報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの血を狙う者」

2023-11-20 20:35:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月29日19時30分 天候:雪 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 また外は雪がちらついて来た。
 もっとも、すぐ止むようで、積もるほど降るわけではないようだ。

 善場「油断しました!今の話を聞かれたかもしれません!」
 愛原「ええっ!?」
 善場「すぐ、関係各所に連絡します!高橋助手!逃げた者はどんな人物でしたか!?」
 高橋「ちょっと待て!今それどころじゃねーだろ!」
 善場「いえ、それどころであります!直ちに答えてください!」
 高橋「ケガ人の治療中に鬼だぜ、このねーちゃん!」
 リサ「ねー?」
 BSAA軍医「ちょっと動かないで!」

 濡れた路面で派手にスッ転んだことで、あちこち擦り傷のできた高橋だった。
 幸い今ここにはBSAAの医療関係者がいる。
 手の空いた軍医が、負傷した高橋の治療に当たってくれた。
 まあ、擦り傷程度なので、傷の消毒と絆創膏を貼るくらいであったが。

 高橋「男だったな。それも、おっさんだ」
 善場「年齢は愛原所長より上でしたか?」
 高橋「暗くてよく見えなかったが、先生よりも上だったと思うぜ。50代くらいのオッサン」
 善場「なるほど。それで、三ツ目通りの方向に逃げて行ったわけですね」
 高橋「そういうことだ」
 善場「愛原所長、この建物の前に防犯カメラはありますか?」

 善場主任はガレージ内にあるカメラを指さして言った。

 愛原「あいにくと、外側には無いんですよ。シャッターを開けていれば、それで外が映るからなのかもしれません」

 それは正面玄関も同じ。
 インターホンにはカメラがあるが、当然ピンポンを押さないと録画されない。
 どうやらこの建物には、かつて玄関前やシャッター前を外から映すカメラがあったようなのだが、前の借り主(機械設備保守会社)が撤去したようである。
 かつてあったということは、やはり当初この建物は暴力団の組事務所だったのではと推測される理由の1つだ。

 善場「そうですか。しかしまあ、三ツ目通りなら、外側に防犯カメラを仕掛けている店舗とかありそうですし、菊川駅前交差点などは監視カメラもありますから、警察に依頼して画像をチェックさせてもらうこともできるかもしれません」
 愛原「しかし、50代の男性がスパイというのは意外ですね」
 善場「いないことはないんですよ。各国の諜報機関には、老若男女の工作員がいます。ただ、ここでそういった人物を投入する必要があるのかなとは思いますが……」
 愛原「デイライトさんも諜報機関のようなものですね。デイライトさんもこういう場合、50代男性を任務に就かせますか?」
 善場「私が課長なら選抜しないですね。もっとも、裏の裏をかいて、まさかという人物を任務に就かせることもあるので、全く否定はできないのですが」

 NPO法人デイライトが日本政府直轄の諜報機関だということを安易に認めた善場主任だった。
 表向きの諜報機関が公安調査庁なら、裏の諜報機関はこういう形で存在しているのだろう。

 善場「私は事務所に行きます。もしかすると、リサが本格的に狙われる兆候かもしれません。しばらくリサは、自宅待機にした方がいいかもしれませんね」
 リサ「えー?学校は?」
 善場「出席日数が足りる程度に休んだ方がいいかもしれませんね」
 愛原「中途半端な……」

[同日21:00.天候:曇 愛原家3階リビング]

 

 高橋「チッ。またパトカーだ。これじゃ、落ち着いて寝れねーぜ」
 パール「ホントにねぇ……」
 愛原「いや、それオマエらだけだと思うぞ?」

 私は苦笑した。
 どうやら善場主任が警察に依頼したか何かで、警察がパトロールを強化してくれているのだろう。
 それだけでなく、地元の防犯協会のパトカーも依頼されたのか、青いパトランプを点灯させて、家の前を通ってくれた。

 愛原「しばらくは防犯強化期間だな」
 高橋「安心してください。敵はボコしますよ」
 パール「同じく」

 高橋は特殊警戒棒を取り出し、パールはコンバットナイフを取り出した。

 愛原「あの世に送るんじゃないぞ」
 リサ「何が?」

 

 と、そこへリサが風呂から上がって来た。
 私服から、またもや体操服とブルマに着替えている。

 愛原「怪しいヤツのことさ。今日は絶対に窓を開けるんじゃないぞ?」
 リサ「分かってるよ。何だか物騒だねぇ……」
 愛原「善場主任は、いよいよオマエを狙ってどこかの組織が動いて来たんじゃないかって言ってるぞ」
 リサ「えっ?BSAAは?」
 愛原「日本地区本部も人数が少ないからな。前のマンションのゴタゴタの処理で、リサへの監視が強化できないらしい。かといって、“青いアンブレラ”には頼めないしな」
 高橋「あのねーちゃん、アネゴの事が嫌いっスからねぇ……」

 アネゴとは、高野芽衣子のこと。
 エイダ・ウォンに似た容姿をしていたが、ついにその正体がエイダ・ウォンのコピーだということが判明する。
 もっとも、カーラ・ラダメスのようにCウィルスを使って化けたのか、それとも単なる整形なのか、はたまたクローンなのかまでは分かっていない

 リサ「レイチェルに、しばらく警備してもらう?」
 愛原「学校はそれでいいかもしれんがな……」

 1番良いのは、ほとぼりが冷めるまで自宅待機で、善場主任もそう言っているが、リサが納得していないからなぁ……。

 リサ「わたしからレイチェルに頼んで、学校の行き帰りもわたしの警備をお願いしてみるよ」
 愛原「そう、上手く行くかねぇ……」

 私は首を傾げた。
 だが、事態は待ってはくれなかったのである。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの血の効果」

2023-11-20 10:58:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月29日19時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家1階ガレージ]

 開け放たれたガレージに、1台の車が入庫してくる。
 くすんだ緑色のハイエースに、赤十字のマークを表示した、いかにも自衛隊の救急車のような出で立ちである。
 自衛隊の物ではないのは、救急車なのに、窓には金網が取り付けられていること、そして車体に『BSAA.JP』と書かれていることから判明できる。
 赤色灯が屋根に付いていたが、特に点灯させるわけでも、サイレンを鳴らしてくるわけでもなく、普通に入って来た。
 助手席には善場主任が乗っていて、そこから降りて来た。

 善場「愛原所長、お疲れ様です」
 愛原「あ、善場主任、お疲れさまです」
 善場「早速ですが、リサの血液を採取させて頂きます」

 救急車のハッチから、武装BSAA隊員、軍医、衛生兵の3人が降りて来る。
 国連機関BSAAから第1級(日本の規格では特級だが、愛原リサだけは特例で上級に格下げされている)人工生物兵器(略称BOW)に指定されているのだから、採血1つだけでも、手続きが猥雑だ。
 うちのリサが本来、特級なのに上級扱いされているのは、特級に指定してしまうと、今みたいに自由な行動が問答無用で制限されるからである。
 そして管轄がBSAA本部となり、大抵特級は殺処分されるからというのもある。
 上級であれば、管轄が支部となり、その支部に地区本部がある場合はそこに委託されることもある。
 極東支部は中国にあるが、日本地区本部がある為、リサの管理がそこに委託されている。
 今のところ極東支部は、リサみたいな厄介者を抱え込みたくないことから、日本地区本部に丸投げしている感があるのだが……。
 以前、善場主任がチラッと言っていた……。

 善場「もしもリサが生物兵器として優秀であることが証明されたら、極東支部は日本地区本部に委託を中止するでしょうし、ややもすれば、中国政府を通して日本政府に引き渡しを要求するかもしれません」

 とのこと。
 極東地域にはロシアの一部も含まれているが、世界一広大な領土を持つロシアには、他に支部や地区本部があり、同じ国に支部を2つ設けるのはどうかということになり、中国に設置された。
 北朝鮮は言わずもがな。
 韓国や日本は、既に米軍が駐留している為(米軍兵の中にはBSAAに籍を持つ者もいる)、支部の設置は見送られた。
 代わりに、その下部組織である地区本部は置かれたが。
 もしこれがロシアに設置されていたら、有無を言わさず、リサはロシアに連れて行かれていたことだろう。
 BSAA内部にも政治的対立が存在するのだ。
 ある程度リサが悪さをしても、一線さえ越えなければ、デイライトは目を瞑るのは、そういった政治的な理由もあるのかもしれない。
 リサにはある程度の危険性をアピールさせておいて、中国政府が欲しがらないようにする為。

 善場「……愛原所長、お待たせしました。それでは、『監視者』としてこちらに同意書にサインをお願いします」
 愛原「あ、はい」

 私がボーッとそんなことを考えていると、善場主任に話し掛けられた。
 私が同意書にサインをすると……。

 善場「以上で事前手続きは終了です」
 BSAA軍医「それでは、採血を始めます。こちらへ」
 リサ「はい……」

 ハッチは閉められ、代わりに助手席後ろのスライドドアが開けられ、リサ達はそこから車に乗った。
 ドアは一旦閉められ、私と主任は車の外で待つ。

 愛原「Cウィルスなんて、一体どこからばら撒かれたんですか?」
 善場「これはまだ表に出ていないので、内密にお願いしたいのですが、屋上からだと思われます」
 愛原「屋上!?」
 善場「はい。レポティッツァというクリーチャーは御存知ですよね?」
 愛原「あ、はい。Cウィルスをばら撒く為に製造された化け物ですね」
 善場「そうです。どうも上空からそれが投下され、それからマンション内に侵入し、Cウィルスを散布したものと思われます」
 愛原「そのレポティッツァはどうなったんですか?」
 善場「血だらけで、1階のエントランスで死んでいるのが発見されました。レポティッツァは、正にCウィルスを散布する為だけに製造されたクリーチャーですので、それ自身に大した殺傷能力はありません。ただ、体が大きい割には動きが素早いので、突進や高い所から飛び下りて攻撃する……まあ、プロレスとかでよく見かける攻撃ですね。あとは、短い腕で殴り掛かるとか……そういう攻撃しかしてこないのです。で、それは体内のCウィルスを散布し尽くすと、その穴から血を噴き出して、出血多量で自死するようになっているそうです」
 愛原「そういうことでしたか……」

 あとはかなり頑丈なので、銃弾は効くのだが、だいぶ撃ち込まないと倒せないのだそうだ。
 更には高所から転落し、地面に激突死しても、体の穴からはCウィルスを散布し続けるという厄介さ。
 とにかく、BSAAが駆け付けた時には、既にレポティッツァは役目を終えて死んだ後だったようだ。

 愛原「で、では、そいつを屋上に放ったのは誰ですか?」
 善場「目下のところ、捜査中です。もちろん、ヘリコプターや飛行機などで投下したでしょうから、それを保有したり、使用できる所ですね」
 愛原「まさか、“青いアンブレラ”は違うでしょう?あそこはむしろ、クリーチャーを倒す側ですから」
 善場「分かりませんよ。Cウィルスを開発したネオ・アンブレラの最高幹部、カーラ・ラダメスはエイダ・ウォンに化けていましたからね」
 愛原「カーラ博士の場合は、ネオ・アンブレラ創設者のディレック・C・シモンズの命令でそうしたのでは?」
 善場「とにかく、“青いアンブレラ”に関しては、まだまだ分からないことが多々あります。ヨーロッパでは、BSAAと対立しているようですし、その火種を日本に持ち込むことは許されません」

 その時、車のスライドドアが開けられた。
 そこから降りてきたのはリサではなく、軍医だけであった。

 軍医「善場主任、ちょっと宜しいですか?」
 善場「はい、何でしょう?」
 軍医「彼女のことですが、簡易検査の結果では、Gウィルスと特異菌の濃度がちょうど良い状態です」
 善場「あら、そうなのですか。それは僥倖ですね」
 軍医「すぐにこのサンプルを持ち帰って、報告したいと思います」
 善場「よろしくお願いします」

 すると、軍医が外からドアを開けた。

 軍医「ご苦労さん。もう降りていいよ」

 そして、中にいるリサに伝える。
 リサの左腕には、絆創膏が貼られていた。
 もちろん、便宜上そうしただけであって、その下の刺し傷はとっくに消え失せているだろうが。
 リサは無言で降りて来た。

 愛原「主任、ちょうど良いとはどういうことですか?」
 善場「実はリサのGウィルスと特異菌を、病気やケガの治療薬に使えないかという研究が行われてまして……。私もGウィルス保有者ですが、それだけではやはりどうしても難しいのです。ところが、特異菌が上手く調和してくれる可能性があることが分かりました。もちろん、その割合とかは天文学的な事になるわけですが、成功したら凄いことになりますよ」
 愛原「そうなんですか。まさか、リサの生物兵器がここで役に立つとは……」
 善場「まだまだ理想の段階ですけどね。上手く行ったら、致命傷とかも一気に治せるかもしれないのですよ」
 愛原「それは凄い」

 私はここで、ある人物を思い浮かべた。

 愛原「栗原蓮華さんの火傷とか、失った左足とかも治せそうですね」
 善場「上手く行けば、その可能性はありますね」

 善場主任は大きく頷いた。
 と、その時だった。

 愛原「ん?」

 階段をバタバタ降りて来る者がいた。
 それは高橋だった。
 何故か高橋、自分のウェポンである特殊警戒棒を持って、外に飛び出した。

 高橋「何の用だ、コラァッ!!」
 愛原「ん?」

 私も気になって、外に出てみた。
 ガレージのシャッターは主任の指示で閉まっているので、横のガラス扉からだ。
 そこから一旦階段室に出て、それから正面玄関から外に出る。

 高橋「いでっ!」

 私が外に出ると、雪や霙で濡れた路面で足を滑らせ、転倒する高橋の姿があった。
 高橋が誰を追って行ったのかは分からない。
 しかし、私が高橋を追跡した時には、それらしい人物を見ることはできなかった。

 愛原「おい、高橋!大丈夫か?どうしたんだ?」
 高橋「さっきからずっとシャッターの前に立ちんぼしてた怪しいヤツがいたんです。用があるならピンポン押せばいいのに、全くそんな素振りも無かったんです。それで……」
 愛原「オマエなぁ。まだ夜中の時間でも無いんだから、普通に出て、『何か御用ですか?』と聞けばいいだろうが。そんな対応だから、逃げられるんだよ」
 高橋「いや、それが何か、盗聴器……いや、収音マイク?みたいなのをシャッターに当ててたんですよ。それで客じゃねーだろうと思って……」
 愛原「何だって!?」
 善場「しまった……!」
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