“顕正会版人間革命”改め、“ユタと愉快な仲間たち”より。……うーん……このタイトル……。
[月始めの日曜日11:00.日蓮正宗・都内にある末寺 稲生ユウタ、威吹邪甲、藤谷春人]
広布唱題会に参加したユタ。それが終わって、三門から出て来る。
「お疲れ。ユタ」
寺の外で待っていた威吹が寄ってくる。
「ああ、待たせたな。じゃあ、帰ろうか」
「2人とも、気をつけて帰れよ」
後ろから藤谷が声を掛けた。
「はい。お先に失礼します」
「どうも」
藤谷は並んで歩くユタと威吹を見送った。その後で、再び境内に戻る。
(それにしてもあの2人、本当に仲いいな。……もったいない。どっちかが女だったら、いいカレシ・カノジョの関係だろうに……)
そんなことを考えていた。
「藤谷さん」
「はい?」
声を掛けられて振り向くと、
「あっ、講頭」
歳の頃、60代の長身痩躯の壮年がいた。自分の父親と歳が同じのはずだ。
「稲生君がよく連れてくる、あの青年は誰だい?」
「見ての通りっスよ。親友……かな」
さすがに“獲物”と“捕食者”です、とは言えなかった。
「せっかくだから、中に入ってもらえばいいのに」
にこやかな講頭の顔は、正に仏界を体現しているかのようだ。
「稲荷神社だったら、家に帰る感覚なんでしょうけどねぇ……」
息を吸い込み、首を傾げて藤谷は答えた。
「神社の子なのかい?」
この寺の中で、ユタと威吹の関係と事情を知っているのは藤谷と栗原江蓮だけである。
[後日17:00.同場所 稲生ユウタ、威吹邪甲、藤谷春人、栗原江蓮、蓬莱山鬼之助]
「ヒマだな……」
「素振りでもしてたらどうだ?」
「バーカ。この辺の人間どもは度量が狭いから、木刀で素振りしてるだけでも騒ぐじゃねーか」
本堂の中からは唱題の声が聞こえてくる。
塀の外で待つ2人の妖怪にとっては、騒音以外の何物でもなかった。しかし、互いの“獲物”の為に辛抱強く待っている。
塀に寄り掛かって立つ、そのうちの1人は威吹。その隣で同じ姿勢で待ちぼうけを食らっているのは、栗原江蓮を“獲物”にした鬼族の蓬莱山鬼之助(通称、キノ)である。
普段は角と牙を隠し、傍目には褐色黒髪の青年に見える。威吹と違い、人間に化けている間は着物ではなく、普通の服装である。彼もまた一族の間では剣豪であり、江蓮に稽古を付けたところ、今では江蓮もまた地元では最強になってしまった。
前に三門前で威吹と手合わせをしていたところ、決着が付く前に通報されて大騒ぎになったことがある。
「威吹よ。ちょっと損してねーか?」
「何が?」
「“獲物”が男じゃ、食いでが無いだろ?それともお前は、男色か?」
「いや、そんなことは無い。その証拠に、前の“獲物”は巫女だったよ」
するとキノは笑いをこぼした。
「ぷっ!くくくく……!いきなりAA……いや、AAA級コース行ったな!それって、江戸時代の話だろ?今なら巫女なんてな、C級くらいだけどよ、当時は結構霊力の強ぇのが揃ってたはずだぜ!」
「その通りだよ」
「で、それで痛い目見たんで、女には懲りて、今度は男か。しかし……あの、ユタってな、ヘタすりゃS級だぞ?大丈夫か?」
「……同じ失敗はしないさ。そういうお前の、栗原さんはどうなんだ?」
「江蓮は飛びっきりの上玉だ。鬼族のランキングじゃA級くらいだが、まだ伸び代があるし、何より“つまみ食い”の楽しみがある!」
そう言って、キノはポケットの中からコンドームを取り出した。
「今日も帰ったら……」
「もういい。これ以上話すと、作者が苦情を受ける」
ユタ達が真剣に勤行をしている中、寺に入れない妖怪達は外でこんな話をしているようである。
[月始めの日曜日11:00.日蓮正宗・都内にある末寺 稲生ユウタ、威吹邪甲、藤谷春人]
広布唱題会に参加したユタ。それが終わって、三門から出て来る。
「お疲れ。ユタ」
寺の外で待っていた威吹が寄ってくる。
「ああ、待たせたな。じゃあ、帰ろうか」
「2人とも、気をつけて帰れよ」
後ろから藤谷が声を掛けた。
「はい。お先に失礼します」
「どうも」
藤谷は並んで歩くユタと威吹を見送った。その後で、再び境内に戻る。
(それにしてもあの2人、本当に仲いいな。……もったいない。どっちかが女だったら、いいカレシ・カノジョの関係だろうに……)
そんなことを考えていた。
「藤谷さん」
「はい?」
声を掛けられて振り向くと、
「あっ、講頭」
歳の頃、60代の長身痩躯の壮年がいた。自分の父親と歳が同じのはずだ。
「稲生君がよく連れてくる、あの青年は誰だい?」
「見ての通りっスよ。親友……かな」
さすがに“獲物”と“捕食者”です、とは言えなかった。
「せっかくだから、中に入ってもらえばいいのに」
にこやかな講頭の顔は、正に仏界を体現しているかのようだ。
「稲荷神社だったら、家に帰る感覚なんでしょうけどねぇ……」
息を吸い込み、首を傾げて藤谷は答えた。
「神社の子なのかい?」
この寺の中で、ユタと威吹の関係と事情を知っているのは藤谷と栗原江蓮だけである。
[後日17:00.同場所 稲生ユウタ、威吹邪甲、藤谷春人、栗原江蓮、蓬莱山鬼之助]
「ヒマだな……」
「素振りでもしてたらどうだ?」
「バーカ。この辺の人間どもは度量が狭いから、木刀で素振りしてるだけでも騒ぐじゃねーか」
本堂の中からは唱題の声が聞こえてくる。
塀の外で待つ2人の妖怪にとっては、騒音以外の何物でもなかった。しかし、互いの“獲物”の為に辛抱強く待っている。
塀に寄り掛かって立つ、そのうちの1人は威吹。その隣で同じ姿勢で待ちぼうけを食らっているのは、栗原江蓮を“獲物”にした鬼族の蓬莱山鬼之助(通称、キノ)である。
普段は角と牙を隠し、傍目には褐色黒髪の青年に見える。威吹と違い、人間に化けている間は着物ではなく、普通の服装である。彼もまた一族の間では剣豪であり、江蓮に稽古を付けたところ、今では江蓮もまた地元では最強になってしまった。
前に三門前で威吹と手合わせをしていたところ、決着が付く前に通報されて大騒ぎになったことがある。
「威吹よ。ちょっと損してねーか?」
「何が?」
「“獲物”が男じゃ、食いでが無いだろ?それともお前は、男色か?」
「いや、そんなことは無い。その証拠に、前の“獲物”は巫女だったよ」
するとキノは笑いをこぼした。
「ぷっ!くくくく……!いきなりAA……いや、AAA級コース行ったな!それって、江戸時代の話だろ?今なら巫女なんてな、C級くらいだけどよ、当時は結構霊力の強ぇのが揃ってたはずだぜ!」
「その通りだよ」
「で、それで痛い目見たんで、女には懲りて、今度は男か。しかし……あの、ユタってな、ヘタすりゃS級だぞ?大丈夫か?」
「……同じ失敗はしないさ。そういうお前の、栗原さんはどうなんだ?」
「江蓮は飛びっきりの上玉だ。鬼族のランキングじゃA級くらいだが、まだ伸び代があるし、何より“つまみ食い”の楽しみがある!」
そう言って、キノはポケットの中からコンドームを取り出した。
「今日も帰ったら……」
「もういい。これ以上話すと、作者が苦情を受ける」
ユタ達が真剣に勤行をしている中、寺に入れない妖怪達は外でこんな話をしているようである。