報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「一方その頃のリサは……」

2023-11-28 20:27:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日20時00分 天候:晴 栃木県日光市某所]

 リサ「…………」

 栃木県の山奥の県道を走る中古の高速バス。
 廃車寸前のバスをタダ同然で引き取ったものだという。
 かつては夜行用で運用されていたのか、車内は独立3列シートで、スーパーハイデッカー。
 トイレや乗務員の仮眠室も設けられているという装備だった。
 窓もスモークシートが貼られているが、カーテンも全部閉められていて、外から中を見ることはできない。
 その乗務員の仮眠室だったスペースに、リサは押し込められていた。
 両手と両足は頑丈な手枷・足枷で固定され、目隠しもされている状態。
 そもそも浚われる際、首に麻酔薬のようなものを注射され、それで意識朦朧としているところを、さらに酒を無理やり飲まされて、更に意識混濁している状態だった。
 その時、外からけたまましいクラクションの音がして、リサは目が覚めた。

 暴走族A「おい、コラぁ!降りて来いや!!」

 他にも若い男の怒鳴り声や、明らかに車検など通らないであろう、違法改造クラクションが何度も聞こえて来る。

 男A「マズい。目撃者か?」
 男B「もうすぐ着くってのに、どうして目撃者が?」
 男C「消すか?」
 男D「消すべ消すべ」
 男A「待て待て。まずはお館様からの指示を待ってだ。鬼がいるというのに、置いて行くわけにもいくまい」
 男B「それもそうだ」
 リサ(わたしのことを鬼だと知っている……?)

 その後、プシューというエアーの音がした。
 どうやら、乗降口の扉が開いたらしい。
 バスが揺れるので、誰かが乗り降りしているだろう。
 その後、若い男達の慌てる声がしたかと思うと、車が走り去る音がした。

 リサ(あの人達は、お兄ちゃんの知り合い?助けに来てくれたの?)
 男A「どうややお館様と、他の人達が追い払ってくれたらしい」
 男B「追い払った?消したんじゃないのか?」
 男C「お館様がそうなさったのだからしょうがねーべ」
 男D「んだんだ」

 またエアーの音がして、バスの乗降扉が閉まる。
 代わりに重厚な鉄の音が響いて来たかと思うと、またバスがゆっくり走り出した。
 そしてまた止まると、再び重厚な鉄の音がして、最後にはガッシャーンという音がした。
 どうやら、何かが閉まる音らしい。
 そして、またバスの扉が開く音がした。

 男A「……え?ここで降りるの?……え?母屋じゃなくて、離れの方に行くって?分かった。……おい。鬼を降ろすぞ。慎重にな」
 男B「おう」

 ガチャという音がすると、寒風が吹き込んで来た。
 乗務員用の仮眠室は、床下のトランクルームを改造した場所にあるので、外側から開けることもできる。

 男A「おい、鬼!着いたぞ!降りるぞ!いいか?逃げても無駄だぞ」
 リサ「むー!むー!」

 リサはどこかのマンガの鬼娘よろしく、竹筒を猿轡代わりに咥えさせられているので、喋ることができない。

 男A「何だァ?何か言いたいことがあるのか?」
 男B「そりゃ、無理やり連れて来られたことに対する文句だべ」
 リサ(そりゃ文句も言いたいけど、そんなことよりも……!)

 リサはトイレに行きたくてしょうがなかった。
 何しろ夕方前に拉致されて以来、1度もトイレに行かせてもらえなかったからだ。
 しかも、意識を混濁させる為に酒まで飲まされたというのもある。
 リサがスカートの上から股間を押さえてモジモジする仕草をすると、そこでようやく男達は気づいた。

 男A「そうか。鬼も便所くらい行くか」
 老翁「何をしておる?」
 男A「お館様。どうやらこの鬼、トイレ行きたいそうです」

 リサはうんうんと大きく頷いた。

 老翁「連絡にはまだ少し時間がある。そこの茂みにでもさせておけ」
 男A「はい」
 リサ「んーっ!?」
 老翁「ちり紙の1つでも渡しといてやれ」
 男B「ほらよ」
 リサ「んー!んー!」

 リサは両手を見せた。
 手枷が邪魔で、下着を脱ぐことができないと。

 老翁「手枷を外してやれ」
 男A「いいんですか?」
 老翁「但し、腰縄と足枷は外してはならん」
 男A「はっ」

 リサは手枷を外された。
 目隠しも外される。
 外は雪が積もっていた。
 そして、目の前には羽織袴姿の老翁と、黒装束の男達がいた。
 黒装束の男達は、リサに日本刀の刃を向けている。

 老翁「そこの茂みの陰にでもしてくるが良い」
 リサ(覚えてろよ、このクソジジィ!)

 リサは雪の積もる茂みの影に隠れて、急いでスカートの中に穿いているブルマとショーツを下ろした。

 リサ(アンブレラの研究所でも、こんなお外でオシッコとかさせられなかったのに……!)

 小用を足していると、今度は大きいのもしたくなる。

 リサ(こうなったらもうここで……!)

 リサは更に踏ん張って、肛門からぶっとい黄金を3本もひり出した。

 リサ「ん~……」

 最後の3本目がプッと肛門から出切ると、リサはようやくスッキリした気持ちになった。
 手持ちのティッシュともらったティッシュ、全部使って前と後ろを拭く。
 そしてようやく下着やブルマを戻して、リサは元いた場所に戻った。

 老翁「戻って来たか。ちょうど受け入れの準備ができたところじゃ」
 男A「それでは再び手枷と目隠しを……」
 老翁「手枷だけで良い。どうせここから歩きじゃ。目隠しをしたままでは、歩き難かろう」
 男A「は、はあ……」

 手枷だけ付けられ、リサ達は石畳の上を進んだ。

 リサ「んー……?」

 途中、右手に大きな家屋敷が見えた。
 まるで、老舗の高級旅館のようである。
 しかしリサ達はそこには寄らず、石畳の小道を進んだ。

 老翁「ここじゃ」
 リサ「ん……」

 そこはまるで茶室のような庵であった。
 リサ達が近づくと、引き戸の玄関が開き、そこから老翁と同じくらいの歳の老婆が現れた。
 老翁と違って小柄で腰が低い。

 老翁「客人の到着じゃ。あとは任せた」
 老婆「かしこまりました」
 リサ(ここが、わたしの処刑場?)

 リサはここにいる老翁や、黒装束の集団が鬼狩り隊だと思っている。
 鬼狩り隊は鬼の首を刎ねるのが仕事だ。
 さっきからリサの首に突き付けられている日本刀は、本当に鬼の首を刎ねられるものだろう。
 そんなものに刎ねられたら、さすがのリサも死ぬ。
 玄関に入ると、何と、体に着けられていた拘束具が全て外された。

 老翁「この中では自由にして良い。但し、逃げる事、一切罷りならん」
 リサ「はあ?」

 竹筒も外され、リサはようやく喋ることができた。
 老翁達はぞろぞろと庵を出て、リサと老婆だけになってしまった。
 老婆は目が細く、まるでいつも閉じているかのようである。
 しかし、表情は穏やかなものだった。

 老婆「遠路遥々、御足労でございました。長旅でさぞお疲れのことと思います。どうぞ中へお上がりください」
 リサ「いや、わたし、帰りたいんだけど?」
 老婆「それは……全てが終わったら、帰れるのでございます」
 リサ「全てって何!?」
 老婆「それは……追々説明がございます。まずは、どうぞ中へ……」
 リサ「せめて、電話くらいさせて?ていうかスマホ帰して」
 老婆「それも……全てが終わったら、返されるのでございます」
 リサ「何だ、それ!」

 リサは靴を脱いで上がった。
 茶室のような庵だと思っていたが、中はそれよりは広いようだ。

 老婆「まず、こちらがお手洗いでございます」
 リサ「うわ、和式だし……。てか、ここ使わせてくれれば良かったのに……」

 その隣の部屋が……。

 老婆「こちらがお風呂でございます」
 リサ「えっ?入っていいってこと?何か、温泉の匂いするけど?」
 老婆「もちろんでございます」

 更に、近くの和室は……。

 老婆「お布団と寝巻でございます」
 リサ「泊まれってこと?いや、こんな時間……もう帰れないけど……」

 布団が敷かれている和室には時計があり、8時半くらいを指していた。
 そして、その隣の和室は……。

 老婆「お食事でございます」
 リサ「マジ!?」

 まるで旅館の夕食みたいに、膳の上に食事が乗っている。
 1番目を惹くのは、赤身が目立つ肉の塊である。
 1キロはあるだろう。
 先ほど、大量の糞尿を排出したこともあり、今度は大きな食欲がリサの中に湧き出て来たところであった。

 老婆「まずは、どうぞお食事を……」
 リサ「しょ、しょうがないな……。せっかく用意してくれたんだし、食べろというのなら、食べるけどぉ……」

 リサは膳の前のフカフカの座布団と腰かけると、すぐに箸を取った。

 老婆「それでは、どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ。何かございましたら、そちらのベルを鳴らしてください」

 リサ「この、チリンチリンってヤツ?小さいハンドベルみたいなヤツね。分かった」

 リサはまずは食事を片付けてから、今自分が置かれている状況について考えてみることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「手掛かりを頼りに東京出発」

2023-11-28 16:09:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日21時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング]

 私は風呂から出た後も寝巻ではなく、私服姿のままであった。
 いつでもリサが帰ってきてもいいようにするのと、手掛かりがあったらすぐに出られるようにする為だった。
 そして、その備えは正しかったことを知る。

 高橋「……あ、何だって?」

 洗面台で歯磨きをして戻ると、高橋が眉を潜めて誰かと電話していた。

 高橋「……何だ、バスかよ。そんなもんどうだっていいんだよ。もっとこう、怪しいハイエースとかよ……」
 愛原「何の話?」
 パール「どうやらマサに、リサさんに関する情報が入ったみたいですよ」
 愛原「なにっ!?」
 高橋「そんな得体の知れねーバスの情報なんかどうでもいいからよォ、もっとこう……」
 愛原「ちょっと待て高橋!その話、もっと詳しく!」
 高橋「えっ!?あっ、はい!ちょっ、待て!今のナシ!先生が詳しく聞かせろだとよ!」

 私は手近にあったメモ帳に、高橋が聞いてほしい内容のことを書いた。
 『場所はどこ?』『いつ見かけた?』『そのバスの特徴は?』『乗客はいたのか?いたとしたら、どんな人達だった?』などである。
 高橋が聞いた内容を、私は別の手帳にメモする。
 すると、ある文言で私は手を止めた。

 高橋「あぁ?着物着た変な爺さんが日本刀持ってただ?」
 愛原「!」
 高橋「しかも、他には忍者みたいな黒い着物に日本刀持ってた奴らがいただと!?」
 愛原「!?」
 高橋「何だァ?時代劇の撮影でもしてたのか?……違う?そんな感じじゃなかったって?」
 愛原「……ああ。でっかい門があったのか?……ふーん……」

 私は興奮気味で、『後で場所の案内頼んでくれ!』と書いた。

 高橋「な、何か、先生が、後でそこの場所を案内してくれだとよ。……嫌だ?テメこら!俺にボコボコにされたん、もう忘れたんか、あぁ!?」
 愛原「案内料出すから何とか頼む」
 高橋「ええっ!?……な、何か先生は『金なら出すから案内してくれ』って……おい!……ったくよ!」

 どうやら電話が切れたみたいだ。
 よっぽど怖い目に遭ったのだろうか?

 愛原「ダメだって?」
 高橋「いや、『そんなら教えます!』ですって。何なんだ、あいつらよ~」
 愛原「とにかく、バスはともかく、乗ってた人達には心当たりがある」
 高橋「ええっ!?先生、時代劇のエキストラにコネでもあるんですか?」
 愛原「時代劇のエキストラ……か。そうかもしれないな。それもできる人達かもしれないな」
 高橋「えっ?」
 愛原「とにかく急ごう。場所は栃木だったな。今から新幹線で行けば、終電に間に合うだろう」
 高橋「は、はい」
 パール「私、車で東京駅までお送りしましょうか?」
 愛原「いや、もしかしたら、まだリサがひょっこり帰って来る可能性は捨て切れない。その時の為に、パールはここで留守番しててくれ」
 バール「かしこまりました」
 愛原「俺は善場主任に相談してくる。高橋はタクシー呼んどいてくれ」
 高橋「う、うっス!」

[同日21時30分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅→東北新幹線233B列車5号車内]

 私と高橋は、アプリで呼んだタクシーに飛び乗り、東京駅に向かった。
 その前に善場主任に連絡し、高橋の元『同業者』からもたらされた情報を伝えた。
 BSAAでも向かわせるのかなと一瞬思ったが、そうではなかった。
 そりゃそうだろう。
 地元の暴走族からの情報を、国家公務員が信じるとは思えなかったからだ。
 とはいうものの、怪しいことには変わりはない。
 バスに乗ってた乗客達の出で立ちを見て、善場主任はピンと来る物があったようだ。
 その内容、私がピンと来たものと同じだったのかは不明だが……。
 とにかく、善場主任からは栃木の調査を任された。
 デイライトからの許可が取れたので、私と高橋はタクシーで東京駅に向かった次第である。

 運転手「はい、着きましたー」
 愛原「どうもありがとう」

 タクシー料金は既にアプリ決済になっている。
 これなら車内で料金のやり取りをしなくていいからすぐに降りれらるし、領収証もこの場で受け取る必要は無い。
 八重洲側に着いたタクシーを降りると、私達は東京駅構内に入った。

 高橋「先生。このまま行くと、仙台行きの終電に乗れます」
 愛原「そうか。宇都宮で乗り換えだな?」
 高橋「はい。それで行けば、日光行きの終電に乗れます」
 愛原「分かった」

 私は指定席券売機で、新幹線特急券は宇都宮までの自由席、乗車券は日光駅まで購入した。
 特急券とは区間が違う為、1枚一緒ということはなく、2枚ずつバラバラで出て来た。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 高橋「あざっス!」

 もちろん、領収証を発行するのは忘れない。

 愛原「悪いが、喫煙所で一服する時間は無いぞ?」
 高橋「大丈夫です。家で吸い溜めしてきましたし、向こうでも吸えますから」
 愛原「そうか」

 私達は、まずは乗車券で在来線のコンコースに入った。
 それから新幹線乗換改札口では、特急券を重ねて入れる。
 最終の“やまびこ”223号は“はやぶさ”“こまち”の折り返しなのか、そのフル編成での運転だった。
 但し、停車駅の多いタイプである為か、自由席が多めに設定されている。
 “こまち”車両の方など、グリーン車以外は全部自由席という状態だ。

〔21番線に停車中の電車は、21時44分発、“やまびこ”223号、仙台行きです。この電車は、上野、大宮、宇都宮、新白河、郡山、福島、白石蔵王、終点仙台の順に止まります。……〕

 愛原「ちょっと、コーヒー買って来る」
 高橋「ああ。俺、席取ってますんで」

 “はやぶさ”の車両に、高橋は乗って行った。
 外から見る限り、車内はそんなに混んでいない。
 上野や大宮からも乗って来て、満席に近い状態になるのだろう。
 私は自販機でホットのボトル缶コーヒーを2つ買った。
 それ以外にも、腹が減っては戦ができぬとばかりに、他の自販機で夜食のパンなども買ってみた。
 それから、高橋が乗った5号車に乗り込む。

〔「……電車は17両編成での運転です。1番前が17号車、1番後ろが1号車です。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車。自由席は1号車から5号車と、12号車から17号車です。尚、この電車には車内販売はございません。予め、ご了承ください。【中略】発車までご乗車になり、お待ちください。東北新幹線“やまびこ”223号、仙台行きです」〕

 愛原「お待たせ」
 高橋「どうぞ」

 高橋は2人席の通路側に座っていた。
 私は窓側に座る。

 愛原「オマエはブラック無糖派だったな」
 高橋「あっ、あざっス!……先生はアンパンも買ったんスね」
 愛原「ああ。別に、張り込むわけじゃないと思うから、牛乳じゃないよ」
 高橋「了解っス」
 愛原「オマエの知り合い、日光駅まで迎えに来てくれるんだって?」
 高橋「俺がもっと強く言えば、宇都宮駅まで迎えに来させましたよ?」
 愛原「この電車に間に合わなかったら、お願いしてたかもな」

 日光線の最終電車に接続しているのは、この列車までである。
 那須塩原止まりの“なすの”号だったら、この後にも3本くらいあるのだが、それだと日光線の終電に間に合わない。

 愛原「別にいいよ。実際この新幹線に乗れたから、向こうの終電にも間に合うし」
 高橋「分かりました」

 私はボトル缶コーヒーの蓋を開け、アンパンの袋も開けた。
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