日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

朝鮮考古学の有光教一氏 高麗美術館

2011-05-17 18:52:34 | 在朝日本人
産経新聞朝刊に掲載されたソウル支局長・黒田勝弘さんの「から(韓)くに便り 生涯で最も満ち足りた日々」と題する記事が目についた。一部を引用する。

 朝鮮考古学の大家だった有光教一京都大学名誉教授が亡くなられた。103歳だった。文字通り“地をはう”ような発掘を多く手がけた考古学者だった。若いころから野外で鍛えられた体が、その長寿の秘密ではなかったかと思われる。

 有光先生とは1997年、本紙の大型企画「20世紀特派員」の韓国編「隣国への足跡」の取材で、京都の自宅でお会いした。

 有光さんは京大史学科の大学院生の時、日本統治下の韓国(朝鮮)に渡った。1941年(昭和16年)からは「朝鮮総督府博物館」の主任(館長)を務めた。45年(昭和20年)8月の敗戦後、韓国風にいえば解放後も米軍政当局の命令で韓国に残留し、「韓国国立博物館」の開館にかかわった。

 韓国残留は翌46年5月まで続き、韓国考古学史の第1ページを飾る古都・慶州での韓国人自身による初めての古墳発掘も指導した。韓国考古学の恩人である。

 米軍政当局は文化財に理解が深かった。有光さんは戦時中ということで各地に分散、疎開させていた文化財を米軍のトレーラーで回収してまわった。展示品にはあらたに韓国語や英語の表示を付けた。敗戦・解放の年の12月3日、旧朝鮮総督府博物館は「韓国国立博物館」としてよみがえった。

 有光さんは「あれは生涯で最も満ちたりた日々だった」と語っておられた。


在朝日本人であった私が故国への引き揚げを待つ京城で南大門を中心にうろちょろしていた頃、有光さんは各地に分散、疎開させていた朝鮮の文化財を、米軍のトレーラーで回収してまわっていたのである。これらを「朝鮮総督府博物館」の所蔵文化財とともに整理して、新生「韓国国立博物館」の展示品として甦らせることに、日本の敗戦も些事とせんばかりに情熱を傾けてこられたのであろう。1907年生まれの有光さんは当時38、9歳でまさに働き盛りである。「あれは生涯で最も満ちたりた日々だった」の言葉そのものであった有光さんの仕事への傾倒ぶりが、まわりの朝鮮の人々の心を大きく揺すぶったことであろう。「韓国考古学の恩人」もむべなるかなである。朝鮮総督府にこのような方のおられたことを元在朝日本人として誇らしく思えた。

私は有光さんを直接には存じ上げない。ところが思いがけない接点のあったことが分かった。私の好きな因縁話である。私が京都に単身赴任中、一時、一階に「ローソン」の入っているビルディングのペントハウスに住んでいたことがある。堀川通りを挟んだ向かい側が加茂川中学校で、ベランダに出るとやや左手に高麗美術館を見下ろすことが出来た。その開館記念式典の行われたのも上から眺めていたように思う。在日朝鮮人がパチンコやレストラン経営で財を成し、それで高麗美術館を作ったのだという話を耳にした。この鄭詔文さんがなかなかの傑物であることが私にも追々と分かってきたのであるが、それよりもこんな近くに朝鮮の建物が出来たことが私には嬉しくて、ちょこちょことお邪魔することになった。建物に入るといわゆる美術品の展示のみではなくて、家具とか衣裳とか、生活の場の用品が展示されているのが私の郷愁を深く掻きたてた。訪れる人もあまり多くは無く、静かな空間で蔵書の数々を逍遙しては、かっての朝鮮での生活に思いを馳せたのである。

有光教一さんはこの高麗美術館に併設された高麗美術館研究所の所長を長年なさっていたようである。そして約一万冊に及ぶご自身の蔵書を開館間もない高麗美術館に寄贈されたのである。だから当時そのことを知らずに、有光文庫図書のあれこれに手をつけていたことは間違いないと思う。私にとって「朝鮮」はまだまだ遠くにはなっていないようである。

福島第一原発事故の地震直後のデータが公表 私の知りたいことはただ一つ

2011-05-16 23:29:13 | Weblog
昨日のニュースでは福島第一原発1号機が3月11日午後2時46分の地震発生で緊急停止し、3時30分頃の津波到達後4時間経った午後7時30分頃には燃料棒のすべてが水から完全に露出し、午後9時には燃料溶融が起きたと伝えた。このニュースソースともなる福島第一原発事故に関する膨大なデータを今日(16日)東京電力がホームページで公表した。私たちも見ることが出来るが、それよりも専門家によるデータの迅速な解析が待たれる。現時点で私の知りたいことはただ一つ、地震によってとくに1号機の場合は原子炉圧力容器、格納容器に亀裂が生じた(穴が開いた)のではないかということである。3月11日午後2時46分の地震で炉が緊急停止するとともに容器内の水の漏出が始まったような気がするからである。地震発生から津波到達までに約45分あり、その間にも高圧の水が圧力容器、格納容器から噴出することで大量の水が失われてしまったのではなかろうか。これに加えて津波による全電源喪失により冷却水の供給が絶たれてしまったことが、燃料溶融の進行を早めたと考えられるからである。

これまで原子炉は地震の衝撃には耐え抜いたと伝えられていたように思うが、地震直後に目視で漏出が否認されたわけではあるまい。「安全神話」の中核をなす耐震性がここで否定されると、その影響は計り知れないほど大きくなる。だからこそ私はそれを知りたい。

おおたかどや山標準電波送信所(40kHz)は暫定的に送信を再開 あたり前田のクラッカー

2011-05-14 10:07:35 | Weblog

狂った電波時計 職場放棄を恥じない情報通信研究機構(5月10日)の記事で情報通信研究機構時空標準研究室の花土ゆう子室長の次の発言を取り上げて、それでは職場放棄ではないかと噛みついた。

「立ち入りが禁止されている以上、常に送信するのは無理だが、月に一日、電波を送信することで、時刻を補正したい。時計によっては、月に数十秒ほどのズレは出ると思うが、最低限の精度は保つことができるのではないか」

これに応えての処置だかどうだかは分からないが、情報通信研究機構は思いがけなくも迅速に方向転換を行い、次のように標準電波送信の再開を報じた。

おおたかどや山標準電波送信所(40kHz)は暫定的に送信を再開【速報】 

2011年05月13日

本日、5月13日17時32分から暫定的に送信を再開しました。

なお、雷の発生等天候の状況により、送信を一時停止することがありますが、あらかじめご了承下さい。

標準電波をご利用の皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をお願い申し上げます。

はがね山標準電波送信所(60kHz)は通常どおりの運用を行っています。

今朝、すでに2秒進んでいた私の部屋の電波時計が、正しい時間を表示していることで気がついた。これが「あたり前田のクラッカー」(知る人ぞ知るかってのCM)。


それでも分からない清徳丸の航跡の意味するところ

2011-05-13 21:33:00 | Weblog
私はイージス艦「あたご」に漁船清徳丸が衝突し、船体が二つに割れて沈没した事件では、衝突した側の清徳丸船長が衝突するまでにいったい何をしていたのだろうと不思議に思い、謝罪する相手を間違えたイージス艦「あたご」艦長で次のように記した。当時の状況の一部も分かるのでお目通しいただけたらと思う。

2月26日のブログ清徳丸はなぜ為す術がなかったのだろうで、清徳丸の船長は衝突するまでいったい何をしていたのだろうと私は疑問を投げかけた。そこで引用した図解によると、清徳丸の僚船である幸運丸は「あたご」の前方約2.7kmほどで大きく右へ旋回して「あたご」を回避した。また清徳丸の後方を航行していた僚船金平丸も、その操舵が適法だったのかどうかは知らないが、いったん右に向かった後で左へ大きく回避し、とにかく「あたご」を避けている。幸運丸と金平丸の間に挟まれて進んでいた清徳丸だけがなぜ「あたご」と衝突したのか、これは誰しも持つ疑問ではなかろうか。それが現時点では明らかにされていない。

海は皆のものである。海上自衛隊の艦船であれ漁船であれ、日本では平等である。お互いが安全航行を心がけるのは当然のことである。しかし7000トンの護衛艦と7トンの漁船では自ずと操艦、操船の心がけが違っているのではなかろうか。7000トンもの護衛艦が戦闘中でもあるまいし、右や左にくるくる舵を切ってくれては、すれ違う船はいったいどう身を躱せばいいのかかえって途方にくれることだろう。大きい船は静々とひたすら前を見て行くものだ、というのが海の男の常識にでもなっておれば、おのずとより小さくて小回りの効く船がちゃんと避ける、そのほうが事がスムーズに運ぶのではなかろうか。報道によると「あたご」の乗組員は漁船が避けてくれると思ったらしいが、そのような(暗黙の)ルールがあってもいいのではないか。

2月26日の東京新聞は《あたごは一〇・五ノット(時速約一九キロ)、漁船団は約一五ノット(約二八キロ)で進んでおり、一分で八百メートル接近する。》と報じていた。なんと「あたご」の1.5倍の速度で漁船団は進んでいたのである。高速道路を80kmの速度で走っている大型トレーラーを自動二輪が120kmであっという間に追い越していく、それぐらいの速度差があったのである。この時点での機動性は漁船の方が「あたご」より遙かに勝っていたのである。だからこそ幸運丸と金平丸は衝突を回避できたのであろう。清徳丸だけ、いったい何をしていたのだろう。

(2008年)2月22日の朝日朝刊には、事故直前まで清徳丸と一緒にいた漁船の乗組員らの情報に基づき、衝突に至までの経緯が艦船の相互の動きの図解があったので、それにもとづいての私の見解であった。その図解を再掲する。


この図ではどうみても「あたご」の右舷前方より清徳丸その他の僚船が、「あたご」に接近しつつあることになる。これを横浜地裁での裁判で明らかにされた次の清徳丸の航跡(時事ドットコム)とくらべると、清徳丸が「あたご」に接近する航跡が見方によっては正反対であることに驚いた。衝突直前に注目すると、清徳丸が「あたご」の右舷後方から急接近しているのである。


報道では裁判所が独自に衝突までの僚船の航跡を描いたとのことであるが、毎日新聞がそのイメージ図を出しているので、参考に引用する。


裁判の判決では検察側主張の航跡を否定したとのことであるが、それは航跡作製にあたってその根拠となった僚船船長らの調書が恣意的と判断されたことによるとして、そのことばかりがマスメディアにより報道されているが、私には弁護側主張の航跡と検察側主張の航跡の違いが、どの点で判決を左右することになるのか、裁判記録を子細に見ない限り判断のしようがない。なぜなら弁護側、検察側(裁判所も含めて)の主張する清徳丸の航跡が、衝突のほぼ3分前からは一致しているからである。衝突時の速度が上のブログにも引用したように「あたご」が時速19キロで清徳丸が28キロであったとすると、より高速の清徳丸が「あたご」に急接近して右舷後方から艦首に突っ込んでいったとしか見ようがないではないか。まるで尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に、この時は船尾へであったが、体当たりした状況と同じではないかと私は思った。

裁判記録を見ない限りこれ以上踏み込んだことは言えない。しかしこの航跡図を見る限り、清徳丸の方が「あたご」に突っ込んでいったと誰しも思うのではなかろうか。清徳丸の船長は衝突に至るまで、何はともあれ2回、舵を切っているのである。何を考えたのかはやっぱり見えてこない。

それにしても事故直後の朝日新聞(だけとは限らないと思うが)に掲載された誤解を与えやすい図解がどうして生まれたのか、検証が欲しいものである。検察側と弁護側の違いより、この両者に対する朝日新聞の方が大本において大きく違っているのである。



警戒区域への一時帰宅者 何の為の予行演習 硬直したこのお役所仕事

2011-05-12 21:58:43 | Weblog
産経ニュースの記事(抜粋)である。

大荒れ一時帰宅「自己責任」署名に住民怒

 避難している川内村の住民123世帯のうち、約15キロ圏外に家がある54世帯、92人(21~85歳)がこの日午前9時ごろ、原発から22キロ離れた村民体育センターに集合。トラブルはここで起こった。

 事前の説明会で国側から紙が配られたのだが、そこに「警戒区域は危険であり、自己責任で立ち入る」と書かれてあり、住民らは同意の署名を求められた。これにキレた。しかも、突き付けられた同意書には「宛名」がない。ダレに同意を求められているのか不明のお粗末な紙切れだった。

 慌てた政府の現地対策本部担当者が、「放射能汚染を含めたリスクが存在することを村民に了解してもらうことが目的」と釈明したが、リスクを理解してもらうことと、自己責任を求めることは別問題のはずだ。

 当然、住民の怒りは収まらない。さらに東電の担当者が防護服や線量計の説明を始めると、「オマエは誰だ!! 名乗れ!!」と村民の1人から大声が上がった。担当者はあわてて「申し遅れました」と名前を告げ、ようやく再開した。

(中略)

 立ち入りは原則、1世帯1人だが多くの世帯が2人での参加を希望した。滞在時間は2時間で、持ち出し品は縦横70センチのポリ袋1枚に入る分だけ。住民らは白い防護服姿で、片付けや貴重品の持ち出しを急いだ。ポリ袋には夏モノの衣類を入れる人が目立った。最初のバスは午後2時50分ごろ帰還し、その後、順次センターに戻った。

 内閣府の一時帰宅担当者によると、2時間の滞在で受けた個人の累積放射線量は暫定値で最低1マイクロシーベルト、最高で10マイクロシーベルト。女性3人がセンターに戻った際、体調不良を訴えたが、すぐに回復した。
(2011.5.11 16:31)

実はこの一時帰宅に先立って予行演習があった。時事ドットコムの記事を転載する。

一時帰宅へ予行演習=参加者「防護服で作業きつい」-警戒区域内で手順確認・福島

 福島第1原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」の避難住民を対象にした一時帰宅を前に、一連の手順を確認するため、国や関係自治体によるトライアル(予行演習)が3日、実施された。
 政府や自治体職員ら計54人が参加。30キロ圏内にある川内村の村民体育センターを中継基地とし、同センターで放射性物質の付着を防ぐ防護服を着用、放射線量計を携帯した上で、マイクロバス3台で福島第1原発のある大熊町に入った。役場や住宅地などで誘導の手順や通信状況を確認した他、一般住宅への立ち入りも行った。
 2時間程度滞在した後、同センターに戻り、放射性物質が付着していないか調べる被ばく状況調査(スクリーニング)を実施。除染が必要な高いレベルの被ばくはなく、体調を崩した人もいなかった。職員らは役場の書類を持ち帰り、スクリーニング検査された。
 トライアルに参加した内閣府の上田英志審議官は「慣れない防護服やマスクを着用し、水やトイレも制限される。(住民は)十分に準備の上で一時帰宅に臨んでほしい」と述べた。大熊町役場に勤める成田康郎さん(35)は「町は地震直後のまま。家が崩れているところもあり、防護服で作業するのはきつい」と感想を語った。
(2011/05/03)

予行演習が行われたのは福島第一原発から約5キロの大熊町中心部。そこで滞在中の被曝線量をモニターしたところ、除染が必要な高いレベル(実際のデータは当然あるはずである 追記参照)の被曝はなかったというのである。この予行演習の結果をどのように一時帰宅に生かすのか、常識的に考えればきわめて簡単である。

まず大熊町より汚染レベルの低い川内村への一時帰宅に際しては、いくつかの不便が指摘されている防護服の着用は不要である。この手間がはぶけた分、滞在時間を延長すればよい。そもそも滞在時間をなぜ2時間に区切ったのか、被曝線量との関わりで考える限り、合理的な理由は見当たらない。しかし念のためにモニター用の放射線量計は携帯していただく。事実、実測データは上記赤字で強調したように問題のない安全レベルであることが確認されている。

ところが現実にはこの予行演習の結果は何一つ良い方向に生かされていない。防護服を依然として着用させて滞在時間は2時間と限定し、あまつさえ予想される被曝線量は何らの健康障害のおそれがないにもにもかかわらず「同意書」への署名を求めるなど、国は住民の側に立つどころか神経を逆撫でするような威圧的態度で臨んだのである。予行演習の結果を合理的に判断すれば、住民の側に立ったどのようにも柔軟な対応ができるであろうに、依然として防護服着用、滞在時間2時間に固執することで硬直したお役所仕事の典型を世間に示してしまった。

住民の利益を守るのはまず市長、町長、村長であろう。川内村村長(もしくはその代理者)はどうしていたのだろう。普通の常識さえあれば、私が述べたようなことを住民を代表して国に要求すべきであるし、また同意書への署名を要求した国に対して抗議をするのが筋というものである。住民から怒りの声が上がったのは当然で、これを後押しして国の押しつけを撤回させ得る動きが立ち消えになったのが返す返すも残念である。唯々諾々と「お上」の言いなりにならざるを得なかった戦時中の国民の愚を繰り返して欲しくないものである。このようなこと想像したくはないが、「補償金」の給付に不利が生じないようにとの思惑が水面下で渦巻いているのだろうか。

考えてみるとあの防護服も、住民にそこはかとなき恐怖感を植え付けて、黙らせるための格好の小道具になっているような気がする。マスメディアにもまたとない被写体を提供することであるし。元来ならマスメディアが硬直したお役所仕事の問題点を積極的に指摘して、住民側に立った事態の改善を提言すべきでないのか。そういう具体的な問題提起を行わず、ただ受け身の報道に淫しているマスメディアを見ていると、「大本営発表」を右から左に国民に伝えた戦時中の新聞を連想してしまう。一社でも良いから以前私が提言したことであるが、福島第1原発:警戒区域に高齢者の残留を認めるべきでは?に賛同の旗を振って欲しいものである。実際に生活する人の被曝量実測データに基づけば、本格的な帰宅の時期が早まることは間違いないことと思う。

追記(5月12日)

NYT「Japan to Cancel Plan to Build More Nuclear Plants」で始まる5月10日付けの記事に、次のような記述があった。

Last week, the government staged a trial run; officials played the role of returning residents to see if the trips could be made safely. Screened for radiation on their return, those participating were found to have been exposed to a dose of up to 25 microsieverts during the two-hour visit.




狂った電波時計 職場放棄を恥じない情報通信研究機構

2011-05-10 22:29:40 | Weblog
数日前に偶然気がついたのであるが、私の部屋の壁掛け電波時計(A)と電波腕時計(B)の時刻がずれている。おかしいと思い腕時計と居間の壁掛け電波時計(C)をくらべたらこれは一致しており、時報117とも合っている。おかしいのはAであったのである。それにしても理由が分からない。太陽光パネル付のデジタル時計で買ってから10年は経っているのでそろそろくたばってきたのかとは思いつつも、取扱説明書を探し出して調整法を調べるつもりでいた。ところが今朝ふと見るとAとBがピタリと一致している。この時になってようやく思い出したのが福島第一原発事故で、原発から17キロの距離にある時刻合わせの電波を送る施設に常駐の作業員が、震災の翌日に避難指示を受けて避難し、電波の送信が停止されたというニュースであった。その電波の送信が回復したのだろうかと思って調べると、すでに4月22日に送信がいったん再開したものの25日には落雷でまた停止したとある。そして5月9日、すなわち昨日の午後から暫定的に電波の送信が再開され、それが今日、10日の午前中まで続けられるとのことであった。この最近の電波でAの時刻が正しくなったらしい。NHKは次のように伝える。

電波時計へ暫定的に送信再開

電波を受信して正確な時刻を表示する「電波時計」は、東日本の広い範囲でうまく動かない状態が続いていて、メーカーなどには利用者からの問い合わせが相次いでいます。国内に2つある電波の送信所のうち、東日本をカバーする施設が、立ち入りを禁止された福島第一原発から20キロ圏内にあるのが原因で、電波の送信は震災の翌日の3月12日からほぼ停止されたままです。施設を管理する情報通信研究機構は、このため、立ち入りの許可を求めて地元自治体と協議してきましたが、9日、立ち入ることが認められ、午後1時すぎから暫定的に電波の送信を再開しました。電波の送信は、10日午前10時すぎまで続けるということで、情報通信研究機構は、時刻を合わせたい時計は電波を受信しやすい窓際に置くよう呼びかけています。情報通信研究機構では、今後も月に一日程度、福島県の施設から電波の送信を行い、東日本にある電波時計の時刻を合わせたいとしています。これについて、情報通信研究機構時空標準研究室の花土ゆう子室長は「立ち入りが禁止されている以上、常に送信するのは無理だが、月に一日、電波を送信することで、時刻を補正したい。時計によっては、月に数十秒ほどのズレは出ると思うが、最低限の精度は保つことができるのではないか」と話しています。

電波時計であるべき時計で、月に数十秒ほどのズレが出ても最低限の精度は保つことができる、との「強弁」には驚いた。それでは電波時計としての値打ちは0ではないか。さらには「立ち入り禁止」の圏内だから月に一度電波を発信しに作業員が出かけるとは、職場放棄そのものではないか。福島第一原発の過酷な現場で作業している方々との対比があまりにも大きいのに愕然とした。ひょっとしてこの独立行政法人、もう整理が決まっているからなのだろうか。

わが家の電波時計のうちAだけが狂った理由も分かった。現在標準電波送信所は福島県大鷹鳥谷山(おおたかどややま)山と佐賀県・福岡県県境の羽金山(はがねやま)山の二カ所にあって、前者は平成11年6月から、後者は平成13年10月より運用開始された。古いAは大鷹鳥谷山からの電波しか受信出来ないのに対して、BとCは両方の電波を受信出来るので正常に作動していたのである。電波のやって来ない電波時計、ただのパネルになりそう。

ユッケ食中毒事件あれこれ

2011-05-09 18:09:51 | Weblog
平成10(1998)年9月11日に厚生省生活衛生局長名で都道府県知事・政令市市長・特別区区長宛に出された「生食用食肉等の安全性確保について」の通知に含まれる「生食用食肉の衛生基準」の食肉に関する要点は次のように始まる。

1 生食用食肉の成分規格目標

 生食用食肉(牛又は馬の肝臓又は肉であって生食用食肉として販売するものをいう。以下同じ。)は、糞便系大腸菌群(fecal coliforms)及びサルモネラ属菌が陰性でなければならない。

そして続く。

2 生食用食肉の加工等基準目標

(1) とちく場における加工(肝臓の処理なので省略)

(2) 食肉処理場(食肉処理業又は食肉販売業の営業許可を受けている施設をいう。以下同じ。)における加工


生食用食肉のトリミング(表面の細菌汚染を取り除くため、筋膜、スジ等表面を削り取る行為をいう。
以下同じ。)及び細切(刺身用に切分ける前のいわゆる册状にする行為をいう。以下同じ。)を行う場所は、衛生的に支障のない場所であって他の設備と明確に区分されており、低温保持に努めること。
また、洗浄、消毒に必要な専用の設備が設けられていること。

トリミング又は細切に用いられる加工台、まな板及び包丁等の器具は、専用のものを用いること。
また、これらの器具は、清潔で衛生的な洗浄消毒が容易な不浸透性の材質であること。
ウ 細切するための肉塊は、次の基準に適合する方法でトリミングを行うこと。
  (1) トリミングの直前に、手指を洗浄し、使用する器具を洗浄消毒すること。
  (2) 肉塊を、洗浄消毒したまな板に置き、おもて面のトリミングを行うこと。
  (3)おもて面をトリミングした肉塊を当該肉塊が接触していた面以外の場所に裏返し、残りの部分のトリミングを行うこと。
  (4)1つの肉塊のトリミング終了ごとに、手指を洗浄し、使用した器具を洗浄消毒すること。
オ 細切は、次のように行うこと。
(1) 細切の直前に手指を洗浄し、使用する器具を洗浄消毒すること。
(2)1つの肉塊の細切終了ごとに手指を洗浄し、使用した器具を洗浄消毒すること。
カ 器具の洗浄消毒は、83℃以上の温湯により行うこと。
キ 手指は、洗浄消毒剤を用いて洗浄すること。

手指又は器具が汚染されたと考えられる場合には、その都度洗浄又は洗浄消毒を行うこと。

生食用食肉は10℃以下となるよう速やかに冷却すること。
また、10℃以下となった生食用食肉は、10℃を越えることのないよう加工すること。
(3) 飲食店営業の営業許可を受けている施設における調理
ア 生食用食肉を調理する、まな板及び包丁等の器具は、専用のものを用いること。
また、これらの器具は、清潔で衛生的な洗浄消毒が容易な不浸透性の材質であること。

調理は、トリミングを行った後に行うこと。トリミングの方法は、(2)のウに準じること。(あらかじめ、細切され、容器包装に収められたものを取り出してそのまま使用する場合は除く。)

手指又は器具が汚染されたと考えられる場合には、その都度洗浄又は洗浄消毒を行うこと。
エ 器具の洗浄消毒は、83℃以上の温湯により行うこと。
オ 手指は、洗浄消毒剤を用いて洗浄すること。
カ 生食用食肉の温度が10℃を越えることのないよう調理すること。

具体的で分かりやすい。そして食肉処理場においてこのように加工された生食用食肉に関して「生食用」であることが表示されうる。

4 生食用食肉の表示基準目標
この基準に基づいて処理した食肉を生食用として販売する場合は、食品衛生法施行規則第5条の表示基準に加えて、次の事項を容器包装の見やすい位置に表示すること。ただし、とちく場と食肉処理場が併設しており、とさつから加工処理まで一貫して行う場合は(3)を省略することが出来る。
(1) 生食用である旨
(2) とさつ、解体されたとちく場の所在する都道府県名(輸入品の場合は原産国名)及びとさつ、解体されたとちく場名、又はとさつ解体されたとちく場の所在する都道府県名(輸入品の場合は原産国名)及び
とさつ、解体されたとちく場番号
(3) 加工した食肉処理場の所在する都道府県名(輸入品の場合は、原産国名)及び食肉処理場名(食肉処理場が複数にわたる場合はすべての食肉処理場名)

ここで定められた加工を行った食肉はちゃんと「生食用」と表示することが出来るのであるから、牡蠣が「生食用」「加熱用」と区別されて販売されているように、「生食用牛肉」が市場に出まわっているのかと思ったら、次の産経ニュース(抜粋)に驚いた。

焼き肉店食中毒 生食用牛肉“流通していない” 国の基準形骸化

国内では現在、国の衛生基準を通った生食用の牛肉は流通していない。厚生労働省は「店が自らの責任で生肉を出している状態」としており、基準は形骸化している。

(中略)

 現在全国で基準適合の登録食肉処理場は13カ所。しかし平成21年以降、いずれの施設も出荷実績は馬レバーか馬肉のみで、牛肉は出荷されていない。
(2011.5.3 20:56 )

私が驚いたというのは「生食用牛肉」が公に出まわってはいなかったのにもかかわらず生食が現実には当たり前のように行われていたことと、さらに今回の事件が発生するまでは「生食用牛肉」による食中毒が大きく報じられることのなかったことの二点についてなのである。しかしよく考えてみれば当たり前のことで、食中毒事件を引き起こすと大きな損害を被るのは飲食店の経営者である。下手すると店は潰れるし、賠償金の支払いに一生追いかけられることにもなりかねない。その飲食店の主人が客の要望に応えてユッケを提供しようと思えばどうすればよいのか。答えは簡単である。たとえ「生食用」が市場に出まわっていなくても、自らの目利きで食肉業者から牛肉の塊を仕入れて、上記の「飲食店営業の営業許可を受けている施設における調理」を自ら行えばよいのである。それを客がおいしいおいしいと食べて喜んでくれたら目出度しめでたしなのである。これまでユッケ食中毒が起こらなかったのは、客に直接食物を提供する飲食店店主が、こういうプロとしての仕事をしていたせいであろうと私は想像する。

Google画像に食肉卸業者の大和屋商店が焼き肉屋のチェーンを経営する「フーズ・フォーラス」に送ったと思われるメールを見ることが出来るが、ここに何が書かれていたにあったにせよ、出荷商品に生食用食肉の表示基準目標を達成している旨の「生食用」が表示されていない限り、大和屋商店の言い分が通るように私は思う。卸の大和屋商店がユッケとして試食したというのも、「生食用」と表示される食肉でなくても生食が出来るという事実を伝えたまでで、それをどう受け取るかは買い手の自由であり、その使用法を決定出来るのはあくまでも買い手である。さらにその「加熱用」牛肉が取引開始の2009年7月から現在に至るまで、焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」でユッケとして客に販売して別に問題を起こさなかったことが、卸売業者からの仕入れ肉をそのままトリミングせずに客に提供したことを正当化するものではない。「生食用」と表示されていない限りその食肉は「加熱用」で、それを生食用牛肉として客に提供するのであれば、あくまでも焼肉店側の責任において行わねばならないのである。価格競争に躍起な焼き肉チェーン店側が大和屋商店の仕掛け?に足をすくわれたという図式が私には分かりやすい。

ユッケ食中毒事件をきっかけに、食品衛生法に基づく新たな基準を設け、それに違反した場合は罰則を適用する方向で検討を始めたということであるが、余計なことだと思う。上記の厚生省(現厚労省)通知の内容を見れば分かるが、よくできていると思う。今回も「飲食店営業の営業許可を受けている施設における調理」が守られておれば、おそらく食中毒は起こらなかったであろう。要するにこれは食品提供業者のモラルでもある。いくら罰則で強制しても人為的ミスを原則として排除出来ない以上、食中毒発生の可能性は必ず存在する。そんなことより生肉を調理する人、食べる人にそれなりの感覚を備えて貰えば済むことであろう。

腸管出血性大腸菌O111の感染経路、ちょっと想像がつかない。ネットによるとさる4月18日のテレビ番組でこの焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」が「激安スペシャル」として安いのに高級感があるとか、接客抜群などと大きく紹介されたそうである。そして「焼肉酒家えびす」砺波店で発症した客の8割以上が4月22、23両日の来店客で、その客に提供された肉は19日前後に納入された可能性が大きいそうである。この番組のことを予め知った誰かの仕掛けかな、とこれはミステリー大好き人間ならではの勘ぐりである。真相の解明が待たれる。

それにしても一皿280円のユッケ(生肉+生卵)とは。

浜岡原発全原子炉停止 ソニー個人情報流出 訂正あり

2011-05-07 16:55:50 | 放言
昨日は外出したりまた夕方はDVDでオペラを楽しんでいたので、一日中ニュースを見ることがなかった。夜、友人からのメールで菅首相が浜岡原発停止の要請をしたことを知り、ネットでニュースを追った。珍しくも菅さんのクリーンヒットのように感じた。クリーンヒットとはパフォーマンスにもってこいのテーマを嗅ぎ当てたという意味においてである。

浜岡原発では1970年代に建設された1号機、2号機を地震に耐えうるよう改善するには費用がかかりすぎるとの理由で、すでに2009年に廃炉が決定されている。現在3号機が定期検査中で稼働しているのは4、5号機であるが、その停止を要請したとのことである。しかしこの3、4、5号機ですら1980年代に建設されたもの。これから先、何年間働かせるつもりなのか分からないが、中電は海岸沿いの高さ10メートル以上の砂丘と原発の間に高さ15メートル以上の防波堤を2~3年で築くことを計画しているとのことである。しかしその間にも怖れている大地震・大津波が襲ってきたらどうするのだろう。原子炉を停止しても、福島第一原発で明らかになったように、たとえ使用済み核燃料でも冷却し続けなければならないのであるから、万が一にも「燃料棒の冷却」が不可能になる事態をもたらしてはならない。そのための万全の対策を立てることこそ第一に優先されるべきだろう。

浜岡原発の原子炉3基で電気出力が361万7千キロワットの発電能力があり、わが国における原子力発電の7%に相当するとか。これから2~3年、これなしにやっていけるのであれば、それから先も浜岡原発がなくてもやっていける、ということにならないのだろうか。それならわざわざ防潮堤まで築くこともなく全体を廃炉にすればよいではないか、と私は単純に思ってしまう。窮すれば通ずともいう。浜岡原発廃炉も一つの選択肢とすべきであろう。

7700万人に達するプレイステーション・ユーザーの個人情報が米国で盗まれたと大騒ぎである。クレジット情報も期限切れになったものも含めて全世界で1230万件(米国内では560万件)漏洩したとか。加齢で寛容になってきたのか善悪の判断が曖昧になってきたせいなのか、このハッカーは凄いとばかり、こちらの方に手を叩いてしまうのだから困ったものである。それにくらべてソニーは名前は立派でも所詮は独活の大木、なんとも哀れさが漂う。ハッカーの存在はあまねく知れ渡っていることである。それなら会社の所有物である情報を盗まれないように万全の策をたてるべきで、そして当然そうしたつもりであったのだろうが、現実にはその情報を盗まれてしまった。盗まれる方が能力的に至らなかったからである。この厳然とした事実は、情報漏洩が犯罪であるかどうかを云々する以前の問題であると私は思う。戦時中の諜報合戦を考えてみても暗号を解読された方が負けなのである。ビジネスの世界こそ常在戦場であろうに。この「常在戦場」の四文字を長岡に残した山本五十六元帥が、その諜報戦に敗れて戦場の花と散った悲運が元軍国少年の心には深く刻まれているのである。ソニーが4日、米下院エネルギー・商業委員会の商業・製造業・貿易小委員会に提出した回答書に記された敗戦の弁は次の通りである。

What is becoming more and more evident is that Sony has been the victim of a very carefully planned, very professional, highly sophisticated criminal cyber attack designed to steal personal and credit card information for illegal purposes.

ついでに言うとアングラ・フォラムではソニーのセキュリティは時代物と鎧袖一触である。7700万人分という漏洩した情報量のすさまじさに、ソニーの顧客はもちろんセキュリティの専門家や政府の役人も驚いたことであろうが、個人のクレジットカード番号やオンライン情報を盗んで闇市場で売買を行っている他のハッカー達も、この盗難情報に気を揉んでいるというThe New York Times(NYT)の記事が面白い。盗んだカード番号はそれに付随した情報の多寡に応じてオンラインの闇市場で1件5~10ドル程度で売買されている。ところがソニーの情報漏洩に係わったとされるハッカーが、所有者名、住所、使用者名、パスワードの揃った220万件のカード情報を手にしたと地下フォーラムで明らかにしたものだから、もしこれだけ大量のカード情報がオンラインで出まわるようになると、1ドルから2ドルにまで下落してしまうからと言うのである。もっとも今のところ売買数に大きな動きは出ていないそうである。

セキュリティの専門家に言わすとクレジットカード番号など、個人情報のデータベースをせっせと作る会社が増えれば増えるほど、そのサーバーにアクセスしてその情報で金儲けしようとハッカーを駆り立てるというのである。ではそれをやめさせるにはどうすればよいのか。会社が情報を集めないことだと説く。回答書に次の質疑応答がある。

8. What information was obtained by the unauthorized individual(s) as a result of this breach, and how did you ascertain this information?

Based on the activity of the intruder, we know that queries were made in the PlayStation Network system database for user account information related to name, address (city, state, zip), country, email address, birthdate, PlayStation Network/Qriocity password and login, and handle/PlayStation Network online ID.

私はPlayStationで遊んだことがないのでこれは推測であるが、遊ぶには紫色で強調した情報だけで十分ではないのか。ソフトを購入してオンラインで登録しようとすると、製品番号とメイルアドレスの他に姓名、性別、年齢、〒番号を含む住所、電話番号の記入を求められることが多い。メーカーが顧客と連絡を保つにはメールアドレスだけで十分であると思うが、その他の情報が必須として求められてそれを入力しないと先に進めなくなる。顧客について最小限の必要情報しか保持しないようにメーカーが頭を切り換えることが、ひいては自衛策となることをはやばやと覚って欲しいものである。メーカーが余分な個人情報集めを止めるとハッカーが攻撃を仕掛けないと言うのであれば、このようなハッカーこそ個人情報を自らの意思に反して出したくないと考える顧客の味方であるとの見方も成り立つのではなかろうか。

訂正(5月8日)

本文で《しかしこの3、4、5号機ですら1980年代に建設されたもの》と記したのはNYTの次の記事によるものであった。

Japan Orders Another Nuclear Plant to Shut Down Its Reactors
By HIROKO TABUCHI

In 2009, Hamaoka’s operator, the Chubu Electric Power Company, decommissioned the site’s two oldest reactors after deciding that upgrading them to withstand earthquake risks would be too costly. Those reactors were built in the 1970s, around the same time as those at the Fukushima Daiichi plant.

The power company argued that the remaining three reactors, built in the 1980s, were safe enough to withstand a major earthquake.
(May 6, 2011)

しかしこの部分は中部電力浜岡原発の設備データとは明らかに異なることに気付いたので、この設備データを紹介することで訂正としたい。


SPEEDIをお遊びに過ぎない「シミュレーションごっこ」と断じた理由について

2011-05-04 14:12:51 | 学問・教育・研究
5月2日の小佐古内閣参与の辞任に思うこと ボランティアによる「生物医学研究」のすすめで私はSPEEDIの運用について、《現段階ではお遊びに過ぎない「シミュレーションごっこ」》と断じた。そうしたところ政府が3日夜から福島第一原子力発電所からの放射性物質の広がりについて、SPEEDIを用いて予測した結果を順次ホームページ上で公開し始めた。文科省が地震翌日の3月12日から同16日までに行った38件をPDF文書で、また経済産業省原子力安全・保安院はほぼ同じ期間の42件のデータを公表したが、これらを一通り見る限り私の断定が間違っていないことの確信を深めた。お遊びに過ぎないことが分かっていたからこそSPEEDIをを運用した技術者は公表する気にならなかったのに、無理矢理出さされてしまったように私の目には映る。私に言わせると、あんなもの恥ずかしくて出せないという技術者の判断の方がまともなのである。

現役時代、「シミュレーション」が私のレパートリーの一つであった。幾つか研究論文を発表しているが、そのうちの一つに5種類の酸化還元中心をもったミトコンドリアのある成分が酸素と反応して酸化される際に、電子がこれらの酸化還元中心をどのような順番でどのような速さで通り抜けて行くのかのシミュレーションを行ったものがある。そのためにはまず反応モデルが必要になるが、この分野で多くの研究者により得られている数々の知見にもとづいて私が考えたの次のようなものであった。ミトコンドリア内の一成分に過ぎないがその酸化還元状態がこれほど沢山あり得ると考えていたことがお分かりいただけるだけでよい。反応が始まり、この56種類の状態のそれぞれが全体に占める割合の時々刻々変化していく有様を微分方程式で表し、それを数値解析で解いていくことが操作の基本となっている。次の表を含めこういうものをブログに持ち出すのはいささか場違いであるが、シミュレーションの一端に触れて頂ければとの思いからである。


さらには酸化還元中心同士のどのステップでどちら方向にどの速さで電子が流れるかを検討して最終的に用いた値が次のようなものである。


こんなややこしい数値など、ただのこけおどしと思っていただいてもよいのであるが、SPEEDIの場合と同じように「モデルに数値を入れる」ことでシミュレーションを行うことをご理解いただきたいのである。

SPEEDIのパンフレットには

緊急時には、気象データ、地形データをもとに、局地気象予測計算の結果を用い、3次元領域全体の風速場計算、放射性物質の大気中濃度計算および線量計算を行い、被ばく線量などを予測します。

と説明しているが、入力データとして次のようなものが挙げられている。


この「放出源情報」がシミュレーションではもっとも重要であるから本来は実測値が欲しいところであるが、今回は肝心要のそのデータがないものだから、単なる推測値の入力に終わっているようである。シミュレーションではモデルさえあれば、あとはどのような値を入力しても自動的に計算された結果が表示されるのである。入力データごとにいろいろな結果が出てきても、これだけではどれがまともな結果であるのか判断の仕様がない。ところが同じシミュレーションと言っても、SPEEDIと私の場合とでは本質的に異なる重要なポイントがある。それは私の場合には一方で次のような実測データがあると言うことである。


これは実験材料であるミトコンドリア成分の吸収スペクトルの時間変化で、私の場合はシミュレーションがこの測定データを再現しなければならないという厳しい制約が科せられているのである。逆に言えば上の反応モデルに従う以上、次ぎに出てくる数値の組み合わせが、もっとも再現性を満足させるものとして導かれてくるのである。もしシミュレーションが測定結果をなかなか再現出来ないとなると、モデルを考え直すことになる。実は上のモデルはそのような試行錯誤を経て導かれたものなのである。このようにしてモデルの有効性が検証されていく。

ところがSPEEDIでは実測データにもとづく検証がなされているとは思われない。なぜなら今回の不幸な福島第一原発の事故がはじめて科学的には実に貴重な実測データを与えたのであって、これまでそのチャンスがなかったからである。SPEEDIの有効性の検証がない限り何をやろうと「シミュレーションごっこ」と揶揄されても一言もないはずである。関係技術者の間で実測データと突き合わせることで検証が進められているのではと私は想像するが、もし有効性が検証されたSPEEDIが出来上がるのであればぜひやって頂きたいことがある。

私は以前福島原発事故 「レベル7」あれこれで新聞記事を引用して次のように述べた。

この記事によると、「Speedi」と名付けられた計算機モデルに、事故の発生地点から離れた各所で測定された放射能の値を入力して計算させることで、事故現場の放出源から放出された放射能量が求められるようである。もちろんデータ入力にはこまかい条件があるだろうし、どのような地域分布でデータを集めるか、またデータ数の多寡によって計算結果は振れるであろう。それにしてもなぜ原子力安全委員会と原子力安全・保安院がそれぞれ別々の数値を発表したのだろう。そしてさらに次のような話があって、この発表値が信じてよいものかどうか、問題がややこしくなっている。

ここの私の推測が当たっているのかどうか確信はないが、原理的には可能なはずである。実測データを再現するには事故現場から放出された放射能量の最適地を求めれば済む話であるからである。お遊びついでにせめてそこまではやって欲しいものである。なんせ開発費が100億円を超えているというのだから。



J:COM「お得プラン」+ブルーレイHDRのセットに変更

2011-05-03 21:36:41 | Weblog
かってテレビの録画を熱心にやっていた頃があった。録画機で録画した映像をPCにコピーして、数々の動画編集ソフトを駆使してコマーシャルを外したり映像ファイルを圧縮してCDやDVDディスクに焼き付けたりしていたが、なんとも時間のかかる作業であった。しかしどうもその作業自体を楽しんでいたようで、手間暇かけた割には出来上がったディスクを再び見ることはほとんどなかった。そのうちに西部劇などは安いDVDが出まわるようになって必要とあればそれを買えばよいし、それに録画機はアナログ番組しか録画出来ないし、あれやこれやでいつのまにか録画の興味が薄れてしまい、録画機もお蔵入りになってしまった。

昨年辺りから私が加入しているJ:COMからプラン変更キャンペーンのチラシが舞い込み、録画機能つきチューナーを宣伝するのが気になりだした。というのもたとえばメトロポリタンオペラなどはぜひ録画して残したいと思ったし、また面白そうな番組が深夜に放映されたりすると録画して後で見られたら便利だなと思うようになったからである。その極め付きが3月末頃に始まった「ブルーレイHDR最大3ヶ月無料、5/9まで基本工事費+お申込手数料 0円」というキャンペーンである。私の場合、デジタルTV+NET 60Mコース+PHONEのセットで毎月11340円(税込み)を払っていたが、これを2年契約の「お得プラン 60」に変更すると、それに毎月110円余分に払うだけでブルーレイHDRが使えることになる。そして3ヶ月間はブルーレイHDRのレンタル料月1950円が無料になる。最近はトラブルフリーのJ:COM出もあることだし、迷わずにこのプランに変更することにした。

昨日の夕方ブルーレイHDRの設置が終わり、さっそく予約録画機能を使ってみたが、操作が呆気ないくらい簡単なのに驚いてしまった。リモコンで「番組表」を画面に出して予約録画したいと思う番組を選択して赤ボタンを押すだけなのである。使い慣れている人には今さら何をと言われるだろうが、昔とくらべてこの使い勝手のよさは感動的ですらあった。

録画して、そして今日の午後見たのが「朗読者」である。何か面白そうだったので録画操作の練習台として選んだのであったが。これがまた人生をじっくりと考えさせる素晴らしい作品だった。知らないことが多いと感動することも多い。録画さえしておくとあとは何時でも好きなときに見られるのが有難い。「朗読者」をブルーレイディスクにダビングして保存することにした。