[21:15.JR錦糸町駅南口 敷島孝夫&十条伝助]
都内でも屈指の繁華街、錦糸町。当然深夜の、それも金曜日の夜ともなれば、酔っぱらいの徘徊は風物詩である。
「特盛ったらなんで出ないのよ~!寝てんの?急な話があるってのに、まったく使えないおデブだわ!あ~っ、ムカつく!」
真っ赤な顔をした若い女性が、ケータイ片手に大声で独り言を上げていた。
「……世も末じゃの。いいか?敷島君。いかに結婚願望があろうとも、酒癖の悪い女はやめとけ。結婚後も苦労するぞ?」
「はあ……」
ボコ~~~ンッ!!(自販機に蹴り)
「! びっくりした!」
敷島、突然の大きな音に一瞬酔いが醒めた感じがした。
「特盛のバカ!松っちゃんのバカ!あっつぁのバカ~ッ!!」(←作者による自主規制)
「ギクッ……」
女性の大きな叫び声に、たまたま通り掛かった理知的な男性がビクッとなっていた。キールとはまた違うタイプのイケメンだ。
尚、その女性が本当に泥酔していたのか、実は素面だったのかは定かではない。
(尚、上記のネタはポテンヒットさんの名作“ガンバレ!特盛くん”をお借りしました。厚く御礼申し上げます。また、特別出演のあっつぁさん、大変ありがとうございました)
[21:27.JR錦糸町駅→総武快速11号車車内 敷島、十条、エミリー、キール]
「しかし、アレだな。ロボット達のデートスポットってな、家電量販店なのかい」
敷島はヨドバシカメラの袋を提げたエミリーとキールを見て言った。
「たまたまですよ」
キールはさらりと答えたが、一体何を買ったのやら。
15両編成の電車がやってくる。帰宅ラッシュの時間帯であるが、逆方向の東京駅止まりである為、空いていた。実際乗らずに、ホームで次の横須賀線直通の電車を待つ乗客も大勢いた。スカ線直通だと混むのだろう。
ガラ空きのボックスシートに座る。電車は1分ほど停車した後、走り出した。
〔「この電車は総武快速線、東京行きです。次は馬喰町(ばくろちょう)、馬喰町。お出口は、右側です。……」〕
「アンドロイド達も訪れるってことでCMに……。あ、いや……」
「敷島君。悪い事は言わんから、もう1度プロデューサーに出戻りしたらどうかね?何なら、私から口添えをしておくぞ?」
「いえいえ……」
敷島はあくまで固辞した。今更自分がしゃしゃり出る必要は無い、と……。
[22:08.東北新幹線“やまびこ”249号10号車車内 敷島孝夫&エミリー]
眠りに落ちた大手町界隈を走る、臨時増発列車。仙台行き定期列車の最終の後に運転される、時刻表に書かれた“本当の最後”の仙台行き最終列車である。
「いや、しかしびっくりしたなぁ……」
狭い普通車の座席の窓側で、敷島は先程の出来事を思い返していた。
「申し訳・ありません」
エミリーは恥ずかしそうに俯いた。
「いや、いいんだけどさ。欧米人の別れの挨拶なんて、あんなもんだろう。けど、お前達がそれをやるとはな……驚きだよ」
新幹線改札口で十条、キールと別れたのだが、その際にキールがエミリーに抱きついた。エミリーも抱き返した。十条も唖然とするほどの熱い抱擁ぶり。
「お前達、そろそろいいか?」
ひしと抱き合ったまま離れようとしないので、しばらくして敷島がレフリーのように引き離した。
で、十条はプルプルと震えていた。キールの軽率な行動に怒り爆発かと思いきや、
「素晴らしい!実に興味深い行動だ!」
と、何だか“ベタなマッドサイエンティストの法則”みたいな反応をした。アルコールが入っているからだろうか。そこはさすがに元マッドだった南里と親交が深かっただけのことはある。
「何だか、エミリーにも“先を超され”そうだな」
敷島は、ばつが悪そうに言った。
『? 何でしたら・私・もっと・ゆっくり・歩きますか?』
敷島は、そういう反応をしてくるものだと思っていた。しかし、実際の反応は全く違った。
「申し訳・ありません。ですが・敷島さんにも・気になる方が・いらっしゃるのでは・ないですか?」
「え……?」
「ミズ池波。あの時・仙台駅での・反応が・そうです。敷島さんも・ミズ池波も・特別な・感情を・お持ちのように・見えました」
「そりゃまあ、知らない仲じゃないからな。それに、どうしてそう思ったんだ?」
「行動と・言動・反応から・予測を導いた・結果です」
「お前、そんな機能もあったのか?」
「前から・ありました。敷島さん。もう一歩・踏み出すと・よろしいかと・思われます」
「いや、しかし……」
「大丈夫です。敷島さんが・誘えば・ミズ池波は・98.08パーセントの・確率で・乗るでしょう」
「どういう算出方法だ!?……まさかお前に、こういった面でもアドバイスをもらうとはな」
敷島は照れ笑いにも似た笑みを浮かべた。
昔は南里に尽くすことが最優先事項であったが、それが無くなった現在、そういった余力を敷島に向けることができるのだろう。
「分かったよ。今度、やってみよう。ありがとうな」
「ノープロブレム。これからも・私を・お使いください」
列車は既に大宮駅を発車し、グングン速度を上げていた。東京での目的は果たしたが、アンケートの集計結果をまとめなければならないので、土曜出勤を余儀なくされるだろう。もっとも、それだけなので、終わったら早速由紀奈に声を掛けられそうである。
「あ……」
しかし、エミリーは何か思い出したようだった。
「敷島さん。残念ですが・明日以降は・ミズ池波への・お誘いを・控えてください」
「何でだ?」
「95.34パーセントの・確率で・“女の子の日”が・始まります」
「ふーん……そっかぁ……」
35年生きている敷島には、エミリーの言った意味が何となく分かった。が、
「ってか、何でお前、そんなことまで知ってんだ!?」
するとエミリーは、敷島から目を逸らした。
「お察しください」
「ロボットが、そんな言葉使うなぁっ!!」
巡回に来た車掌に、
「静かにしてください」
と、注意されたのは言うまでもない。
終
都内でも屈指の繁華街、錦糸町。当然深夜の、それも金曜日の夜ともなれば、酔っぱらいの徘徊は風物詩である。
「特盛ったらなんで出ないのよ~!寝てんの?急な話があるってのに、まったく使えないおデブだわ!あ~っ、ムカつく!」
真っ赤な顔をした若い女性が、ケータイ片手に大声で独り言を上げていた。
「……世も末じゃの。いいか?敷島君。いかに結婚願望があろうとも、酒癖の悪い女はやめとけ。結婚後も苦労するぞ?」
「はあ……」
ボコ~~~ンッ!!(自販機に蹴り)
「! びっくりした!」
敷島、突然の大きな音に一瞬酔いが醒めた感じがした。
「特盛のバカ!松っちゃんのバカ!あっつぁのバカ~ッ!!」(←作者による自主規制)
「ギクッ……」
女性の大きな叫び声に、たまたま通り掛かった理知的な男性がビクッとなっていた。キールとはまた違うタイプのイケメンだ。
尚、その女性が本当に泥酔していたのか、実は素面だったのかは定かではない。
(尚、上記のネタはポテンヒットさんの名作“ガンバレ!特盛くん”をお借りしました。厚く御礼申し上げます。また、特別出演のあっつぁさん、大変ありがとうございました)
[21:27.JR錦糸町駅→総武快速11号車車内 敷島、十条、エミリー、キール]
「しかし、アレだな。ロボット達のデートスポットってな、家電量販店なのかい」
敷島はヨドバシカメラの袋を提げたエミリーとキールを見て言った。
「たまたまですよ」
キールはさらりと答えたが、一体何を買ったのやら。
15両編成の電車がやってくる。帰宅ラッシュの時間帯であるが、逆方向の東京駅止まりである為、空いていた。実際乗らずに、ホームで次の横須賀線直通の電車を待つ乗客も大勢いた。スカ線直通だと混むのだろう。
ガラ空きのボックスシートに座る。電車は1分ほど停車した後、走り出した。
〔「この電車は総武快速線、東京行きです。次は馬喰町(ばくろちょう)、馬喰町。お出口は、右側です。……」〕
「アンドロイド達も訪れるってことでCMに……。あ、いや……」
「敷島君。悪い事は言わんから、もう1度プロデューサーに出戻りしたらどうかね?何なら、私から口添えをしておくぞ?」
「いえいえ……」
敷島はあくまで固辞した。今更自分がしゃしゃり出る必要は無い、と……。
[22:08.東北新幹線“やまびこ”249号10号車車内 敷島孝夫&エミリー]
眠りに落ちた大手町界隈を走る、臨時増発列車。仙台行き定期列車の最終の後に運転される、時刻表に書かれた“本当の最後”の仙台行き最終列車である。
「いや、しかしびっくりしたなぁ……」
狭い普通車の座席の窓側で、敷島は先程の出来事を思い返していた。
「申し訳・ありません」
エミリーは恥ずかしそうに俯いた。
「いや、いいんだけどさ。欧米人の別れの挨拶なんて、あんなもんだろう。けど、お前達がそれをやるとはな……驚きだよ」
新幹線改札口で十条、キールと別れたのだが、その際にキールがエミリーに抱きついた。エミリーも抱き返した。十条も唖然とするほどの熱い抱擁ぶり。
「お前達、そろそろいいか?」
ひしと抱き合ったまま離れようとしないので、しばらくして敷島がレフリーのように引き離した。
で、十条はプルプルと震えていた。キールの軽率な行動に怒り爆発かと思いきや、
「素晴らしい!実に興味深い行動だ!」
と、何だか“ベタなマッドサイエンティストの法則”みたいな反応をした。アルコールが入っているからだろうか。そこはさすがに元マッドだった南里と親交が深かっただけのことはある。
「何だか、エミリーにも“先を超され”そうだな」
敷島は、ばつが悪そうに言った。
『? 何でしたら・私・もっと・ゆっくり・歩きますか?』
敷島は、そういう反応をしてくるものだと思っていた。しかし、実際の反応は全く違った。
「申し訳・ありません。ですが・敷島さんにも・気になる方が・いらっしゃるのでは・ないですか?」
「え……?」
「ミズ池波。あの時・仙台駅での・反応が・そうです。敷島さんも・ミズ池波も・特別な・感情を・お持ちのように・見えました」
「そりゃまあ、知らない仲じゃないからな。それに、どうしてそう思ったんだ?」
「行動と・言動・反応から・予測を導いた・結果です」
「お前、そんな機能もあったのか?」
「前から・ありました。敷島さん。もう一歩・踏み出すと・よろしいかと・思われます」
「いや、しかし……」
「大丈夫です。敷島さんが・誘えば・ミズ池波は・98.08パーセントの・確率で・乗るでしょう」
「どういう算出方法だ!?……まさかお前に、こういった面でもアドバイスをもらうとはな」
敷島は照れ笑いにも似た笑みを浮かべた。
昔は南里に尽くすことが最優先事項であったが、それが無くなった現在、そういった余力を敷島に向けることができるのだろう。
「分かったよ。今度、やってみよう。ありがとうな」
「ノープロブレム。これからも・私を・お使いください」
列車は既に大宮駅を発車し、グングン速度を上げていた。東京での目的は果たしたが、アンケートの集計結果をまとめなければならないので、土曜出勤を余儀なくされるだろう。もっとも、それだけなので、終わったら早速由紀奈に声を掛けられそうである。
「あ……」
しかし、エミリーは何か思い出したようだった。
「敷島さん。残念ですが・明日以降は・ミズ池波への・お誘いを・控えてください」
「何でだ?」
「95.34パーセントの・確率で・“女の子の日”が・始まります」
「ふーん……そっかぁ……」
35年生きている敷島には、エミリーの言った意味が何となく分かった。が、
「ってか、何でお前、そんなことまで知ってんだ!?」
するとエミリーは、敷島から目を逸らした。
「お察しください」
「ロボットが、そんな言葉使うなぁっ!!」
巡回に来た車掌に、
「静かにしてください」
と、注意されたのは言うまでもない。
終
いやー、没ネタを1回分だけ公開するつもりが、調子に乗ってポテンヒットさんのネタを勝手に使っちゃいました。大変申し訳ありませんでした。
あっつぁさんにも勝手にアポ無し特別出演して頂き、誠に申し訳ありませんでした。厚くお詫び、並びに御礼申し上げます。