横須賀の自宅から鎌倉市の講演会に向かう途中で、クロガネモチの並木に出会った。
最近出来たトンネルの出口に、まだ樹高は二・三メートル程のクロガネモチが、道路わきに十本ほど植えられていた。どの木も、紅の小さな実を沢山付けていた。帰りに再び同じ道を通って、午後の陽射しに輝く、紅の実を写した。
トンネルをいづれば赤き実のなれる
クロガネモチの樹列に出合いぬ
竹薮を背にして並ぶ街路樹の
鮮やかなるか紅の実は
クロガネモチは、昔は小鳥を捕らえる「鳥もち」をこの木から採取したり、漢方薬にも用いたようだ。どうしたものか、この木の葉や小枝は、真っ黒に錆が付き易いが、お目にかかったクロガネモチは、いずれも錆がなく綺麗な状態であった。まだ樹齢が若い故なのだろうか。
鳥たちにとっては、冬の食べ物の無い季節のクロガネモチは尊い餌であるが、殊にヒヨドリはこの実を好んで食べる。さぞや悔しい思いで、遠くから眺めているに違いあるまい。
街路樹に誰が選ぶや紅の
実を行く人に愉しませむとは
ヒヨドリは悔しき思いで眺めらむ
実を食べたくも車が怖くば