報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

後日談、ではないか……。

2013-11-01 17:03:17 | 日記
 “アンドロイドマスター”終了後の後日談(?)

[23:52.東北新幹線“やまびこ”249号→JR仙台駅新幹線ホーム 敷島孝夫&エミリー]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、仙台、仙台です。到着ホームは12番線、お出口は左側です。……」〕
 深夜の仙台市街を突き進む臨時増発の最終列車。繁華街、国分町周辺は元気一杯なのかもしれないが、JR沿線は静かなものである。
「とにかくまあ、久しぶりに新幹線に乗れたし、十条理事の意外な面も見れて、一石二鳥だな」
「ノー。敷島さん。本当は・一石三鳥では・ないですか?」
「え?」
「私と・キールの・行動についての・観察。この・レポートのため・ですね?」
「ふはっ!バレてたか。怒るなよ?」
「ノープロブレム。気にしてません」
「それならいいんだけど……」
 列車はホームに滑り込んだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台、終点、仙台です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください。12番線到着の電車は、回送です。ご乗車になれませんので、ご注意ください」〕
 大きなエアー音がしてドアが開くと、ホームの駅員の声が響き渡った。
 通勤電車でもそうだが、この時間帯ともなると、深く寝込む酔客もいるからだろう。
 敷島とエミリーは、前の乗客に続いて列車を降りた。
「それにしても、エミリー。よく、“女の子の日”なんて言葉知ってるな?」
「ノー。どういう・意味ですか?」
「は!?」
「ドクター赤月や・ミズ池波が・そう仰るので。ここ最近・ドクター赤月からは・聞かれなくなりました」
「そりゃ赤月……じゃなかった。平賀奈津子先生、妊娠中だから当たり前だよ~。ウィキで確認!分かったな?」
「イエス……」

[同時刻 西日本JRバス“ドリーム金沢”号車内 十条伝助&キール・ブルー]

 独立3列シートが並ぶ座席に、深く腰掛ける十条。しかしまだ寝付けないため、読書灯を点灯させて財団や学会の機関紙に目を通していた。隣席のキールは充電中である。
 最近の高速バスは、充電用コンセントが各席に設置されているので、ロボット連れには結構重宝である。但し、交流100Vに設定しておかないと、コンセントが発火する恐れがあるので注意が必要だ。充電中はスリープ状態になるので、文字通り、見た目には『寝ている』状態になる。
(んおっ!?)
 財団機関紙の最新号を見ると、一面記事にエミリーとキールが手を取り合って歩いている所が撮影されていた。
(いつから財団の機関紙は、スポーツ新聞みたいになったんだ……?)
『話題のアツアツカップル(はあと)』『オーバーヒート直前!?』
 なんて見出しが……。
(というか、敷島君が総務参事になってから、こんな感じになったような……?)
 敷島もまた、機関紙の編集員という一面もあることを思い出す。
 総務からのお知らせの所には、敷島がジョニデ角度で写ってるし。
(そろそろ注意した方がいいな……)
 もっとも、
『ボーカロイドの日常』
 というコラム記事は、面白いと思ったが。しかも、
『次回は、話題のアツアツカップルの立役者にして最新型感情レイヤーの発明者であるところの十条伝助理事に、寄稿して頂きます』
 などと書かれている。
(勝手に次回予告しおってからに!)
『“ロボットに心を持たせた男”!感情レイヤーの開発秘話、公開なるか!?どうぞお楽しみに!』
(しかも、ハードルがん上げしおってからに!!)
 大日本電機が関わっていなくても、遅かれ早かれ南里は敷島によって憤死されられた運命は変わらなかったようだ。
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そろそろ終わり?

2013-11-01 03:21:58 | 日記
 [21:15.JR錦糸町駅南口 敷島孝夫&十条伝助]

 都内でも屈指の繁華街、錦糸町。当然深夜の、それも金曜日の夜ともなれば、酔っぱらいの徘徊は風物詩である。
「特盛ったらなんで出ないのよ~!寝てんの?急な話があるってのに、まったく使えないおデブだわ!あ~っ、ムカつく!」
 真っ赤な顔をした若い女性が、ケータイ片手に大声で独り言を上げていた。
「……世も末じゃの。いいか?敷島君。いかに結婚願望があろうとも、酒癖の悪い女はやめとけ。結婚後も苦労するぞ?」
「はあ……」

 ボコ~~~ンッ!!(自販機に蹴り)

「! びっくりした!」
 敷島、突然の大きな音に一瞬酔いが醒めた感じがした。

「特盛のバカ!松っちゃんのバカ!あっつぁのバカ~ッ!!」(←作者による自主規制)
「ギクッ……」
 女性の大きな叫び声に、たまたま通り掛かった理知的な男性がビクッとなっていた。キールとはまた違うタイプのイケメンだ。
 尚、その女性が本当に泥酔していたのか、実は素面だったのかは定かではない。

(尚、上記のネタはポテンヒットさんの名作“ガンバレ!特盛くん”をお借りしました。厚く御礼申し上げます。また、特別出演のあっつぁさん、大変ありがとうございました)

 [21:27.JR錦糸町駅→総武快速11号車車内 敷島、十条、エミリー、キール]

「しかし、アレだな。ロボット達のデートスポットってな、家電量販店なのかい」
 敷島はヨドバシカメラの袋を提げたエミリーとキールを見て言った。
「たまたまですよ」
 キールはさらりと答えたが、一体何を買ったのやら。
 15両編成の電車がやってくる。帰宅ラッシュの時間帯であるが、逆方向の東京駅止まりである為、空いていた。実際乗らずに、ホームで次の横須賀線直通の電車を待つ乗客も大勢いた。スカ線直通だと混むのだろう。
 ガラ空きのボックスシートに座る。電車は1分ほど停車した後、走り出した。
〔「この電車は総武快速線、東京行きです。次は馬喰町(ばくろちょう)、馬喰町。お出口は、右側です。……」〕
「アンドロイド達も訪れるってことでCMに……。あ、いや……」
「敷島君。悪い事は言わんから、もう1度プロデューサーに出戻りしたらどうかね?何なら、私から口添えをしておくぞ?」
「いえいえ……」
 敷島はあくまで固辞した。今更自分がしゃしゃり出る必要は無い、と……。

 [22:08.東北新幹線“やまびこ”249号10号車車内 敷島孝夫&エミリー]

 眠りに落ちた大手町界隈を走る、臨時増発列車。仙台行き定期列車の最終の後に運転される、時刻表に書かれた“本当の最後”の仙台行き最終列車である。
「いや、しかしびっくりしたなぁ……」
 狭い普通車の座席の窓側で、敷島は先程の出来事を思い返していた。
「申し訳・ありません」
 エミリーは恥ずかしそうに俯いた。
「いや、いいんだけどさ。欧米人の別れの挨拶なんて、あんなもんだろう。けど、お前達がそれをやるとはな……驚きだよ」

 新幹線改札口で十条、キールと別れたのだが、その際にキールがエミリーに抱きついた。エミリーも抱き返した。十条も唖然とするほどの熱い抱擁ぶり。
「お前達、そろそろいいか?」
 ひしと抱き合ったまま離れようとしないので、しばらくして敷島がレフリーのように引き離した。
 で、十条はプルプルと震えていた。キールの軽率な行動に怒り爆発かと思いきや、
「素晴らしい!実に興味深い行動だ!」
 と、何だか“ベタなマッドサイエンティストの法則”みたいな反応をした。アルコールが入っているからだろうか。そこはさすがにマッドだった南里と親交が深かっただけのことはある。

「何だか、エミリーにも“先を超され”そうだな」
 敷島は、ばつが悪そうに言った。
『? 何でしたら・私・もっと・ゆっくり・歩きますか?』
 敷島は、そういう反応をしてくるものだと思っていた。しかし、実際の反応は全く違った。
「申し訳・ありません。ですが・敷島さんにも・気になる方が・いらっしゃるのでは・ないですか?」
「え……?」
「ミズ池波。あの時・仙台駅での・反応が・そうです。敷島さんも・ミズ池波も・特別な・感情を・お持ちのように・見えました」
「そりゃまあ、知らない仲じゃないからな。それに、どうしてそう思ったんだ?」
「行動と・言動・反応から・予測を導いた・結果です」
「お前、そんな機能もあったのか?」
「前から・ありました。敷島さん。もう一歩・踏み出すと・よろしいかと・思われます」
「いや、しかし……」
「大丈夫です。敷島さんが・誘えば・ミズ池波は・98.08パーセントの・確率で・乗るでしょう」
「どういう算出方法だ!?……まさかお前に、こういった面でもアドバイスをもらうとはな」
 敷島は照れ笑いにも似た笑みを浮かべた。
 昔は南里に尽くすことが最優先事項であったが、それが無くなった現在、そういった余力を敷島に向けることができるのだろう。
「分かったよ。今度、やってみよう。ありがとうな」
「ノープロブレム。これからも・私を・お使いください」
 列車は既に大宮駅を発車し、グングン速度を上げていた。東京での目的は果たしたが、アンケートの集計結果をまとめなければならないので、土曜出勤を余儀なくされるだろう。もっとも、それだけなので、終わったら早速由紀奈に声を掛けられそうである。
「あ……」
 しかし、エミリーは何か思い出したようだった。
「敷島さん。残念ですが・明日以降は・ミズ池波への・お誘いを・控えてください」
「何でだ?」
「95.34パーセントの・確率で・“女の子の日”が・始まります」
「ふーん……そっかぁ……」
 35年生きている敷島には、エミリーの言った意味が何となく分かった。が、
「ってか、何でお前、そんなことまで知ってんだ!?」
 するとエミリーは、敷島から目を逸らした。
「お察しください」
「ロボットが、そんな言葉使うなぁっ!!」
 巡回に来た車掌に、
「静かにしてください」
 と、注意されたのは言うまでもない。
                           終
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