「うつろ庵」の庭の、「金のなる木」が小さな花を付けた。
この多肉植物は、「銭のなる木」との俗称もあって、身近な存在であるが、花を咲かせるまでにはかなり長い年月が必要のようだ。「うつろ庵」では何れの株も花を付けるが、住人がそれだけ老境にあるということであろうか。一月十五日付け「幼き冬日を」でも、葉の縁に赤紫がさした写真を添えて、数首を掲載した。
葉の内ゆ淡き緑の花莟
のぞけば既に赤み差しきて
あの時は、薄緑の莟の先端も、寒さに凍えて赤紫がさしていたが、何時の間にか白く透ける莟みに変り、それぞれの群莟の中ほどに、気品のある花が咲いた。遠くから漫然と見たのでは、さほど目立たぬ花であるが、近くに見れば誠に清楚で凛とした気品が漂い、虚庵居士の好きな花の一つである。
凍てつける寒さに耐えて何時やらに
膨らむ莟 今朝に咲きたり
隣には凍えて萎えぬる枝あるも
健気に咲きぬ白き小花は
花芯には細き血筋を透かしいて
小花に脈打つ想いを聴かなむ
寄り添いし莟らやがて陽を受けて
競い咲く日を待ちにけらしも