報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「いま再びの都内へ」

2022-01-24 20:20:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日16:15.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 湯快爽快おおみや→タクシー車内]

 時間になったので、魔道士3人は退館することにした。
 精算して、シューズロッカーの所へ行く。
 シューズロッカーからロングブーツを出したイリーナが、エントランスのたたきにそれを置くと、パンプスのように縮んでいた脛の部分がスルスルと伸びて、名実共にロングブーツとなった。

 勇太:「タクシー来てますね」

 先に建物の外に出た勇太は、『迎車』と書かれたタクシーに駆け寄った。

 勇太:「予約していた稲生です」
 運転手:「稲生様ですね。どうぞ」

 今度はセダンタイプのタクシー。
 グレーのモケットが高級感を出しているが、ナンバーは5だ。

 マリア:「師匠、ロングブーツは歩きにくいのでは?」
 イリーナ:「この歳になると、冬は足元が寒くてねぇ……。こういうブーツでも穿かないと、外を歩けないんだよぉ……」
 マリア:「『ロシアより暖かい』とか言ってませんでした?」
 イリーナ:「はてさて、そんなこと言ったかねぇ……」
 マリア:(ボケたフリしやがって……)
 勇太:「先生、どうぞ。こちらへ」
 イリーナ:「ありがとう」

 席順は同じ。
 イリーナが上座の運転席後ろに座り、勇太が助手席に座った。

 勇太:「それでは大宮駅までお願いします」
 運転手:「かしこりました。西口でよろしいですか?」
 勇太:「はい、お願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 タクシーが走り出した。
 送迎バスが入って来た所とは、別の出口から出る。
 実は送迎バスも、大宮駅行きはそこから出る。
 そして公道に出ると左に曲がり、突き当りの県道を送迎バスは右に曲がるのだが、タクシーは左に曲がった。
 この県道は道が狭く、いかにマイクロバスであっても、走るのはちょっと……ということもあり、マイクロバスはなるべくバス通りに出て、そこから往路と同じ国道バイパスに出ようとする。
 しかし、ルートが決められているバスと違い、タクシーは自由だ。
 しかも、狭い道も難無く進む。
 タクシーは最短距離を走ろうとする為、例え狭くても県道を進むのが良いと運転手は判断したようだ。
 もっとも、県道とはいえ、国道からすれば裏道のようなもの。
 国道バイパスはほぼ雪が無くなっている状態だったが、こちらはまだ雪が残っていた。
 常に日当たりの悪い所にあっては、今だに凍結しているくらいである。
 さすがにそういう所は徐行する。

 イリーナ:「あら、マリア。髪がサッパリしてるじゃない。散髪したの?」
 マリア:「はい。少し髪が伸びたので」
 イリーナ:「勇太君も?」
 勇太:「はい。僕もです。あそこ、カットサロンがあるので」

 勇太は理容、マリアは美容で利用した。

 イリーナ:「フム、そうか。マリアの場合、フェイシャルエステまで受けたようね?」
 マリア:「じゅ、10分だけですよ!」
 イリーナ:「もっと長い時間のコースで良かったのに……」
 マリア:「私はこれで十分です」
 イリーナ:「ふーん……」
 勇太:「それより、休憩処の方が騒がしかったような気がしますが……」
 イリーナ:「そお?気のせいよ」
 マリア:「そうそう。パトカーのサイレンの音とか、結構凄かったですよ」
 イリーナ:「そうなの?私は寝てて気づかなかったねぇ……」
 勇太:「救急車も来てましたよね?」
 イリーナ:「さあねぇ……」
 マリア:(師匠がスットボケる場合、何かあるな……)

 マリアは助手席の後ろに座っている。
 このタクシー会社の助手席後ろには、モニタが付いている。
 昔はタクシー会社によっては、助手席上にラジオの文字放送やCMが流れる機器を設置していた所もあった。
 今はそれに代わり、支払方法も選択できるモニタが付いている。
 そこではCMが流れていたのだが……。

 ケンショーグリーン:「たっ、助けてください!私は今、生きながら地獄界にいます!嗚呼ッ!馬鬼が!牛鬼の獄卒が追い掛けてきます!助けてください!」
 マリア:「huh?」
 ケンショーグリーン:「せっ、せめて!美女鬼が沢山いる衆合地獄にしてください!」

 馬鬼(馬頭)に捕まった瞬間、画面が切り替わり、再び普通のCMが流れた。

 マリア:「師匠?今のは?」
 イリーナ:「さあ……?映画の宣伝じゃないかしら?」

 衆合地獄には確かに美女鬼が沢山いますが、彼女らの体に触れることはできません。
 触れようとすると、美人局の如く、男鬼が現れ、あとは【お察しください】。

[同日16:30.天候:晴 同区内 JR大宮駅]

 タクシーは無事に大宮駅西口のロータリーに到着した。

 運転手:「ありがとうございます。お支払いは……」
 イリーナ:「アタシのカードで」
 運転手:「ありがとうございます」

 イリーナは運転手に自分のプラチナカードを渡した。
 その間、勇太が先に車から降りる。

 勇太:「鉄道のダイヤは戻ったのか?まだタクシーが少ないな」
 マリア:「さすがに、午前中と比べて雪はだいぶ融けたみたいだからね」

 イリーナがタクシーから降りる時、勇太が手を取る。

 勇太:「今日はありがとうございます」
 イリーナ:「いいんだよ。アタシもリフレッシュできたからね。今度は電車に乗り換えかね?」
 勇太:「はい。その前に、荷物を取りに行きませんと」
 イリーナ:「そうだったね」

 エスカレーターで2階に上がり、コインロッカーに預けていた荷物を回収した。
 その荷物の中に隠れていた、ミク人形とハク人形が顔を出す。

 勇太:「よしよし。お待たせー」

 マリアの人形なのだが、勇太が頭を撫でても嫌がらなくなった。
 ダニエラが真っ先に勇太の専属メイド人形になったことは、他のメイド人形達からも異端視されていたが、今ではだいぶ信頼されるようになった。

 勇太:「キップは1人ずつ持ちましょう」
 イリーナ:「ありがとう」
 マリア:「特急“スペーシアきぬがわ”……?」
 勇太:「これで新宿まで速く、座って行けるよ」
 マリア:「どこかで聞いたことあるような……?」
 勇太:「『ダンテ先生を囲む会』で、鬼怒川温泉の帰りに乗った電車だね」
 マリア:「ああ!」
 勇太:「車両が同じという意味で、行き先は違うけど……」

 囲む会の時、帰りは浅草行きに乗ったのだった。
 今日は新宿行きに乗る。

 勇太:「それでは行きましょう」

 キップを片手に、改札口を通過する魔道士3人だった。
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“大魔道師の弟子” 「温泉でマターリの魔道士達」

2022-01-24 17:10:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日12:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 湯快爽快おおみや]

 温泉に浸かった稲生達。
 後でイリーナは、マッサージを受けたようで……。

 スタッフ:「凄いですね、お客様!?全身ガチガチですよ!?」
 イリーナ:「だよねぇ……。何せこの体、200年以上は使ってるからねぇ……」
 スタッフ:「は?」
 イリーナ:「そろそろ換え時なんだよねぇ……」

 ゴリゴリゴリ……!

 イリーナ:「ああン!そこよ、そこ!もっと強くやってぇーン!」
 スタッフ:「ここですか!?ここの筋ですか!?」

 外の休憩コーナーで待っている稲生とマリア。

 勇太:「また先生の絶叫が……」
 マリア:「ツボを刺激される度に、ああ騒がれちゃ、やかましくてしょうがないよな」
 勇太:「ははは……」

 それから1時間後……。

 イリーナ:「さぁさ、体もスッキリしたし!好きなもの頼んでー!」

 食事処で昼食を取る。

 店員:「お待たせしました。こちら、カキフライ定食です」
 イリーナ:「はい、私」
 店員:「こちら、湯けむり御膳です」
 マリア:「あ、私だ」
 店員:「こちら、生姜焼き定食です」
 勇太:「はい、僕です」
 イリーナ:「それじゃ、頂こうかね」
 勇太:「いただきます」

 食べている間……。

 マリア:「さすがに、あのヘンタイ理事はいませんでしたね」
 イリーナ:「こっちの本業が忙しいからね」
 勇太:「異世界通信社の最新号によると、あまり動きは無いようです」
 イリーナ:「だろうね。ところで、この後の予定は?」
 勇太:「はい。16時15分にここを出ます。送迎バスだと、大宮駅での乗り換えに間に合わないので、またタクシーで行きます」
 イリーナ:「分かったわ。私のカード、使っていいからね?」
 勇太:「ありがとうございます」
 イリーナ:「食べた後は、昼寝でもしようかね」
 勇太:「あ、はい。休憩コーナーあります」
 イリーナ:「ある?」
 勇太:「はい」

 それから更に1時間後、リクライニングチェアの並ぶ休憩処に、イリーナはいた。

 イリーナ:「来たか……」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。お隣、失礼致します」
 イリーナ:「今日は何の用なの?」
 ケンショーグリーン:「今日は魔界の状況について、お話し致します」
 イリーナ:「暗いニュースは結構よ」
 ケンショーグリーン:「クフっ!?それでは、アルカディアシティの再建計画について……」
 イリーナ:「出資はするけど、それはアタシの仕事じゃないね」
 ケンショーグリーン:「クフッ!出資金を出して頂けるのですね?ありがとうございます。我らが女王、ルーシー・ブラッドプール陛下もお喜びあそばされます。つきましては、我がケンショーの方にも御出資を……」
 イリーナ:「それはお断りするわ。ケンショーイエローとレッドの仕事でしょ?」
 ケンショーグリーン:「仰る通りでございます……」
 イリーナ:「ケンショーセピアはどうしたの?うちの弟子の仲間達が捜しているみたいだけど?」
 ケンショーグリーン:「私にも存じかねます。クフフフフ……」
 イリーナ:「それだけ使えない理事なのか、或いは……アタシをも煙に巻こうとしているのか……」

 目を細めていたイリーナが開眼する。
 緑色の瞳の先には、ケンショーグリーンがいた。

 ケンショーグリーン:「滅相もございません。何しろあれは、浅井家の問題。如何に譜代とはいえ、外様幹部の私には、真相を話しては下さらないでしょう」
 イリーナ:「ふーん……。まあ、いいけど……。他には?」
 ケンショーグリーン:「ございますとも。但し……」
 イリーナ:「ん?」

 ケンショーグリーンは、メモ書きをイリーナに渡した。
 そこには、『どこにソッカーや“魔の者”のスパイが潜んでいるか不明ですので、ここから先は暗号でお話し致します』と書いてあった。

 イリーナ:「分かったわ」
 ケンショーグリーン:「それでは……コホン。『うー!うまぴょい!うまぴょい!』」
 イリーナ:「は?」
 ケンショーグリーン:「『目ん玉ギラギラ出走でーす!(はいっ!)』」
 イリーナ:「え?」
 ケンショーグリーン:「『コメ食いてー!(でもやせたーい!)』」
 イリーナ:「ん?」
 ケンショーグリーン:「『あかちん塗っても(なおらないっ)(はーっ?)』」
 イリーナ:「それで?」
 ケンショーグリーン:「『遅刻だ後追い!(馬場おも!ずどーん!)』」
 イリーナ:「それは本当なの?」
 ケンショーグリーン:「『今日の勝利の女神は、あたしだけにチュウする』」
 イリーナ:「それはマズいわね……」
 ケンショーグリーン:「『キミの愛馬が!ずきゅーんどきゅーん、走り出し!(ふっふー!)』
 イリーナ:「いやいや……」
 ケンショーグリーン:「『こんなレースは初めて!(3、2、1、ファイト!)』」
 イリーナ:「分かったわ。そこまで分かれば、十分よ」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。それでは、報酬として、私に『勝利の女神は、あたしだけにチュウ』を!ハァハァ……」

 バン!(突然、入口のドアが開けられる)

 20代女性客:「あいつです!女子トイレ覗いてたの!」
 幼女先輩:「あのオジさんに、階段の下からスカート覗かれました!」
 老女大先輩:「あの若者に、露天風呂を覗かれたのじゃが……」
 ケンショーグリーン:「クフッ!?それは誤解です。それでは、これにてさらば!」

 ボンッ!(ケンショーグリーン、煙幕を張る)

 イリーナ:「全く……。相変わらず、派手な退場ねぇ……」

 ズコッ!(ケンショーグリーン、自分も視界を失い、躓いてズッコケる)

 ケンショーグリーン:「メガネ、メガネ……!」

 眼鏡を落としてしまったもよう。
 そして……。

 警備員:「ちょっとこっちへ!」

 ガシッと首根っこ掴まれ、警備員と男性スタッフに連行されるケンショーグリーンだった。
 どうやら、女性なら幼女から老女まで誰でもいいらしい。

 イリーナ:「やっと静かになるね……」

 その時、イリーナは下半身がスースーッとした。

 イリーナ:「?」

 ロングスカートの深いスリットに手を入れて、下着を確認すると、いつの間にか穿いていた下着が無くなっていた。

 警備員:「おとなしくしろ!」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ、御無体な!私は何も知りません!ええ!私の分析によりますと、これは冤罪です!」

 と言いつつ、右手にはしっかりイリーナの黒いパンティ(高級品)が握られていたのだった。

 イリーナ:「ほお……?」

 イリーナは魔法の杖をスッと取った。
 この後、ケンショーグリーンの身に何が起きたのかは【お察しください】。
コメント (2)
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