稲生:「いえ……」
ダンテ一門の創始者であり、総師範でもあるダンテ・アリギエーリがアメリカから来日することが分かった。
その為、日本を拠点としているイリーナ組が出迎えることになったのである。
日本を拠点としている組はポーリン組もあるが、実際はエレーナが単身で修行しているだけであり、当の師匠たるポーリンは魔界王国アルカディアの宮廷魔導師を務めており、リリアンヌもまた魔王城で修行していることもあってか、実際の拠点は魔界ということになる。
また、アナスタシア組にあっては、あくまでも日本にも中継点を設けているというだけであり、実際の拠点はロシアである。
その為、名実共に拠点になっているイリーナ組に白羽の矢が立つのは当然だった。
稲生:「この時期は成田空港や羽田空港にもバスが出ているので助かりますよ」
稲生はバスの乗車券を見た。
10時15分に出発して、16時10分に成田空港第1ターミナルに到着することになっている。
そして今日は成田空港近辺のホテルに一泊し、翌日に稲生とマリアは大宮へ、イリーナとダンテは東京へと移動する。
稲生:「でも、いいんですか?僕達まで同じホテルに泊まった上、明日は別行動でいいって……」
イリーナ:「本来は私達、ダンテ先生の直弟子だけが集まる会合があるの。だから、あなた達は先に行っていいわ」
稲生:「分かりました」
そんなことを話しているうちに、成田空港行きのバスがやってきた。
稲生:「スーパーハイデッカーだな……」
通常の観光バスや高速バスよりも、客席の高さが更に一段高いタイプを言う。
高速バスにも使用されることはあるが、あまり無いパターンだろう。
眺望には優れているが、スピード感はその分落ちる。
大きな荷物はトランクに預け、車内に入ると……。
稲生:「3列シートだ……」
但し、夜行バスでお馴染みの独立3列シートではない。
進行方向右側に1人席が、左側に2人席が並んでいるタイプであった。
そして、どこにもトイレは見当たらない。
座席自体は広く、長距離向けである。
稲生:「おっ、Wi-Fi入る」
マリア:「良かったな」
マリアの人形、ミク人形とハク人形は荷棚という定位置はお約束。
イリーナは1人席に腰掛けると、すぐ寝入る体勢を取った。
尚、毛布付きである。
イリーナ:「雪なんて、日本に来なきゃ体験できないよ」
イリーナはバスに乗り込む僅かな隙についた雪を払い落した。
稲生:「御冗談でしょう?ロシアじゃ……」
イリーナ:「あの、クソ寒い所だから必ず雪が降るってわけじゃないからね?」
マリア:「ロシアでも雪が沢山降る所と、そうでない所があるんだ。師匠の場合は、降らない地域の生まれってこと」
稲生:「そうなんですか」
マリア:「因みにアナスタシア師は、雪が沢山降る地域出身」
稲生:「なるほど……」
バスは9割程の乗客を乗せて、10時15分に出発した。
尚、乗り込む際にチラッと座席表を見ると満席っぽかったから、途中の白馬駅前や白馬五竜バス停からも乗客が乗り込んでくるのだろう。
大型バスならではの大きなワイパーブレードが、規則正しく動いて雪をこそげ取っているのがフロントガラスを見れば分かる。
成田空港行きならではの外国人乗客もそれなりに多かったが、白人客はどうもイリーナとマリアだけのようだった。
あとは中韓からの旅行客辺りか。
それっぽい言語が、車内のあちこちから聞こえてくる。
マリア:「夕方ぐらいに着くみたいだけど、これはランチタイムとかあるの?アメリカのグレイハウンドみたいに」
稲生:「いや、無いっぽいですね。途中休憩地で買い込むしか無いみたいです」
マリア:「そうか……」
マリアはローブを脱いだ。
その下の緑色のブレザーが稲生の目に飛び込んでくる。
稲生:「因みにこの寒い中、アイスクリームは……」
ミク人形:「食べる!」
ハク人形:「食べる!」
既にアイスの棒を持って主張するマリアの手作り人形が2体。
尚、かつてはフランス人形のようなドレス、その次はメイド服を着ていたのだが、今は着物に変わっている。
すっかり気に入って、今では普段から着るようになってしまった。
但し、人間形態になった場合はその限りではなく、メイド服に戻っている。
稲生:「やっぱり……」
マリア:「最初の休憩地は?新宿行きと同じ所か?」
稲生:「いや……東部湯の丸パーキングエリア?という所みたいですね。その次が三芳……ん?埼玉県?あれ?もしかして、新宿行きと経路が違う?」
そう。
バスタ新宿行きは中央高速を通るのに対し、成田空港行きは上信越道と関越道を通るというルートである。
稲生:「ふーん……?どうしてだろ?」
マリア:「何かヤバいのか?」
稲生:「いえ、そんなことはないと……思いますけど。ま、僕は初めて通るルートですね」
マリア:「いや、私もだって。師匠は……」
イリーナ:「クカー……」
マリア:「論外……だな」
稲生:「は、はあ……」
バスは途中の白馬駅前、白馬五竜バス停で乗客を乗せると、ついに満席となった。
但し、圧迫感があまり無いのは、独立ではないとはいえ3列シートであり、シートピッチもそれなりに広く取られているからであろう。
トイレが無いのがやや不安だが、予言者の能力も持つイリーナが暢気に寝ているので、まあ大丈夫なのだろう。
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編成はE5系の10両編成だ。
なに、年末年始に休みが取れたので、ちょいと帰省しようかと。
仕事帰り、新幹線でのビールは格別だ。
それだけに指定席は普通車はもちろん、グリーン車からグランクラスまで満席。
自由席は立ち客も出るほどだ。
私の乗った席はどこかというと、【お察しください】。