報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「BOWの年始旅行」

2022-01-05 22:02:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日10:02.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川停留所→都営バス東20系統車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は、栃木県のある場所へ向かう所だ。
 別にプライベートの旅行なのに、リサは何故か学校の制服を着ていた。
 彼女が言うには……。

 リサ:「凛に学園の先輩として、何かアドバイスしに行くんでしょ?だったら、恰好から入ろうと思って」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「先生、バス来ましたよ」
 愛原:「おう」

 1時間に1~2本しか無い路線バスがやってきた。
 都営バスには、たまにそういうローカル線が存在する。

〔「東京駅丸の内北口行きです」〕

 前扉からバスに乗り込む。
 車内はやはり空いていたが、少し客層が違っていた。
 富岡八幡宮や成田山に初詣に行くと思われる、着物の女性をチラホラ見かけた。
 リサは慣れた様子で、手持ちのPasmoで運賃を払って乗り込んだ。

 愛原:「オマエら、そっちな」
 高橋:「ハイ」

 空いている1人席に私が座り、2人席にリサと高橋が座った。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗降を終えると、ドアを閉めて発車した。

〔ピンポーン♪ この都営バスは門前仲町、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きです。次は森下五丁目、森下五丁目でございます〕

 リサ:「凛にこの制服見せて、頑張れーって応援する」
 高橋:「先輩の余裕か」
 愛原:「凛さん、スポーツが得意なら、それで合格できそうなものだけどね」
 リサ:「一応、推薦入試狙ってるって言ってた」
 高橋:「推薦入試ってな、頭が良くないとできないんだろ?」
 リサ:「凛は成績いいって聞いたけど?」
 愛原:「ま、その辺も色々聞いて、アドバイスしてやればいいさ」

[同日10:31.天候:晴 東京都千代田区丸の内 都営バス呉服橋停留所→JR東京駅]

〔ピンポーン♪ 次は呉服橋、呉服橋でございます。東京駅日本橋口、地下鉄大手町駅、丸の内中央ビル、サピアタワー、トラストタワーへはこちらが便利です。次は、呉服橋でございます〕

 愛原:「ここで降りるか」
 リサ:「はいよ」

 リサは降車ボタンを押した。

〔ピンポーン♪ 次、止まります。バスが止まるまで、そのままお待ちください〕

 高橋:「日本橋口から入るんスか?」
 愛原:「すぐに新幹線に乗るわけじゃないからな。せっかくだから、上野さん達に土産の1つでも持って行ってやればいいじゃない」
 リサ:「! それもそうだ。さすが先生」
 高橋:「もっと褒め称えろ!」
 愛原:「いや、いいよ」

〔「お待たせ致しました。呉服橋です」〕

 バスは永代通り上にあるバス停に停車した。
 駅前ロータリーは高速バス(主にJRバス)の降車場となっているが、永代通りのバス停は都営バス専用である。
 そこで降りたのは、私達だけではなかった。
 半分くらいの乗客が降りて行く。
 私達と同じように、これから東京駅に行き、電車に乗るのが目的の人達が殆どだった。

 愛原:「それじゃ、行こう」
 高橋:「はい」
 愛原:「リサも1人でバスに乗れるようになるといいんだがな……」
 リサ:「わたし、もう大丈夫だよ」
 愛原:「ヨーロッパのローズマリー・ウィンターズ氏は遠方監視が条件とはいえ、1人で路線バスに乗ることが許されている。だけど、リサはまだ許可されてないんだよなぁ……」

 通学の時などのみ、監視レベルが一段階落とされて、『遠方監視』となっているが、それ以外に関しては、まだ『委託監視』となっている。
 これは私達、民間の探偵業者などに委託して、直接監視させるというものだ。
 更にレベルが上がると、もはや善場主任達による『直接監視』となる。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」
 リサ:「わたし、先生の隣~」
 高橋:「コラ!」
 愛原:「隣も何も、下りは自由席だよ。始発だし、“なすの”は空いてるから」

 日本橋改札口だと直接ホームに行ってしまうので、八重洲北口へ向かう。
 JR東海側にはなるが、途中でお土産を購入することができる。

 リサ:「凛に、甘い物を買って行ってあげる」
 愛原:「なるほど。甘い物は脳の活性化にいいって言うからな」
 リサ:「うん。あと、わたしが食べたい」
 高橋:「オマエ、お土産の意味分かってんのか?」
 リサ:「ワカッテルヨ」
 高橋:「何でそこだけカタコトなんだ?」

 ごまたまごと東京ラスクのラスクを買った。

 愛原:「これでいいだろう」
 リサ:「『列車を待ちますか?』『はい』『いいえ』」
 高橋:「FFⅦリメイクかよ」
 愛原:「お土産も買ったことだし、早めにホームに行くか」

 私は手持ちのキップを片手に、八重洲北口改札を通過した。

[同日11:05.天候:晴 JR東京駅・JR東日本新幹線ホーム→東北新幹線257B列車1号車内]

〔20番線に停車中の電車は、11時8分発、“なすの”257号、郡山行きです。この電車は……〕

 BSAAとの取り決めにより、最後尾の1号車に並ぶ。
 “やまびこ”や“つばさ”、“はやぶさ”と“こまち”は長蛇の列だったが、“なすの”は空いていた。
 昨年はコロナ禍でどの列車も閑散としていたが、少しは持ち直したようだ。
 コロナ禍というキングボンビーも、ようやく普通の貧乏神に戻ったか?

〔「お待たせ致しました。20番線、まもなくドアが開きます。乗車口まで、お進みください」〕

 私達が乗る“なすの”は“はやぶさ”の折り返しということもあり、到着しても車内清掃の為に、すぐには乗ることができなかった。
 それが終わり、ようやく乗車が開始される。
 中間車と比べると、明らかに乗車定員の少ない1号車であるが、私達は3人席に座ることができた。

〔「ご案内致します。この電車は11時8分発、東北新幹線“なすの”257号、郡山行きです。……」〕

 荷棚の上に荷物を置き、リサが窓側に座り、私が真ん中、通路側が高橋というのは、もはや鉄板の席順である。

 リサ:「駅弁食べたかったー」
 愛原:「ホテルに着いたら、そこで昼食取るからさ」

 私はリサを宥めすかした。
 代わりにリサは、テーブルの上にジュースとポッキーを置いている。

 高橋:「駅からはバスですか?前回みたいに」
 愛原:「いや、今度はホテルから迎えが来てくれるってさ」
 高橋:「それはいいですね」
 愛原:「ただ、チェックインの時間にはまだ早いから、着いたらホテルのレストランで昼食でも取って、時間を潰そうかと考えているんだ」
 高橋:「先生の顔で、早めにチェックインさせてもらえませんかね?」
 愛原:「俺の顔を使っても、昼食後になりそうだな。だが、腹を空かせたリサを満足させてからの方がいいだろう」
 リサ:「食べてからの方がいい」

 リサはポッキーを齧りながら、大きく頷いた。

 愛原:「そういうことだ」
 高橋:「分かりました。先生の御意向なら……」
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“大魔道師の弟子” 「魔道士達の年始」

2022-01-05 16:44:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日08:30.天候:晴 東京都北区赤羽 ホテルメッツ赤羽9F客室(マリアとイリーナの部屋)]

 マリア:「んん……」

 マリアは添い寝していたミク人形に起こされて目が覚めた。

 マリア:「ホテルだと変な夢見るなぁ……」

 勇太が同じホテルに泊まってることもあり、悪夢(主に人間時代、集団レイプされた夢)を見ることは無いのだが、他の宿泊客も泊まる共用のホテルだと、変わった夢を見ることがある。
 今回のはどちらかというと、イリーナに捨てた命を拾われて、魔道士になった頃の夢だった。

 マリア:「『このまま地獄に堕ちて永劫の時を彷徨うか、或いは魔道士として永劫の時を生きるか、好きな方を選びなさい』か……」

 マリアは隣でグースカ寝ている師匠を見ながら呟いた。

 イリーナ:「『アタシのオススメは後者よ』」
 マリア:「師匠!?」
 イリーナ:「……ムニャムニゃ……クカー……」
 マリア:「って、寝言!?」

 マリアは起き上がって、バスルームに向かった。
 今はホテル備え付けの寝巻を着ている。
 シャワーは寝る前に浴びたので、今は顔を洗うだけで良かった。
 寝巻を脱ぐと、下は緑色のタンクトップとショーツである。

 イリーナ:(あのコも成長したわねぇ……。体の成長は……まだだけど)
 マリア:「……ックシュ!」

 何故か洗面所でクシャミをするマリアだった。

[同日09:00.天候:晴 ホテルメッツ赤羽9Fエレベーターホール→2Fデニーズ]

 マリア:「お待たせ」
 勇太:「マリア、おはよう。よく眠れた?」
 マリア:「殆ど仮眠だからね。まあ、一応何とか……」

 ポーン♪(ボタンを押して、エレベーターを呼ぶ音)

 勇太:「先生は?」
 マリア:「師匠は『あと1時間』を5分繰り返していたので、放っておいた」
 勇太:「そう。……って、逆じゃない!?」
 マリア:「いや、師匠の場合、それが正しい」
 勇太:「そ、そうなんだ」

 ピンポーン♪(エレベーター到着)

〔下に参ります〕

 勇太:「じゃあ、食べに行こう」
 マリア:「うん」

 ピーン♪(エレベーター閉扉チャイム)

 マリア:「勇太の両親は?」
 勇太:「もう朝食食べたって。部屋でまったりしてるらしい」
 マリア:「そうなんだ」

 エレベーターで2階に下り、そこにあるレストランに入る。
 そこで空いている席に座ると、朝食を注文した。

 マリア:「ん?今回は日本食じゃない?」
 勇太:「そうだね。和食は夕食で食べたから、今度は洋食でいいや。どうせ昼食は、また和食になるだろうし」
 マリア:「そうなの?」
 勇太:「うち、昼にお餅やお雑煮を食べるんだ」
 マリア:「Omochi?」
 勇太:「Rice cakeね」

 餅のことを英語で『Rice cake(ライスケーキ)』という。

 マリア:「お年寄りが喉に詰まらせて死ぬヤツ?」
 勇太:「間違ってはいないけど、魔女らしい認識だね」
 マリア:「師匠には食べさせない方がいいな」
 勇太:「体は若いんだから、大丈夫じゃない?……おっと。ドリンクバーだから、好きな飲み物取ってきていいよ」
 マリア:「勇太、行ってきて。紅茶がいい」
 勇太:「分かった」

 一応、魔道士ではマリアが先輩なので。

 マリア:「教会の奴ら、また正証寺に迷惑掛けてないだろうか?」
 勇太:「大丈夫だと思うけどね。むしろ正証寺の人達にとっては、『向こうから折伏対象者が来てくれた!』と思うだろうね。ただ、間違いなく法論で勝っても入信には至らない人達ばっかりが対象だから、いつまで経っても誓願達成に繋がらない」

 その為、正証寺は【ぴー】年連続誓願未達成という偉業を成し遂げており、御住職が毎年交代するという状態なのである。
 東京第三布教区唯一の寺院であり、その為、東京第三布教区は『関東大布教区のお荷物寺院』と、他の支部から揶揄されている。

 ※↑もちろんフィクションです。関東第三布教区は実在しません。

 勇太:「ちゃんと支部総登山には定数参加しているし、その他行事への参加率も、しっかり一定水準以上をキープしているから、『自行だけは立派な支部』と言われてるんだよねぇ……」
 マリア:「何だか大変な宗教だね。まあ、一応漏れなく入信者は救ってくれるのがBuddhaの良い所かな」
 勇太:「そうなんだよ」
 マリア:「それに引き換え、私が人間時代に信仰していた神は冷たかったな。全く救いもしてくれなかった。ようやく手を差し伸べてくれたのは、悪魔ベルフェゴールくらいだ」
 ベルフェゴール:「どうも。クソの役にも立たない神よりも役に立つ悪魔、ベルフェゴールでーす」
 勇太:「どうしてもキリスト教は、平等を謳いながら、無理のある平等を強いるので、逆に差別意識が起こりやすい。そう言う所だよ」
 マリア:「なるほどな」
 勇太:「そういうわけでマリア、これから御受戒……」
 マリア:「するわけないだろ」
 勇太:「折伏失敗か……」
 マリア:「仏の力で魔力が引き出されるのは、勇太くらいだぞ?私じゃ無理だって」
 勇太:「そうかなぁ……?」
 マリア:「しかし、さすがは大師匠様だ。大師匠様は、そんな勇太が必ず入門すると予知されて、それで仏教は禁教にしなかったと言われている」
 勇太:「そうなのか。さすがは、創始者は違うね」
 マリア:「雲の上の御方だ。しかし、たまに雲の上から下りて来てくださる」
 勇太:「そこがまたいいんだよね。顕正会の浅井会長みたいに、雲の上にずっと居っ放しよりはずっといい」

 え?日蓮正宗の日如上人もそうじゃないかって?
 いやいや、ちゃんと本山行事の時は大坊から御出座しになって、信徒の前に来て下さるよ。

[同日10:00.天候:晴 ホテルメッツ赤羽→タクシー車内]

 ホテルをチェックアウトした勇太達。

 稲生宗一郎:「タクシーをチャーターしてありますので……」
 イリーナ:「そうですか。お気遣い、ありがとうございます」
 勇太:「タクシーなら、駅前に止まっているのに?」
 宗一郎:「5人で1台乗れる車が、都合良く客待ちしているわけがないだろう?それを予約しておいたんだよ」
 勇太:「ふーん……」

 宗一郎が予約していたというのは、ミニバンタイプのタクシー。

 

 ワゴンハイヤーとしても運用されるアルファードであったが、屋根にタクシー会社の行灯と、助手席側のダッシュボードの上に『予約車』と書かれた種別表示器が付いていたので、タクシーだと分かる。

 宗一郎:「予約していた稲生です」
 運転手:「稲生様ですね。お待ちしておりました。どうぞ」

 車の外で待っていた運転手に、宗一郎が名前を告げると、運転手は外から手で助手席後ろのスライドドアを開けた。
 あとは荷物のある勇太は、ハッチを開けてもらって、そこに荷物を置いた。

 宗一郎:「予約の時に行き先の住所を入力したと思うけど……」
 運転手:「はい。川口市【中略】ですね」
 宗一郎:「そう。そこまで」
 運転手:「かしこまりました」

 荷物を乗せていた勇太が最後に乗り込むと、タクシーは稲生家に向けて走り出した。
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“大魔道師の弟子” 「稲生勇太の元旦勤行」

2022-01-05 10:06:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日04:10.天候:晴 東京都豊島区某所 日蓮正宗大化山正証寺]

 藤谷春人:「さあ、元旦勤行も終わった!この勢いで大石寺へ乗り込むぞ!稲生君も来てくれ!」
 鈴木:「何言ってんスか、班長!今から大石寺に行ったってどうしようもないでしょ!それより顕正会の東京会館か本部会館に行って、顕正会員を根こそぎ折伏でしょう!」
 田部井:「それよりも、信濃町に行って学会員を折伏しに行くというのは?」(←元学会員)
 藤谷秋彦:「いやいや、それよりもさっきのキリスト教魔女狩り軍団の行動が気になる。まずは奴らの教会に行って法論の方がいいだろう」
 春人:「大石寺!」
 鈴木:「顕正会!」
 田部井:「創価学会!」
 秋彦:「聖ジャンジョン教会だ!」
 春人:「稲生君はどこがいい!?」
 鈴木:「稲生先輩に決めてもらいます!」
 田部井:「まだ学会員を折伏したことの無い稲生君!是非今年は初の学会員折伏を!」
 秋彦:「いや、それよりも魔女狩り軍団を何とかした方がいい!」
 春人:「また俺のベンツGクラスに乗せてやるぞ!」
 鈴木:「俺はベンツVクラス!あのケンショーレンジャーの輸送にも使ったことがあります!」
 田部井:「俺のフェアレディZはどうだ?」
 秋彦:「待て待て。東名高速も首都高速も朝から混むぞ。私のヘリで行くのだ。聖ジャンジョン教会の聖堂にはヘリポートがある。そこに着陸してやれば、奴らも驚くだろう」
 春人:「稲生君!」
 鈴木:「稲生先輩!」
 田部井:「稲生殿!」
 秋彦:「男らしく、ビシッと決めてくれ……って、あれ!?いない!?」
 春人:「なににににににに!?」
 鈴木:「マリアさんもいません!」
 田部井:「逃げられた……」

[同日04:30.天候:晴 同区内南池袋 JR池袋駅→埼京線441K電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。4番線に停車中の電車は、4時30分発、各駅停車、赤羽行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 稲生勇太:「ふぅーっ!危なかったー!」

 息せき切らして座席に腰かける勇太とマリア。

 マリア:「私の予言も当たるものだろう?絶対に勇太、御寺参りの後で、どこかに連れて行かれるって!」
 勇太:「確かにその通りだ。いや、さすがだ」

〔この電車は埼京線、各駅停車、赤羽行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Akabane.〕
〔「4時30分発、埼京線各駅停車、赤羽行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 マリア:「これが始発電車?」
 勇太:「そう。僕達は終電で行って、始発で帰って来るプランだったということ。つまり、終夜運転電車には乗っていないってことさ」
 マリア:「なるほど」

〔4番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まる。
 埼京線にはホームドアが無いので、駆け込み乗車などが無ければすぐに発車する。
 電車はすぐに発車した。
 最後尾の車両は勇太達も含めて、10人くらいしか乗っていない。
 初詣客などの動向を見れば、下りよりも上りの方が賑わうのだろう。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、赤羽行きです。次は板橋、板橋。お出口は、右側です〕
〔This is the Saikyo line train for Akabane.The next station is Itabashi.JA13.The doors on the right side will open.〕

 マリア:「まさか、ホテルまで追って来ないだろうな?」
 勇太:「どこのホテルに泊まってるかなんて言ってないよ。多分、実家から来たと思ってるよ」
 マリア:「そうか……」

 マリア、勇太に寄り掛かるような感じに座る。
 勇太はそんなマリアの肩を抱き寄せた。

 ベルフェゴール:「なかなか2人とも、仲睦まじくなったじゃないか」

 少し離れた席にいつの間にか座っている、マリアの契約悪魔ベルフェゴール。
 そしてその隣には、勇太との契約が内定している悪魔アスモデウスがいた。
 ベルフェゴールはタキシードにステッキ、シルクハットを被っている。
 まるで、“悪魔くん”のメフィストみたいだ。
 アスモデウスの方は、昔は渋谷の黒ギャルのような感じだったが、今は歌舞伎町のキャバ嬢のような姿をしている。
 悪魔の姿は、契約者の意向に合わせて自在に変化するのだという。
 勇太が肌は白い方が好きだということを知ったのか、アスモデウスも黒ギャルから白ギャルへと変化したようだ。

 アスモデウス:「アタシのおかげでしょ?」
 ベルフェゴール:「キミ、まだ契約してないだろ?」
 アスモデウス:「うっさい!アタシのおかげだっつーの」
 ベルフェゴール:「キミが本気を出したら彼、ダンテ一門の魔女達を『食い漁る』ことになりそうだね」
 アスモデウス:「いいじゃん、それ!面白そう!」
 ベルフェゴール:「……後で契約解除を申し渡されても知らないよ」
 車掌:「申し訳ありません。車内ではマスク着用に御協力お願いします」
 ベルフェゴール:「あ、ハイ」
 アスモデウス:「サーセン」

 素直に従う悪魔達w

[同日04:38.天候:晴 東京都北区赤羽 JR赤羽駅→ホテルメッツ赤羽]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく赤羽、赤羽、終点です。8番線に到着致します。お出口は、右側です。京浜東北線、王子、上野方面は1番線。川口、浦和方面は2番線。上野東京ライン、東京、川崎、横浜方面は3番線。宇都宮・高崎線、大宮方面は4番線です。本日も車内でのマスク着用等、新型コロナウィルス感染予防に御協力頂きまして、ありがとうございました」〕

 マリア:「おい、言われてるぞ、オマエら」
 ベルフェゴール:「それは何とも申し開きのしようがない……」
 アスモデウス:「つーか、何だったらアタシ達も別のウィルスばら撒いてやろーか?」
 勇太:「作品が違うからやめなさい」
 マリア:「作品?」

 電車はダイヤ通り、赤羽駅の埼京線ホームに滑り込んだ。

〔あかばね~、赤羽~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
〔「8番線の電車は、回送となります。ご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 回送とはなっているが、一旦引き上げ線に引き上げて行き、そこから折り返して、赤羽始発の上り電車となるのだろう。

 勇太:「電車の中も暖房が効いて眠かったけど、ここに着いたら余計眠くなってきたね」
 マリア:「ああ。何時にチェックアウトだっけ?」
 勇太:「10時って言ってたね」
 マリア:「そうか。じゃあ、少し一眠りしてから朝食にする?」
 勇太:「そうしよう」
 マリア:「それじゃ、9時にエレベーターホールで待ち合わせ。いい?」
 勇太:「分かった。朝食券忘れないようにね」
 マリア:「分かってる」

 2人は駅からホテルへと移動した。
 こうして、勇太の元旦勤行は終了したのである。
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