報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「日曜日の事件」 3

2023-11-19 21:08:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月29日18時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング→ダイニング]

 日が暮れて夜が訪れる頃、霙が止んで曇り空となった。
 外を見ると路面が濡れているだけで、雪は積もっていなかった。
 どうやら本物の雪が降っている時間よりも霙である時間が長かった為に、積もることはなかったのだろう。
 その代わり気温が低いので、濡れた路面の凍結には注意とのことである。
 私達が以前住んでいたマンションで起きたバイオハザードだが、BSAAによる掃討作戦が終了し、あとは地元警察との合同現場検証のみとなった。
 その為か、片側2車線の新大橋通りの全面通行止めは解除され、マンション側の車線の左車線だけが規制され、右車線のみ通行可。
 マンション側とは反対側の車線は全面解除となった。
 左車線が規制されているのは、そこに警察車両はもちろん、BSAAの車も止められているからだ。
 あとはゾンビに噛まれて負傷した住民や訪問者もいるとのこと。
 彼らは私のような抗体が無いとゾンビ化してしまうが、今は特効薬がある。
 BSAAの医療車もいるのはその為だろう。
 尚、マンション裏手の1車線の区道については、今も通行止めのようである。
 また、菊川1丁目の避難命令については、18時を持って解除。
 但し、不安を抱える住民の為に、避難所そのものは翌朝まで運営されるとのこと。
 この情報は、テレビでやっていたことである。

 リサ「ゾンビにインタビューしないの?『肉が美味かった』って答えるよ?」
 愛原「オマエなぁ……」

 ゾンビは呻き声を上げるだけで全く喋らないかと言えば、そんこなとはない。
 案外、自我が無くなるまでは喋ったりするものだ。
 霧生市のゾンビ達は、殆ど喋ることはなかったが。
 リサが自分の部屋に戻った後、また下りて来たのは、パールがステーキを焼く音と匂いに引かれてのことだ。

〔「……ここで、速報が入って来ました。墨田区菊川のマンションで起きたバイオハザード事件ですが、住民達が感染したのはCウィルスだということがBSAAの調査で明らかになりました。繰り返しお伝えします。墨田区菊川のマンションで起きたバイオハザード事件で、マンションの住民はCウィルスに感染していたことが判明しました。……」〕

 愛原「Cウィルスだって!?」

 Cウィルスもまたゾンビウィルスの1つである。
 初登場は2010年代初頭。
 最終的には2013年に撲滅されたとなっているが、あくまでも感染者の掃討に成功したというだけで、ウィルスそのものが無くなったわけではない。
 全体的に青み掛かっており、ウィルスを含んだ青いガスを大量に吸い込むことで空気感染する。
 偶然の産物でできたTウィルスと違い、こちらは本当に意図的に製造されたこともあり、生物兵器っぽいゾンビウィルスである。
 というのは、Tウィルスと違って、空気感染しかしない。
 つまり、Cウィルスのゾンビに噛まれても感染しないのである。
 また、投薬するとジュアヴォという別の化け物になる。
 Tウィルスよりは完成度の高いゾンビウィルスで、毒ガスとして吸い込んで感染してゾンビ化しても、Tウィルスのゾンビと違って、身体能力が生前より落ちることは少ない。
 また、金網をよじ登ったり、武器を扱ったりすることもできる。
 問題は、そのCウィルスがどこで放たれたかである。

 リサ「だったら、尚更わたしは違うよー」
 愛原「そ、そうだな」

 尚、Tウィルスよりは完成度が高いとはいえ、それでもGウィルスには負けるらしく、Gウィルスがリサと同様に体内に残っているシェリー・バーキン氏がCウィルスの汚染地帯を歩いても感染することはなかったという。

 愛原「一体、誰だよ?ばら撒いたのは……」

 ばら撒く専門の化け物がいる。
 レポティッツァと呼ばれる、不格好な化け物だ。
 体中にガスを噴射する穴が開いており、そこから青い毒ガス、つまりCウィルスを噴射する。

 パール「できましたよ」
 リサ「おー」
 愛原「ま、民間の探偵は、仕事の依頼が無いと動けないしな……」

 因みにCウィルスのゾンビとTウィルスのゾンビの違いはもう1つあって、後者は食欲のみに動いている為、人肉を食らおうとするが、前者は殺意が高揚するだけであって、血肉を食らうつもりで襲っているわけではないということだ。
 本当にバイオテロに特化したウィルスと言える。

 愛原「この分だと、地下鉄も普通に動いているだろう。明日、学校に行けるな」
 リサ「うん。そうだね」

 リサが赤身や肉汁が沢山残っているレアステーキに齧り付いていると、私のスマホに着信があった。

 愛原「ん?」

 画面を見ると、善場主任からだった。

 愛原「善場主任からだ」

 するとリサはあからさまに嫌そうな顔をして、

 リサ「嫌な予感」

 と言った。
 私が電話を取って出る。

 愛原「はい、愛原です」
 善場「愛原所長、お疲れ様です。お休みのところ、申し訳ございません」
 愛原「いえいえ。何の御用でしょうか?」

 すると案の定、BSAAはリサの事を疑っているらしい。

 愛原「テレビで観ましたが、バイオハザードの原因はCウィルスだそうですね?リサはCウィルスは持ってませんよ?」
 善場「ええ、分かってます。私共もそのように申し上げたのですが、いかんせん、愛原所長方がかつて住んでいたマンションであることや、撲滅したはずのCウィルスが何故ということで、BSAAも神経質になってしまいまして……」
 愛原「そんなことこちらに言われても……ですけどね」
 善場「とにかく、リサの無実を証明する為にも、ご協力をお願い致します」

 具体的には、今からBSAAの医療車が向かうので、そこで採血させてほしいとのこと。
 今から事件現場に来いと言われるよりはマシだが、それにしても、だ。

 愛原「リサの食事を妨害すると、暴走する恐れがありますよ!」
 リサ「ん!」

 リサはギラリと両目を赤く光らせ、右手の爪を長く鋭く伸ばした。

 善場「それはもう申し訳ありません。ただ、リサの食事が終わってからで大丈夫だと思いますよ。と、言いますのは、今現場では、負傷者の救護が行われているのです。幸いCウィルスは空気感染以外の感染経路は確認されていませんから、それは早く終わると思いますが、それが終わり次第、そちらに向かうという形になると思います」
 愛原「分かりました。ガレージのシャッターを開けておきます。高さ制限は3メートルです」
 善場「ハイルーフのハイエースなので、大丈夫でしょう。救急車と同じサイズです」
 愛原「ああ、それなら大丈夫です」
 善場「申し訳ありませんが、宜しくお願いします」
 愛原「分かりました」

 私は電話を切った。
 そしてリサに今の電話の内容を説明したのだが、やはり機嫌が悪くなってしまった。
 どうにか、食事の時間が妨害されるわけではないことを理解させて、暴走は回避することができた。
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“私立探偵 愛原学” 「日曜日の事件」 2

2023-11-19 16:05:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月29日15時30分 天候:雪 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家・屋上]

 4階まではエレベーターで行けるが、その上の屋上へは階段でしか行けない。
 4階のトイレの横のドアを開けて、そこから屋上へ繋がる外階段を上がる。
 リサが先頭に立って、ヒョイヒョイと階段を上る。
 その後ろに私がいるのだが、リサがわざと見せつけているのか、さっきからリサのブルマ尻しか目に入らない。
 ようやく屋上に出ると、外は霙から雪へと変わっていた。

 愛原「リサ、寒くないか?」
 リサ「全然」
 愛原「凄いな」

 私が感心してると……。

 高橋「先生、あそこです!」

 高橋が上空を飛ぶヘリコプターを指さした。

 愛原「あれはBSAAのヘリだな……」

 私は双眼鏡でヘリコプターを確認した。
 そして、また銃声。

 愛原「ヘリから攻撃してるぞ!」
 高橋「あのマンション、屋上がありましたからね。そこにもゾンビがいたんスかね?」
 愛原「ここからじゃ分からんな……」

 私が更に双眼鏡で覗いていると……。

 愛原「お、BSAAがヘリから降下したぞ」
 高橋「ぶっちゃけどうなんスかね?俺達の出番、無さそうっスか?」
 愛原「そうだな。今のところ、特にBSAAが不利ってわけでもなさそうだし。それより、パールが心配だ」
 リサ「わたしが迎えに行こうか?」
 愛原「だけど、自宅待機命令が出てるんだぞ?」
 リサ「わたしは人間じゃないから大丈夫。ちょっと着替えて来るね」

 リサはそう言って、屋内へと戻って行った。

[同日16時00分 天候:霙 愛原家1階→3階]

 パール「ただいまですー!」
 リサ「連れて来たよ!」
 愛原「まさか、本当に連れて来るとは……」

 私は呆れていた。
 とにかく、パールとリサが入ると、私は半開きにしていた電動シャッターを閉めた。

 リサ「私が抱えて跳んだら、みんなビックリしてたね」
 パール「とてもスリリングでした」
 愛原「あんまり、正体がバレるようなことはするなよ?」
 リサ「分かってるよ」

 今のリサは人間に化けている状態だ。
 私はエレベーターに乗り込むと、スイッチキーを使って3階に行けるようにした。

 愛原「とにかく寒かっただろ。一旦中に入って休憩するといい」
 パール「ありがとうございます」
 リサ「人間にはキツい寒さなんだね」
 愛原「そうだよ」

 私は3階のボタンを押してドアを閉めた。
 パールはダークブラウンの革ジャンを羽織っているが、リサは相変わらずグレーのパーカーだけである。
 外に出る時はフードを被っていた。
 今はフードは外している。

 パール「ただいまァ」

 エレベーターが3階に着いて、私達はリビングに向かった。

 高橋「おーう」

 高橋はダイニングで、全員分のコーヒーを入れていた。

 高橋「今、コーヒー入れてますんで」
 愛原「ありがとう。パールも少し温まってから、夕食の準備をするといい」
 パール「ありがとうございます」
 高橋「先生、取りあえず、マンションのゾンビ無双は粗方終わったみたいですよ」
 愛原「そうか」

 すると、これから現場検証が始まるわけか。
 私はリビングのソファに座った。
 体操服から私服に着替えたリサも、雪や霙で濡れたパーカーを脱ぐと、それをハンガーに掛けて、暖房の入っているエアコンの近くに掛けた。
 パーカーの下は、黒いTシャツ。
 『biohazard☣』と、赤い文字がプリントされている。
 下はデニムのショートパンツに穿き替えていた。
 リサが隣に腰かけてきて、寄り掛かって来る。

 愛原「リサはあの事件、何も心当たりは無いのか?」
 リサ「無いね。そんな急にゾンビ化なんか、させられないもん」
 愛原「だよなぁ……」
 リサ「それに、今の私の体じゃ、『ゾンビ化』はさせられないよ?」

 リサの体内に棲息しているのは、Gウィルスと新種のカビから生成された特異菌だけ。
 Gウィルスではゾンビにはならないし、特異菌ではゾンビというより、モールデッドという2足歩行の化け物になるだけだ。
 また、リサの場合、体内に入った寄生虫がGウィルスや特異菌の作用によりプラーガ化し、人間を『ゾンビ化』させるのは、むしろこっちの方である。
 ブラーガではゾンビの姿になることはなく、感染者は人間の姿のまま、支配種を宿したリサの意により操られる。
 『魔王軍』メンバーの殆どは、リサのプラーガに寄生されており、リサの意思通りの行動を取る為、本来なら絶対有り得ないブルマ復活運動を惜しげも無く展開してしまったのだ。
 そして何故かリサのこの所業を、デイライトは黙認している。
 知らないフリをしているというべきか。
 いや、本当に知らないのかもしれないが、しかし、そんなお粗末な組織ではないはずだ。
 もちろん、リサの所業で死人が出たら、それは話が別なのかもしれないが。

 愛原「知ってる」

 リサはペロッと舌を出した。
 その舌には、ミミズくらいの大きさの回虫のような物が這っている。

 リサ「先生にもあげようか?わたしの寄生虫」
 愛原「バレたら、BSAAに捕まるぞ?」
 リサ「はーい」

 リサはそう言って、自分の寄生虫を飲み込んだ。
 そして、もう1度舌を出すと、今度は何も無かった。
 便宜上プラーガと呼ばれているが、2000年代前半のスペインの片田舎で起きたバイオハザードで使用された物とは、大きく異なるものだ。
 ただ、作用が良く似ているので、そう呼ばれているだけだ。

 パール「リサさん。ステーキ肉は、これでいい?」

 パールはスーパーで買ってきたステーキ肉を見せた。
 オーストラリア産牛肉で、280gもあった。

 リサ「うん!これでいい!早く焼いて!何ならいっそ、このままでも!」
 愛原「こらこら。ちゃんと焼いて食え。それに、まだ夕食の時間じゃないぞ」
 リサ「えー……」
 パール「今日は特売で安かったので、皆の分も買ってきましたよ」
 愛原「えっ、そうなの?」
 パール「はい」

 値段も値段なので、私は安いチキンステーキでいいと思っていたのだが……。

 愛原「まあ、安いならいいや。……あ、俺はミディアムくらいでね」
 パール「かしこまりました」
 リサ「うー……。あんな肉見せられたら、お腹が空くよ……」
 パール「おやつに、これをどうぞ」

 パールはビーフジャーキーをリサに渡した。

 リサ「おー!さすがはエレンのメイドさん!」
 パール「恐れ入ります」

 ハードタイプであり、リサは早速袋を開けると、硬めのビーフジャーキーに、生え変わったばかりの牙を突き立てたのだった。

 高橋「先生、あれなら犬用のジャーキーでも食うんじゃないスか?」
 愛原「こらこら。何つーことを……」

 さすがに犬用はダメだろ。
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