報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「仮住まいの実家」

2020-04-27 10:46:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月25日12:03.天候:晴 東京都北区王子 JR王子駅→稲生家(仮住まい)]

〔おうじ、王子。ご乗車、ありがとうございます〕

 田端駅まで快速運転していた電車も、そこから先は各駅停車となる。
 幕式表示だった頃の209系なら、行き先表示の種別部分を各駅停車にするだけでクルクルと幕が回っていたのであるが、フルカラーLEDとなった現在の車両はパッと変わるだけである。
 電車のドアが開くと、ホームに降り立つ魔道士達。
 やはりここも乗客は少ない。

 稲生:「家はこっちです」

 王子駅の北口改札を出ると、明治通り沿いに歩を進める。
 王子駅前公園に差し掛かると……。

 顕正会婦人部員:「冨士大石寺顕正会でーす!顕正新聞、無料配布してまーす!」
 稲生:「うわ、ここにもいた……!」

 見たところ、ざっと3人くらいはいる。
 公園やバス停に並ぶ人々に声を掛けている。

 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。そこの白人の御嬢様方、顕正会の欧州弘通にご協力を。クフフフフ……」

 ジャキッ!(マリア、殺気を漲らせて魔法の杖を横田の首に突きつける)

 マリア:「あ?何に協力しろって?あ?」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ!こ、ここ、これはダンテ一門の皆様……!そ、そそ、その……何ですね。今日は、いい天気で……!」
 稲生:「仮にも魔界共和党総務理事さんが、ここで何をしているの?」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ。稲生さん、いい質問です。確かに私は、向こうの世界ではかような肩書を預かっております。ですが、ここでは顕正会男子部員として活動しているのです」
 稲生:「今さら?」
 ケンショーグリーン:「そう、今さら……って、大きなお世話です!」
 稲生:「信心に目覚めたのなら、宗門に……あ、いや……」

 こんなセクハラ野郎、宗門に来られても迷惑だと口を閉じた稲生だった。

 ケンショーグリーン:「さあ稲生さん!阿部日顕が死んだ今、顕正会に戻るチャンスですよ!?」
 稲生:「顕正会で不幸になったヤツに言うかなぁ、そのセリフ!?」
 ケンショーグリーン:「私は幸せです。コホン。では、ここで私の体験発表を1つ。先ほども若い女性とお知り合いになれました。これは男子部員としての功徳であります!」
 稲生:「はあ……。僕が現役だった頃と比べて、だいぶ白髪がお増えになったのに、随分とお盛んなことで」
 イリーナ:「魔界共和党の時は白髪染めしてるのよね」
 稲生:「あっ、そういえばそうだ!」
 ケンショーグリーン:「続きを聞いてください。その若い女性というのは、10代のお美しい……嗚呼、お美しい……」

 すると、駅とは反対方向から30代の女性と10代後半の女性が血相を変えて走って来た。

 顕正会女子部員:「班長、あいつです!女子トイレで私に付きまとって来たの!」
 顕正会女子部班長:「ちょっと待ちなさい!どこの組織の人ですか!?本部に言いますよ!」
 ケンショーグリーン:「それでは皆さん、また後で!!」

 ピューッと脱兎の如く逃げ去ったグリーンであった。

 イリーナ:「マリア、どうする?またボコす?」
 マリア:「いや、それはあの女達に任せます。何だか疲れた……」
 稲生:「早く家に行って、昼食にしましょう。こっちです。帰りはこのルートを通らない方がいいですね」
 マリア:「全くだ」

 こうして3人は、稲生家のマンションに到着した。
 タワーマンションではない。
 どういう経緯で宗一郎の友人が購入したのかは不明だが、一応は住む目的のようであったようだ。

 稲生勇太:「駅前の公園に顕正会員達がいて大変だったよ」
 稲生佳子:「何かトラブルに巻き込まれた?」
 イリーナ:「うちのマリアが危うく某理事をボコボコにするところでしたわ~」
 マリア:「師匠っ!」
 佳子:「ええ?」
 マリア:「何でもありません!」
 稲生宗一郎:「先生、昼間から何ですが、よろしかったらワインでもどうですか?」
 イリーナ:「あらぁ~?さすが気が利きますわねぇ」
 マリア:「また飲む気ですか!」
 宗一郎:「また?」
 マリア:「さっきも新幹線で……フガッ!?」

 マリア、イリーナに口を封じられる。

 イリーナ:「このコにも一杯頂けないでしょうか?」
 宗一郎:「もちろんですよ」
 マリア:「フガガ、モガ!(私を巻き込まないでください!)」

 昼食会なので、そんなに豪勢な料理が沢山出てくるわけではない。

 勇太:「いっそのこと、都内に住んじゃったら?」
 宗一郎:「元は埼玉支社長だったからな。今でも時々埼玉支社に行く必要があるので、家は埼玉県にあった方が良い。それに、今再建中の家も少し都内に近い所になった」
 勇太:「川口市か」
 宗一郎:「昼食会が終わったら、タクシーを呼ぶので、それで向かいましょう」

[同日14:00.天候:晴 埼玉県川口市某所 稲生家再建地]

 昼食を終えた稲生達はタクシーに乗り、再建中の工事現場に向かった。
 5人いるので普通のタクシーには乗れない為、大型のタクシーを注文した。

 宗一郎:「ちょっとここで待っててもらえる?」
 運転手:「はい、分かりました」

 通りの狭い一方通行の道沿いにある為、タクシーは近くに止めさせる。

 宗一郎:「ここですね」

 土曜日である為、工事は行われている。

 イリーナ:「これはまた立派なお家が建ちそうですね。規模は前の家と同じくらいで?」
 宗一郎:「そのつもりで注文しました。あと2ヶ月で、出来上がります」

 注文住宅だと、どうしても完成するのに時間は掛かる。
 ましてや稲生家のように大規模なものだと……。

 宗一郎:「今度の家は3階建てでしてね。どうしても、平地面積が前の家と同じように確保できなかったので……」
 勇太:「あ、本当だ。奥行きが……うん、前と半分くらいしかない」
 マリア:「3階建てなら、うちの屋敷と同じだ」
 稲生:「マリアさん、規模が違います」
 マリア:「ん?」
 宗一郎:「普段使わない勇太の部屋は3階な。客間は1階の奥に造る」
 勇太:「前の家と大して変わんないじゃん。僕の部屋が3階になったくらいで」
 マリア:「ダディ。その……勇太の部屋の近くには、シャワールームがありますか?」
 宗一郎:「その予定です。家の1階にはもちろん風呂がありますが、3階にも一応シャワーだけ作っておきます」
 勇太:「水圧確保が大変そう」
 宗一郎:「だから普段は電源を切っておいて、勇太達が来る頃に電源を入れておけば大丈夫」
 勇太:「それだけのポンプ!?」
 イリーナ:「完成したら、新築祝いを持ってお伺いしますわね」
 宗一郎:「ありがとうございます。その頃までには、コロナウィルスが収束してくれるといいのですが……」
 イリーナ:「希望を持つことは、けして悪いことではありません」

 イリーナはそれだけ言った。
 恐らく、イリーナの占いでは……。

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