[12月31日16:30.天候:曇 長野県松本市 JR中央本線46M列車10号車内]
稲生勇太達を乗せた特急列車は、後ろに3両増結すると、定刻通りに発車した。
大糸線内では雪が降っていたが、中央本線に入ると、心なしか雪が止んだような気がする。
〔「お待たせ致しました。16時30分発、特急“あずさ”46号、新宿行きでございます。只今、後ろに3両、1号車から3号車を連結し、12両編成で新宿まで参ります。【中略】次は塩尻、塩尻です」〕
勇太:「ここから車内販売があると思うんだけど……」
〔「皆様、本日もご利用くださいまして、ありがとうございます。……」〕
車内放送が車掌の肉声から、女性の肉声へと変わった。
〔「これより、ワゴンによります車内販売を開始させて頂きます。……」〕
勇太:「やっぱりだ」
ミク人形:「シンカンセンスゴイカタイアイス」
ハク人形:「シンカンセンスゴイカタイアイス」
勇太:「いや、もう無いから」
ミク人形:「ちっ」
ハク人形:「ちっ」
マリア:「しかし、本当に無いのか?」
勇太:「無いよ」
マリア:「他の列車でも?」
勇太:「今では東武スペーシアや、小田急ロマンスカーで買えるかどうか……」
マリア:「新幹線では売ってないのか……」
勇太:「無い……みたいだね。まあ、他のを買うしかないよ」
お菓子などは売っているので。
車内販売員:「失礼致します。車内販売でございます」
勇太:「ほら、来たよ」
ミク人形:「チョコレート」
ハク人形:「チョコレート」
勇太:「すいまんせん。チョコレート系のお菓子を2つください」
車内販売員:「は、はい」
荷棚から曲芸のようにぶら下がる人形達に驚く顔になる車内販売員。
勇太:「あと、僕はコーヒーください」
車内販売員:「ボトル缶の物になりますが、よろしいでしょうか?」
勇太:「はい。それの微糖タイプと……マリアはどうする?」
マリア:「アップルジュース」
勇太:「りんごジュースください」
車内販売員:「かしこまりました」
全部、勇太のSuicaで購入した。
アイスには有りつけなかったが、代替品は購入できて、人形達も満足のようだ。
勇太:(それにしても、品目が普通列車のグリーン車みたいになってきたなぁ……)
[同日19:06.天候:晴 東京都新宿区 JR中央本線46M列車9・10号車→JR新宿駅]
列車が東へ向かえば向かうほど、雪が無くなっていった。
今はもう、完全に雪の無い都内を走行している。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、新宿、新宿。お出口は、左側です。……〕
勇太:「そろそろ、先生を起こしに行きますか」
マリア:「そうだな」
勇太とマリアは降りる準備をすると、隣のグリーン車へと向かった。
グリーン車は普通車と比べて空いていた。
イリーナの隣には誰も座っておらず、イリーナはローブのフードを被り、リクライニングを最大限に倒して寝ていた。
マリア:「師匠、師匠。起きてください。もうすぐ着きますよ」
イリーナ:「……家畜車の 牛に足裏 舐められて 笑って目覚める 旅の朝なり」
マリア:「何の短歌ですか!早く起きてください!」
ピーンと来た勇太。
勇太:(もしかして、“魔女の宅急便”の一コマかな?主人公が貨物列車に便乗して旅をしていたら、家畜車の牛に舐められて起きるというシーンがあったような……)
イリーナ:「いやあ……大昔は、貨物列車に便乗して旅をしていたものでねぇ……。その時の夢を見ちゃったんだよぉ……」
マリア:「今は御立派に、ビジネスクラスで旅ができているじゃないですか」
イリーナ:「ここんとこ最近、昔を思い出すことが多いんだよ。死期が近いのかねぇ……」
マリア:「縁起でもないこと言わないでください」
そんなことを話しているうちに、列車の速度が落ちて行く。
勇太:「もうそろそろ着きますよ」
マリア:「そういうわけです。早く立ってください」
イリーナ:「はいはい」
列車は新宿駅構内の複雑なポイントを渡って、中央本線特急ホームへと入線した。
〔しんじゅく~、新宿~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
勇太達はホームに降りた。
イリーナ:「それで、ここから乗り換えかい?」
勇太:「そうです。1回だけですけど、埼京線で」
イリーナ:「何だい?大宮にまたお家を建てられたの?」
マリア:「師匠、今夜はホテルだって言ったじゃないですか」
イリーナ:「冗談だよぉ……」
勇太の先導で、大魔道師と下級魔道士はホームを移動する。
移動した先は埼京線ホーム。
湘南新宿ラインも止まるが、それには乗らず、当駅始発の電車を狙って乗った。
これなら、確実に座れるからだ。
[同日19:17.天候:晴 JR新宿駅→埼京線1971K電車10号車内]
モスグリーンの塗装が特徴の埼京線に乗り込んだ。
〔この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.〕
もう休日ダイヤで運転されるような時期ということもあり、また、乗った車両が最後尾ということもあって、車内は空いている。
〔「お待たせ致しました。19時17分発、埼京線の各駅停車、大宮行き、まもなく発車致します」〕
ホームから明るい曲調の発車メロディが流れて来る。
〔3番線の埼京線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ここでもダイヤ通りに電車は発車した。
勇太は手持ちのスマホで、両親にLINEを送る。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です〕
勇太:「返信がありました。ホテルで待っているそうです」
イリーナ:「そうかい」
勇太:「都外へは出ませんので、ただの通勤電車ですが、御辛抱ください」
イリーナ:「いいんだよ。家畜車に比べればマシさね」
イリーナは相変わらず目を細めている。
だが、その目が少し開かれた。
イリーナ:「とはいうものの、さすがにお腹は減ったね」
勇太:「はい。駅に着いたら、もうすぐホテルなので、そちらで夕食を……と」
イリーナ:「そうかい。それならいいけどね」
あとはこの電車がダイヤ通りに着けるかどうかだが、イリーナがそれ以上何も言わないということは大丈夫なのだろう。
稲生勇太達を乗せた特急列車は、後ろに3両増結すると、定刻通りに発車した。
大糸線内では雪が降っていたが、中央本線に入ると、心なしか雪が止んだような気がする。
〔「お待たせ致しました。16時30分発、特急“あずさ”46号、新宿行きでございます。只今、後ろに3両、1号車から3号車を連結し、12両編成で新宿まで参ります。【中略】次は塩尻、塩尻です」〕
勇太:「ここから車内販売があると思うんだけど……」
〔「皆様、本日もご利用くださいまして、ありがとうございます。……」〕
車内放送が車掌の肉声から、女性の肉声へと変わった。
〔「これより、ワゴンによります車内販売を開始させて頂きます。……」〕
勇太:「やっぱりだ」
ミク人形:「シンカンセンスゴイカタイアイス」
ハク人形:「シンカンセンスゴイカタイアイス」
勇太:「いや、もう無いから」
ミク人形:「ちっ」
ハク人形:「ちっ」
マリア:「しかし、本当に無いのか?」
勇太:「無いよ」
マリア:「他の列車でも?」
勇太:「今では東武スペーシアや、小田急ロマンスカーで買えるかどうか……」
マリア:「新幹線では売ってないのか……」
勇太:「無い……みたいだね。まあ、他のを買うしかないよ」
お菓子などは売っているので。
車内販売員:「失礼致します。車内販売でございます」
勇太:「ほら、来たよ」
ミク人形:「チョコレート」
ハク人形:「チョコレート」
勇太:「すいまんせん。チョコレート系のお菓子を2つください」
車内販売員:「は、はい」
荷棚から曲芸のようにぶら下がる人形達に驚く顔になる車内販売員。
勇太:「あと、僕はコーヒーください」
車内販売員:「ボトル缶の物になりますが、よろしいでしょうか?」
勇太:「はい。それの微糖タイプと……マリアはどうする?」
マリア:「アップルジュース」
勇太:「りんごジュースください」
車内販売員:「かしこまりました」
全部、勇太のSuicaで購入した。
アイスには有りつけなかったが、代替品は購入できて、人形達も満足のようだ。
勇太:(それにしても、品目が普通列車のグリーン車みたいになってきたなぁ……)
[同日19:06.天候:晴 東京都新宿区 JR中央本線46M列車9・10号車→JR新宿駅]
列車が東へ向かえば向かうほど、雪が無くなっていった。
今はもう、完全に雪の無い都内を走行している。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、新宿、新宿。お出口は、左側です。……〕
勇太:「そろそろ、先生を起こしに行きますか」
マリア:「そうだな」
勇太とマリアは降りる準備をすると、隣のグリーン車へと向かった。
グリーン車は普通車と比べて空いていた。
イリーナの隣には誰も座っておらず、イリーナはローブのフードを被り、リクライニングを最大限に倒して寝ていた。
マリア:「師匠、師匠。起きてください。もうすぐ着きますよ」
イリーナ:「……家畜車の 牛に足裏 舐められて 笑って目覚める 旅の朝なり」
マリア:「何の短歌ですか!早く起きてください!」
ピーンと来た勇太。
勇太:(もしかして、“魔女の宅急便”の一コマかな?主人公が貨物列車に便乗して旅をしていたら、家畜車の牛に舐められて起きるというシーンがあったような……)
イリーナ:「いやあ……大昔は、貨物列車に便乗して旅をしていたものでねぇ……。その時の夢を見ちゃったんだよぉ……」
マリア:「今は御立派に、ビジネスクラスで旅ができているじゃないですか」
イリーナ:「ここんとこ最近、昔を思い出すことが多いんだよ。死期が近いのかねぇ……」
マリア:「縁起でもないこと言わないでください」
そんなことを話しているうちに、列車の速度が落ちて行く。
勇太:「もうそろそろ着きますよ」
マリア:「そういうわけです。早く立ってください」
イリーナ:「はいはい」
列車は新宿駅構内の複雑なポイントを渡って、中央本線特急ホームへと入線した。
〔しんじゅく~、新宿~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
勇太達はホームに降りた。
イリーナ:「それで、ここから乗り換えかい?」
勇太:「そうです。1回だけですけど、埼京線で」
イリーナ:「何だい?大宮にまたお家を建てられたの?」
マリア:「師匠、今夜はホテルだって言ったじゃないですか」
イリーナ:「冗談だよぉ……」
勇太の先導で、大魔道師と下級魔道士はホームを移動する。
移動した先は埼京線ホーム。
湘南新宿ラインも止まるが、それには乗らず、当駅始発の電車を狙って乗った。
これなら、確実に座れるからだ。
[同日19:17.天候:晴 JR新宿駅→埼京線1971K電車10号車内]
モスグリーンの塗装が特徴の埼京線に乗り込んだ。
〔この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.〕
もう休日ダイヤで運転されるような時期ということもあり、また、乗った車両が最後尾ということもあって、車内は空いている。
〔「お待たせ致しました。19時17分発、埼京線の各駅停車、大宮行き、まもなく発車致します」〕
ホームから明るい曲調の発車メロディが流れて来る。
〔3番線の埼京線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ここでもダイヤ通りに電車は発車した。
勇太は手持ちのスマホで、両親にLINEを送る。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です〕
勇太:「返信がありました。ホテルで待っているそうです」
イリーナ:「そうかい」
勇太:「都外へは出ませんので、ただの通勤電車ですが、御辛抱ください」
イリーナ:「いいんだよ。家畜車に比べればマシさね」
イリーナは相変わらず目を細めている。
だが、その目が少し開かれた。
イリーナ:「とはいうものの、さすがにお腹は減ったね」
勇太:「はい。駅に着いたら、もうすぐホテルなので、そちらで夕食を……と」
イリーナ:「そうかい。それならいいけどね」
あとはこの電車がダイヤ通りに着けるかどうかだが、イリーナがそれ以上何も言わないということは大丈夫なのだろう。