日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

原子炉海水注入問題 その続き

2011-05-24 18:27:17 | Weblog
原子炉海水注入問題 新聞報道に踊らされまいと思うもののの中で、《少し考えると産経の記事は裏が取れていないことぐらいは分かるが、谷垣自民党総裁までそれに踊らされて国会で菅首相の介入を徹底的に追求すると意気込んでいる》と述べて谷垣総裁の自重を期待した。そして23日の衆院復興特別委員会での谷垣総裁の質疑応答をニコニコ動画で聞いてみると、「首相の激怒」が海水注入を停止させた云々を衝くより、政府文書がコロリコロリ変わったことを追求する方に軸足を移したようであった。信憑性の低い情報に踊らされる愚は辛うじて避けたようであるが、それにしても彌縫に追われる政府を叩くより、惻隠の情を示したほうが大人の振る舞いではなかったのかと思ったりする。

文書がコロリコロリ変わったというのは、朝日の記事では次のようなことである。

発言訂正、記憶頼み 海水注入の中断経緯

「原子力の常識として、真水から海水にかえて再臨界の可能性が高まると、私から言うはずがない」

 東電が海水注入を中断した発端とされてきた発言をめぐって、原子力安全委員会の班目春樹委員長は23日記者会見し、政府の対応を改めて批判した。

 騒ぎの発端は21日午後4時半からの共同会見で配られた「3月12日の福島第一原子力発電所1号機への海水注入に関する事実関係」と題した資料だ。

 資料によると、班目氏が「(海水を注入すると)再臨界の危険性がある」との意見を出したため、同日午後6時ごろ、原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院などが菅直人首相の指示で、海水注入の実施の是非を検討することになったという。

 会見の直前、打ち合わせの席で安全委事務局の加藤重治・内閣府審議官が、不在の班目氏に代わって発言内容が違うと抗議した。だが、細野豪志首相補佐官から「その場にいた多くの人から確認した結果だから」と押し切られたという。その後会見に臨んだ細野補佐官は資料を記者らに配布し、「相当しっかり確認してお示ししている」と自信たっぷりに説明した。

 班目氏はその後、細野補佐官に発言の訂正を申し入れ、22日夕、細野補佐官と福山哲郎官房副長官と面会した。班目氏は「これまでの自分の発言では、科学者として『可能性はゼロではない』という表現をよく使っており、その場でもそのような表現をしたと思う」と主張した。

 当時の発言記録は残っておらず、班目氏によると、少しずつ異なる3人の記憶を総合した結果、発言内容は「臨界の可能性はゼロではない」だったことで合意。まもなく訂正版が公表された。
(2011年5月24日03時00分)

要は「(海水を注入すると)再臨界の危険性がある」と原子力安全委員会の班目春樹委員長が語ったとされる部分が、「可能性はゼロでない」と訂正されたことを指す。実を申せば私が最初に引っかかったのがこの箇所で、上のブログ記事で次のように述べている。

政府筋によると原子力安全委員会の班目春樹委員長が首相に海水注入で再臨界が起きる可能性を指摘、いったん指示を見送ったも、この記事だけでは海水注入がどのように再臨界に繋がるのか、素直に理解出来ないので内容的には無意味である。

産経の記事の引用部分を紫文字で示したが、海水注入で再臨界が起きる可能性なんて、科学的にすんなりと理解できる事柄ではないのである。だからその後で班目委員長が「専門家としてそんな指摘をするわけがない。怒り心頭だ」と全面否定した方を私はさもありなんと素直に受け取った。

では何故そのような不完全な内容を含む文書が公表されてしまったかというと、朝日の記事では《会見の直前、打ち合わせの席で安全委事務局の加藤重治・内閣府審議官が、不在の班目氏に代わって発言内容が違うと抗議した。だが、細野豪志首相補佐官から「その場にいた多くの人から確認した結果だから」と押し切られたという。その後会見に臨んだ細野補佐官は資料を記者らに配布し、「相当しっかり確認してお示ししている」と自信たっぷりに説明した》となっている。これだと混乱を引き起こした元凶は細野豪志首相補佐官ということになる。しかし押し切られる方も押し切られる方で、原子力安全委員会から政府・東京電力統合対策室の一員として加わっている加藤重治・内閣府審議官がどのような背景の方なのか分からないが、「おかしいことはおかしい」と頑張らないことには職務をまともに遂行したことにはならないではないか。

それはともかく、政府・東京電力統合対策室が2ヶ月以上も前の出来事を公表した文書が一日経てば訂正される、またその内容の正否を確認しようにも、発言記録は残っておらず記憶だけが頼りとは、信じられないほど杜撰な意思決定の進め方で、これでは何を発表しても国民がすんなりと耳を傾ける気にはなれない。その一方、21日午後4時半からの共同会見で配られたとされる資料「3月12日の福島第一原子力発電所1号機への海水注入に関する事実関係」を見ようとしたが、まだ見つけることが出来ないままである。これなども是非ネットで公表して、関心があれば誰でもアクセスできる状況にして欲しいものである。そうすると新聞などマスメディアの変なバイアスのかからない判断を、国民が自ら下すことが出来るというものである。