報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「最終日の終わり」

2020-03-29 16:02:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日18:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター2F食堂]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 本来なら取るべきではないはずの夕食を私達は取っている。
 今日はハンバーグ定食が出た。

 愛原:「2人とも、今日の実験ご苦労さん。実験ばかりで疲れただろう。善場主任が、この本館の隣にある体育館を開放してくれた。食後はそこで自由に運動していいそうだ」
 リサ:「おー、気晴らしになりそう。サイトー、バレーやろ!それともバスケ!?卓球!?」
 絵恋:「私は……何でも」

 恐らくはまあ、彼女らの運動能力を見る為の実験も兼ねているだろうな。
 因みに今日の実験の最中、絵恋さんが人外化したり暴れ出すというようなことはなく、むしろずっと眠ったままだった。
 そして、今は普通に人間の姿に戻っている。
 しょうがないことだが、寝過ぎてダルいといった感じだ。

 高野:「寝過ぎたせいで、夜眠れないかもね。いっぱい運動した方がいいかもね」
 リサ:「うん」

 その辺はリサの方が楽しみらしく、今日は絵恋さんが異常無しということで、リサの方が食欲があった。

[同日19:00.天候:晴 同センター1F体育館]

 体育館へは本館1階から行けた。
 医務室の前を通ると非常口があるが、非常時以外はカードキーで解施錠することになる。
 それまで私達のビジターカードではその権限が無かったが、善場主任の計らいということもあり、私達にもそこへのアクセス権限が与えられた。
 体育館は学校のそれより一回り小さいくらい。
 バスケットゴールもあったし、バレーボールのネットもあった。
 元々学校のジャージを着ていたリサと絵恋さんだったから、ボールさえあればすぐに運動できた。
 で、高橋と高野君も……。

 高橋:「今度こそ決着付けてやんぜ!」
 高野:「やれるもんならやってみな!」

 卓球台を出してきて、卓球に興じていた。
 超高速ラリーが続くのは見え見えだ。
 少女達は途中で暑くなったのか、ジャージの上下を脱いでTシャツにショートパンツ姿になった。
 Tシャツはさすがに寒いのではないかと思うが、意にも介さない彼女達を見るに、それはただ単に若いからなのか、或いはBOWだからなのか……。
 さすがに今時分、下はブルマーではなくショートパンツなんだな。

 善場:「愛原所長、ちょっとよろしいでしょうか?」

 私が彼らの様子を見ていると、後ろから善場主任が話し掛けて来た。

 愛原:「あ、はい。何でしょうか?」
 善場:「斉藤絵恋さんに現れているBOWの特徴ですが、どうやらCウィルスとTアビスのワクチンが体内で合成されてできた結果のようです」
 愛原:「ワクチンを接種してBOWになるとは、皮肉というか何と言うか……」
 善場:「現実は映画と違うということでしょう。そういったメディアの世界では、ワクチンさえ投与すれば、あとはもう安心的な流れになっておりますが……」
 愛原:「それで?」
 善場:「Tアビスの感染者は、生きている人間の血を求めるウーズというクリーチャーに変化するわけですが、斉藤さんの場合、それをCウィルスが阻止して人間の姿を維持させているようです。ところが、Cウィルスの方がちょっとよく分からなくて……」
 愛原:「分からない?」
 善場:「ええ。斉藤さんに現れた特徴の1つに、体内から高圧電流を放出するというものがあります。これはTウィルスとGウィルスを合成させた物を投与すると現れる特徴なんですが、斉藤さんにはGウィルスが投与された形跡はありませんでした」
 愛原:「そうなの!?」
 善場:「Gウィルスは基本的に『感染』するものではなく、遺伝子操作の為に投与する『薬剤』に近いのです。かのアメリカ政府エージェント、シェリー・バーキン氏はそれを父親で開発者のウィリアム・バーキン博士に投与され、BOW化しそうになった為にワクチンを投与したとされています。ですが、本来の疫病の感染とは違いますので、そのワクチンはそれ以上製造されなかったようです。なので、さしもの斉藤社長でも手に入らず、令嬢の絵恋さんに投与させることはできなかったものと考えられます」
 愛原:「それじゃ、高圧電流の原因は?」
 善場:「もう1つあります。それが強化型Cウィルスです」
 愛原:「強化型Cウィルス?」
 善場:「従来のCウィルスにその抗体を持つ人間の遺伝子情報を混合させ、更に強化したCウィルスです。ネオ・アンブレラの黒幕で、とある秘密結社のボスでもあったアメリカ大統領補佐官が、それをネオ・アンブレラの科学者カーラ・ラダメス博士に投与され、香港で非業の死を遂げたことは有名です」
 愛原:「あれは完全にネオ・アンブレラの内ゲバだろう?アメリカや香港を巻き込んで、とんでもない奴らだったな」

 そういうわけで、BSAAやアメリカ政府エージェントなどの活躍により、ネオ・アンブレラもまた潰された。
 潰されたというよりは、ほぼ内部崩壊しかかっていた所に止めを刺してやったといったところか。
 尚、このネオ・アンブレラは現在の“青いアンブレラ”とは無関係とされている。

 愛原:「絵恋さんはその強化型Cウィルスを投与されているということなのか?」
 善場:「恐らくは……。あくまでもCウィルスの強化型というか改良版ですので、検査では見分けが付かないのです。ただ、強化型Cウィルスを投与したBSAAの副隊長がBOW化しつつも、強い意志を持ってその支配を死の間際まで避けられたという報告があります。で、その副隊長は正に今の絵恋さんみたいに高圧電流を放つことで、敵を倒していたとのことです」
 愛原:「ふーん……。その副隊長さんは?」
 善場:「殉職しました。さすがにBOW化が自分では止められないと悟り、自爆するネオ・アンブレラの施設に留まったそうです」
 愛原:「しかし絵恋さんはあの通り、人間の姿のままだ」
 善場:「そうですね。CウィルスとTアビスがちょうどバランス良く、お互いを牽制し合っているようです」
 愛原:「そのバランスが崩れたら?」
 善場:「あのリサ・トレヴァーよりも恐ろしいBOWとなり、新型コロナウィルスのパンデミックより恐ろしいことが起きるでしょう」
 愛原:「最悪、霧生市の再来が起きるわけか……。今は綱渡りの状態だな」
 善場:「そういうことです」
 愛原:「リサだって最初はそういう状態だったはずだ。しかし今は綱ではなく橋が架かり、その橋も更に強化されて手すりも付いて安全な状態になっている。絵恋さんもそういう状態にできないかな?日本政府としても、ホワイトなBOWが1人より2人いた方がいいんじゃないの?」
 善場:「それは同意見です」

 日本は非核三原則のせいで核兵器を持つことができない。
 しかし周辺国からの脅威は重大だ。
 核兵器並みの力があって、更にスパイ活動もできるBOWは正に打ってつけなのである。

 善場:「もしかしたら、斉藤さんのBOW化を極力抑えられる薬を開発できるかもしれません。明日もう一日、お時間を頂ければと思います」
 愛原:「分かりました。……ん?分からないというのは?」
 善場:「もし仮に斉藤さんに強化型Cウィルスが投与されたのだとしたら、それをしたのは誰なのだろう?ということになります」
 愛原:「父親の斉藤社長じゃないの?」
 善場:「それが、強化型Cウィルスは試作の段階で開発者のカーラ博士が死亡し、ネオ・アンブレラも崩壊した為に世には出ていないのです。その製造法もBSAAでは押収できておらず、実質的にカーラ博士しか製造法を知らないわけです。しかし、そのカーラ博士も死亡しました。つまり、もうこの世には強化型Cウィルスの製造法を知る者がいないということになります。にも関わらず、何故斉藤さんにそれが投与されたのかです。それが分からないんです」
 愛原:「何だか、別な意味でホラーな話になりそうだな。薄気味悪い話だ」
 善場:「ですので、調査期間ももう少し長く設ける必要がありそうです。もちろん、それまでずっとここに滞在して頂く必要は無いと思いますので、そこは御安心ください」
 愛原:「分かりました」

 おいおいおい、またキナ臭い話になってきたなぁ。
 というか、斉藤社長が国外逃亡……もとい、海外出張した理由って……。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「リサ... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「最終... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事