報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「雪に閉ざされて」

2022-01-20 20:10:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月6日12:00.天候:雪 埼玉県蕨市 JR蕨駅]

 勇太はキップを買いに、最寄りの駅までやってきた。
 蕨駅には“みどりの窓口”があるのだが、そこは払い戻しをする乗客でごった返していた。
 但し、券売機ではそれができないのか、券売機の方はそれほどでもない(但し、変更はできるので、変更をする乗客達が列を成していた)。
 雪の影響が首都圏ではまだ大きく出ていないのだが、新幹線や特急列車などで運休が発生し始めている。
 それの払い戻しや変更を求める客達だ。

 勇太:「マズいタイミングに当たっちゃったねぇ……」
 マリア:「勇太は他人事だな」
 勇太:「先生の占いじゃ、僕達が帰る時には何の影響も無いって話じゃない?」
 マリア:「まあ、そうなんだけどな。もう帰りの列車のキップは確保しているだろう?他に何が必要なの?」
 勇太:「明日の列車」
 マリア:「Huh?」

 ようやく自分の番が回って来て、勇太は慣れた手付きで指定席券売機を操作した。
 そして、イリーナから借りたプラチナカードで支払い手続きを完了する。

 マリア:「グリーン車じゃない?」
 勇太:「そうだね。普通なら先生だけはそこの席なのに、『個室に1人はイヤ』と駄々こねられて……」
 マリア:「個室なの?」
 勇太:「そうなんだ」
 マリア:「Hum...確か、どこかの鉄道で旅行していた時に、個室に乗っていたら、魔女狩りに見つかって大変な目に遭ったって聞いたことがあるような気がする……」
 勇太:「そうなの!?貨物列車に便乗してたんじゃ?」
 マリア:「多分、旅客列車で移動できるくらいには稼げるようになった時期じゃない?」
 勇太:「個室席に乗れるようになって?」
 マリア:「いやいや。日本の鉄道と違って、ヨーロッパの長距離列車は個室が基本だったから」
 勇太:「そうか!オリエンタル急行!」
 マリア:「シベリア鉄道もそうでしょ。エコノミークラスでも、個室ってのは当たり前だった時代の話だよ」
 勇太:「なるほどなるほど」

 明治時代の黎明期、日本の鉄道客車は個室であった。
 それは輸入先のイギリスでは、それが当たり前だったからである。
 イギリスに限ったことではなく、当時のヨーロッパの鉄道においてはだ。
 アメリカでは、今でこそアムトラックの長距離列車のファーストクラス席は個室だが、それ以前は開放席が一般的だった。
 イギリスでは馬車を参考に客車を設計し、アメリカでは蒸気船の客室を参考に客車を設計したからである。

 勇太:「日本もコストパフォーマンス最優先になったせいで、新幹線ですら個室席が廃止されたからなぁ……」

 山陽新幹線の“ひかりレールスター”にあったような気がするが、その存在を忘れるほどに、勇太にとっては影が薄い。

 マリア:「とにかく、師匠にとっては魔女狩りに不意打ちされたトラウマがあるみたいだから、あんまり個室には乗りたくないみたいだよ」
 勇太:「この前、“ダンテ先生を囲む会”で、鬼怒川に行った帰りでは、個室席に喜んで乗ってたような……?」
 マリア:「あれは大師匠様が御一緒だったからだろう」
 勇太:「それもそうか」

 “みどりの窓口”をあとにし、2人は駅の外に出る。
 雪が降って来たが、2人は傘を持たず、魔道士のローブのフードを被った。

 勇太:「昼食はどこにしようか?」
 マリア:「勇太の好きなものでいいよ」
 勇太:「そうか。じゃあ、今度は寿司にしよう。この近くに、回転寿司がある。もっとも、コロナ禍で、今は殆ど注文形式になってるけどね」
 マリア:「じゃあ、そうしよう」

 かつては人間時代のトラウマのせいで、生魚が一切食べれなかったマリア。
 今ではそれを克服し、普通に食べれるようになっている。

[同日12:30.天候:雪 同市内 すし松 蕨店]

 店内に入り、カウンター席に横並びに座る。

 勇太:「うん。まあ、流れてるのもあるけど、やっぱり注文形式が主になってしまったか」
 マリア:「ベルトコンベアに寿司ねぇ……。うちの屋敷でも導入して、師匠へのお茶はベルトコンベアで……」
 勇太:「先生の元に届く頃には冷めてるから、やめた方がいいんじゃないかなぁ……」
 マリア:「それは残念。……この、ランチがいい」
 勇太:「よし。じゃあ、僕もそうしよう。すいませーん」

 勇太とマリアは、ランチを注文した。
 味噌汁が付いている。

 勇太:「お茶はこうして……」
 マリア:「テーブルからお湯が出るようになっている……。師匠の部屋に付けておけば、お茶くみが凄いラクに……」
 勇太:「前に、ヨドバシアキバで紅茶サーバー購入しなかったっけ?」
 マリア:「そうだったっけな」
 勇太:「それより凄い雪だ。これは積もるよ」
 マリア:「勇太のダディ、大丈夫かな?帰ったら私が占ってあげよう」
 勇太:「ありがとう。でも、大丈夫だよ。今夜は帰らないってさ」
 マリア:「Huh?」
 勇太:「多分この雪で首都高とか通行止めになるって先生に予知されたものだから、早々に都内にホテルを確保して、今夜はそこに泊まるってさ」
 マリア:「それで勇太のダディ、出張みたいな装備で出勤して行ったの?!」
 勇太:「そう。出張じゃなくて、雪で泊まる準備ね」
 マリア:「それで、明日帰って来ると」
 勇太:「そう」
 マリア:「高級ホテルに泊まるの?」
 勇太:「いや、八重洲のスーパーホテルだって」
 マリア:「スーパーホテルって確か、富士宮で泊まったホテルか?」
 勇太:「そう。それと同じチェーンだよ」
 マリア:「温泉はあるし、朝食も食べ放題と……」
 勇太:「都心過ぎて、富士宮と違って天然温泉ではないらしいけどね」
 マリア:「そうなのか」
 勇太:「それでも、今から予約したら、もうどこのホテルも満室かもしれないよ?」
 マリア:「エレーナのホテルも、こういう時はウハウハか」
 勇太:「だろうね。……あー、でも地下鉄沿線でしょ?地下鉄なら、雪でも関係無いんじゃないかなぁ?」

 都営大江戸線は完全に地下しか走行しないので、それでいいのだが、都営新宿線にあっては、大島駅付近は地上を走り、また、京王線と直通運転を行っているので、運休までは無いものの、ダイヤ乱れくらいはあるだろう。

 マリア:「私達も、ここでランチをしたら、早く帰るのが良さそうだ。そして後は、ステイホーム」
 勇太:「その方がいいね」

 そして、2人はランチメニューの寿司に舌鼓を打ったのである。
 尚、イリーナはこの時、稲生家のゲストルームにて、ゴロゴロしていたそうな。
コメント (4)
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の快気祝い」

2022-01-20 17:16:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月5日19:00.東京都墨田区菊川 ジョナサン菊川店]

 デイライトの事務所をあとにした私達は、再び車に乗った。
 車中でリサは終始、ローテンションだった。
 どうやら、事務所で何か善場主任に言われたらしい。
 リサ・トレヴァーの先輩として、私を捕食しないように注意したようだ。
 善場主任が注意してくれたおかげか、今度はリサは私に寄り掛かるような座り方はしても、抱き付くような形になって、爪を立てて来るような仕草はしてこなくなった。
 途中のガソリンスタンドで満タンにして、それからレンタカーショップで車を返す。
 そこから一駅分歩いて、私の事務所近くのファミレスに入って夕食を取ることにした。
 帰り際、ローテンションだったリサだが、さすがに食欲には勝てないようで、ここではガッツリとステーキを注文していた。
 ただ、どうも食べ方が、嫌な事があった時にするヤケ食いに似ていたが。

 高橋:「ささ、先生、どうぞどうぞ」

 取りあえずリサには、食わせておけばいいだろう。
 私は高橋から、ビールのジョッキを受け取った。

 高橋:「先生の快気祝い、これで何度目ですかね」
 愛原:「はは、何度目だろうなぁ?」

 私と高橋はビール、リサはジュースで乾杯した。

 愛原:「リサ、善場主任から何か言われたのか?」
 リサ:「先生、食べちゃダメだって」
 高橋:「いや、そりゃダメだろ!姉ちゃんの言う通りだ!」

 私を襲った女将さんは今、BSAA極東支部日本地区本部に拘束されているということだが、今後は藤野の研究施設に送られるという。
 そこでどんなことをされるのかは分からないが、日本アンブレラのようなことはしないということは願ってておこう。
 何だかんだ言って、娘の凛さんの上京・進学は打ってつけだったというわけだ。
 もちろんまだ入試すら受けていないのだが、私は凛さんは合格するものだと思っている。
 そして、東京中央学園には学生寮があるので、そこに入寮するのだろうと思われる。

 リサ:「リンが先生に謝りたいって言ってた」

 リサは自分のスマホを見せながら言った。
 どうやら、LINEでやり取りするようになったらしい。

 愛原:「別にいいよ。凛さんが悪いわけじゃないんだし。それに、凛さんだって、リサと一緒に俺を助けに来てくれたわけだろ?それで充分だよ」
 リサ:「凛も役に立たなかった。しかも、私の邪魔をした。妹はぶん殴るけど、凛はビンタ」
 愛原:「やめなさい!」

 凛さんとしては、それでも母親の味方をしたかったのだろう。
 リサの怒りようは私も聞いていたので、あの場では女将さんを殺しかねない状態だったという。
 凛さんがそれを察知して命乞いをしたということも聞いている。

 愛原:「高橋からも言ってやれよ」
 高橋:「うーん……。先生、申し訳ないんスけど、こればかりは俺もリサに一票っス」
 愛原:「おいおい!」
 リサ:「同士!」

 高橋とリサは互いに握手を交わした。

 高橋:「よく、BSAAが女将を殺さなかったと逆に驚いてるんスよ」
 愛原:「それは被害者が俺達だけで、しかもこうやって生き残ったからだろう?人間だって、傷害罪などで逮捕されるだろうが、それでは死刑にならないからな」

 高橋に関しては傷害罪、私に対しては【お察しください】。
 いずれにせよ、例え女将さんが人間だったとしても、死刑は適用されない案件である。
 その為、BSAAも殺処分まではしなかったのだろう。
 但し、これが外国だと有無を言わさず射殺している恐れはある。
 日本が批准しているのは、あくまでバイオハザードが発生して緊急事態の最中のみ活動を許すという、とても中途半端なものであって、警察権については地元の警察のみということになっている。
 その為、さすがのBSAAもすぐには殺せなかったのだろう。

 愛原:「しばらくの間は、藤野の研究施設で監禁生活か」
 高橋:「そこはタイーホ&懲役刑とかじゃないんスね」
 愛原:「まあ、普通の人間じゃないから。もしもまた暴走して、拘置所や刑務所でバイオハザード起こされたら大変なことになるだろう?」
 高橋:「確かに……」
 愛原:「とにかく、もう政府の管理下に置かれているんだ。あとは政府に任せればいいさ」
 高橋:「はあ……」

 で、再び天長会の宗教施設にもガサ入れができる口実ができる、と。
 国家を敵に回すと、小さな傷口をどんどん大きく広げられるから(最近の例、某武闘派暴力団の組長や会長に対する判決)、反社の皆様方は気を付けないとね。

 愛原:「リサも来週から学校が始まる。真面目に通わないと、善場主任に怒られるだけじゃ済まないぞ」
 リサ:「ちゃんと行ってるよ」
 愛原:「またイジメ問題で、学校から連絡が来ないようにしないとな?」
 リサ:「う……。き、気を付けます……」

 リサ、イジメ加害の件で学校から連絡される件数、【お察しください】。
 隠れてこっそり、他の生徒の体内老廃物を捕食している(女子限定)のだが、時にはそれがイジメと捉えられることがあり、そういうことである。

 愛原:「冬休み終了後、春休みになるまで、何か行事はあるか?」

 まだ1年生のうちから、受験ということはないだろうが……。
 そもそもリサ、大学進学を考えているのだろうか?

 リサ:「あ、そうそう。中等部の時、できなかった修学旅行の代わりをやろうという話はある」

 リサの代、中等部の修学旅行はコロナ禍で中止になってしまった。
 その為、今でも積立金が宙に浮いたままなのである。
 それとは別に、高等部にも修学旅行はある。
 BSAAとの取り決めで、リサは海外には行けない。
 国内のどこか、ということになりそうだ。
 それが一体どこなのか……。

 リサ:「多分、始業式の時に言われると思う」
 愛原:「そうか」

 未だコロナ禍は収束していないが、さすがに宙に浮いた中等部修学旅行は、まだ高等部1年生のうちにした方がいいかもな。
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