[18:30.仙台市東部 同メンバー]
仙台東部道路を越えると、景色が一変した。
この高速道路が大津波に対して堰の役目を果たし、そこから西部への被害を最小化してくれたというのが分かる。
今では瓦礫も撤去され、更地になっていたり、荒地になっていたりする。
〔「次のニュースです。宮城県仙台市の太白区と若林区で、不審者情報が相次いでいます」〕
タクシーのラジオからは、地元のローカルニュースが流れてくる。
〔「不審者の特徴ですが、5人組の男女で、自らを『ケンショーレンジャー』と名乗っており、主に東京都内で目撃されていた集団ですが……」〕
「マジかよ?」
助手席に座るユタは、目を丸くした。
運転手はラジオの音量を下げた。
「そろそろ、目的地ですが……」
「あっ、それじゃそこのバス停の前でお願いします」
「はい」
タクシーはバス停の前で止まった。
「はい、稲生氏」
ユタが財布を出していると、マリアがスッと紙幣を出した。
「え?いいんですか?」
「言っただろう?費用は私が持つ」
「すいません。一応、領収証ください」
「はい」
運転手はお釣りと領収証をユタに渡した。
「? 運転手さん、どこかで……?」
「前にもご利用頂きましたか?」
「あ、いや、どうなんだろう……?」
ユタは首を傾げて、タクシーを降りた。タクシーはすぐに走り去った。
「ん?」
領収証を見ると、こう書いてあった。
『個人タクシー 横田タクシー』と。
(横田……まさかね)
[18:35.ユタ達が降りた場所から少し離れた所 横田高明]
「横田です。先般の総幹部会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
運転席から降りた横田は、白い帽子を助手席に放り投げると携帯電話でどこかに掛けていた。
「……はい。予定通り、“対象者”達は例の場所に運びました。後はよろしくお願い……え?私も合流ですか?……はあ、分かりました。では、後ほど……」
横田は電話を切った。
その時、誰も乗っていないはずのタクシーが揺れる。
「全く……」
横田は運転席のドアを開けて、シート脇のレバーを引いた。トランクが開く。
「んーっ!んーっ!!」
トランクには両手両足を縛られ、猿ぐつわをされている本物の運転手がいた。
「困りますね。同じ横田のよしみで、もう少しご協力願えませんかね」
「んーっ!」
「仕方が無いですね。広宣流布の決戦の為です。ある程度の犠牲は覚悟して頂かないと……」
横田はポケットから、ある物を取り出した。それは、若い女性が穿くショーツだった。
「むーっ!!」
「もう少し、辛抱してください。これも、罪障消滅の為です」
ショーツを鼻に当てられた横田運転手は、また意識を失った。
「そう、あなたはいつも誓願を破っていた。従いまして、その遅れを取り戻すため、ケンショーレンジャーに協力するのは当然のこと。クフフフフフ……。よろしくお願いしますよ。707隊横田班長?クフフフフフ……」
[18:45.ユタの生家跡 ユタ、威吹、マリア]
「狐火!」
威吹は左手から青白い炎を出し、
「ミク、ライト点けて」
マリアはミク人形の両目を光らせた。
「明かりならある。心配は無い」
マリアは無表情でユタに言った。
「わざわざコンビニで、懐中電灯買う必要無かったのか」
ユタは危うくorzの体勢になる所だった。
「それより、あなたの家はどこ?」
「ああ……。この辺ですかね。周りの風景もすっかり無くなっちゃって……」
「一体、ユタの生家が何だっていうんだ?こう言っては何だが、既に他人の手に渡っている上に、跡形も無いじゃないか」
威吹は抗議するように言った。しかし、マリアはそれには答えない。
「……ここ!」
マリアはある場所を指さした。
「ん?」
それは地面だった。ユタは懐中電灯を地面に向ける。
「これが一体何だと?」
「あなたの家には、地下室が無かったか?」
「あー、そう言えばあったな。でも、ただの物置で、大した物は無かったはずですけど……」
それも引っ越しの時に、あらかた処分したという。
「それより、先行してるはずのお師匠様はどうしてるんだよ?ここにいるんじゃなかったのか?」
威吹は刀の柄を握って言った。
「ああ。おかしい。この地下が怪しいはずだけど、師匠は辿り着けなかったのか?」
と、その時だった。
「いいですか。見てごらんなさい。“無二の師匠”なら、ここにましますのですね」
「そ、その声は……」
恐る恐るユタが振り向くと、そこには……。
「次回に続きます。以上!」
「いや、先に名乗れよ!」(威吹)
仙台東部道路を越えると、景色が一変した。
この高速道路が大津波に対して堰の役目を果たし、そこから西部への被害を最小化してくれたというのが分かる。
今では瓦礫も撤去され、更地になっていたり、荒地になっていたりする。
〔「次のニュースです。宮城県仙台市の太白区と若林区で、不審者情報が相次いでいます」〕
タクシーのラジオからは、地元のローカルニュースが流れてくる。
〔「不審者の特徴ですが、5人組の男女で、自らを『ケンショーレンジャー』と名乗っており、主に東京都内で目撃されていた集団ですが……」〕
「マジかよ?」
助手席に座るユタは、目を丸くした。
運転手はラジオの音量を下げた。
「そろそろ、目的地ですが……」
「あっ、それじゃそこのバス停の前でお願いします」
「はい」
タクシーはバス停の前で止まった。
「はい、稲生氏」
ユタが財布を出していると、マリアがスッと紙幣を出した。
「え?いいんですか?」
「言っただろう?費用は私が持つ」
「すいません。一応、領収証ください」
「はい」
運転手はお釣りと領収証をユタに渡した。
「? 運転手さん、どこかで……?」
「前にもご利用頂きましたか?」
「あ、いや、どうなんだろう……?」
ユタは首を傾げて、タクシーを降りた。タクシーはすぐに走り去った。
「ん?」
領収証を見ると、こう書いてあった。
『個人タクシー 横田タクシー』と。
(横田……まさかね)
[18:35.ユタ達が降りた場所から少し離れた所 横田高明]
「横田です。先般の総幹部会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
運転席から降りた横田は、白い帽子を助手席に放り投げると携帯電話でどこかに掛けていた。
「……はい。予定通り、“対象者”達は例の場所に運びました。後はよろしくお願い……え?私も合流ですか?……はあ、分かりました。では、後ほど……」
横田は電話を切った。
その時、誰も乗っていないはずのタクシーが揺れる。
「全く……」
横田は運転席のドアを開けて、シート脇のレバーを引いた。トランクが開く。
「んーっ!んーっ!!」
トランクには両手両足を縛られ、猿ぐつわをされている本物の運転手がいた。
「困りますね。同じ横田のよしみで、もう少しご協力願えませんかね」
「んーっ!」
「仕方が無いですね。広宣流布の決戦の為です。ある程度の犠牲は覚悟して頂かないと……」
横田はポケットから、ある物を取り出した。それは、若い女性が穿くショーツだった。
「むーっ!!」
「もう少し、辛抱してください。これも、罪障消滅の為です」
ショーツを鼻に当てられた横田運転手は、また意識を失った。
「そう、あなたはいつも誓願を破っていた。従いまして、その遅れを取り戻すため、ケンショーレンジャーに協力するのは当然のこと。クフフフフフ……。よろしくお願いしますよ。707隊横田班長?クフフフフフ……」
[18:45.ユタの生家跡 ユタ、威吹、マリア]
「狐火!」
威吹は左手から青白い炎を出し、
「ミク、ライト点けて」
マリアはミク人形の両目を光らせた。
「明かりならある。心配は無い」
マリアは無表情でユタに言った。
「わざわざコンビニで、懐中電灯買う必要無かったのか」
ユタは危うくorzの体勢になる所だった。
「それより、あなたの家はどこ?」
「ああ……。この辺ですかね。周りの風景もすっかり無くなっちゃって……」
「一体、ユタの生家が何だっていうんだ?こう言っては何だが、既に他人の手に渡っている上に、跡形も無いじゃないか」
威吹は抗議するように言った。しかし、マリアはそれには答えない。
「……ここ!」
マリアはある場所を指さした。
「ん?」
それは地面だった。ユタは懐中電灯を地面に向ける。
「これが一体何だと?」
「あなたの家には、地下室が無かったか?」
「あー、そう言えばあったな。でも、ただの物置で、大した物は無かったはずですけど……」
それも引っ越しの時に、あらかた処分したという。
「それより、先行してるはずのお師匠様はどうしてるんだよ?ここにいるんじゃなかったのか?」
威吹は刀の柄を握って言った。
「ああ。おかしい。この地下が怪しいはずだけど、師匠は辿り着けなかったのか?」
と、その時だった。
「いいですか。見てごらんなさい。“無二の師匠”なら、ここにましますのですね」
「そ、その声は……」
恐る恐るユタが振り向くと、そこには……。
「次回に続きます。以上!」
「いや、先に名乗れよ!」(威吹)