赤福餅が受難である。
《 創業300年の餅菓子の老舗(しにせ)「赤福」(三重県伊勢市)が商品の「赤福餅」の消費期限を偽って表示、販売していたとして、農林水産省は12日、日本農林規格(JAS)法に基づき、改善を指示した。赤福は出荷しなかった商品の包装をはがして冷凍保存し、解凍した日を改めて製造日と偽り、再包装して消費期限を改ざんしていた。同様の手法で長期にわたって消費期限の偽装は続けられていたという。JAS法は原材料名を質量の多い順に記載するよう義務づけている。同省は、赤福が原材料名を「小豆、もち米、砂糖」の順に記載していたが、実際は砂糖の質量が最も多かった。同省はこの点でも改善を指示した。同省によると、赤福は、いったん包装した商品を冷凍保存させて、再包装する手法を「まき直し」と呼び、日常的に消費期限を改ざんしていたという。改ざんは少なくとも04年9月からの3年間で総出荷量の18%にあたる605万4459箱に上るという。》(asahi.com 2007年10月12日)
またか、と思う。マスメディアの「赤福」叩きである。そして
《赤福(三重県伊勢市)が商品の「赤福餅」の製造日を偽装した問題で、同社は13日から製造・販売部門の従業員ら約360人を自宅待機にした。本社には問題が発覚した12日から「商品をこのまま食べて大丈夫か」「返品したい」などと苦情が殺到し、社員が24時間態勢で対応。本店などは休業を続けている。》(asahi.com 2007年10月14日07時51分)とのこと、いつもと変わらぬ報道スタイルである。ついでに、いつもながらasahi.comの記事は紛らわしい。上記のオレンジ文字の部分はこの報道の趣旨なら「消費期限」を「製造日」としないといけない。
確かにJAS法は原材料名を重量の多い順に記載するよう義務づけている。元来「砂糖 小豆、もち米」とすべきところ「小豆、もち米、砂糖」としていた。「きまり」に背いたことはまずいが、「決められたとおりにちゃんと表示してくださいよ」「はい、分かりました」で済む話である。
問題は「製造日」の偽装と報道される部分である。赤福ではその日に作って出荷しなかったものを冷凍保存し、後日解凍して出荷した日を「製造日」としたとのことである。Google画像から赤福餅を探してみると、包装紙に次のようなスタンプの押されていることが分かる。
これでは「謹製」に騙されたと世間の人が思うのも無理はない。しかしそれも考えようでは本質的な問題にはならないと私は思う。
たとえば冷凍マグロであるが、これは普通は-40℃~-50℃で長期保存されている。そうでもしなければ日本から遙か離れた遠い漁場から持って帰れるはずがない。消費者の手に渡る前に解凍されて、その日から消費期限の設定されるのが普通であろう。
赤福餅も同じように考えてもよい。出荷しなかった製品を品質を損なわないように冷凍し、ふたたび出荷する前に解凍して、消費期限をその二日後(これは製造業者の判断で決められる)と設定してもなんの問題もない。時事通信社によると製造日の偽装が34年前から行われていたということだ。またここ3年間に総出荷量の18%が製造日の偽装が行われていたにもかかわらず、品質に関してのクレームが問題にならなかったことは、品質が冷凍・解凍によっても確保されていたことの証明にもなる。
私も過去何回となく赤福餅を食べたことがあるが、あのどちらかと言えば水気たっぷりのやわらかい赤福餅を、冷凍・解凍を経ているにも拘わらず製造時と同じかそれに近い状態に戻しているのが事実なら、私は過去の経験に照らしてこれは大した技術だと高く評価するぐらいである。この技術を製品の製造・出荷調整に積極的に使うと、売れ残りの製品を無駄に廃棄するというもったいないことを最小限に抑えることができる。企業はこのような智恵をこそ大切にすべきである。
1995年3月までは「製造年月日」を表示することになっていたが、1995年4月から「消費期限」「賞味期限」の2種類に切り替えられることになった。早く傷みやすいものについては「消費期限」でこれは5日未満、5日を超えると「賞味期限」となる。それこそ冷凍保存の技術の進歩とか輸送手段の効率化で、製造日を問題にするよりは美味しく頂ける目標日時を製造者に明示させるのが狙いであった。
だから今回の赤福餅騒動は、表示しなくてもよい「製造年月日」を「19. 2. 2 謹製」のようなスタンプをわざわざ押したことが「偽装」の口実を与えたことになる。これは明らかに状況判断を誤った赤福側の手落ちであるが、消費者に対して実質的な損害を与えるものではない。「赤福」も凍結・解凍を常時のプロセスとして、解凍・出荷日を基準にして「消費期限」を定め、この期限だけを表示しておれば今回のような問題は起こらなかったはずだ。
かわいそうなのは赤福餅である。自分には何の罪もないのに、こうなるとやたらに張り切るマスメディアに煽られて、たまたま悪い時期に巡り合ったばかりに、多くの仲間と焼却炉に投げ込まれる運命にあるそうだ。この短絡的行動にも私は人間の傲慢さを見てしまう。「りんごの唄」ではないが「りんごの気持ち」を分かる人もいるように、「赤福餅の気持ち」を大いに分かってあげようではないか。
《 創業300年の餅菓子の老舗(しにせ)「赤福」(三重県伊勢市)が商品の「赤福餅」の消費期限を偽って表示、販売していたとして、農林水産省は12日、日本農林規格(JAS)法に基づき、改善を指示した。赤福は出荷しなかった商品の包装をはがして冷凍保存し、解凍した日を改めて製造日と偽り、再包装して消費期限を改ざんしていた。同様の手法で長期にわたって消費期限の偽装は続けられていたという。JAS法は原材料名を質量の多い順に記載するよう義務づけている。同省は、赤福が原材料名を「小豆、もち米、砂糖」の順に記載していたが、実際は砂糖の質量が最も多かった。同省はこの点でも改善を指示した。同省によると、赤福は、いったん包装した商品を冷凍保存させて、再包装する手法を「まき直し」と呼び、日常的に消費期限を改ざんしていたという。改ざんは少なくとも04年9月からの3年間で総出荷量の18%にあたる605万4459箱に上るという。》(asahi.com 2007年10月12日)
またか、と思う。マスメディアの「赤福」叩きである。そして
《赤福(三重県伊勢市)が商品の「赤福餅」の製造日を偽装した問題で、同社は13日から製造・販売部門の従業員ら約360人を自宅待機にした。本社には問題が発覚した12日から「商品をこのまま食べて大丈夫か」「返品したい」などと苦情が殺到し、社員が24時間態勢で対応。本店などは休業を続けている。》(asahi.com 2007年10月14日07時51分)とのこと、いつもと変わらぬ報道スタイルである。ついでに、いつもながらasahi.comの記事は紛らわしい。上記のオレンジ文字の部分はこの報道の趣旨なら「消費期限」を「製造日」としないといけない。
確かにJAS法は原材料名を重量の多い順に記載するよう義務づけている。元来「砂糖 小豆、もち米」とすべきところ「小豆、もち米、砂糖」としていた。「きまり」に背いたことはまずいが、「決められたとおりにちゃんと表示してくださいよ」「はい、分かりました」で済む話である。
問題は「製造日」の偽装と報道される部分である。赤福ではその日に作って出荷しなかったものを冷凍保存し、後日解凍して出荷した日を「製造日」としたとのことである。Google画像から赤福餅を探してみると、包装紙に次のようなスタンプの押されていることが分かる。
これでは「謹製」に騙されたと世間の人が思うのも無理はない。しかしそれも考えようでは本質的な問題にはならないと私は思う。
たとえば冷凍マグロであるが、これは普通は-40℃~-50℃で長期保存されている。そうでもしなければ日本から遙か離れた遠い漁場から持って帰れるはずがない。消費者の手に渡る前に解凍されて、その日から消費期限の設定されるのが普通であろう。
赤福餅も同じように考えてもよい。出荷しなかった製品を品質を損なわないように冷凍し、ふたたび出荷する前に解凍して、消費期限をその二日後(これは製造業者の判断で決められる)と設定してもなんの問題もない。時事通信社によると製造日の偽装が34年前から行われていたということだ。またここ3年間に総出荷量の18%が製造日の偽装が行われていたにもかかわらず、品質に関してのクレームが問題にならなかったことは、品質が冷凍・解凍によっても確保されていたことの証明にもなる。
私も過去何回となく赤福餅を食べたことがあるが、あのどちらかと言えば水気たっぷりのやわらかい赤福餅を、冷凍・解凍を経ているにも拘わらず製造時と同じかそれに近い状態に戻しているのが事実なら、私は過去の経験に照らしてこれは大した技術だと高く評価するぐらいである。この技術を製品の製造・出荷調整に積極的に使うと、売れ残りの製品を無駄に廃棄するというもったいないことを最小限に抑えることができる。企業はこのような智恵をこそ大切にすべきである。
1995年3月までは「製造年月日」を表示することになっていたが、1995年4月から「消費期限」「賞味期限」の2種類に切り替えられることになった。早く傷みやすいものについては「消費期限」でこれは5日未満、5日を超えると「賞味期限」となる。それこそ冷凍保存の技術の進歩とか輸送手段の効率化で、製造日を問題にするよりは美味しく頂ける目標日時を製造者に明示させるのが狙いであった。
だから今回の赤福餅騒動は、表示しなくてもよい「製造年月日」を「19. 2. 2 謹製」のようなスタンプをわざわざ押したことが「偽装」の口実を与えたことになる。これは明らかに状況判断を誤った赤福側の手落ちであるが、消費者に対して実質的な損害を与えるものではない。「赤福」も凍結・解凍を常時のプロセスとして、解凍・出荷日を基準にして「消費期限」を定め、この期限だけを表示しておれば今回のような問題は起こらなかったはずだ。
かわいそうなのは赤福餅である。自分には何の罪もないのに、こうなるとやたらに張り切るマスメディアに煽られて、たまたま悪い時期に巡り合ったばかりに、多くの仲間と焼却炉に投げ込まれる運命にあるそうだ。この短絡的行動にも私は人間の傲慢さを見てしまう。「りんごの唄」ではないが「りんごの気持ち」を分かる人もいるように、「赤福餅の気持ち」を大いに分かってあげようではないか。