報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

もう少し続く

2013-11-09 19:23:05 | 日記
[1日 10:00.長野県某所の森の中にある洋館 マリア&イリーナ]

 穏やかな秋の日が差し込む応接間。そこで2人の女魔道師達は、紅茶を啜っていた。
「師匠は、この国で何が起こると思われますか?」
 弟子のマリアが口を開いた。
「んー……お察しください」
「作者のネタは結構ですから」
 師匠のボケをピシャリと跳ねる弟子だった。
「厳しい弟子だね。正直、『目下のところ調査中』としか言えないのよ」
「ここの人間達の予想通り、火山の噴火と大地震ですか?」
「それもあるかもしれないしね。結局、大元に飛び込まないとダメみたい」
「大元というと幻想郷……つまり、魔界ですね?」
「あそこの王朝がブラッドプールになってから、逆に人間界が分からなくなってる。その下にいるアルアキ・アベ首相なんか、『魔界を幻想郷にする』という大風呂敷広げちゃってるからね」
「東日本大震災が魔王城の閉鎖区域にあるとされる“黒い大水晶”の暴走のせいだってのは本当ですか?」
「……知らない。あの女王様も、何考えてるか分かんないから。……おかわりちょうだい」
 イリーナは空になったティーカップを、給仕をしている人形に向けた。人形は恭しく頷くと、奥へ引っ込んだ。
「魔王が女ってのも珍しいパターンなのでは?」
「暫定王権とはいえ、ヴァールのジジィもヤキが回って来たのかもね」
 イリーナは、いたずらっぽく笑った。
 そこへ件の人形が何かを持ってやってきた。
「ん?」
 どこから持ってきたのか、スポーツ新聞だった。その一面記事には、
『中村剛也、勝利!!』『埼玉西武マジック点灯へ』
 という記事があり、そこに1人のプロ野球選手が大きく写っていた。
「確かに『おかわり』だわ!」
 イリーナはソファから落ちそうになった。
「いいギャグセンスのある人形ね!」
 当の人形は、
「え?私、何か間違ってました?」
 とでも言いたげな反応だ。
「す、すいません!こら!師匠は紅茶のおかわりを所望だ!誰がライオンズの『おかわり君』だと言った!」
 いつも無表情のマリアも、この時は狼狽した形になり、件の人形を叱責した。
「申し訳ありません、師匠」
「まあ、いいわ。別の意味で、魔力は向上してるみたいね。でも……それにしても……」
「?」
 イリーナは部屋の周りを見渡した。
「ちょっと、人形増えすぎてない?」
「そうですか?」
「何か、『片付けられないアラサーOLの部屋』みたいになってるし」
「まだ私、23ですけど?」
「若いっていいね!……そうじゃなくて、中には魔法が掛けられない失敗作とかもあるんでしょう?そういうのはちゃんと処分しなきゃ」
「でも皆、かわいくできてますよ?」
「そういう問題じゃないの。仮にもマリアはもう一人前の『人形使い』魔道師なんだから、管理にもシビアでないとダメよ。断捨離ってヤツね」
「はあ……。でも、どうすれば?」
 ようやく人形が紅茶のおかわりを持ってきた。
「私にいい考えがあるの。お茶飲んだら、私も手伝うから」
「はい」

[1日 15:00. 同場所 マリア&イリーナ]

 イリーナのアイディアは、不良品から番号を割り振って行き、番号順に処分していくものだった。
「師匠、気に入ったコがいたら、持って行っていいですよ」
 と、マリア。
「もう既に10体はもらってるからねぇ……。しゃあない。あとは魔術の実験用に何体か……」
は?モルモットにするってこと!?
 マリアが突然、冷たい目をしてイリーナを睨みつけた。
「……いえ、何でもないです」
 いかに無二の師匠と言えども、『人形使い』の前で人形を粗末にする行動はもちろん、言動も慎まなくてはならない。
「本当は処分だんて……もう……」
 マリアの不機嫌さは高レベルである。それすら『人形使い』の前ではタブーなのである。師匠であるイリーナだからこそだ。イリーナは師匠として弟子に指導したわけであり、弟子は必ずそれに従わなくてはならない。これが魔道師の掟である。
「文句言わないの。だいたい、この人形の部屋だって埃っぽいじゃない。こんな所に押し込めてちゃ、大事にしてるとは言えないよ?」
「…………」
「番号札貼った?」
「おおかた」
「よし。じゃ、あとはお人形さん達が逆恨みしないように、『魂抜き』の儀式を……ックシュン!!」
 イリーナは3回ほどくしゃみをした。その度に舞い上がる埃。
「あー、もうっ!」
 イリーナは窓を開けた。
「少し風通し良くしとくからね」
 窓からは爽やかな秋風が入り込んでくる。
「師匠、『魂抜き』って魔法陣どうやって書くんですか?」
「だから、そういうこともちゃんと勉強しておきなさい。資料室に『魔法陣一覧』があったでしょ?あれ持って来て。私は道具用意するから」
「はーい」
 2人の魔道師は部屋から出た。

 そこへ突風が吹き込んで来る。

 カサカサと揺れる番号札。

 その1枚が剥れて、別の人形の背中に貼り付いた。

 しかし、魔道師達は誰もそのことに気がつかなかった。

 これが、遠く離れた別の地方に事件を巻き起こしたことも知らずに。
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前回の続き

2013-11-09 01:02:20 | 日記
[9日 21:00.ユタの家]

 ユタの家にやってきたのは、3人の少年少女だった。見た目には、15歳前後である。
「征丸です」
「死々丸です」
「殺女(あやめ)です。よろしくお願いします」
 全員が銀髪に白い肌であり、威吹と同じ色合いの着物に袴を着用していた(白の着物に紺色の袴)。
 威吹の班は銀狐で固まっているのだろうか。
「これから3日間、人間界で見識を広げるわけだが、その間はオレとここにいる稲生ユウタ、愛称ユタ殿の指示に従うことだ。分かったな?」
「はい!」(×3)
(うん。頼もしい。これなら安心かも)
 ユタはホッとした様子だった。見習い隊士では真剣は持てないのか、はたまたわざと置いてきたのかどうかは不明だが、3人の“研修生”達全員が木刀しか持ってないのが気になったが……。

[10日 02:00. ユタの部屋]

 またもや、ユタのスマホがなる。期待を裏切らず、またもや公衆電話からとなっていた。
「もしもし?」
{「もしもし?ミクだよ。今、歯医者さんの中から掛けてるの。また少し近づいたわね」}
「な、何だって!?」
 確かにユタの家の近所には、歯科クリニックがあるが……。

[10日 04;00. 同場所]

 だが、今日は電話は1回だけでは終わらなかった。
「えっ!?」
 また鳴った。それも、やっぱり公衆電話である。
{「もしもし。ミクだよ。今、近くの公園から掛けてるの。意外とこの町内って、公衆電話があるのね。いいことだわ。もうすぐ会えるわね」}
「キミは一体誰なんだ?」
 しかし、電話は切れていた。
(これ……マズいよな?)
 ユタはさすがに危機感を募らせた。

[10日 08:00.菊池歯科クリニック前]

「ユタぁ、どうしたの?いつも駅へ行く道と違うよ?」
「うん。知ってる」
 威吹は相変わらず着物姿だが、研修に来た3人はブレザーにスラックス、スカートという、まるで今時の中学生の制服みたいな服装をしていた。
「うっ!」
 クリニックの前にはパトカーが3台止まっており、玄関のドアにはブルーシートが張られている。その周りは、『立入禁止』と書かれた黄色いテープで規制線が張られていた。
「何かあったのか?」
 威吹も目を凝らす仕草をした。生真面目そうな顔つきの征丸がノートを出して、何やら書き込んでいる。
「あっ、あれは……」
 ユタは屋内から出て来た壮年男性を見つけた。
「院長先生!」
 ユタは困惑を隠しきれない院長に話し掛けた。
「あっ、あなたは……稲生さん」
 この前、虫歯の治療で来たので覚えていた。
「何かあったんですか?」
「今朝出勤したら、玄関ドアのガラスが割られていて……。機械警備も作動しなかったんですよ」
「故障?」
「いや、そんなことはないらしくて……」
「何が盗られたんですか?」
(医者だから、金か薬か……)
 威吹がそう予想していると、院長は意外な答えを返してきた。
「それが、何も盗られてないんだよ。ただ、公衆電話が使われた形跡だけが残ってて……」
「公衆電話!?」
 ユタはその時、思い出した。確かに受付脇の机の上に、公衆電話が置いてあったことを……。
「ま、まさか……!」

[10日 08:10.北落合公園内]

「やっぱり……」
 ユタが公園の中にある電話ボックスに駆け寄ると、ガラスドアは壊され、受話機だけがブラーンと垂れ下がっていた。
「班長、僅かに霊気を感じます」
 長身の征丸に対し、小柄な死々丸が言った。
「そうだな。さっきの医者の所と同一犯か?ユタ、何か心当たりがあるみたいだね。良かったら、ボクに話してくれないか?何とかなるかもしれない」
「う、うん……」
 ユタは重い口調で、経緯を話した。
                         続く
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