報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再びのホテル天長園」

2022-01-08 21:14:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日14:30.天候:曇 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園1F大浴場]

 私達は浴衣に着替え、タオルを持って大浴場へ向かった。

 愛原:「あっ!」

 すると女湯の方から、送迎車に同乗した天長会信者のオバちゃん2人が出て来た。

 オバちゃんA:「あら、お兄さん達」
 オバちゃんB:「これからお風呂?」
 愛原:「え、ええ、そうです」
 リサ:「飴、美味しかった」
 オバちゃんA:「そうでしょ?あんな美味しい飴、なかなか余所じゃ売ってないからね」
 オバちゃんB:「舐めるだけで幸せになれそうでしょ?でも、入信したらもっと幸せになれるわよ」

 いま、再びの勧誘。

 愛原:「じゃあ、私達は風呂に入りますんで」

 私はさっさと話を切り上げ、男湯へと逃げ込んだ。
 女子トイレが混んでる時、男子トイレに入ってきそうなオバちゃん達であるが、よもや男湯には入っては来るまい。

 愛原:「ふぅ。さすがに、男湯までは入って来ないようだな」
 高橋:「そのようっスね」
 リサ:「だよね」
 愛原:「さっさと入るぞ」
 高橋:「……うス」
 リサ:「おいっス!」
 愛原:「……って、何でリサがここにいるんだ!?」
 リサ:「え?混浴じゃないの?」
 愛原:「混浴じゃねーよ!」
 高橋:「なにシレッと入って来てんだ!オマエは向こうだろうが!」

 幸い男湯には誰もいなかったから良かったものの……。

 高橋:「そういやあいつ、人間のままだったら、さっきのオバちゃん達と大して歳変わんないんスよね」
 愛原:「そういうことか!」

 リサが時々見せる厚かましさや、豪放磊落な性的思考などはオバちゃんに通じるものがある。

 高橋:「それより先生!」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「あ、この不肖の弟子!高橋正義が!あ、愛原大先生の、あ、お背中をお流しして奉り候~也!」
 愛原:「……どこの歌舞伎だ?俺は女歌舞伎にしか興味は無いぞ」
 高橋:「先生!シーッ!リサのヤツ、そういうところ地獄耳ですから!」

 その直後、男湯の壁がドンドンと叩かれた。
 まるで、このまま壁がぶち破られる勢いである。

 高橋:「早いとこ風呂へ!」
 愛原:「あ、ああ!分かった!」

 私達は急いで大浴場へ入った。

 愛原:「リサのヤツ、第0形態だったから、壁をブチ破れなかったみたいだな?」
 高橋:「そうッスね。もしも第1形態だったら、壁ブチ破って来ましたよ」

 ボスクラスだからできる芸当だ。
 これがザコゾンビとかだとできない。
 日本版リサ・トレヴァーが使役するタイラントだって、壁をブチ破って追い掛けてくることがある。
 但し、欠点なのが、『本当に契約エリアしか追跡しない』ことである。
 つまり、契約エリア外の所に行くと、例え追跡対象者が目の前にいても捕まえないことだ。
 この辺は、警備業者に似ている。

 高橋:「先生、それよりお背中を」
 愛原:「ああ、分かった。頼む」

 洗い場に行って、そこで高橋に背中を流してもらう。

 愛原:「やっと旅行気分に浸れるな」
 高橋:「今更っスか?」
 愛原:「何か、今さら。やっぱこういう温泉に来たならばな、こういう温泉に入ってこその旅行気分だろ」
 高橋:「そうっスね」

 もちろん、露天風呂も堪能する。
 時折、近くから鐘や太鼓の音が聞こえてくる。
 確か、露天風呂の近くに天長会の教会だか聖堂だかがあるんだった。
 この時間でも、『お勤め』とか『お祈り』でもしているのだろうか。
 そういえばさっきのオバちゃん達、浴衣を着ていなかった。
 宿泊客ではないのだろうか。
 このホテル、表向きは一般客も泊まれる温泉ホテルだが、その実は天長会の保養施設兼合宿所でもあるという。
 それにしても、宗教団体が保養施設を持つって珍しくないか?
 顕正会でさえ、信者に対する福利厚生は扶養茶寮が良い所なのに。

[同日15:00.天候:曇 同ホテル1F湯上り処]

 愛原:「うー……そこそこ……」

 湯上り処でマッサージチェアを使う私。
 高橋とリサは、卓球に勤しんでいた。

 高橋:「うらぁーっ!」

 高橋が決める。

 リサ:「うー、浴衣って動きにくい」

 リサは上半身を脱いだ。
 だが、その下は黒いスポブラである。

 リサ:「もう1回!」
 高橋:「おう、いいぜ」

 リサのヤツ、第1形態に戻らないのはいいことだ。
 いくら高橋でも、生身の人間に第1形態はちょっと……と思う。

 愛原:「はい、ご苦労さん」

 しばらくして、運動し過ぎた2人に対し、私は自販機で売っているジュースを奢ってあげた。

 高橋:「あざーっす!」
 リサ:「ありがとう」
 愛原:「2人とも、ガチでやり過ぎだよ」
 高橋:「サーセン……」
 リサ:「お兄ちゃんは人間だから、どうしても手加減しないといけない」
 高橋:「あぁ?」
 リサ:「今度はリンを誘ってみよう。リンとなら、本気で戦えるかも」
 愛原:「巻き込む気、満々だな」

 私は苦笑いした。

[同日15:30.天候:曇 同ホテル1Fロビー・売店・展示室]

 ロビーに戻ると、フロントには宿泊客らしいのがいた。
 どうやら、一般客は私達以外にもちゃんといるらしい。
 何だか安心した。

 リサ:「! あった!幸せの飴!」
 愛原:「って、箱売りかよ!?」

 確かに売店で売っていたが、購入対象が宿泊客としている為か、お土産用に箱に入ったものだった。
 大きさはリサがもらった物と同じだが、本当に中身はオバちゃん達がくれたものと同じなのだろうか。

 リサ:「後で買う」
 愛原:「そ、そうか?」

 まあ、宿泊客……つまり、観光客相手に売ってるものだから、変な物は入っていないと思うが……。
 それより、私が今一番気になることがある。

 女将:「愛原様、お風呂の方はいかがでございましたか?」
 愛原:「女将さん。いいお湯だったよ。それより、1つ聞きたいことがあるんですが……」
 女将:「何でございましょうか?」
 愛原:「さっき、天長会の信者の人達に聞いたんですけど、ここに白井理事長さんって方がいらっしゃるそうですね?」
 女将:「! た、確かに今、聖堂の方にいらっしゃいますが……」
 愛原:「まさかその人、白井伝三郎さんじゃないよねぇ?」
 女将:「そ、それは……」

 女将さんの回答や如何に!?
コメント
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